闇夜に輝く銀の腕-9
少し困ったとマキナは思った。
想定よりも【ガンクロウ】の挙動が安定していない。
【クロウ】が再起動してないのもあるが新たにインストールしてたプログラムの最適化が完全ではないのも大きいのかもしれない。
機動力は【ストームブレイカー】でどうにか補えているが反応速度が見るからに遅くなっている。
どれぐらい遅れているか言えば0.5秒ほどの差と云える。
僅かな差異ではあるが戦場において動作が遅いというのは致命的になりやすいのも定石。
友軍や僚機がいればアシストやサポートなどでフォローはできるかもしれないが現状はそうはいかない。
特に“相棒”ともオペレーターを補佐・補助を行うべきAIが起動していないというのは流石に厳しい。
OSとは切り離しているとはいえ、現行の【アームズレイヴン】という現代社会においても場違いの異物たる鋼鉄の巨人を人間1人で動かすことの大変さをマキナはこの時点で痛感した。
マキナ:(【クロウ】のウェイトがだいぶ重要だったと思うのは今更かもしれないけど――――)
唐突にだがマキナは【クロウ】との出会いを思い返した。
このAIとの出会いは自分がアンダーソン大佐の養子となって【ブリューナク】に入って間もない頃。
その時点では彼のボディとも云える【ガンクロウ】は完成してはおらず、当時専用のタブレット端末に入っていた。
当初は単純な普通のAIと同然だった“彼”だったがマキナと共に勉強していくと同時にどんどん成長を遂げていく。
気付けば出会って半年足らずで急速的に学習及び成長を遂げた【クロウ】に初めて驚きを覚えたマキナ。
それもあってか学習面で差を開かれたこともあってかその後、【クロウ】からは散々と弄られることになった。
マキナ:(あの時、初めてイラつくという感情を抱いたと思う――――)
アンダーソン大佐ら曰くあの時ほどマキナに人らしい感情を初めて感じたことはないと言われた際にはかなり複雑な感情となった。
そんな相方として二人三脚?でオペレーターとAIだけではなく、私生活に関してもミカサとは別の相棒的な関係となっていることに今ふと気づく。
憎まれ口に対して返す刀でお互い返したこともある意味ではお互いの成長に繋がっていたのだろう。
だからこそ1分近くの間、“彼”が動けないのはかなりの痛手であることを今更ながら痛感している。
目の前にいる黒い【サイクロプス】のオペレーターは先ほどの外部スピーカーによる音声漏洩は驚きはしたがそれはどうでもよかった。
むしろ、それはこちらの判断を誘導する為のブラフであるとマキナは睨んでいる。
戦場においては本来であればタブーとも云える様な行為はしばしばこちらの行動及び状況を混乱させることも多い。
特にこちらが性能ダウンしていると判断したからこそ襲撃を行い、マキナが回避したからこそ意表を突くことを考えた上での例の行動と思えば、辻褄も合うというもの・・・
声色などからギャル系を意識した所謂【メスガキ】属性というものだろう。
マキナはそういうサブカルのことはよくわからないがアルフレイア達がよく話題に挙げていたからそれなり?の知識はあるつもりだ。
マキナ:(あれも演技だと考えると厄介な相手なのかもしれません・・・!!)




