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スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
悪虐搾取組織殲滅編

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第96話 友として

「わかるか銀之助ぇッッッッ!!!!??!俺は騙されたんだよ!!!囲まれたんだ!!!」


目を大きく開き、口を開ける銀之助。

なにも言えなかった。

あの日、友情を誓い合い別れた男。

そんな男が味わった現実の闇。

知る由もなかった。


「お前みたいなバカでもわかるよなぁ???まさか【断わればよかった】なんて言わねぇよな?断れるわけがねぇもんなぁ!!!!!相手は防衛大臣!!!エレンのことも知ってる!!!それで俺はリストを見た!!!そんなんで断っちまったら、何されるかわかんねぇもんなぁ!!!!!」


その通りである。

向こうはその手のプロなのだ。

もし、リストを見たうえで拒否をしたとしよう。

まず狙われるのは、自由に動けないエレンだ。

つまり、電話に出てしまった時点でガンテは罠にかかってしまっていたのだ。


「それで…………お前は……………」


「おう、やったよ。殺した。全員殺した。」


「…………………………………。」


生い茂る木々。

その中で、ガンテはスナイパー式の魔銃を構えターゲットの様子をうかがっていた。

冷静とは程遠い。

嫌な汗を流し、目は泳ぎ、全身は震えていた。

無線機はゲルゥたちとつながっている。


「あ…………あの………。」


[どうした?]


「あの………本当に………あの子…あの家族………殺さなきゃダメなんですか…………?」


[当然だ。中核派の親族だからな]


「いや………あの………あの……女の子…………笑顔で…………た、楽しそうに…お母さんと…あ…あ…遊んで……遊んでる…だけ…な、なんですけど…………。」


[構わん、殺せ]


「庭で…ボール…け、蹴って…あ、遊んでるんです…。」


[殺せ]


「ほ……ほ、本当に………こ、殺さなきゃダメ……なんですか…………?」


[エレン]


弟の名前。

ただ、名前を呼んだだけ。

それだけで、何が言いたいのかは明白だった。

ガタガタ震える体と心を無理やり抑え込み、ガンテは引き金を引いた。


ドサッ………………


女の子の側頭部からドクドクと血が流れ出す。

さっきまで、母親と楽しく笑顔でボール遊びをしていた女の子。

それが一瞬で物言わぬ屍と化した。

悲鳴をあげ、そばに駆け寄る母親。

ガンテは続けざまに引き金に指をかけた。


[よくやった]


「……………………………………。」


世界が壊れたような気がした。






ガンテは10人、20人…………80人とリストに上がっていた人間を消した。

散歩をしている仲睦まじい老夫婦。

生まれたばかりの赤ん坊を抱く夫婦。

誕生パーティをしている家族。

全員殺した。

基本は狙撃銃による暗殺。

しかし、土地などの問題で狙撃できない場合ももちろんあった。

その時は直接乗り込み殺す。

時に心臓を貫き、時に目をつぶし、時に首を切断した。

そして遂に………ターゲットを全員暗殺した。

計200人。

任務を終えたガンテは、ゲルゥの元を訪ねた。


「次の任務は?」


「よくやったガンテ、素晴らしいよ。一人一人ターゲットを片付けた時にも振り込んだが、また改めて報酬を支払うつもりだ。」


「次の任務は?」


「しかし、ずいぶんとやつれたな。目の下のクマは大きい、頬も痩けている。唇もカサカサだ。よく頑張った。もう下がっていいぞ。」


「次の任務は?」


「これで終わりだ。今後会うこともないだろう。ゆっくり休むといい。」


「次の任務は?」


「…………ハァ…、元軍人であろう者が情けない。壊れたか。もう用済みだ。金は支払ったんだ。どこにでも行けばいい。」


ゲルゥは踵を返し、どこかに消えた。

その場に残されたガンテ。


「…………………次の任務は?」






その後、ガンテはエレンと過ごしていた。

ゲルゥから支払われた報酬合計は2億。

あまりにも安すぎる。

しかし、これだけあればエレンの介護費用や自分の薬代に充てられる。

それでまた仕事をしよう。

そう思いつつ、ガンテは疲れた体を癒すために目を閉じた。

ゆっくりと働き出せばいい。

今は心身ともに休みたい。

そしてそれは一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月と続き、最終的に一年が過ぎた。


「なぁガンテ…。」


エレンが心配そうに声をかけてきた。

ガンテは顔を上げ、不思議そうな顔でこちらを見つめている。


「どうした………?腹………減ったか…?」


「いや…そうじゃなくて…………飲みすぎじゃ…………。」


ガンテの周りは、大量のゴミと空き缶で溢れていた。

度数の高い缶ビールや高級ワインのビンの山。

ここは治安があまりよくない地域のアパート。

近所も似たようなものなので、悪臭などのクレームは一切ない。

大家からすれば、金さえ払ってくれたらそれでいいのだ。


「あー、気にすんなよ…………大丈夫だから……………。」


「そっか………あの…さ。話があって…。」


「……………?」


「この前、2人で買い物行っただろ?それでガンテだけトイレ行ったの。その時に声かけられてさ…。」


「声……………?誰だ…?誰に声かけられた???変なヤツじゃねぇだろうな…!!!お前を唆そうとしてるヤツじゃないだろうな!!!!!!」


急に立ち上がり、エレンの両肩を強く揺さぶるガンテ。

目も表情もなにもかもが異常に見える。


「大丈夫だって!!!落ち着けよ!!!取り敢えず最後まで聞いて欲しいんだって!!!」


「あ……………すまん…。で…なんだ?」


「作業所って知ってるだろ?ほら、障害者が働ける場所。そこに誘われたんだよ。なんか最近勢力伸ばしてるいいところらしいんだよ!【えぷしーたうん】って言うんだけどよ!」


「えぷしーたうん…ねぇ…。」


ガンテはボサボサの髪の毛をクシャクシャとかきながら、冷蔵庫のビールを手に取った。


「別に行かなくてもいいよ。俺が働くから。」


「…………ガンテばっかに任せるのも嫌なんだよ。それに…もう貯金も100万切ってるし…。」


「…………………。」


報酬の2億。

それが今や100万もないという。

エレンの介護費用、ガンテの薬代、家賃、生活費、家電などに使ってきたから減るのはわかる。

なぜここまで減っているのか。

高級ワインや安酒に使ったからか?

もちろんそれもある。

しかし、決定的なのが…ガンテは【ギャンブル】にハマってしまったのだ。

それで一気に貯金を溶かしてしまった。

このままでは兄弟共倒れ。

ならば、作業所の話に乗らないわけにはいかない。


「しかも、そのえぷしーたうんってとこ!支援員も募集してんだよ!ガンテも働けるかもしれねぇんだよ!」


「支援員………ねぇ……。俺そんなんやったことねぇし…。」


「大丈夫だって!資格取得支援もあるし、なによりオープニングだから!一緒にやろうよ!」


「…………………………。」


考えるガンテ。

どうせ行っても断られるか、続かないだろう。

しかし、エレンにとっていい職場かもしれない。

あまり乗り気ではないが、行くだけ行くことにした。


「よし……やるか。」






「そこから先はいらねぇわな?わかるもんな?利用者から成分抽出して、ヤクザども消して、お前を殺そうとしてる。」


「………………わかった………。苦しいのに…辛いのに…そこまで喋ってくれてーーーーーー」


ドバアアアアアアァァァァァン!!!!!!


銀之助の右鼓膜に痛みが走る。

キーンという耳鳴り、裂けた右頬。

爆遁を向けられたのだ。


「次は当てるぜ?」


「グ……………完全に油断してたぜ………。でもよ………威嚇射撃で済ませるとは………やっぱりお前優しーーーーー」


痛みを堪えつつ、銀之助が目を開けると超至近距離までガンテは接近していた。


「次は当てるっつったよな?」


またも爆発音が鳴り響いた。

煙がモクモクとあがる。


「……………………。」


ゆっくりと後ろを振り向くガンテ。


「足に魔力を集中させたのか…。」


「ハァ…ハァ…マジでお前今の殺す気やったやろ………。」


「最初からそう言ってるじゃねぇか。殺すってよ…。」


銀之助の方に体を向けたガンテ。

その時であった。


ピキーーーーーーン………………


「………………………。」


手のひらをじっくりと見つめる。

突かれた。

あの一瞬。

たったあの一瞬で、ツボを突かれたことを察したガンテ。


「…………ツボを突きやがった…流石だな…お前。」


「いや、お前わざと動かんかったやろ…。あんな簡単に突けるかい…………!!!」


「わざと?なぜ?」


「それはお前が…………………」


言葉が途切れた。

本当は「殺す気などないから」と言いたかったのだろう。

銀之助はもうわかっていた。

ガンテが殺すだのなんだのと強い言葉を使っているせいで、強がっているものとばかり思っていた。

違う。

ガンテは壊れている。

あの時、手を差し伸べたら瞳に光が戻った。

まだ助けられる。

そう思いたかった。

たまたまこちらに戻りかけただけだ。

今は、顔を見ればわかる。

かつて、爆撃隊として敵軍をまとめて吹き飛ばしたあの時の顔なのだ。

ツボ突きを避けなかったのも、避けれなかったからではないだろう。

理由はわからない。


「経絡秘孔の突きが浅いな。これなら2分もあれば回復する。」


「やろうな…。」


「………………。」


「………………。」


銀之助は確信した


「もう…お前を助けられる道が見えへん。」


「………………。」


本当の意味でガンテを助ける方法は


「覚えてるか…懐かしいよな…。惑星解放軍で、衛生兵やのにお前と訓練の一環で組手やらされたこと。」


「懐かしいな…アレ確かちょうど1分半だったな。ツボ突きから会話を挟んで…そろそろ30秒経つか…。」


友として


「……………………。」


「……………………。」


殺してやることだと


「ッッッッッッッッッッッッ!!!」


「ッッッッッッッッッッッッ!!!」


ズガッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!


2人の蹴りがぶつかり合った。






「お〜?どした?床とキスするのが趣味だったりする感じ?」


ゴルズは増殖したルナティックに蹂躙されていた。

後頭部を足で押さえつけられる血まみれのゴルズ。


「なんか言えや老いぼれ?認知入ったか?あ?」


「こ…………か……………。」


「あ???」


「この床…………Pタイルか…。掃除はしやすいが…滑りやすい…。利用者のことを考えたら…衝撃吸収の……フロアタイルにするべきじゃないか………?」


ブチッ


「…………そうかいそうかい、それはそれはご親切にどうもッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」


オリジナルのルナティックの蹴りがみぞおちに刺さった。

ゴロゴロと転がり壁にぶつかるゴルズ。


「ゲホッ…ゲホッ…包帯血まみれじゃねぇか…。クソったれ…これシルクのいいやつ使ってんだぞ。」


「怪我したわけでもねぇのにずっと昔から包帯顔面に巻きやがって。厨二病かテメェはよぉ。」


「俺が厨二病ならお前は極悪病だな。」


シュバババッッッッ


素早く印を結ぶゴルズ。

この増えまくったルナティックたち相手をどう処理するつもりなのか。


「土遁・地獄沼。」


ドロォッッッッ


ルナティックの足もとが一気にぬかるんだ。

底なし沼。

厳密に言えば底あるんだろうけど。


「アホか老害。」


床に足を取られる前に、全員が高く跳んだ。

いや、飛んでいる。

背中の肉を裂き、まるでコウモリのような翼が出てきたのだ。


「水遁・緋弾玉《ひだんぎょく》!!!」


続けざまに放たれた緋色の水玉。

ルナティックは当然のように回避。


「雷遁・雷拳骨!!!」


ゴルズの連続雷パンチ。

直接当てずとも拳状の電気の塊が、空中のルナティックたちを狙う。


「遅い遅い遅い遅いッッッッ!!!!!寝てんのかテメェよおおおおぉぉ!!!!!!」


「バラけろッッッッッッッッッッッッ!!!」


パァァァァンッッッッッッッッ!!!!!


「ッッッッ!???!!!」


飛んできた雷拳骨を避けようとしたその瞬間。

周りの緋弾玉が破裂。

大量の水がドバドバと振りかかる。

それだけではない。

周りに薄っすらと霧がかかっている。


(なるほど…これで雷遁浴びせるつもりか…猿知恵もいいところだ。)


「この程度どうにでもできんだよボケッッッッッッッ!!!!!あんまり俺のことバカにすーーーーー」


ジュゴオオオォォ!!!!!!


ぬかるんだ床が粘土のように全身に絡みつく。

周りの水分を吸収し、次第に硬くなる地獄沼。

そして雷拳骨が被弾。


ビリリリリリリッッッッッッッ!!!!!


確かに相当な電撃だが、これをトドメにするには威力がまるで足りていない。

まだなにかあるはずだ。

ルナティックたちがゴルズの方を見ると、長めの印を組んでいる。

高い魔力を練っている証拠だ。


「テメェその印…火遁…じゃねぇ………!!!!!」


「御名答………!!!この部屋ごと吹っ飛ばしてやらぁ………!!!」


「お前ボケたのかよ!!!んなことしたらテメェも吹き飛ぶだろうが!!!」


「関係ねぇな………。」


パンッッッ!!!


両手を合わせるゴルズ。

正真正銘、これで吹き飛ばすつもりなのだろう。

ルナティックは全員青ざめた。


「くたばれやクソ外道………!!!炎遁ッッッッッッッ!!!!!心中爆ーーーーーー」


ドクンッッッッッッッッッッッッッッッ


「……………………ッッッッ!!!!!」


目を大きく開き、脂汗が流れるゴルズ。

心臓に激痛が走った。

魔法を使いすぎたのだ。

それも、多種多様な魔法を発動し維持しながらである。

還暦を迎えた体を酷使した結果である。

火遁を超える炎遁。

体の負荷は当然重い。

ゴルズの心臓が耐えきれなかった。


シュウウウウウ…………


ルナティックを拘束していた魔法が全て解かれた。


「ほぅら…老いは嫌だろ?」


ガッッッッッ!!!


「ゴブッッッッッッッッ!!!」


「いや〜!まさかお前の耄碌に助けられるとは思ってなかったぜ!」


気味の悪い笑いが部屋に響く。

ゴルズはもみくちゃに四方八方から痛めつけられた。


「アレやろうぜ?ザン・ン・コーブェ。」


「おっ、いいねぇ〜。やるかやるか。」


「な……なんだ……そりゃ…………。」


「あ?知らんのかい。惑星ザンコックの………まぁやってみるのが早いわな。地球にもあんだろ?確か……………凌遅刑だったかなぁ〜?」


ニチャアとヨダレをこぼすルナティック。

口寄せでなにやら鞭のような刀を取り寄せた。


「ゆっくりと体の肉を削ぎ落としていく、それはそれはすんばらしい処刑法。」


ズバッッッ!!!


グヂュッッッッッッッ!!!


ブジュッッッッッッッッッッ!!!


意識が飛びかけるゴルズ。

周りに自分の肉が宙を舞っている。


「最後は顔面かな。」


ゾブッッッッッッッッッッッ!!!!!!!


左顔面の皮膚が削がれた。

血溜まりの床に沈むゴルズ。

辺り一面は真っ赤に染まっていた。


「お?血まみれだけどお前滑ってねぇじゃん。Pタイルでもよかったんじゃなぁい?」


ダーヒャッハッハッハッハッ!!!!!


「あ〜おもしろ…。そろそろ殺すか。」


「ん〜、そうだな。にしてもアイツらマジで遅ぇな…どうしようもねぇクズどもでボスは困るわ…。」


オリジナルのルナティックが鞭刃を構え、ジリジリと近寄る。

ゴルズは増殖体に押さえつけられているので動けない。

いや、それ以前にそもそも動けるのだろうか。


「長い因縁だった…て、言いたいところだけど…なんかあっさりした最後だな。じゃ………死ね。」


最後の一撃。

武器を振り下ろした。

その瞬間。


ズッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!


「あぁ!???!!!」


ゴルズの血が次々とルナティックたちを貫いた。

血遁である。

それだけではない。

影遁でオリジナルをがっしりと掴んでいる。


「血塗れにしてくれてありがとな。」


ビキキキキキキ…………バキキ………


ゴルズの角に血が集まる。

そしてそれは禍々しくもたくましい形へと変貌。


「さっさと死ねばいいものを………気持ち悪ぃなテメェよオオオオオオオオォォォォ!!!!!!」


「お前にはわからんか………ドンケッツ星人の…………魂ってもんがッッッッッッッ!!!」



床を蹴り飛ばし、ド腐れ目掛け突進。

バラバラにしても増殖する。

細胞と魔法由来の能力だろう。

ならば、ぶっ刺して内側から血遁で完全に埋め尽くす。

そうすれば増殖体も消えるはずだ。

体はもう限界を迎えている。

いや、とっくに超えている。

ドンケッツ星人の誇りである黄金の角。

この魂を相手にぶっ刺してやる。

これだけだ!!!


「トッポ・オブ・ポーズハリケエエエエエエエエェェェェンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


ドズッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!






「………………………!!!!!」


「悲しいよなぁ…一昔なら…今ので俺は死んでた。」


ビキキキキキキ………


先端部分が少し刺さっている程度。

ゴルズの角はガッシリと受け止められていた。

そしてなにより、角が宝石のようにキラキラと輝いている。


「俺よ、幹部の技全部使えるんだわ。これはキメラのドブス女の技。」


ビキキ……バキキ…………


「ドンケッツ星人の魂?…………アッハッハッハ!!!笑わせんなや!!!この角…最大の武器にして…最大の弱点だろうがよおおおおぉぉぉぉ!!!!!」


バキンッッッッッッッッッッッ


ガシャアアアアアアァァァァン!!!!!


粉々に砕け散った角。

断面からドバドバと血が流れ出る。

ゴルズは角を押さえ、激痛でのたうち回っていた。

ドンケッツ星人の角。

硬さはダイヤモンドの50倍。

衝撃にも強く、一族の誇り。

しかし、同時に弱点でもあった。

神経がギッシリと詰まっているのである。


「あ?」


ゴルズが震える体でなにかを取り出した。

内ポケットに入れていた魔力ドリンク。

そうだ、これがあるのだ。

決して卑怯くさい等の理由で飲まなかったわけではない。

その暇がなかったのだ。

とてもありがたいことに、ペットボトルに入れていたからか壊れていない。

血走った目でゴクゴクと飲み干した。


「……………………………。」


違和感。

おかしい。


「いい表情浮かべるねぇゴルズちゃん。そらそんな顔にもなるわなぁ?だってよぉ〜…………」


ルナティックの言うとおりだ。


(な………………治らねぇ………………。)


細胞が一切修復しないのだ。

つまりこれは…細胞が【諦めた証拠】。


バッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!


関係あるか。

ゴルズは飛びかかった。

今地下で戦っている仲間たちには申し訳ないが、ゴルズは最初から生きて帰れるなどと思ってはいない。

死なば諸共。

仲間はいい。

どうか生き延びて地上に戻って欲しい。

自分は恐らくルナティックと邂逅するだろう。

そして実際そうなった。

差し違えてでもコイツを地獄に道連れにする。


「老いってのは…悲しいもんだよホント。」


ドズッッッッッッッッッッッ


ゴルズは両腕を斬り落とされ、喉を抉られ、胸に風穴を空けられた。


ドサッ………………………






「ルズ…………ゴルズ…………!!!」


「ゴルズ……!!!しっかりせんかい!!!!」


なんだ………おふくろか…

懐かしいな…

確か…俺が小学生の時か…

マジで死にかけたもんな…

親父もそんな泣きそうな顔すんなよ…ヤクザの親分だろ…

……この間…逝ったんだもんな…2人とも…

そんな怖い顔すんなよ…

泣いた後に怒るなよ…忙しいな…

ちゃんと看取ったんだ…親不孝じゃねぇだろ…

そんな怒んねぇでくれ…

また………そっちで……

だから………

悪い………親父……おふくろ…

俺もそろそろ…………



そっち行くわな


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