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スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
悪虐搾取組織殲滅編

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第98話 終わりにしようやゲス野郎

おもむろに起き上がったゴルズ。

全身を覆う闇。

ところどころ目玉のようなものがギョロギョロと蠢いている。


「あ〜、ひっさしぶりやわ…。どんな感覚かも覚えてへんし…手加減できへんどこれ。」


首を鳴らし、軽く柔軟。

ルナティックたちは不気味に思い、一斉に魔法を放った。

相手が動く前に仕留める。

それが出来れば…どれほど楽だろう。


バクンッッッッッッッッ!!!!!


「な……………!!!!!!」


消えた。

と、言うより【食われた】。


「おっ、せやせや…コイツ飲み込むんよなぁ…忘れてたわ。」


「なんだそれ…てか、お前なんで喋り口調変わって…………。」


「あ?あぁ、関西弁か?大阪生まれ大阪育ちのもんが、なんで今まで関東弁で喋ってたか不思議か?」


ゴルズ曰く、小学生の時に敵対していたヤクザ組織の集団に襲われたことがあった。

組の若頭である男をここで片付けてやろうと思ったのだろう。

その時周りには同級生の友達もいた。

外道タイプのヤクザは、カタギは狙わないなどという筋は持たない。

大の大人に殴られ蹴られるゴルズ。

瀕死の状態で発動したのがこの闇遁《あんとん》。

ヤクザたちは吹き飛んだが、同時にゴルズの心肺機能は停止。

すぐに病院に運ばれ、しばらくして目を覚ました。


「ゴルズ……ゴルズ……!!!」


泣きじゃくるアイズに抱きしめられ、やっと状況を飲み込めた。

そして両親と約束した。

二度とこの魔法を使わないこと。

そのためにゴルズは誓った。

強くならねば。

そしてその時、結びつけたのだ。

あえて関西弁を封じると。

次、自分が関西弁を喋るとき…それが約束を破るときだと。


「てなわけで…ほれっ。」


闇が伸びてきた。

増殖したルナティックを覆い、オリジナルの腕に触れた。


ズ……………


瞬時に手を引っ込めたルナティックだが、腕の先が消えた。

もちろん増殖体は飲み込まれ、跡形もない。


「だからなんだよ?んなもん再生すりゃ………………あ?」


戻らない。

消えた腕の先。

斬り落とされたわけでもなければ、抉られたわけでもない。

まるでそもそも最初からなかったように消えているのだ。


「再生できへんぞ。そもそも、消えたわけやないからな。」


「な……どういう意味だボケェエエエエェェェェッッッッッッッッ!!!!!!!説明しろや!!!!!!」


「多分やけど、最初から【なかったもの】にするんちゃうか?知らんけど。せやから細胞が負けを認めただのなんだのと、そんな理屈ちゃうんちゃうか?」


冷や汗が止まらないルナティック。

物体自体を消し飛ばすならば、虚遁というものが存在する。

しかし、ゴルズの闇遁はそもそもなかったものとする。

性質が違う。

ルナティックは後ずさりしつつ、頭をフル回転させた。


「禁術クラスじゃねぇか…………。」


「そらそうやろ………俺の命と引き換えなんやからよ。」


それを聞いたルナティックは不敵に笑った。

命と引き換え?

詠唱もしていなければ、印も結ばずにこの魔法なのだ。

当然の代償。

ならば…耐えればいい。

勝手に相手の寿命は削れていく。

それまで持ちこたえればいい。


「お前ら…時間稼げ。」


「は???」


ドズッッッッッッッ


オリジナルのルナティックが髪の毛を増殖体の体に差し込んだ。

髪の毛は神経と結びつき、まるでマリオネットのように無理やり動かしている。


「永久の闇に放たれち常世の不変ーーーー」


ルナティックによる詠唱が始まった。

ゴルズの目の前には大量の増殖体。


「さてと…飯の時間やぜ…。」


ゴルズの声に反応するかのように、闇は次々と増殖体に食らいついていく。

しかし数が多い。

オリジナルはブツブツなにか呟きながら、自分の血液で魔法陣を床に描いている。

なにをするつもりなのか。


「テメェクソオリジナルがぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」


バクンッッッッッッッッ


「自分すらも駒扱いかよッッッッッッッッッッッッ!!!!!死ねやクソゴルーーーーーー」


ガチンッッッッッッッッッッッッ


次々に飲まれていく増殖体。

ゴルズが有利に見えるが、当の本人は脂汗を流し肩で呼吸している。


「ハァ………ハァ………んやねん…まだ食わせろってか………燃費悪いわがまま野郎やな………。」


続けざまにルナティックたちを飲み込んでいくが、オリジナルの元まで闇が届かない。

伸ばそうにも、それ以前に自分に限界がくるだろう。


「之をもって、以下無常なりーーーーーー」


オリジナルの動きが止まった。


(………ッチ…やらせてもうたか…。)


「詠唱完了………虚遁・無極浄土ノ是空《むごくじょうどのぜくう》…。」


ルナティックの全身に真っ白なエネルギーが浮かび上がっている。

そして増殖体に対し「邪魔だぞ」と言い腕を払った。


ジュッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!


「自分までもかき消すか…ついでに本体も消えたらええのになぁ?」


「酷いこと言うなぁお前。詠唱なんざわざわざ時間のかかるめんどくせぇ魔法使ってんだ。死んでたまるかボケ。」


睨み合う2人。

増殖体は全て消えた。

闇と虚。

果たしてこの場を支配するのはどちらなのか。

互いの信念がぶつかり合った。






トボトボと歩く銀之助。

なんだか周りが騒がしい。

警察でも来てくれたのだろうか。


「…………………。」


自分の手を眺める。

この手で戦友を殴り倒した。

捕縛魔法をかける余裕もなかった。

気絶している相手の指をへし折っていくあの感覚。

気持ちが悪い。

しかし、そうでもしなければガンテはなにをしでかすかわからない。

銀之助は思った。

勝負自体は勝った。

だが…


「………………俺………弱いな…………。」


トーナメントで勝ち進み、敗北。

準優勝にすら届かなかったが、勘違いしていた。

自分は捨てたものではないと。

まだまだ戦えると。

実際に戦えてはいる。

だが、そんな話ではない。

今回のことでわかった。

自分はとんでもなく、ちっぽけな存在なのだと。


(人を殺した手でコーヒー提供すんのか…………!??)


「………………………。」


思い耽る銀之助。

自分だけなのではなかろうか。

自分だけが幸せになっているのではなかろうか。

それは果たして、許されることなのだろうか。


「…………考えても……しゃーない…わな。取り敢えず…みんなのとこ…行こう…。」


その後ろ姿はとても勝利した男には見えなかった。






「ジュウウウウウウルルルルァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


「キイイイイイィィィィィエエエエェェェェッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


ボスvsボス。

ゴルズとルナティックは正面から殴り合っていた。

お互いに纏った闇と虚。

互いが互いの魔法を消し合い、泥仕合と化している。


「ダラァァァッッッッッッッッッッッッ!!!」


ゴルズの正拳突き。

ルナティックは体を横にしてこれを流す。

そして右腕をゴルズの心臓目掛け貫手。

当たる直前に闇の目玉がギョロッッッと前に出た。

ルナティックはそのまま目玉を潰し、腕を引っ込めた。


「おーらどうしたよゴルズちゃん!!!動き鈍ってきてるんじゃねぇのッッッ!???!さっきまでの威勢はどこいったよ!???!食ってみろよオラァァァッッッッッッッ!!!!!」


「グブッッッッッッッッッッッッッッッ!!!」


ルナティックの膝がみぞおちに食い込んだ。


ガシッッッッッッッ!!!


「あぁ!???!」


「食い込ませたら………アカンやろて………!!!!!!」


ゴルズはルナティックの膝を持ち上げ、体重をかけ捻った。

そのときに鳴ったボコンッッッという音。

半月板が壊れた証拠だ。


「ガ…………………ッッッッッッッ!!!!!」


「続きいくぜ………!!!!!!」


壊れた膝めがけ、鉄槌を横から打ち込んだ。

金切り声をあげ苦しむルナティック。

まだまだいくぜと追撃を加えようとした時、またもや心臓の脈が大きく飛んだ。


「カ…………………!!!!!」


「………………へへへへ…ッッッッ!!!!!」


ニチャリと笑うルナティックは、ゴルズの顎に裏拳をかまし、ふらついたところに思いっきり虚遁のエネルギーをぶちかました。


ズッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!


ゴルズの腕が消し飛ぶも、また闇が集まり形作られる。


「いたちごっこ…なんて思ってねぇよなぁ?どう見てもお前が劣勢だぜ?だからなんべんも言ってんだろ…老いはクソ以下だって…………よおおおおぉぉぉッッッッッッッッッッッッ!!!!!」


顔面にドロップキックが炸裂した。

白目で宙を舞うゴルズ。

その際に闇が飛んできたが、ルナティックはこれを冷静に回避。


ズゴオオオオオォォォォォッッッッ!!!!!


ルナティックに狙いを定め、襲いかかる闇の波。

しかし、全て虚遁により無に帰していく。


「滑稽だなぁ!!???!俺が詠唱する前に腕消したのが誤算だわ!!!!!お陰で性質が少しわかったんだからよぉぉぉぉ!!!!!」


確かに、詠唱で虚遁を身にまとったのは腕を食われてからだ。

ただのゲス野郎では収まらないのがこの男である。

手のひらを突き出し、ゴルズに狙いを定め強力なエネルギーの塊を射出。

迫る闇を根こそぎ消し飛ばし、虚遁エネルギーの塊は破裂。

ゴルズに命中したか。


「ふぅ…力使いすぎたか。でもこれで完全に消滅しただろ。」


メゴギイイイイイイィィィィッッッッッッッッ!!!!!!!!!


ゴルズのデカい拳が顔面に命中。

闇は纏っていないので、素のパンチだろう。

深く顔面にめりこんだ拳は、ルナティックの前頭縫合を確実に打ち砕いた。

涙骨が皮膚を突き破り、鼻血もダラダラで先ほどまでの綺麗に整っていた顔とは大違いである。


「40年前の再放送じゃ。チャンネルはそのまま……………なッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


マウントポジションで執拗にルナティックの顔面を叩き潰すゴルズ。

このまま一気に畳み掛ける。

技術?

魔法?

練度?

そんなもの関係ない。

殴って殴って殴り倒すだけよ!!!


ガシッッッッッッッッッッッ!!!!!!!


「……………ッッッッッッッ!!!」


拳を掴まれた。

原型がとどまっていないグチャグチャの顔面で笑うルナティック。


「お前…だんだん拳の威力死んできてるぜ?」


ズタズタになった唇を動かし、ゴルズの体力の消耗を指摘。

確かに拳の威力がだんだんと落ちているのは事実。

そればかりか、本当のことを言うと息をするだけで精一杯なのだ。

もはや、今のゴルズは根性だけで動いていると言っても差し支えがない。


「関係…………あるかボケエエエエェェェェッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


ガバッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!


次の一手を振り下ろそうとしたが、ルナティックが裂けた口を大きく広げた。

白く光っている。


(ヤベ……………ッッッ!!!!!)


直後とてつもない虚遁が発射された。

間一髪でゴルズは回避できたが、ルナティックをマウントポジションから解放してしまった。


「さぁて………もう終わりにするか……。」


先ほど射出した虚遁がブーメランのように戻り、不気味に浮かぶルナティックの全身を覆った。

印を組んでいる。

最大魔力で消し飛ばすつもりなのだろう。


「…………………………。」


ゴルズは無言でそれを見つめていた。

頭に浮かぶは、他界した両親、アミーノ、モチェット、マヤ、ジェリー、ナトリ、ポーズトッポの面々。

そして…ここに至るまで協力してくれた泉北の住人や銀之助たち。

ゴルズは最期の印を結んだ。


「死ねや老害。」


ゴオオオオオオオォォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!


最大出力で飛ばされた虚遁の塊。

今までのものとは比べ物にならない大きさと消滅力を誇るだろう。


「お前もな…一緒に地獄行こうやルナティック。」


ドオオオオォォォォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!


こちらもこちらで最大出力の闇遁。

虚遁と闇遁がぶつかり、エネルギーの鍔迫り合い。

瓦礫などが巻き込まれ消滅するのはもちろん、空間にもヒビが入っている。


「死に腐れやクソゴルズウウウウウゥゥッッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーーーーーーーー!!!!!!!!」


虚遁の威力が増し、闇をかき消していく。

現在魔法による撃ち合いの割合。

ルナティックの虚遁が9。

ゴルズの闇遁が1。

誰がどう見ても押されているのは明白。

後がない。

ジワジワと壁に迫る踵を無理やり踏ん張り、ゴルズは前に出るもやはりエネルギーの勢いに負けている。


「…………………ッッッッッッッ!!!!!」


もう無理か。

頭にその言葉がよぎった。

そのときだった。


トン…………


「な…………………。」


ここにいるはずもない、アミーノたちが背中を支えてくれている。

それだけではない。

ポーズトッポ全員が自分を押してくれているのだ。

まるで光の粒子のように揺らめくアミーノたち。

幻覚か。

いや、違う。

その昔、惑星ドンケッツの図書館にあった古い書物を読んだことがある。

当時は小学生。

そんな難しそうな古い本に興味がでるはずもない。

なのになぜか手に取ってしまった。

今はその図書館は潰され、存在しない。

確かめる術は存在しない。

だが、確かに今ここに存在している。

これは間違いなく……………


ブワ……………


「テメェぶっ殺して、ポーズトッポの連中も全員皆殺し…………あ……?なんだ………………?」


ルナティックは困惑した。

闇が…闇遁が光っている。

光遁でも混ぜたのか?

いや、なにか違う。

ゴルズ自体が光っている。

なにがなにやら全くわからないが、気持ちの悪いものを感じる。

マズイ。

確実にマズイ。

ルナティックは虚遁に最後の力を込めた。


「さっさとくたばれやクソ老害がよオオオオオオオオォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーー!!!!!!!!!」


ドオオオオォォォォォォォンンンンンンンンンンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!















パラパラ………………

ドゴッッッッ………

ガァン………………………


「ハァ………!!!ハァ………!!!」


全身汗だくで息を切らすルナティック。

ゴルズはいない。

消えた。

完全に消えた。

消してやった。

目の前に広がるは、虚遁により奥深く消し飛んだ壁。


「ハハハ………ハッハッハ!!!ダーハッハッハッハッハッ!!!!!!!」


再生した顔を押さえ、気色の悪い高笑い。

結局自分が勝った。

最後の最後まで自分が正しかったのだ。

勝者こそ正義。

先ほどのゴルズの発光が少し気にはなるが、そんなこと気にしても仕方ない。


「あ〜………疲れた。まぁいいか…勝ったんだしな………フハハッッッッ。」


「勝ったってなんの話よ?」


ガシッッッッッッッッッッ!!!!!!


「ッッッッッッッッ!???!!!???!」


目を開き、驚愕するルナティック。

生きていた。

生きていやがった。

それだけではない。


グググッッッッッッッッッッッッ……………


「どうせまだなんか奥の手あるんやろなぁ思ってたんじゃ…お前のその頭の魔道具…それで虚遁の威力を高めてたんやろてな…。」


ルナティックはゴルズにチョークスリーパーをかけられていた。

丸太のような腕が首や喉に食い込み、しっかりと固定されている。


「グ……、ガガ…………………ッッッッッッッ!!!!!」


「でもその魔道具もさっきので壊れた…限界やったんやろ……俺ももう魔力あらへんけどな………。それはお前も同じこと………。最後は………なにを言うても肉体言語よ………。」


グググッッッッッッッッッッッッッッッッ


ヨダレを撒き散らし、ジタバタと暴れるルナティック。

コイツもコイツで魔力が底をついたのだろう。

引っ掻いたり抉ったりして抵抗しているが、ゴルズのチョークスリーパーのロックは微動だにしない。


「俺もこれが限界じゃ…………もうお前を殺すことも捕縛することもできへん………そういや…とある戦争で…相手のキャンプに突っ込んだ自爆兵がおったみたいや…………。」


「ガガガ………カ………ッッッッッッッッ!??!」


「その自爆兵…まさかまさかの衛生兵に首へし折られたあげく首チョンパされたらしいな………首へし折っただけじゃ………死なんもんなぁ……お前らヴァラヴァ星人は…………………!!!!!!」


ゴルズは窒息を狙っているのではない。

へし折るつもりなのだ。

ルナティックは白目をむきながら、爪でゴルズの右目を突き刺した。

しかし、ロックが解かれない。


「無理無理…んなもんじゃ外されへんっちゅうねん………。散々暴れたんや…もうええやろ…終わりにしようやゲス野郎。」


「ガ………………ガ……………ッッッッッッッッッッッッ!!!!!」


べゴギッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ






ドサッ……………………


ルナティックは倒れた。

完全に首がへし折れた。

ピクピク動いているのは痙攣だろう。


「………………。」


フラフラのゴルズ。

ポケットからタバコを取り出し、ライターをつけようとするも中々つかない。

ついにはガチッッッと音を立て石が潰れてしまった。


「ハァ………………マジかよ…………。」


ドサッッッッッッッッ


仰向けで大の字で倒れたゴルズ。

崩壊した天井を見つめる。

今まで色々なことがあった。

人様に迷惑をかけてきた。

暴力に走った。

金を貸した。

土地を奪った。

褒められたものではない。

自分なりには筋を通してきたつもりだ。

だがそんなこと、カタギからすればどうでもいいことだ。

なんやかんやで仲間には恵まれた。

両親も看取ってやれた。

なにより…最後に本当の意味で泉北の住人と話ができた。

身勝手で自己中心的。

とんだゲス野郎である。


「あー……………………ありがとうな………みんな……………悪い……………もう………行くわな……………。」


ゴルズは静かにまぶたを閉じた。


ゴルズvsルナティック


ルナティック 完全敗北

ゴルズ 勝利および死亡






「………………………ん?」


体を起こしたゴルズ。

なにやらいい香りがする。

空がクレヨンや水彩で塗り倒したかのような淡い色で覆われ、地面には見たことがない可愛らしい花が咲き乱れていた。


「…………………………。」


手のひらを見つめる。

なぜこんなところにいるのだろうか。

覚えていない。

ゴルズはゆっくりと立ち上がり、歩き始めた。


「ん?」


誰かいる。

男女の影。

しばらく見つめていたが、ゴルズは目を大きく見開いた。

その影も気づいたのか、こっちに向かって歩いている。


「ゴルズちゃん…。」


「親父…おふくろ…。」


両親だった。

そのとき、ゴルズは察した。

自分は死んだのだ。

そして思い出した。

ルナティックとの死闘。


「そうか…俺…死んでもうたんか…。…………………あの…さーーーーーーー」


ガシッッッッッッッッッッッ


言葉を遮るように、アイズが強く抱きしめてきた。


「ゴルズちゃん…ゴルズちゃん…よく…よく頑張ったね………。」


「……………………。」


アイズの瞳からこぼれる大粒の涙。

この間看取ったばかりだが、なんだか何百年ぶりに再会したような感覚である。

ゴルズは母を抱きしめ返した。


「よぉやったの…ゴルズ。」


「親父……おふくろ……悪い…約束破ってもうて…。闇遁…使ってもうた…。」


「ええんやでええんやで…みんなを…仲間を守るためやもんね…ゴルズちゃんはよくやった…。よしよし…。」


還暦を迎えた男。

大の大人が頭を撫でられている。

当然だ。

何歳になろうが、親にとって子供はいつまでも大事な大事な子供なのだ。

年齢なぞ、関係ない。


ス……………


アイズが手を差し伸べてきた。

もう戻れないだろう。

後ろを振り返るゴルズ。


「せやな…また…家族3人で…今度は………普通の………家庭に生まれたい…母ちゃん…父ちゃん。」


微笑むアイズと旗吉。

ゴルズは手を取り、前に進んだ。

姿形は見えずとも、魂は永遠である。

かならずまた再会できる。

複雑な形ではない。

それが円。

それが縁。

享年60歳。

ゴルズは旅立った。




















「とでもいくと思ったかクソガキャアアアアアアアァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


「!????!!!!??!」


ドガァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!


ゴルズはその場でアイズにオクラホマスタンピートをかけられた。


ズコー!!!


「痛ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッでぇえええええええッッッッッッッ!!!!!なにすんねんクソババア!!!!!!!」


泣きながら頭を押さえもだえるゴルズ。

いきなりやもんね。

そらそうよ。


「ゴルズちゃんッッッ!!!ヤクザやめて自警団になったんやろ!??!スタッフの面倒も見なアカンし、これからやることぎょうさんあるやろ!!!!!まだこっち来たアカン!!!」


腰に手を当て、人さし指をさすアイズ。


「やること……………。」


「母ちゃん全部見てるんやからね!部屋の奥の引き出しの鍵かかってる3番目の引き出し!!!ゴルズちゃんケモノとか服着たままが好きなんやね!!!母ちゃん知らんかったわ!!!あとヤンデレも好きなんやね!!!母ちゃんか!!?!母ちゃん見てきたからか!??!」


「んなもんまで見るなボケッッッ!!!!てか自分のことヤンデレって思ってたんかよ!!!!」


ズコー!!!


「おら、ゴルズ後ろ。」


旗吉の言う通りに後ろを振り向くと、地面に穴が空いていた。

キラキラと輝く粒子の穴。

ここから降りれば、戻れるのか。


「母ちゃんと父ちゃん…先に生まれ変わってるから…また…生まれておいで…。ずっと…ずっと待ってるから…。」


再び抱きしめられた。

とても優しく包みこんでくれる母の愛。

それを見守る父の愛。

ゴルズも強く抱きしめ返し、踵を返した。


「親父…おふくろ…また……何年後になるかわからんけど…………行ってくる…。」


ブワァッッッ……………


ゴルズは飛び降りた。

それを見送ったアイズと旗吉。


「ウウゥ………ウゥ………ゴルズちゃん………。」


アイズは膝から崩れ落ち、また泣き始めた。

そっと肩を抱き寄せる旗吉。


「また会える…大丈夫や…。10年後、20年後かもしれん…。でも…会える。………こっちで換算したら…何年になるんやろな…。」


「ウウゥ………2週間ぐらい………ウウゥ………!!!」


案外短かかった。


ズコー!!!






「……………………。」


ゆっくりと目を開けると、見知らぬ天井が広がっていた。

なにかと天井ばかり目にするゴルズ。

周りには泣きながら見つめるポーズトッポや銀之助たち。


「……………ただいま………。」


ゴルズ 生還

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