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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第五章 全盛
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込み上げるモノ

 立ち竦む十四郎の傍で、ローボが呟いた。その霞む視線の先では、ビアンカを先頭に掛け替えの無い”仲間”達が戦っていた。


「正気に戻ったか?」


「……はい」


 十四郎の声は小さかった。


「あいつ等の戦い方は、まるで正気の時のお前だな」


 ローボの言葉は、十四郎の胸に突き刺さった。暫くの間を置いて、ローボは厳しい声で言った。


「信じて付いて来る者を裏切るな」


「……はい」


 肩を震わせる十四郎の傍に、ヨロヨロとツヴァイが来た。


「我々が支えます。十四郎様は思うままにすれば良いのです」


 ツヴァイは穏やかな笑顔で言った。十四郎は肩を震わせた……胸の奥底から、何かが込み上げた。そして、暫くの間を開けローボは十四郎を見ないで呟いた。


「あの両手剣……何だか、お前やアルマンニの女と同じニオイがする」


 その言葉は、十四郎の胸の奥底を激しく揺り動かした。


________________



「何なのだ?!」


 マインシュタインは経験した事の無い戦いの中で、自らの”常識”が崩れ去るのを感じていた。彼等は強い、常識外れに強い……だが、何かが違う……戦場に於いて必須、否、この世界に於いての必然が……無かった。


「これは戦いではない……」


 呟いたマインシュタインは、周囲を見渡した。約半分は大の字になって失神しており、半数もビアンカ達に一方的にボコられていた。


「ここらで、引いて貰えませんか?」


 近付いて来た十四郎が、穏やかに言った。近くで見る十四郎には威圧感など微塵もなく、穏やかな表情は逆にマインシュタインに畏怖の念さえ感じさせた。


「何故だ?」


 マインシュタインは言葉を絞り出した。向ける言葉など、それしかなかった。


「私たちは、あなた方に無事に帰って欲しいだけです」


「我らは斥候! 捕まった時点で死だっ!」


 穏やかな十四郎の言葉を、マインシュタインは怒号で返す。しかし、十四郎は悲しい眼でマインシュタインを見た。そこに、やや息を乱したビアンカが近付き、アウレーリアも傍にやって来た。


 至近で見る二人の”女神”は、百戦錬磨のマインシュタインでさえ心拍を上昇させた。


「帰って下さい」


 ビアンカは真っすぐにマインシュタインを見詰め、それだけ言った。マインシュタインはまるで魔法に掛けれれた様に、撤退を告げた。


 帰る途中、マインシュタインだけでなく全ての兵士は、まるで夢を見た様にフラフラと歩いていた。



________________



「鬼斬りか……ゾクゾクした……」


 軒猿は怪し気に呟いた。


「そうか……で、これからどうする?」


 椅子に深く腰掛けた七子は、静かに言った。


「……あの女、凄まじい強さだ……この世のモノではない。が、何なのだ?……あんな、感じは初めてだ……」


 少し首を傾げ、軒猿は呟くが口角は上がっていた。


「あの女?」


 七子の問いとは違う返事だったが、七子の胸が一瞬チクリと痛んで、思わず聞き返す。


「銀の髪に、逆さ十字の紋章……良い眼だった……まるで虫けらを見る様にオレを見ていた……いや、違うな……生き物とさえ見ていない視線だった」


 その言葉は七子に溜飲を下げさせるが、軒猿は続けた。


「そうだ、もう一人。金髪の別嬪がいたな……あいつも強い」


「そうか……」


 七子は短く頷いたが、微かに手は揺れていた。


「で、何なんだ、あの戦い方は?」


「……命を奪わない戦い方、と、言ってる様だ」


 七子は吐き捨てる様に言った。


「ほう、それで殺気が無かったのか……」


 軒猿は口角を上げた。


「何故笑う?」


 七子の視線が軒猿に刺さる。


「あれは自らの意思なのか、それとも誰かの指示なのか……あんな化け物を従わせるのに、更に上の”力”が働いてるのか……どれ程……いや、どんな”力”なんだろうな」


 軒猿は怪しい視線を七子に向けた。その視線を受け流し、七子は壁を見た。


「まあ、オレには関係ない……しかし、ここは良い世界だ……維新の小競り合いなどではない……まさに、群雄割拠の戦国時代だ……楽しくて仕方ない」


 少し間を置いた怪しい軒猿の笑みは、アウレーリアやビアンカなど見ていなかった。部屋を出て行く軒猿の背中を見送り、それまで黙って傍に居たドライが呟いた。


「あの者は危険です」


 ドライは七子の横顔を見るが、僅かに唇の端を噛み締める仕草に胸の奥に痛みを感じた。



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