第43話「メガモール」
わいわい、
がやがや
「おぉー! 広い広い!」
「ひろーーーーーーーーい!」
ぶーん♪
両手を広げて、てててーと、ルルと一緒に大はしゃぎ!
いやー、広いお店っていいねー♪
見ての通り、ジョブの進化と同時に私はルルを肩車して開拓前の土地を借りてメガモールを開店させてもらった。
するとまぁ、出現したこの巨大施設に、議長さんなんか護衛さんと一緒にポカーンって固まってるしー。
いやー。
マ~ヂ広いわー。
申し訳程度に、駐車場の横にガソリンスタンドがついてるけど、
もうハッキリ言って、メガモール付きガソリンスタンドってレベルじゃねぇ。
どうみても『メガモーーーーーール! あ、ガソスタも一応ついてま~す(小声)』のレベルだ。
「とはいえ、これも私のジョブかー」
わっはっは。
いや、すげーなジョブ【ガソリンスタンド】は。
もはや何でもありじゃねーか。そのうち、国際宇宙ステーション付きガソリンスタンドとか出てきそうだわ。……でないよね?
「いや、ジョブも何も──……なんで、ワタシまで?」
そこには口をあんぐりと開けたまま硬直したエルフのギルマスさんがいた。
恰好はガソスタのツナギに着替えて、キャプ付き。
ツナギのサイズが合っていないのはまぁ、ご愛敬ということで……いや、胸の部分開けすぎでしょうが、畜生めー。
「そりゃもう、バイトの続きでしょう」
いいから、さっさとレジにいけ。
「いや、ギルマスなんだけどね……ワタシ」
細かいこと言うなし。
「もしかして副業禁止でしたっけ?」
「いや、そう言う話をしているわけじゃ──……あぁ、もう分かったよ」
おお!
いいね。
この聞き分けのよさと言い、気風の良さといい、ドミトリさんに似てるねー。
「で? なにすればいい?」
「とりあえず、レジと……あと、手が空いたら品出しをお願いします」
「手が空いたらって……」
ズラー。
「……コンビニをいきなり閉店して、こっちに移転するものだから、もうすでに客が客を呼んでドえらいことになってるんだけどねぇ」
それはそう。
というか、これ、首都のほぼすべての人来てない?
「ま、まぁ、なんとかしましょう!」
「できるかねー」
ガシガシ頭を掻くギルマスさんだけど、文句を言いつつもテキパキと客を捌いていくのは、さすがエルフにしてギルマスだ。
笑顔も最高で、男性客がそっちに流れていくー。
「うぉーい、こっちにも美人店員がいるよー」
「アンタは、マスコット枠だよ」
わっ。
でたなドミトリさん。
「バイトに──」
「「「「買い物!!」」」」
あ、はい。
ったく……忙しくなるんだから手伝えよなー。
「というか、なんだいこの店?……店っていうか、もはや街かい?」
「広いし、明るい……」「しかも、品ぞろえが半端じゃない」
「本屋に食料品店に──なにやら、専門店までありますね」
うんうん。
ポイントつかって付加施設一杯つくっといた!
そして、それこそが、メガモーーーーーールなのであ~る。
「ぶっちゃけ、私もまだ全部見てないですけど、故郷には町の郊外には、大抵この手のお店があるんですよー」
東京モンには分かるめぇ。
田舎は田舎の良さがあるのだー。
わーっはっはっは!
むしろ、この便利を知ったら、下手に都心には住めなくなるのさぁ。
ふふーん。都心のちっこいスーパーとはわけが違うのだよ、わけが!(某、ランバな人風に)
「「「「はえー……」」」」
これがいっぱいある国があるのかーと、驚いた顔のドミトリさんたち。
あはは、同じ顔してる。
まぁ、デカすぎてビビるわなー。
ぶっちゃけ出しといてなんだけど、私もびっくりしているのはここだけの話。
パット見ただけで、
スーパー、ホームセンター、100均、本屋、家具屋、家電と定番のお店の他、
ポイントを使用して、専門店として各種ブランドの服屋なんかのアパレル系にスポーツ用品店も追加した。
その他にも色々、
当然フードコートが充実しているのは当然として、もう至れり尽くせりだ。
屋上には遊具コーナーもあるし、二階、三階をぶち抜いたフロアには、なんと映画館と、プール付きジムまで追加できるときた。
極めつけが──……いや、アンタ気球って。
メガモール開店!! の横断幕が垂れ下がっとるがな。
ポイント有り余ってるからつい……。
「いやー。すげーわ。我がジョブながらー」
「凄いっていうか、ほとんど城塞都市じゃないか。……これ、アンタだけで回せるのかい?」
ドミトリさんの懸念もごもっとも。
一店舗だけでもキツイのにこの規模だ。それこそ、数百人単位の従業員が必要になるだろう。
実際、マダムたちに一番人気のスーパーでは、無人レジの隣で、美人エルフのギルマスさんが、「ひぇー」とか言いながら超高速でレジ打ちしているほかはもう長蛇の列だ。
無人レジはまだまだ使い勝手がねー……。
案内はついてるけど、回転率はイマイチ。
「まぁ、そこはほら、あれですよあれ」
「「「「あれ?」」」」
そう、あれ。
皆が目を向ければそこにやってきたのはそう──。
デケンデ、デンデン♪
デケデケデーンデン♪
「おわー!」
「で、出たな無人ロボー」「コ、コイツ動くぞ……!」
いや、だから威嚇すんなし。
ま、そう言うわけでこの子が他の無人箇所を担当しているというわけだー。
速度はイマイチだし、
品出しの精度も微妙だけどいないよりはマシ。
なにより掃除もできるし、各種設備の保守点検も完ぺきだぜー。
「な、なるほど。レジもロボで対応し、一応は品出しなんかもできるっと──」
「そそ。音声も出せるし、多少はコミュニケーションもとれるよ」
んね?
『とれるよー♪』
……らしい。
「な、なるほどねぇ。……しかしなぁ。これ、馴染めるのかい? 街の人だって、こんな店初めてだろうしね」
「いや、もう馴染んでますよー」
ほらっ。
ズラーっと並ぶレジの列のほか、専門店で服を選んでいるマダーーームたち。
さすがは昼間っからお店でショッピングできるだけ暇を持て余した人々。適応力がたかーい。
「ふ、ふーむ。なるほどねぇ」
「でも、盗みとかはどーすんだ?」「そうそう、警備兵がいないぞ?」
あん?
盗みだぁ?
「そりゃもう──ほら、ああなります」
当然、無人店舗ばかりだと懸念されるのが、万引き、盗難、食い逃げだ。
しかし、無人レジを舐めるなよー。
ピーピーピー!!
ほーら、さっそく来た。
目を向ければ、そこには警告音を立てるとある店舗のゲート。
スポーツ用品店のそこでは、なんと……いい感じのゴルフパッドを万引き──というか、もう強盗クラスに何十本も担いで逃げようとしたガラの悪い男が数名、レジ前の検問に引掛かっていた。
(※ ほらあれ、あの──商品タグを切らないと鳴るあれですよ、あれ!)
すると、
早速やってきました──無人ロボ~。
『お客様、お会計がおすみで──』
「(るせぇ!)」「(んだ、このポンコツがー!)」
ドガーン! と蹴り飛ばせば、サァ~大変。
無人ロボの顔(?)の表示部分が途端にビー!! と切り変わり「警告《WARNING》」の文字列が踊る。
直後──!!
「「(んぎゃぁぁぁああああ!!)」」
どさどさどさっ。
黒煙をブスブスと吹いて男たちが倒れ伏した。
「んなぁぁぁ?!」
「な、なんだぁぁ?!」「で、電撃魔法か?!」
いやいや、魔法ってアンタ……。
「──ちゃうちゃう。いわゆる、テーザーガン(※射出型スタンガン)って奴ですよ。この子達には最低限の自衛能力があるみたいなんですよー」
ほらっ、これ。
ジッと見ると鑑定可能でーす。
ブンッ。
◇ ◇ ◇
無人ロボ
脅威度(∞)
・ジョブ【ガソリンスタンド】の各種レベル帯に常駐する無人ロボ
基本的に無害で有能。ある程度のコミュニケーションも取れる高性能AIを搭載している。
ただし、危害を加える、窃盗、食い逃げ等の犯罪のほか店内の風紀を乱すものには実力を行使することもある。
基本武装:10万Vテーザーガン、グレネードランチャー、火炎放射器、12.7mm重機関銃などなど
基本的には無害である。そう、基本的には──。
◇ ◇ ◇
「……ってな感じです」
ちなみに、警戒モードを選べるので、
本来なら、口頭注意→警告射撃→危害射撃と段階を踏むところを、警告即射殺……ごほんっ、射撃に変更しといた。
慈悲などない。
自衛隊じゃねーんだよ、こっちはー。
「こ、こ、」
「「「こわー!!」」」
わはははは!
盗みを働くような奴はこうじゃー!!
高笑いする私を遠目に見ていたせいか、それとも黒焦げになったアホな泥棒どもを目の当たりにしたせいか、
な~んかスーパーのレジに並んでいた人たちがきちーんと並び直したのは、きっと気のせいだろう。
「い、いやいや、最低限ってレベルじゃないよ!」
「きょ、脅威度【∞】?!」「マシンガンもついてるの?!」
ついてるみたいです。
つまり、最強のセキュリティです、はい。
まぁ、早々撃たんだろうけど……撃たないよね?
『撃たないよー♪』
撃たないらしい。
……ホントにぃ~?
「い、いやはや。アンタには驚かされっぱなしだけど、これはさすがにねぇ」
「まぁまぁ、こういうのもありってことで──それじゃお買い物楽しんでくださいねー」
お手ぶんぶん。
警備ロボ……もとい、無人配送ロボにビクビクしながらすっごい距離を取って去っていくドミトリさんを見送る。
しかし、ロボばっかりだとどうもなー。できれば、バイトの人手が欲しいぜ……。
「……って、なんじゃこりゃぁぁぁあああああああああああああああああ!」
うわっ、びっくりしたー!
「あ、いたんだ」
「いたわ! ずっといたし、なんなら土地を貸したとこからいたわ!」
あ、そういやそうだっけ。
叫び声をあげるのは、護衛さんと一緒にあんぐりと口を開けたままな議長さんだ。あの金貨2000枚くれた人。
「いや、2000枚くれた人って……、もうちょっとマシな評価はないんか!」
「口には出してないんですけどねー」
まぁ、それ以外になんて評価するんだよ。
「お主は顔に出とるんじゃわ。ったく……。しっかし、なんちゅう【ジョブ】じゃ。ベヒモスを倒したとかは正直眉唾もんじゃと思とったが、さもありなんじゃのー」
「当然っすよー」
ふふーん。
薄い胸を張りつつドヤ顔。
「……で、いきなりこんな店を開いて何のつもりじゃ? 金なら十分に持っとろうに」
「いや、もっと欲しいんでー」
実はまだ、スーパー銭湯の修理はしてないのだ。
あとでするけど、ガソスタの修理だけで金貨1000枚もとられたしなー。
「……欲張りな奴じゃのー。しかし、まぁ、流通が止まっとったから正直助かるわぃ」
「でしょ? それも含めてほら、街に恩を売ろうかと──」
げっへっへ。
そして、あわよくば、ルルちゃんを受け入れてもらえないかと──。
「心の声が駄々洩れじゃし、そもそも口でも恩を売るとかダイレクトに言うでないわ。……しかしまぁ、たしかに良い手ではあるのー。貴族制を廃したこの国では、名声や地位が一番効果がある」
でしょー?
「なので、インフラが壊滅してる街にもう、手放せないくらいの品物を投下したら、ある意味、貴族なんかよりも人心がつかめるかなーって」
つまり、私という存在が不可欠になればいいってことよー。
げぇ~へっへっへー。
「く、黒いのー……」
「まぁ、それくらいしないと外国人扱いの私じゃ、逆立ちしたって、土地は買えないし、建国もできないじゃないですか」
そも国をつくる気はないし、
国を作ってまで孤児院をどうのこうのって本末転倒だけどねー。
「はぁ……。搦め手で来よったかー。しかし、何度言われても無理なものは無理じゃぞ? たしかに、お主のジョブは民の受けはよさそうじゃし、このサービス欲しさに、中には魔族の子供一人くらい受け入れてもいいという意見も出るじゃろうが……我が国は議会制じゃ」
つまり、ワンマンでどうにかなるものじゃないと?
「実際見ての通り。……この通り、我は若い」
そーね。
自分で言うのもどうかと思うけど……。
「ここだけの話じゃが、我は議会では軽んじられとるんじゃ」
「あー……」
それで聖剣で大喜びしてたのか。
威厳にはなるわな。今もなんか杖みたいにして持っとるし──。
「まぁ、チッコイしね」
子供にしか見えん。
……つーか、いくつだこいつ?
「身長は関係ないわい。それよりも経験だの知識だの色々じゃ──。おかげで古参の議員には舐められとるし、だ~れも言うことを聞きやせんわ」
……は、はぁ。
「な、なるほどー」
国のトップで、なんでも思いのままかと思いきや苦労してんのね。
「……ん? じゃあ、なんでアンタ議長なんてやってんの?」
若くて、
軽んじられてて、
知識も経験もなくて、
だ~れも言うこと聞かないのに──議長? 国のトップ??
「おかしくね?」
「あ、ああー……。それはじゃのー」
言いにくそうな議長さん。
しかして、チラリッ護衛の顔をみつつ、頭を掻くと、
さりげなく視線を外して、ボソッとこぼす。
「世襲したからじゃ」
「……は?」
せ、せしゅう?
世襲……。
え?
赤い香りのする人民評議会とやらで────せ、せ、
「世襲ぅぅううう?!」
うーわ……。
それアレじゃん。
人民平等を謳う国で、世襲って……あーた。
あかん。
ダメなパターンの赤い国だったわ、ここ──。




