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スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
悪虐搾取組織殲滅編

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第97話 闇の間に溶け込んで

まるで伝説の剣豪のように禍々しい杖を振りかざすディラス。

白目だった眼球には瞳が蘇り、ニヤニヤと口角を上げている。

激痛で流れ出た脂汗は嘘のように引いていた。


ザンッッッッッッッッッッッ!!!


ゴウッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!


ズンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!


「フッハハハハ!!!どうだいどうだい!!!避けるので精一杯なのかな!???!いつまで踊るんだい現役女子高生さん!!!!!!」


と、口で言っているが内心焦っているのはディラスのほうであった。

あのディラスがなぜ?

攻めているのはどう考えてもこちらのはず。

それに本人も言っているが、ディラスは本気で斬りかかっている。

遊びはやめだ。

先ほどのボディブローでそれがわかった。

殺す。この場で片付ける。

あのC.Bに体を壊されても笑っていた怪物。

その怪物がなぜ焦っているのか。

答えは明白。

目の前で対峙しているサーシャだ。

ディラスはわかっていた。

口では「避けるので精一杯」などと煽っている。

しかし、逆を言えば……………


(当たらないんだけど……………)


サーシャは紙一重で斬撃を回避している。

目を真っ白に光らせながら。

その瞳の奥はなにを映すのか。

いやまぁディラスなんやろうけど。


「お前がC.Bが言うてたディラスっちゅうやつか。確か…とんでもない悪人らしいな。銀河超えて宇宙超えて指名手配犯とか。」


「そうだよぉ???それがどうしたのさ?正義の心燃えちゃってる感じ?また字のごとく紫炎を出すかい?左手残ってるもんねぇ?」


「………………………。」


「それともなに?僕がヴィルホーンとなんで繋がってるか考えてる?君みたいな頭の悪い女の子には理解できないと思うよ?」


「………………。」


「聞いてるの?ツンボになっちゃった?」


煽るディラス。

コイツ自身、見下したり舐めプをしたりと、とことん相手をおもちゃにするタイプではある。

今回もそうなのだろうが、なにか違う。

サーシャの血を舐めてからテンションの上がり具合が顕著に表れている。

なにかあるのだろうか。


「じゃあ無理やりにでも口を開かせようかな?道中、パルムくんに会ったんだ。」


「……パル兄に?」


「そう、どうやら連絡を受けてここに向かってたみたいだから。それで…どうしたと思う?」


「逃げてきたんか。」


「ハッハッハ!!!違う違う…逆だよ逆…。殺したんだ…。フフフ。」


腰に手を当て、前かがみで顔を覗く。

とは言え距離は取っている。

近距離ならば瞬速パンチが飛んでくる可能性があるからだ。

しかし、このセリフ。

本当なのだろうか。


「…………………。」


無言で仁王立ち。

天井を見上げるサーシャ。


「……………S級指名手配犯ってことは………」


「えっ?」


「お前ぶっ殺したら金入るんか。」


十分距離は取っていた。

にも関わらず、サーシャは一瞬にして顔スレスレまで接近。

ディラスはすぐさま杖を横一線に振り、サーシャの体に食い込ませた。

鮮血が飛び散る。


(こっっっっっわ…………!!!でも……来るのはわかってた………まさか賞金の話をされるとは思ってなかったけど…………。)


パルムについてなにも思わないのか?

でもそんなことはどうでもいい。

ディラスはサーシャを真っ二つにするために、力を込めた。


グ………………


(硬ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!)


動かない。

皮膚で止まっている。

青ざめるディラスをよそに、サーシャの手が忍び寄る。


(マズイってこれ…………!!!)


もう両断などと思っている場合ではない。

杖を引き抜き、空間魔法で逃げなければ。

こんな状況である。

座標軸が定まらないだの、安定しないだのそういった問題はどうでもいい。

とにかく逃げなければ。


(動かないし!!!!!!)


杖がしっかりとサーシャの横腹に食い込んでしまったのだ。

ディラスは口から粘ついたヨダレを吹きかけ、空間に穴を空けた。


(相手できるかこんなバケモンッッッッ!!!)


杖を捨て、焦りながらその穴に飛び込んだ。

降り立ったのはえぷしーたうん地下のどこか。


「ハァ………危なかった…。ホント悪魔だね…。でも取り敢えずこれで一安心。ルナティックどうしてるかな。死んだかな?アッハハ。」


ガシッッッ


「ん?」


後ろを振り向くと、なんとサーシャが血走った白目で閉じようとしている空間を無理やり押さえこちらに乗り込もうとしていた。


「お前………殺したら………トリスコーヒー………安泰…………やわ…………。」


「ウワァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!」






徒手での近接格闘。

激しくぶつかり合う拳と脚。

受け止める場面ではしっかりと受け止め、流す場面では綺麗に流す。

元軍人ということもあり、銀之助とガンテの殺し合いは本当に組手に見える。

これが殺し合いなど、誰が思うであろうか。


「シュッッッッッッッ!!!!!」


銀之助のローキック。

ガンテは膝を上げ、脛で受け止めようとした。

しかし、蹴り技が途中でガクンッと曲がり上段に変化。


「だろうな。」


ドガッッッッ!!!


クリーンヒット、と言いたいがガンテは蹴りの方向に体ごと首を流した。

勢いを利用し、威力を殺したのだ。


ヒュ……………


ガンッッッッッッッッッッッッ!!!!!


体を流した動きでガンテの左足の蹴りが銀之助に炸裂。

そのままガンテは銀之助をマウントポジションに持っていった。


「死ね。」


貫手が銀之助の顔面を狙う。


「両手空いてるやろがアホンダラッッッッッッッッ!!!!!」


両腕で貫手を受け止め、仰向け状態での膝蹴りがガンテの腎臓付近の背中に直撃。

怯んだ隙にマウントポジションから脱出し、銀之助は追撃でかかとおとしを食らわせた。


「ゴブッッッッッッッッ!!!!!」


「悠長に立とうとしてんなぁお前はよぉおぉッッッッ!!!」


立ち上がろうとしたガンテの脳天にアームハンマー。


グルンッッッッ


(しまっ…………!!!)


頭上からの攻撃を受けたガンテはそのまま一回転。

今度は逆にかかとおとしを銀之助の顔面に叩きつけた。

靴のかかとがめり込み、勢いよく鼻血を噴き出し銀之助はふらついた。


「鎖骨。」


グシャッッッッッッッッ!!!!!


「ガ………………ッッッッッッッッ!!!!!」


銀之助の左鎖骨が砕けた。

手刀を振り下ろされたのだ。


「肋。」


べゴギッッッッッッッッッッッ!!!!!!


「グッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」


ガンテの肘鉄。

左肋が2本逝った瞬間である。


「胸骨。」


ゴギャッッッッッッッッッッッッ!!!!!


「ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」


足刀が胸中心に入った。

とっさに銀之助が後ろに下がったお陰で砕けはしなかったものの、ヒビが入ってしまった。


「左大腿骨。」


これ以上壊されては本当に殺される。

銀之助はガンテの蹴りを受け止め、ドラゴンスクリューをかけた。

ドサッ!!!と大きな音を立て、倒れたガンテの足にアキレス腱固めを勢いよくかけた。


パンッッッッッッッ!!!


なにか破裂したような音が響く。

アキレス腱が断裂したのだ。


「グッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」


「もう片方も壊すぞ。」


銀之助の顔に影がかかる。

瞳は真っ黒に染まり、いつものあのひょうきんな男の表情ではなかった。

まるでそれは…


「人を殺した手でコーヒー提供すんのか…………!??」


「…………ッッッッッッッ!!!!!」


銀之助の瞳に光が戻った。

直後、ガンテの足払いでズッコケた。

顔面を蹴り飛ばされ、ガンテとの距離が20mほど開いた。

フラフラと立ち上がるガンテ。

治療魔法を断裂したアキレス腱にかけ、続けざまに印を組んだ。


「火遁・死滅玉《しめつだま》。」


ボンッッッ


小さな火の塊が手のひらから発射された。

本来はもっとバカでかい火球を飛ばす魔法。

銀之助に突かれたツボのせいで威力はほぼ死んでいる。

しかし、この程度とはいえ魔法が出せるということはそろそろ魔力がフルに使えるということである。


ドガンッッッッッッッッッッッッッッッ!!!


着弾。


「残り30秒。それまでに俺が殺せるか………?」


吹き飛んだ床がパラパラと砂ぼこりのように舞っている。

砂煙も上がっているが、そろそろ晴れるだろう。


「……………!!!!!」


砂煙が晴れ、出てきたのは土の壁。

とっさに土遁で防いだか。

ならば銀之助はどこへ…。

答えはわかっている。


「後ろ………かぁッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


ガンテの後ろ蹴り。


ビュンッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!


「な………、いない………!!!!!」


後ろ蹴りは空振り。

それどころか、銀之助自体いない。

ならばやつはどこへ。


ボゴ………


「下かッッッッッッッッッッッッ!!!!!」


ガンテは盛り上がった床に手を当てた。


「爆遁・死鳴らし《じならし》。」


ドンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!


部屋のちょうど半分程度。

衝撃が走った。

剥がれ、砕けたタイルの破片がパラパラと静かに宙を舞う。

爆遁で空いた穴でうずくまる銀之助。

体中ズタズタである。


「まさか床を掘り進むとはな…それにあの土遁…お前どこで覚えた…。そんなもん使えなかったろ。」


返事がない。

気を失ったのか、あるいは………

少しだけ思い耽るガンテ。

やはり心になにか引っかかるのだろうか。

その時である。


ボンッッッッ


「な…………!????!!!」


銀之助が白い煙とともに姿を消した。

これは紛れもなく【影分身】だ。

この技も使えなかったはず。

いつ習得したのか。

いや、そんなことはどうでもいい。

本体は一体どこに。


「この技はなぁ………………」


「ッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


振り返るガンテ。

目の前には銀之助の靴の裏。

この距離とスピード。

躱すのは不可能だった。


ゴギャッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!


「ゴバッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!」


その場からぶっ飛び、激しくゴロゴロと転がっていく。

顔面に後ろ回し蹴りがクリーンヒットしたのだ。

確実に鼻は折れている。

鼻血が止まらない。


「ガハッ………ハァ………ハァ………!!!クソ………こんの………!!!!!」


ボタボタ………ボタタ……


「俺の【友達】から教えてもらったんや。」


「ッッッッッッッッ!!!!!」


顔を上げた瞬間、銀之助の強烈な左フックがテンプルに炸裂した。

目の前がグワンと歪み、吐き気にも襲われる。


「土遁はたい焼き屋の兄ちゃんであるゼクス…影分身はタヌキJKのエメリィちゃん…。」


「クッソ………が………!!!!!ずっと土壁の後ろにいたのかよ………!!!!!先読み……しすぎた………か……!!!!!」


よろめくガンテ。

血走った目で銀之助を睨んだが、どこにもいない。


「な………どこ行っーーーーーー」


直後、顎に衝撃。

銀之助のカエルパンチ。

無論、これはケロンバに教えてもらった技である。


ドサッ!!!


「ヤンキーだ………JKだ……なんだのって………ふ、ふざけやがって…………!!!!!俺を……バカに……してんのかよ………ッッッッ!!!」


起き上がろうとしたが、目の前には既に銀之助がこちらを見下ろしていた。

無言で見つめ合う2人。

ガンテは倒れている。

銀之助は仁王立ち。

どちらが有利かは明確だった。


「…………………。」


「…………………。」


刹那ーーーーーーーー


「ッッッッ!!!」


ガンテが勢いをつけ起き上がり、手のひらを前に出した。

光っている。

ツボ押しによる制限はもう終わった。

思いっきり爆遁をかますつもりなのだろう。

迷いがない。


パンッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!


「な…………………!!!!!!!」


弾かれた。

いや、厳密に言えば魔力をかき消された。

覚えているだろうか。

銀之助の奥の手。

魔力無力化魔法。

ガンテの爆遁が無に帰した瞬間であった。

それだけではない。

銀之助の右拳が強く握りしめられている。


グググ………………


その拳は容赦なくガンテの顔面に振り下ろされた。






「……………………ん。」


ゆっくりと目を開ける。

目の前に広がる天井。

床はゴツゴツと、ところどころ崩壊している。

先ほどの銀之助の一撃で気絶していたのだ。


「痛ッッ……………。」


アキレス腱も痛ければ、顔面も痛い。

熱がこもっている。

恐らく、手当てのひとつもされていないのだろう。

当然である。

目だけを動かし周りを見渡す。

誰もいない。

痛みを堪えつつ体を起こした。

やはり誰もいない。


「…………………………。」


負けたのだ。

本当ならば完全に捕縛しなければならないところを、銀之助はガンテをそのまま放置しどこかに行ったのだろう。

無言のガンテ。

よく見ると指が全てあらぬ方向に曲がっている。

気を失っている間に、印が結べないようにへし折られたものと思われる。


「………………………。」


その時だった。


バタバタバタバタバタバタバタバタ!!!!!


大勢の足音が聞こえてきた。


「誰か倒れているぞ!!!」


「利用者か!???!」


「いや、ヴィルホーンかもしれん!!!油断するなよ!!!」


武装した男たちがガンテを囲う。


「お前…ガンテ…だな。」


「銀河警察か………………誰が通報したんだか…。」


「もう一度聞くぞ。ガンテで間違いないな?」


「…………………あぁ。」


もう好きにしろと言わんばかりにガンテは再び倒れた。

そして銀河警察に起こされた。

なんか起き上がりこぼしみたい。


「10月22日午前11時28分……現行犯で逮捕する。」


「……………………。」


「ほかのヴィルホーンの幹部と利用者はどこにいる。」


「……………多分幹部は全員ぶっ倒れてると思うぜ。利用者は………救出済みなんだってよ…。」


「……やけに詳しいな。」


「お前らの報連相がガバガバなだけだクソったれ……………。」


ガンテはその場で厳重に捕縛魔法をかけられ、担架に乗せられた。

疲れた。

そう呟き、静かに瞳を閉じた。


銀之助vsガンテ


銀之助 勝利


ガンテ 完全敗北






「オルルルルァァァァッッッッ!!!!!クソボケェ!!!!!!」


ゼクスが構成員を岩の拳で殴り飛ばした。

うず高くつもる構成員の山。

アミーノたちは肩で息をしていた。


「ハァ………ハァ………エキスパートなめんなよ………。」


「これで終わりかいの。」


ゼクスがパンパンッと砂ぼこりを払っていると、テレビなどでよく見る有名なUFOが着陸。

灰色のボディに青いライン。

サイドには、銀河印のマークが施されている。


「ん?お…銀河警察やんけ。」


UFOからゾロゾロと銀河警察が出てきた。


「あ?なんで俺っちたちを囲んでるんだよ。」


「申し訳ございません。念のためにお伺いします。アミーノさん…でお間違いないですね?」


「だったらなんだよ?やんのか?あ?」


「構成員たちは…………まさか…山になっている………アレ…ですか?」


「せやで。俺らだけでなんとかなったわ。ちと来るの遅いんちゃうか?」


ゼクスは胸ポケットから電子タバコを取り出し、一服。

アミーノたちもそれに続いた。

構成員1218人に対し、モット・ホイールズ6人、機動隊含む警察88人、アミーノを筆頭に下っ端ADたちポーズトッポ30人。

たったこれだけの人数で返り討ちにしたというのだ。

一人も漏らすことなく片付けれた理由。

それぞれのチームに結界魔法が使えるやつらがいてくれたからである。

汗を流す銀河警察。


「いくら下っ端構成員とはいえ…この数を相手に…。」


「そんなんええから早いとこ捕まえてくれやこのゲスども。あと外に逃げてる泉北のもんの手当てとかもはよしてくれ。」


「さっさと動けやボケども。」


果たして本当にこいつらを【一般人】と呼んでいいものか。

銀河警察たちは頷き、それぞれ班に分かれて動き出した。






バタバタバタバタバタバタ!!!!!!


「む!!!来てくれたゲロか!!!」


体のあちこちが破裂したベイルのそばで腕を組んでいたケロンバ。

きっちりとまるで教科書のような縛法をかけている。

とはいえ腹部から内臓と骨丸見えだからわざわざ捕縛しなくても…と思いたいが相手は【異星人】である。

油断はできない。

ここ大事ね。

ベイルを囲むものと、ケロンバに近づくものとで分かれた銀河警察。


「間違いない…科学者のベイルだ…。チンポプルプル物理学賞を取った学者がなぜここに…。」


「ヴィルホーンと繋がっていたんだろう。色々と調べる必要がある。」


「ご協力感謝します。ケロンバさんですね?ファニィさんとゴードンさんもご一緒で。」


頷くケロンバ。

そして手錠をかけられた。


「ゲロ?」


「秘密結社パラボラン・科学者ケロンバ。現行犯逮捕。」


「え?マジ?うそゲロ?????!!?!このタイミングで???!!??!」


ズコー!!!






辺り一面真っ赤に染まった床。

虚ろな目で倒れている一人の男。

ナトリ。

呼吸も浅く、死ぬ一歩手前である。


(母さん…父さん…タイト…親不孝もので…クソみたいな兄貴で…ごめんよ…。)


ナトリは静かにまぶたを閉じた。


ドタドタドタドタドタドタドタドタッッッッ!!!


「誰か倒れてる!!!はやくしろ!!!」


「コイツは………デイドリー!!!死んでる………む、向こうにも誰か倒れてるぞ!!!」


(銀河…………警察か………うるさいな……でも……良かった……………。)


………ちゃん……!!!

兄……………………!!!!!!

兄ちゃん!!!!!!!!


(タイトの声…………もう僕ちゃんも…お陀仏かな…。)






血塗れで壁にもたれかかるクエスチョナー。

足首から骨が突出し、全身が切り刻まれていた。

何をされたのか、片腕がところどころ食いちぎられている。

そのそばには、四肢と首があらぬ方向に折れ曲がったデスパが倒れていた。

白目で口から血を流している。

クエスチョナーの相方であるグレート。

両腕がへし折れ、とても整った綺麗な尻を丸出しにしてうつ伏せで倒れている。

対するエルクールの顔面は砕け、上半身と下半身がグチャグチャにちぎれていた。

これで生きているのだから恐ろしい。

壮絶な戦闘だったのだろう。


「お〜い、生きてるかぁ〜?」


ペチペチとクエスチョナーの頬を叩く男。

その度に触覚が揺れる。

SWRの刺繍が縫われた小綺麗な服を着ている。


「お…………ボーーー……ナ……なんで…ここにいんだよ…………。」


「あ?ボーナみたいなアホに見えるのかぁ?目見えて………て、お前目ん玉ねぇな…。俺はショウヨウだっての。」


「小葉…………歯磨き…………粉………。」


「何言ってんだコイツ?まぁいいや。取り敢えずおつかれさん。俺らが来たからもう安心しろよ。にしても………………この2人ディザスター兄弟じゃねぇか…なにもんなんだよお前ら…。」


ショウヨウ含むSWRたちはクエスチョナーとグレートの治療に取り掛かった。


プルルルルル…プルルルルル…


「もしもーし、ショウヨウだけどー?どした?………………マヤとジェリーの救助完了ね…。いいなぁー!!!俺そっちの女の子のほう行きたかったんだけどー!!!」


兄のボーナと違い、女好きなのだろう。

しかし、クエスチョナーの治療をしている姿を見れば相当な腕を持つことがわかる。

すんごいめんどくさそうな顔してるけど。


「………1人死んでる?ヴィルホーンのリストに載ってねぇのか?…………キメラ?なんだそりゃおい…気持ち悪ぃなヴィルホーン…。」


またなにかあれば連絡を寄越せと伝え、ショウヨウは通信を切った。


「…………………。」


崩壊した壁の向こうを見つめる。

ソギハがモチェットを抱きしめてはビンタを繰り返している。

やっぱりモチェットもう死んでるんじゃねぇかな。


「………ハハッ、ありゃ鬼嫁だな。……………あとはヘロシティーとルナティックのクソ野郎か…。」


その時であった。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……………………


地下にいる全員が異変を察知した。

奥の部屋。

とてつもないエネルギーを感じる。

ショウヨウや周りのSWR、銀河警察も冷や汗を流している。

なんなんだこの莫大なエネルギーは。


「………………親父……?」


「あ?どしたよエキスパート。親父って…ゴルズのおっさんか?」


無言のアミーノ。

どうやら外にいるポーズトッポたちにも伝わったようだ。

何が起きているのか。






「な………なんだよ……。」


拷問器具を持つルナティックたち。

銀河警察やSWRが到着していることも気づかずに、余裕ぶっこいてゴルズで遊ぼうとしていたらしい。

一人二人とルナティックがこの場を離れようと提案。

ゴルズなんざどうでもいい。

なんなら、血塗れで欠損しているゴルズからこのエネルギーがにじみ出ているのだ。

はやいところゴルズから離れなければ。


「ディラスの野郎がまだ来てねぇ。」


「言ってる場合かよ!!!俺らから行けばいいだろ!!!」


「なんでわざわざ俺たちが。向こうから来いや。」


「オリジナルがこんなアホとかやってられるか!!!俺らは行くからな!!!」


増殖体がゴルズの横を通り過ぎた瞬間。

ジュボッと音を立て消滅。


「な…………触れもせずに………!!!」


「あ〜あ…ヤクザは約束は守るって主義なんだが…………破っちまった…。悪いな…親父…おふくろ…。」


喉を抉り取られたにも関わらず、流暢に喋るゴルズ。


「もうヤクザじゃねぇし…いいか…。」


にじみ出たエネルギーが次第に黒く染まる。

それはジワジワと形作られ、斬り落とされた腕や削ぎ落とされた肉となる。


「な………なんだそれ………見たことねぇぞ………おい…………!!!!!」


「だろうな…お前にこれを見せるのは…最初で最期だ。」


パンッッッッ


合掌。


「闇遁・黒底混如無利心中《くろぞこまるごとむりしんじゅう》」









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