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第35話「VS ベヒモス」

『『グルァァァアアアア!!』』


 ずしんずしんずしんっ!


 一斉に咆哮し、突撃するベヒモスの群れ!

 その勢いたるや、咆哮だけで城壁上の兵士が崩れるほど。


 こっちも防弾ガラスがビリビリと震えたぜ。


「ひゅー! さすがは災害指定種」


 迫力満ッ点~。

 ……だけど、それだけだね!


「こっちは生まれ変わったチハたん改だぞー!」


 トレードマークのハチマキアンテナじゃなくなったけど、その分大型化した砲塔はスリムでキュート!


 オマケに装甲もアップして、なにより47mm長砲身戦車砲の威力(パンチ)だんち(段違い)だぜー。


「そして、その主砲を前にして、逃げないのは上等ぉ!」


 いいねぇ。

 結構だよ。じつに結構!


 なので、こっちも遠慮はしないッ。

 その意気を汲んで、正面からぶち当たるのーみ!


「目標、正面。おなじくベヒモース!」


 ──仮敵、ベヒモス「B」にむけ!


「ファイヤー!!」


  バゥンッ──!!


 長大な発砲炎が47mm長砲身から吹き出し、砲口初速810m/秒で突き進む一式徹甲弾がベヒモスを捕える!


 すると、真正面よりやや下!


 首元あたりにつき刺さり、爆発! 肉を巻き込んで体内でさく裂するところまでまざまざと見えたーーー……がっ!!


「命中、命中ッ!……しかし、致命打とはならーず!」


 な、なんてこった!

 あの野郎、一発を耐えきりやがったぞ?!


『グルァァァアア?!』


 オマケに激痛で怒りで猛り狂うベヒモス。

 いっそ、たたらすら踏まずに、こちらを睨む元気すらあるではないかー。


「わーぉ、やーるねぇ! まさか、大砲を耐えきるなんてさー」


 さすがは災害指定種といったところかな。

 ……おまけにあの巨体。見た目以上に恐ろしくタフだ。


「さらには、機能も低下しないときたかー」


 普通なら激痛にのたうち回るだろう。

 あるいは戦意を(くじ)かれて一目散に逃げるはず。


 ……だが、やはり魔物!


 そして、災害指定種にしてS級の脅威度というだけあって、急所(バイタルパ-ト)に当てない限り、正面からでは致命傷になりにくいらしい。


「……だけど、十分」


 砲弾が通用するだけで十〜分! いまも、こっちが有利なのは変わらなーい。


 そうとも。

 一発でダメなら……。


「何発も当てるまでさぁ!」

『グルァァァアアア!』


 あはっ。

 怒ってる怒ってる!


「上等、かかってきなッ!」


 あんたを撃った下手人はここさー!

 そんでこっちは、もう一発!

 

「主砲、次弾装填ッ」


 弾種:徹甲っ!


 しかるに牽制射!

「ルルは機関銃で射撃開始ッ、次弾発射までの時間を稼いで稼いでー!」

「んー!」


 ダダダダダッ! 

  ダダダダダッ!


 いいぞー。私が言うや否や、

 前方機関銃席についたルルが猛然と機銃を撃ち始める!


 もちろん、機銃弾は7.7mmの豆鉄砲。

 ドラゴンに匹敵する装甲を持つというベヒモスに効くはずもなく、キィンカァンコーン! と、耳障りな反跳音をたてて機銃弾が弾かれまくる!


 だが、それでいい。


 真正面から向かって来る機銃弾が思いのほか鬱陶しかったのかベヒモスの動きが止まる。


  ナ~イス、ルルちゃん!!


 そりゃー、顔もあるし、撃たれた傷もある。

 機銃弾といえども、好き放題に撃たれるのは愉快ではないだろう。


「──あはっ。だからって、動きを止めたらカモだよ!」


 間抜けめぇ!

 そして、その隙を逃す私ではなーい!



 ──照準よーー!し!



「ってぇぇえ!」


 ──バクンッ!


 装填完了と同時に、照準器に収まるベヒモスの弱点……!

 さっきぶち込んだ、一撃目と同じ個所に二発目を叩き込ーむ!!



  チュドーーーン!!



『グルァァァアーーーー?!』

「はっはー!」


 命中!

  命中!


「どーだぁあ!」


 新しい急所(二度目の傷口)に命中ー!

 いくらタフでも同じ傷口を抉られてそのままではいられまーい!!


 ズズズーン!


 実際、これにはさすがのベヒモスも耐えきれなかったのか大量の血飛沫とともに倒れ、絶命。


 そして、わかった。


 やはり心臓やら大血管が集中する場所を狙えば、巨体にも47mm砲が通用する!!

 そして、倒せる。


「──そして、殲滅できる!!」


 いぃぃぃよーーーーーし!

 倒し方は分かったぞー!


 一体目は僥倖!

 二体目は狙い通り。


 長砲身47mm砲は、ドラゴンに匹敵する装甲に十分通用する!


 ならばぁぁ……!


「次弾装填、弾種は再び徹甲弾!」


 ここに至り、私は新砲塔のチハたんの力を確信!


 この威力なら勝てる!

 この貫通力なら貫ける!!


 そして勝てるッ!!

 あのドラゴンにも、きっと────だから、その前にぃぃい!!


「まずはお前らからだー!」


 いっくぞー、主砲回頭!

 3体まとめてかかってこーい!!


 叫ぶ私に答えるかのように、残るベヒモスが私を明確な敵と捕らえて迫りくる。


『『『グルァァァアア!!』』』


 ズシンズシンズシンッ!! と、大地が揺れる揺れる!!

 まるで地震のごとく!


「あっは。すっごい迫力!」


 まさに怪獣!

 さすがはS級の魔物。


 そんなのが一斉に突っ込んでくるのは、普通なら恐怖でしかないだろう。


「だが、そんな単調な攻撃でチハたんが取れると思うなよー」


 戦車の本領は主砲だけにあらず……!

 そう。


「戦車の本来の役目は──……!」



 ──機動力だっぁぁあ!!



「戦車、前進前進前進ッ!」


 いっけぇぇえ! チハたん!!


「速力最大──パワー、フルマッーーークス!」


 連中が3体同時攻撃でくるなら、

 こっちも3体を振り回しつつ同時攻撃するまでよ!


「しかるに斜向運転ッ!──および主砲回頭、続けて行進射ぁぁあ!」


 車体を斜めにして走りに走り、

 連中の突撃を絶妙にいなしながら、砲塔だけはピタリとベヒモスを狙って外さない。


 あとは、タイミングをみて、撃つべし撃つべし!


「撃つべーし!」


 これぞ旋回砲塔を持つ戦車ならではの攻撃機動だ!


「そして、目標ほそーく(捕捉)!」


 仮敵、

  ベヒモスC~E、指命ッ!


「──射撃用ぉぉ意ッ!」


 てーい

  てーい

   てーい!!


「3点バースト射撃ぃぃ!」

 (※注:そんな機能はないので、気分でーす!)


 ダーン!

  ダーン!

   ダーン!


 刹那!

 本物のバースト射撃のように戦車砲が釣瓶撃ちに火を噴いた!


 さすがは帝国陸軍の一式47ミリ戦車砲!

 半自動式の排莢システムのおかげで旧砲塔のチハの57mm砲よりも早い早い早ーい!


 毎分10~15発の連射は、従来の10~12発に比べると、その差は微々たるものかもしれないが、

 熟練した戦車兵の手にかかれば、セミオートと見まごうばかりの射撃速度!


 そいつが追いすがるベヒモスに順次命中!!

 火花が散るッ!


「……って、ええええええええ?!」


 ひ、火花ぁ!?


 なんと、刹那響き渡るのは、いやーな反跳音!

 ガキーン、ガキーンガキーン……と、なんと、ぜ、三発全弾が跳弾となるぅ!


「ん、んなぁっぁあ?!」


 う、うっそーん?!

 高初速47ミリ砲だよー!?


「(ナガセぇぇえ! 奴等は馬鹿じゃない、学習するよ!)」


 ──はぁぁぁああ?!


「が、学習たって……」


 援護しようと追いすがっていたドミトリさんの叫び。

 だけど、学んだからどうにかなるものでもないのでは──。


「……あ! そうか!」


 そう言えばミルヒ君が言ってたっけ!

 たしか、ドラゴンに匹敵する装甲をもっていて、部位によっては(・・・・・・・)それを凌駕する(・・・・・・・)みたいな──……ってことはなに?!


「い、一番固い部分で弾いたってことぉぉ?!」

『『『グルァァァアアアア!!』』』


 ひぇぇぇ!

 どうやら正解らしい!!


 弾いたとは言え、それぞれ状況が異なるっぽい。


 顔面から血を流す奴。

 鼻に砲弾がめりこんで止まった奴。

 そして、ほぼ無傷なのは顔面の──その中でもさらに堅そうな(ひたい)で受け止めやがった奴!


 つまり、頭頂部付近がとりわけ硬いらしい!


 ただ、いずれにしても全部が全部、顔面で砲弾を受け止めたというのは間違いないっぽい。


「……いやいや! だ、だからってそこを盾にして砲弾を弾ける?!」


 で、できるのそんなこと?!

 ……いやー、でもできてるんだよなぁ。


「くっそー! やるなー」


 さすがは災害指定種、面目躍如といったところかー。


 そりゃ日本でだって、羆が猟銃を弾くって聞いたことあるけどさ。

 熊や、とりわけ猪のような、雑食性で高い脂肪を蓄えるような奴は軒並み骨も頑丈だ。

 とくに、肩回りなんかは分厚い脂肪と筋肉で固められているというし、もっとも硬いとされる頭蓋骨の前面に至っては、猟銃の至近距離の弾すら弾くという。


 いやいやいや、まぁ、理屈は分かるんだけどさ。


(それとできるかどうかは別でしょ?!)


 そも、だからって、弾くぅ?!

 こっちは47mmの対戦車戦闘が可能な大砲だよ?!





 どうやら災害指定種とやら、一筋なわではいかない様子。


 ただーし!!


「ならば、こっちにだって!!!」


 もちろん私だって負けちゃあいないよ!

 さぁ、本番開始だぜー!!


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