第99話 泉北ダンスパーテフェスティバゥ
ワイワイ…
ガヤガヤ…
ギャランドゥ…ギャランドゥ…
あれから一ヶ月が経った。
本来、ポーズトッポやみんながえぷしーたうんに赴いた次の日がダンスフェスだったが、そんなもんできるわけもなく。
壊れた町の復興、怪我人の手当て、ヴィルホーン連中の逮捕劇、そしてなにより…傷ついた人々の心のケアが優先である。
それが今や、地域の高校や障害者施設、ポーズトッポの面々が場を盛り上げているのだ。
こんなにも喜ばしいことはない。
キャーキャー!!!
ワーワー!!!
[さぁて!!!次のチームは…………ポーズトッポのアイドルのCHIZIREGEだぁぁぁー!!!]
パァァァァンッッッッ!!!!!!!
「イヤッホゥー!!!!!」
勢いよく、下から跳び上がるナトリ。
ワーワー!!!
ナトリーン!!!❤❤❤
ハァ!?ドウタントカメジムリナンダケド!?!
ヤンノカゴルァ!!!!
オモテデロヤクソオンナァァ!!!
ブチコロスゾオルァァァ!!!!!!!
賑やかな黄色い声援に包まれ、両手をあげるナトリ。
それはまだわかる。
気になるのは…………
「お前ら俺っち見に来たんだよなぁーーー?」
ハァァァァァァァァァイッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!
ノリノリアミーノである。
耳に手を当て、尋ねるように観客にパフォーマンス。
ズコー!!!
アレだけアイドルを嫌がっていた男とはとても思えない。
「よッッッッ!!!ツンデレエキスパート!!!ツンデレエキスパート!!!」
「ツンデレポイントも高けりゃアイドルポイントも高いんかい!!!」
大声を張り上げるのはなにも女性だけではない。
出店のたい焼き屋のヤンキーとフラットウッズモンスターも両手をメガホンにして応援している。
その周りには、トゲトゲ肩パッドの集団やスーツ姿の集団、そして警察たちが肩を組みはしゃいでいる。
仕事中なのだろうが、今日だけはいいだろう。
「はぇ〜、アミーノ変わったなぁ〜。それにグッズヤバイなこれ。めちゃくちゃ売れとるがな。」
楽しそうな銀之助。
隣にはパルム。
お互いにフランクフルトやら焼きそばやらを食べながら会場を練り歩いていた。
時間の問題か、ポーズトッポのアイドルグループは男女それぞれ違う舞台でパフォーマンスするらしい。
「よ〜っす!銀之助ぇ、パルムゥ!!!」
「お!!!クエスチョナー!!!グレート!!!こっちこっち!!!」
銀之助とパルムが2人を手招き。
「いやぁ、人が多くてかなわねぇな。待ち合わせとか無理だなこれ!しかし…嬉しい悩みだな…こりゃ。へへへ!」
クエスチョナーとグレート。
あのA級指名手配犯であるディザスター兄弟に命からがら勝利を収めたのだ。
治療を受けた後、銀河政府からスカウトされたが丁重に断っていた。
本業とヒーローショーがあるからと言って。
「にしても…パルムお前、マジでディラスってやつに会ったのか?」
「うん…2人は…地下で会わんかったん?」
首を横にふるクエスチョナー。
グレートもどうやら見ていないらしい。
パルム曰く、銀之助から連絡を受けすぐにトリスコーヒーを飛び出したようだ。
店番はモス子。
後ろで「モキュ!???!!?!」と声が聞こえたそうな。
恐らく「またかよ」的な意味だろう。
そしてえぷしーたうんに向かう道中、ディラスと遭遇したらしい。
しかし、自分を殺す目的で現れたとも思えないとのこと。
邪魔だてが目的だったのかなんなのか。
ディラスはパルムの血を舐め、満足そうに消えたようだ。
「……ってことは…ほかに見たやつは…サっちゃんか…。サっちゃんからも逃げやがったんだよなそいつ確か。」
「せやでぇ…せやから俺がサっちゃん見つけた時どれだけ怖かったか。白目向いて屁こきまくりながらウヴァー!!!大金どこいったー!!!て叫んでたんやからよ。俺そん時、肋とか骨折れてたから怖くて逃げたわ。」
「お前も逃げたのかよ銀之助。」
ダーハッハッハッハッハッ!!!!!
あの地獄が嘘のようである。
全員腹を抱え、思いっきり笑っている。
利用者も全員楽しんでいる…と言いたいが、ヴィルホーンに弄ばれてこの場にこれなかったものもいるのだ。
幸い、完全に精神が壊れたりパニックになったものはいない。
良くも悪くもマジックチョーカーのお陰である。
今はゆっくりと安静にしているのだ。
あの時、グラウンドにいた利用者たちはどう思ったのだろう。
「しかし…えぷしーたうんは解体処分か…。」
「しゃーないてグレート。運営してたヴィルホーンもクソヤバかったけど、施設は地下含めて呪われてるようなもんや。解体が一番やろて。」
銀之助の言う通り、運営会社を変えればいいというものではない。
あの地下での惨状。
どれだけ綺麗にしたところで、怨念が残る。
見てくれだけ良くしたところで、気持ち悪さが漂う。
長い時間をかけ、犠牲になった利用者たちと土地を供養していくしかないのだ。
「そうだな…それに、作業所がなくなった問題もC.Bが解決してくれたしな。」
「せやなグレート。アイツが、アプリコットちゃんが、サーカス団がおってくれて助かるわ。」
「通いにくさはあるだろうが、今は行政どもが必死にワープゲートを作ってるらしいな。」
そういうとクエスチョナーはタバコに手をかけた。
癖になってしまっているのだろう。
「兄ちゃん、こんな人が密集してる場所で喫煙か?」
4人が声の方を振り向くと、そこには車椅子に座るゴルズがいた。
珠雄が慣れた手つきで押している。
「アンタ…それに珠雄さんまで。」
「タバコ吸いたい気持ちはわかるけど、今はうるさいからの。吸うんなら、あっちのスペースやな。それに…兄ちゃんらにも感謝せんとな。」
あの筋骨隆々だった腕が、細くなっている。
ゴツゴツしていた手が一回り小さく見える。
見た目も随分と痩せこけてしまった。
そんなゴルズが手を前に出している。
クエスチョナーたちは頷き、それに応えた。
「ゴルズさん、心臓のほうは調子どないです?」
「おうマスター。お陰さんで良好や。まぁもう心臓ちゃうけどな。えっと…なんやったか。」
「超核式コアパルス、や。横文字は覚えにくいの〜ほんまに。」
ゴルズの代わりに答え、首を横に振る珠雄。
このコアパルスが、ゴルズの心臓の代わりを担ってくれている。
ゴルズがルナティックをぶちのめした後に銀河警察が乗り込んできた。
ルナティックは戦闘不能状態だったが、厳重に拘束魔法を何重にもかけられ連行。
ほかの幹部たちも捕縛済みだった。
そしてすぐさま救急車に運ばれたゴルズ。
救急隊員も警察もほぼ諦めていただろう。
なぜならば、ゴルズの心臓は止まっていたどころではなく、完全に破裂していたからである。
ほぼ仮死状態のまま緊急治療に入ろうとしたその時だった。
「キッシシシシ!!!現代医学と魔法じゃもう助からないのよネー!!!」
「だ…誰や君は!!!部外者がなにしとんねん!!!はよでていかんかいッッッッッッッッ!!!」
「アーララ!!!このSWRのマッディーであるバロリーヌ様をご存知ないとは〜。悲しくなるのよネー。」
それを聞いた医者は驚いた。
マッディーてなんだよ。
いや、そこじゃない。
バロリーヌの名を聞いたからである。
宇宙に名を轟かせるチンポプルプル賞を本来ならば、6回も受賞する超天才女性科学者の名前だったからだ。
しかし、バロリーヌは毎度毎度それを自ら蹴っていた。
なぜか。
本人曰く、「こんなもん貰っちゃったら、気軽に立ちションできなくなっちゃうのよネー。」というのが理由らしい。
女やぞ。
「ば………バロリーヌ博士……!!!貴方のような下品…いや、博士がなぜここに…。」
「SWRのメンバーだからなのよネー。てかそんなことどうでもいいのヨ。その人、もう細胞が諦めてるからどうにもできないヨ。」
「ッッッッ!!!!じゃあどうしろとッッッッ!!!」
「キシキシッッッッ!!!非合法だけど!!!アレ、やっちゃうのよサッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」
バロリーヌが白衣を広げると、次々に内側から機械が展開。
医者に対し、特別にタダで見せちゃうと手術を始めた。
およそ4時間程度。
手術は無事に完了。
「凄い…………なにがどうなってんかわからんけど…。」
「わからんのカーイ!!!いや、仕方ないのよサ。非合法だし。これを埋め込んだのよネー。超核式コアパルス。」
「それは……一体?」
「大雑把に説明すれば、これは小型核。」
「か……核!??!そんなもの体に埋め込んだら………!!!!」
「最後まで話聞いてよネこのハゲチャビン!!!これが本来の使い方なのよネー。核廃棄物は老廃物として血管を通して流れでるのよサ。それに、次第に細胞がコアパルスを通して普通の細胞じゃなくなる。でも…この人はダメージがあまりにもデカいのよネ…………。どこまで回復できるか…。」
バロリーヌは呟いた。
爆弾なんて発想は地獄の所業だと。
恐ろしいことを考えるものだと。
「仮に、コアパルスが壊れたらどうするんですか?それこそ危険なのでは………。」
「…………それ、心臓に穴空いたらどうするんですかって質問と同じなのよサ。」
白衣を整え、カルテを片付けバロリーヌは病院を後にしようとした。
慌てて医者たちは声をかけた。
なぜSWRのドクターであるバロリーヌがここまでやってくれるのかと。
ゴルズとなにか接点でもあるのかと。
すると、ニヤッと笑い意外な答えがかえってきた。
「お兄ちゃん。」
「…………へ?」
「前に、地球のトーナメントでお兄ちゃんが世話になった人がいるのよネ。その人の友人だから。そんだけ。」
そう言い終えると、歩きながら背伸びをしてUFOに乗り込んだ。
医者たちはそれを見送り、深々と頭を下げた。
「らしいぜ?パルムの兄ちゃんよ。」
「……………ぉえっ?俺?」
自分の顔を指差し、バカみたいな表情を浮かべるパルム。
なんのことだかわかっていない。
「トーナメントでバチクソに殴り合ったやんけ。ワニ野郎とな。」
「トーナメントで…………ワニ野郎……………もしかして…………。」
「縁ってのは面白いもんやな…。助かった…。感謝する。」
ゴルズは車椅子に座ったまま、深々と頭を下げた。
シワシワの腕がなんだか凛々しく見える。
パルムはニシシと歯を見せて笑った。
その時。
ダアアアアアアアアアアァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!
ブリリリリリリリバビビビビバリバリバリバリバリバリバリバリッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!
「ッッッッッッッッッッッッ!!!!!」
その場にいた男たち、いや周りの人間全ての細胞が最大音量で警戒音を鳴らした。
「アカン………この音と量………聞いたことあらへんレベルや………!!!!!!死人出るぞッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」
「うちのジェリーと………サーシャの嬢ちゃんか………………!!!!!!!」
「まさか…………サっちゃん………舞台の上で……………!!!!!今から見に行こうと思ってたのに……………!!!!!」
「そんなこと言ってる場合じゃねぇぞクエスチョナー!!!!!!逃げるぞッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!こっちにも来るッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」
ウワァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!
久々だからね。
仕方ないね。
このあと何人死んだのだろうか。
いや、誰も死んでへんけどね。
宇宙のワープゲートを通り、基地に戻る最中のSWRたち。
ゆっくりしたり魔法具を点検したり、それぞれの時間を過ごしていた。
「ちぇー!!!もうちょい地球居てもよくなーいソギハちゃーん。」
「次の任務があるから仕方ないだろう。ていうかちゃん付けやめろ。」
「旦那さんとこれはやったの?」
ニヤニヤしつつ、ショウヨウは人さし指と中指の間に親指を挟んだ。
ゴチンッッッッ
「あ、ごめん間違ってハンマーで叩いちゃった。最近DIYはまってるんだよね。」
悶えるショウヨウ。
タイトに指を叩かれた。
100%わざとだろうけど。
「………悪いなタイト…。もう少し…兄さんといたかったんじゃないかい…。」
「ううん…大丈夫。久々に会えて…喋れてよかった…。ありがとう隊長。それにバロリーヌも…。」
「キッシシシシ!!!私の科学力は銀河一なのよサ!!!下半身不随なんてコアボーンとパルスで十分!!!……………もっと生産できたら、いっぱい人治せるんだけどネ…。」
すこしさみしげなバロリーヌ。
後ろでショウヨウが叫んでいるが、無視である。
「モチェットさんとお話はできた?」
「あぁ…できた。離婚届はとっくに尻拭きにして捨てたぞって言ってやった。ニッシシ!!!また今度…飯食う約束もした。」
タイトは良かった…と微笑んだ。
誰も尋ねていないが、ショウヨウはスンシーと久しぶりに再会。
相変わらずウザい頭の悪い妹であるが、なんだかんだで可愛いのだろう。
と、言いたいが馬鹿にしたいがために会っただけである。
問題はそのあとだ。
「よぉ………魔抜け野郎ぉ……………。」
黒いオーラを身にまとったボーナが睨みつけてきた。
ちなみに【魔抜け】とは、魔力が低いものに対する差別用語である。
実の弟にこんなこと言うのは、仲がいいのか悪いのか。
「ん?エリートであるお兄様じゃぁん。アレだよね?確か…【底辺】のエリート!!!イーヒッヒャッハッハッハッ!!!!!!!」
「お前マジで殺すわマジで。」
「にーにーもニーニーもやめてよー!!!仲良くしてよー!!!」
おっぱいを揺らしながらスンシーは木遁で2人を叩き潰した。
ボーナ、再入院。
ショウヨウ、SWRにより回収。
「それとさ。」
うってかわり、真剣な表情のタイト。
「アイツら、全員あそこ行きらしいね。極刑でもいいと思うんだけど。」
「まだまだ絞れば情報出るかもしれないから仕方ないのよネー。痛みはなによりも分かりやすいカラー。」
絞る。
比喩表現ではない。
実際に絞り上げるのだ。
表に公表しない、裏の顔。
ヴィルホーンの連中が収監された場所。
天の川銀河で一番恐れられる【監獄惑星いんふぇるの!】。
大きさは木星の3倍。
A級とS級の犯罪者だけを取り扱う地獄のような惑星である。
そこにルナティック含む幹部たちは送られたのだ。
当然、深く関わった銀河政府関連のものたちもである。
ブッサイック官房長官はポテロンとメルトロンたちに拘束され、現在は留置所にいるがいんふぇるの!行きは確定している。
当の本人は毎日大も小も漏らし、泣きわめいたり急に笑ったりなどを繰り返し精神異常を起こしているらしい。
が、全て演技だと見抜かれている。
哀れなり。
「例の人はどうなったの隊長?」
「…………ガンテか。正直…どうなるかわからん。一通り話を聞き出せたから、今ごろ刑務所に送られているだろうな。あの男はいんふぇるの!行きじゃないみたいだ。」
「…………ゲルゥってやつは?」
「今追ってるらしい。」
「……………逃げたんだ。………宇宙って広いもんね。いい人もいれば、極悪人もいる。」
「…………………。」
「なんなんだろうね…ホントに…。」
全員心にわだかまりを抱いている。
しかし、そんなことばかり気にしていたら助けられる人も助けられない。
あのショウヨウでさえ、今真剣な顔をしているのだ。
次の任務が待っている。
それに備えよう。




