第45話「クエスト三昧」
「というわけで──」
やってきました首都郊外ー!
目指すは人民評議会から出された各種クエストなんだけど──……。
「な~んでアンタがいんのよ」
キュロキュロと履帯音も頼もしい、復活と相成ったチハたんを駆って、ルルとクエストにでるのは実に光栄なのだが……。
──なんかいらんオプションがついとる。
「な、なんじゃぁぁ?! 文句あっかー!」
シュッシュと、シャドーボクシングの真似事をしているのは、
いつぞや見た燃えるような赤い髪のチビガキ──あの時のクソドラゴンだ。
──ゴンッ!
「あいだー!」
「あるから言ってるんでしょ!……ったく、あいかわらず硬ってーし」
「いっづづづー……。か、刀の柄頭で……」
うっさい。
「素手で殴ったら私の拳が壊れるでしょ!」
「いや、殴らない選択肢はないのかー?」
ないなー。
アホは殴って教育するに限る。こちとら、ギリギリ殴って育てられた世代じゃーい。
「な、なんちゅう凶暴な女じゃ……」
「火ぃ吹いて、スーパー銭湯を破壊して、ガソスタを爆破した奴に言われたくないねー」
「いや、爆破したのはお前じゃろうが……あれ、メッチャ怖かったからな?」
知~るかー。
「だいたいアンタのせいで爆破する羽目になったんだから、アンタのせいだよ」
「どこのジャイ〇ンの理屈じゃ……ったくもー」
こっちのセリフだなー。
「っていうか、街の門が混む前に急いで出て来たせいで、マヂで詳しい話聞いてないんだけど……どーいうこと?」
「どうもこうも──自分で聞けぇい……。あ、う。き、聞いてください」
……ちっ。
しゃーねーなー。
「まだ近いから無線届くかなー? アローアロー?」
ザザッ!
『お、ナガセかい?』
をを!
無線が届いたー!!
さすが新砲塔チハ。
無線も旧式の『九六式四号戊無線機』から新型の『車輛無線機乙』になって使いやす~い!
ちなみに今のチハたんの仕様はこんな感じー。
ブーン……。
◇ ◇ ◇
スキル:【せんしゃ】
能 力:任意の場所に召喚可能。
世界中のありとあらゆる『せんしゃ』(※)が選択できる。
戦 車:九七式中戦車・改(NEW!)
『改造オプション』
追加装甲Lv1: 購入済み
補助装甲Lv1: 5ポイント
増槽50L : 5ポイント
土嚢 : 2ポイント
鉄条網 : 購入済み ← 新規で買ったよ!
(追加)歩兵用掴み綱: 10ポイント(NEW!)
対空機関銃 : 購入済み
煙幕発射器 : 15ポイント
排土板 : 3ポイント
拳銃穴 : 2ポイント
新型砲塔Lv1: 購入済み
新型砲塔Lv2: 65ポイント
暗視装置 : 15ポイント
アンテナ強化 : 購入済み ← 新規で買ったよ!
牽引トレーラー: 購入済み
(追加)工兵器材: 購入済み
備 考:(※)表記はカタログあり。
◇ ◇ ◇
元の無線のままだと通信距離に不安があったので、ポイント使用でアンテナも強化しておいた。
おかげで通信距離が届いているので、元の無線機よりも遥かの高性能になっている。まさにスーパーチハたん!
いやー、声が届くっていいね!
「あーあー、こちらナガセですー。ギルマスさん、どうぞー」
『いや、どーぞーって、そっちから話してきたんだろ? どーぞ』
あ、そうだっけ?
チハたんの中にあった、帝国陸軍無線教本をチラッとしかよんでないから分っかんね。
まぁいいや。
「ほら、例のガキんちょなんですけど……なんで私のとこにいるんですか? どーぞ」
ザザッ
『あん? 話してなかったっけ? あ、いらっしゃいませー。どーぞ』
いや、どーぞじゃねーよ。
あとレジ打ちしながら無線使ってるのか、器用だなー。
「どこの世界に首都のギルドマスターをバイトに据置いて冒険にでる冒険者がおるんじゃ……前代未聞じゃぞ」
「黙ってろ、ルーフ・デス」
「んが!!」
二つ名呼びに顔を真っ赤にしているクソガキ。
それはさておき、マヂでコイツ邪魔なんだけどー。
「あのー。ほら、バタバタしてたせいで詳しいこと聞く前に出ちゃったんですけどー」
『いや、詳しい話は聞いてから行きな? まぁいいか。……そいつは竜人族の里の大使なんだと』
あ?
大使?
……あ、大志か。
「ガキんちょよ、大志を抱けで有名なあの大志ねー」
うんうん。
知ってる知ってるー。
「いや! 大使じゃ大使!! 外交官的なあれじゃー! つーか、知ってて言っとるだろ!」
「そりゃそうでしょ。アンタが大使とか、ありえねーし。めっちゃ、主権国家侵害してたからね?」
なに?
最近の外交官は、ガソスタ爆破して、首都の屋根瓦を剥がして回るのか?
「んが! あ、あれは不可抗力じゃろうて──……交渉の場に来たら、なにやら凶暴な魔物は暴れとるし、オークの集落には変なのが居座っとるし、あと爆破はしとらん!」
最後の二つは聞き捨てならねーなー。
『まぁまぁ。そんなわけで色々上層部で協議した結果、解放することにしたのさ』
「えー……。それと私のとこにコイツがいるのが何の関係が??」
つーか、こっちでは解放してないけどね。
うるせーし、暴れそうだから、追加購入した鉄条網で縛って戦車の先端にグルグルに巻いて括りつけて置いた。
おかげで、なんかチハたんが人質を肉壁にしつつトゲトゲした終末戦車(マッド〇ックス2 仕様)っぽくなっちゃったよー。
『そこがミソでねぇー。竜人族は屈服した相手に伏す習慣があるとかなんとかで──……アンタに同行するそうだ』
「は?」
伏す?
降伏ってこと??
「……いや、いらないんですけど?」
え?
熨斗をつけてお返ししたいレベルなんですけど──……いや、まてよ?
「あー……その心は?」
『食いすぎで食費がトンデモないうえ、いつ暴れ出すかもわからない時限爆弾を首都の中に抱え込みたくないってさ』
やっぱし!!
「つまり厄介払いじゃん!!」
『あははは! まぁ、そういうこった。……実際、首都でも持て余してたみたいでねー。あ、もちろんウチのギルドもかなり持て余してたよ。そいつ無茶苦茶食うし、常識ないからねぇ』
全員じゃん!
みんなして、コイツいらねーってなってんじゃん!
「ふふーん!」
いや、そんでお前はなんでドヤ顔しとんねん。
お前、全力でコイツいらねーって言われてんだぞ? 町ぐるみで嫌われてるんですよ?
そして、大使の役割はどうしたー。
『あと……。多分、大使ってのも建前さ。ワタシの知る限りじゃ、竜人族がそんなのを人間の街に送り出したなんて話は──あんまし聞かないねぇ』
あんましって……。
「あるにはあるんだ」
『むかーしの話さ。そいつの話によると、供物が途絶えているから、確認にきたとかなんとか──……もっとも、その供物を差し出す約束をしたのは、とっくに昔に滅んだ国のことでね』
あー。
「それ何年前の話ですか……? そして、その供物を今更取りにくるって──もう、いらないじゃん、なしで社会が循環してんじゃん」
『まぁ、その辺はお察しだねー。おそらく、そいつは竜人族の里でもアレな扱いなんじゃないのかい?』
アレな扱い……。
「な、なんじゃああ!」
「あー」
「あーって、なんじゃぁぁあ!!」
いや、もう。
あー……としか。
「はぁ……つまり厄介払いの厄介払いが、さらに厄介払いされてきたと?」
『まぁ、ぶっちゃけそうだね』
ぶっちゃけ過ぎじゃん。
そして、私に一個も得がないじゃん!
「それ、全力で拒否していいですか? それかこの辺に捨ててくるとかどっすか」
『首都近くでは止めとくれー。できれば遠くのほうに──深海とか火山とか』
「いやですよ、めんどくさい」
そして、深海に火山って、殺意マシマシだな、
エルフこぇーな。
『まぁまぁ、そう言わずに面倒みてやんな。一応アンタにも理があるからさ。……ほら、そのなんだ──ドラゴンを従えると言ったら、なんか箔がつくだろ?』
そんな箔いらねーわ……。
「……現状、口の悪いメスガキを戦車に括りつけて引きずり倒してるようにしかみえませんよ? 町中ではワイヤーで引きずり回しましたし」
見た目がガキだから、外聞悪いだけじゃん。
『いや、引きずり倒したのはアンタが勝手に──……ま、まぁ、それとは別に議会が、外交予算のなかから接待費を出すそうだよ』
え?!
「お金でるの?!」
『薄謝だろうけどね』
「んー。ならいっかな」
『あんた俗物だねー』
そりゃー世の中は金でっせー。
「まぁ、わかりました。お金が出るなら、その代金分はなんとかします。捨てるかどうかは別にして──当面は肉壁にはなりそうですしね」
チハたんの追加装甲として前面に括りつけてくれるわー!
わーははははー!
『いや、そういうことするから──……あ、もういいか。厄介払いしたのはこっちだし、ドラゴンを従えるなんてアンタにしかできないしねー』
そうそう。
ガキの躾なら任してくださーい。
「誰がガキじゃぁぁあ!」
「なでなでー♪」
お、ルルが興味もった。
「かーッ! そんで、魔族のガキが気安く撫でるなー! ぺーぺぺぺっ」
うん。
今ルルを燃やそうとしたので、あとで殴っとこう。
『……それよりも、クエストのほうは大丈夫かい? そいつを連れて行くのにも関連しているんだけど』
「え? そうなの?」
『アンタ……マジで話聞いてないね。何しに行くつもりだったんだい?』
えへへ。
『褒めてないからね。……ったく。今回のクエストはダンジョンの調査だよ。ベヒモスなんて化け物、早々、野にいるもんじゃないだろ?』
それはそう。
あんなん困るわ。
「なんでしたっけー。首都郊外の──どっかにあるダンジョンでしたっけ? そこがベヒモスの巣ですか?」
『だと思うって、程度さ。他にもいくつか──正直、ウチのギルドは今、人手が足りない。ましてやベヒモスが湧くような場所に派遣できる冒険者ともなればなおさらねー』
あー……うん。
多分、ドミトリさん達でも無理だろうなー。
『ま、評議会肝入りのクエストだよ。困難なぶん、名も挙がるし、報酬もいい。街の安全のためにも、早々にやってほしいみたいだから、気合いれなよ?』
「了解です」
うむ。
それが一番だいじ。
ドミトリさん達でも無理そうなクエストを達成したとなれば、私の評価は爆上がりだろう。
「……ん? でも、それと、それがコイツとなんの関係が?」
『あぁ、そいつが言うには、古い誓約のためだそうだよ。……多分、供物うんぬんが関係しているみたいだね』
あー。
昔の同盟のよしみって奴かな?
「それでベヒモスと戦ってたんですかー」
『アンタのガソスタが爆破されたのも、おそらく敵対種と勘違いしたっぽいね』
あー。
オークの集落を襲撃したベヒモスを追ってきて……スーパー銭湯でのんびりしていた私たちと遭遇。爆破とあいなったわけね。
「いや、爆破はしとらんからな? それ何度もいって、あわよくば既成事実化しようとしとらんじゃろうな?」
してないしてない。
……事実だもーん。
『ま、ぶっちゃけ、ドラゴンだの竜人族だのは、今の人民評議会や連邦には関係ない話さ』
「ですよねー。いい迷惑ですよ」
「我、けっこう頑張ってベヒモスと戦ったんじゃがのー」
なんかしょんぼりしてるクソガキ。
ふんっ、足を引っ張ったの間違いだよ。
『さて、そんなわけで──そろそろじゃないかい?』
「あ、ほんとですね。……おー、ここがそのダンジョンかー」
無線越しに聞いたギルマスの声に前を振り仰げばなんとも巨大なダンジョンが!
いや、ダンジョンって言うか──……。
「穴じゃね?」
ひゅぉぉぉぉお……。
巨大な大穴が眼前に大口を開けていたのであった。




