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異世界維新 大魔法使いと呼ばれたサムライ   作者: 真壁真菜
第五章 全盛
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嫉妬Ⅱ

 正対するビアンカに聖騎士団は動く事さえ忘れさせた。アウレーリアとは、また違った威圧感で圧倒していた。


「アイツのココロは既にボロボロだ……傷はまだ癒えてない……それどころか、更に大きな傷を増やしてる……」


 足元に来たローボは、ビアンカの顔を見ないで呟いた。


「そうですね……」


 ビアンカは瞳を伏せた。そして、十四郎の背中を見ながら呟いた。


「あの人……強い……でも……十四郎……」


「気付いたか?」


 ローボは上目使いでビアンカを見上げた。


「……多分、あの時と同じ……」


 少し震えるビアンカの脳裏に、十四郎が相手の命を奪った時の戦いがフラッシュバックした。


「どうする? お前が止めるか?」


 ローボは穏やかに言った。


「……止めなきゃ……でも……」


 ビアンカは独り言の様に呟いた。そして、俯いたままのアウレーリアに視線を移す。


『何なんだろう……胸の奥がモヤモヤする……この気持ち……何?……もしかして、嫉妬?……』


 ココロの中で呟いたビアンカは、少し身体を震わせた。


「ローボ……私、嫉妬してるのかな……」


 思わずビアンカが呟く。


「……嫉妬? 他人と自分を比べるって奴か?」


ローボがゆっくりと見上げる。


「……ええ、そう……かも……」


 ローボの低い声に、ビアンカは言葉を被せた……少し震える声で。


「それが、お前の本当の望みだ」


 ビアンカの顔を、ローボが見据えた。


「えっ?……」


 ローボの言葉は、ビアンカの中に一瞬の閃光を生み出し……思い切り背中を押した。


「……ありがとう……ローボ」


 ビアンカは声にならない位小さく呟くと、アウレーリアの前に立った。手を伸ばせば触れられる距離で、ビアンカはアウレーリアを見下ろした。


 そして、俯いたままのアウレーリアに強い口調で言った。


「十四郎は今、あなたの為に怒ってる。あなたの為によっ! 私は我慢出来ないっ!」


 アウレーリアが微かに動いた。近くに落ちていたアウレーリアの剣に、逆さ十字の紋章が真っ赤に輝いた。だが、アウレーリアは顔を上げなかった。


「顔を上げてっ! 十四郎を見なさいっ!」


 ビアンカが思い切り叫んだ。アウレーリアの肩が、一瞬ビクッと振るえた。更にビアンカはアウレーリアに叫んだ。


「十四郎を助けてっ! あなたしか出来ないっ!!」


 あまりの大声に、傍に居たノィンツェーンもビクッと背筋を伸ばした。そして、ノィンツェーンは、アウレーリアに向かって叫ぶビアンカの胸の痛みが、自身の胸に痛いほど伝わった。


 アウレーリアは、ゆっくりと立ち上がった。垂らした掌に、吸い付けられる様に剣が飛んで来る。その瞬間! アウレーリアの姿が消えた。


___________________



「これは、これは」


 瞬間移動! アウレーリアは十四郎と軒猿の間に割って入った。軒猿の二本の刀を同時に弾き飛ばし、アウレーリアは十四郎の前に出た。軒猿は口角を上げ、十四郎は驚いた表情でアウレーリアを見た。


「アウレーリア殿、大丈夫ですか?」


「……あなたは、戦わなくていい」


 アウレーリアは目を合わさず、小さく呟いた。


「あんたは、戦えるのか?」


 二本の刀を肩に担ぎ、軒猿は怪しく笑った。アウレーリアは無言のまま、軒猿が言うと同時に切り掛かる! その速さは受けた刀の音が後から聞こえる程だった。


 一瞬! 軒猿の顔が曇るが、更に速く距離を取ろうと後ろに跳ぶ! だが着地地点には、アウレーリアの剣が待ち受けていた。


 何とか片方の刀で受け、もう片方の刀を地面に突き刺しバランスを取る。そして、視線を十四郎に向けた。


「この女、本物だな……だが、あんたとは違う。殺気が違う……あんたとは、な」


 十四郎を見詰めたまま、軒猿は呟くとゆっくりと下がる。そして、軒猿の周囲の空間が歪んだと思うと軒猿の姿は陽炎の様に消えた。


「……ふう」


 十四郎は大きく息を吐くと、刀を収めた。ゆっくりと振り返ったアウレーリアは、顔を上げて十四郎を見詰めた。


「アウレーリア殿、ありがとうございました」


「……」


 頭を下げる十四郎に、アウレーリアは俯き加減で顔を背けた。その様子は、ビアンカの胸を締め付けた。そして、揚羽を振り上げると、聖騎士団に向かって駆け出した。


「どうするつもりだ?!」


 その背中にローボが叫んだ。ビアンカは背中で叫び返した。


「むしゃくしゃするから、ちょっと暴れて来る!!」


「そうか……」


 ローボは大きな溜息を付いた。


___________________



「何だ? 相手のヤツ、変な雰囲気だな」


 座り込むツヴァイの傍で、マアヤは呟いた。


「ああ、底が知れない……」


 先程の戦いを思い出し、ツヴァイは少し声が震えた。そして、アウレーリアに叫ぶビアンカの背中を居たたまれない思いで見詰めた。


「まあ、ヤツは魔法使いに任せて後の始末をするか……」


 マアヤ肩を鳴らすと、聖騎士団に視線を向けた。


「待て、数が多い!」


 その瞬間! アウレーリアが瞬間移動! あっという間に軒猿を圧倒する。そして、軒猿は下がると空間に消えた。


「何だ? あいつ消えたぞ」


 振り向いたマアヤが、キョトンとツヴァイを見た。そして、続け様にビアンカが聖騎士団に向かって突撃して行く!。


「あっ! アタシも行く!」


 満面の笑みでマアヤが飛び出す。


「ノィンツェーン!」


 ツヴァイが叫ぶと、苦笑いのノィンツェーンがビアンカに続いた。


「お前はココに居ろ!」


 叫んだココが走り出し、リルは既に物凄い速さで矢を射ていた。


「まあ、少し暴れたい様だ」


 傍に来たローボがツヴァイの横で呟いた。


「そうですね……」


 ツヴァイは溜息交じりに呟いた。その視線の先では、ビアンカが大暴れしていた……。



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