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スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
悪虐搾取組織殲滅編

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100/102

第100話 悪夢の予感!!!

「…………………。」


銀河警察のUFOの中。

ガンテは閉じそうな瞳で手錠を嵌められた手を見ていた。


「まだ刑務所まで時間がかかる。……………大変………だったな。」


隣の男が優しく話しかけてきた。

ガンテはただの殺人鬼ではない。

極限まで人生を壊された男なのだ。

確かにやってしまったことは反省しなければならない。

罪を償わなければならない。

だからこそ、警察は気を使っているのだろう。

ガンテは、加害者であり被害者なのだから。


「………………………。」


「弟さんは…一旦精神病院に入るらしいな。いいのか悪いのか、例のマジックチョーカーで精神自体は落ち着いてるみたいだが。」


「…………………えぇ…。」


「…………………また会える。」


ガンテはなにも答えなかった。

そしてゆっくりと目を閉じた。

終わったのだ。

なにもかも。

今はなにもかも忘れて眠ろう。

そうして、意識が少しずつ途切れていった。






「………………………あ?」


なにが起きたのだろう。

UFOが激しく横転している。

隕石にでもぶつかったのだろうか。

中にいるガンテも激しく揺さぶられ、衝撃が走っているがなにも感じられない。

不思議な感覚だ。


ドガァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!


「………………痛つ……。」


小惑星にでも墜落したか。

手錠が壊れている。

頭部に触れると、流血していた。


「な…………お前なぜここーーーーー」


途切れる銀河警察の声。


ザシュッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ


ゴトッッッッッ


ゴロ……………


なにがなんだか。

なんで目の前に、さっき隣にいた警察の生首が転がっているのだろう。

驚きもしない。

恐怖もしない。

あぁ…自分は本当に壊れてしまったんだ。

ヒトデナシだ。


「いやぁ〜〜〜〜〜、本当に弱っちいね君ら。どんな気持ちで警察になったわけ?」


警察の体の一部が宙を舞っている。

さっきからなんなんだろうか。


「元気ぃ?ガンテく〜ん。」


「お前…………ディラス…。」


「いやぁ〜散々だったよね。僕はJKのバケモンに追いかけられて、ルナティックは無様に負けて、ヴィルホーンは実質解散…。そして…君は町田銀之助に負けた。」


「……………………殺すのか…俺を。」


「い〜やいや!!!とんでもない!!!改めて、スカウトしに来たのさ!!!」


「スカウト…?」


「そ、スカウト。そもそもヴィルホーンってなんの組織か知ってる?そこから話したほうがいいかなって。」


「銀河政府の一部と繋がってた搾取組織だろ。そんなもんわかってる。なにを今更…。」


ニヤニヤしながら目を閉じ首を横にふるディラス。

警察の死体を蹴り飛ばし、その上にドサッと座った。


「う〜ん、△かな。ヴィルホーンの上に銀河政府がいた。これは確かに事実。それだけだと思う?」


「…………何が言いたい…。」


「銀河政府の上に…組織があるとしたら?」


「……………………宇宙政府か…。」


宇宙政府。

銀之助たちがいる宇宙は銀河政府が最高機関だが、別の宇宙には銀河政府を超える最高機関として存在する場合がある。

別の宇宙からの関与か。

そう思っていたが、ディラスはまた首を横に振った。


「上だよ…上。」


「上……………?」


「まぁいいや。これはあとあと説明するよ。いずれわかるし。で〜、銀河政府たちがやろうとしていたこと。コスモトニンの抽出だったり、障害者の口減らしだけだと思う?」


何が言いたいのだろうか。

メラメラと燃え上がるUFOを隣に、ガンテは気が抜けていた。


「ルナティック。魔薬も打ちながら、マジックリングも使っておいてあの老齢のゴルズに負けた…。なんでかわかる?」


「……………わからん。」


「だろうねぇ…理由は【絆魔法】さ。聞いたことない?」


「絆…………魔法…。」


「本当に不思議だよね〜。でも、そうでもなきゃあのゴルズに負けるとも思えないんだよねぇ。で、銀河政府がやろうとしてたことがそれだよ。」


「……………コスモトニンが関係してるのか…?」


「まさに!!!銀河政府は表では認めてないけど、絆魔法ってのは存在するんだ。それは他者への思い、ぬくもり、思い出、愛なんかをトリガーに引き出されるどの属性にも属さない特殊魔法!!!なにもゴルズだけじゃないよ。昔から絆魔法は確認されてる。」


そのときに、発生したエネルギーのひとつがコスモトニンだったようだ。

つまり、銀河政府はこのコスモトニンを採取し魔薬として体内に取り込めば最強の戦闘マシーンができあがるのではないか、という思惑があったようだ。


「でも失敗に終わった。だってそうだろ?デイドリー、ヴァイス、ベイル、クリミナ、ディザスター兄弟、そしてルナティック。全員無様に敗北してる。情けないことこの上ないよ。やれやれ。」


すると、ディラスは懐からなにかを取り出した。

まるで肉塊のような見た目で、血管が脈打ちドロドロと謎の液体が漏れている。


「なんだこれ…うんこか…?」


「うんこじゃないよ!!!どんだけ壊れてるのさ君!!!なんで僕懐にうんこしまってるのさ!!!しかも自信満々に差し出してるし!!!」


S級指名手配犯に心配されるガンテ。

いやでもこれ若干うんこ臭い気がする。


「これはね…僕が作った人工天界樹の実。」


「人工…天界樹の……実…?」


「そう。僕がなにもなしにヴィルホーンに絡むと思う?資料とサンプルが欲しかっただけさ。コスモトニンは僕も気になってたしね。」


「で…………なんだこれ。」


「これを食べるとね…………魔力が上がるんだよ。」


「魔力が………?どういう……。」


「まぁ、適合すればの話だけど。単純な話、君は魔力10万パワーだ。それが…何倍にもなる。唯一、この世の魔力は生まれ持って変わらない掟を破る裏技さ。」


それを差し出しているということは、つまりディラスは誘っているのだろう。


「俺は………………。」


「町田銀之助…………、いいのかい?本当に…………このままで…………。」


ねっとりとした、気味が悪いがなぜか安心する声。

銀之助に負けた。

敗けたのだ。

両親を亡くし、そこから人生がどん底に落ちた。

しかし、ガンテにはエレンがいる。

今なら、ちゃんと刑務所に入り、刑期を終えやり直せるかもしれないのだ。

ガンテはうんこ臭いその実を見てなにを思うのか。


「刑期が終わったところで、町田銀之助は死んでると思うよ。彼、地球人だし。それにエレンも君のことなんかさっさと忘れるさ。………今度はちゃ〜ンと…君が壊す番だよ。」


その時だった。

警察官の死体が蠢いている。

ブルブルと痙攣し、血と肉が飛び散っている。

ディラスとガンテはなんだなんだとそれを眺めていた。


グジュ………!!!!!!

ブジュジュ…………ッッッ!!!!!

グチャグチャッッッッッッッッッッッ!!!! 

パンッッッッッッッ!!!!!


「ハァ…………ハァ……………やっと………出れたぜ……………。」


「うぇ…………君確か………トレイストだっけぇ………生きてたの……?」


なんと死体の内側から出てきたのは、あのトレイストだった。

ボーナに敗北し、自爆したはず。

なぜ生きているのか。


「ハァ…………ハァ…………アッハハハ…僕は……スーパースターだよ……?核さえ死ななければどうってこたないさ…。ハハハ。それはそうと…さっきの話………ッッッ!!!」


どうにか、寄生体として宿主を転々としていたのだろう。

寄生虫界のスーパースターはディラスから実を奪い取り、問答無用で頬張った。


「あっ。」


「グヂュ…モグ………ん〜なにこれ…案外美味しいかも…………んッッッッッッッ!!!!!」


途端に苦しみだし、喉を押さえ全身を掻きむしり始めた。

薄汚い金切り声が小惑星の上で響く。

そしてしばらくして、トレイストは静かになった。


「うーわ、勿体な。適合しなきゃアレになるんだよね。どうするガンテくん?食べる?やめとく?別に強制はしないよ。ただし…これが最初で最後のチャンスさ。」


また懐からディラスは実を取り出した。

これで最後だと言う。

2つしかないんかい。

なめとんのか。

しばらくそれを見つめるガンテ。

瞳に精気が感じられない。

しかし、脳内にははっきりと銀之助の存在がチラついていた。


「俺は………………」


するとまた後ろから汚らしい雄叫びが聞こえてきた。

めちゃくちゃ嫌そうな顔をしながら、次はなんだよとディラスは振り向く。


「…………ッハハハ!!!アーハッハッハッハッハッ!!!!!やった…やったぞ……やっっっっっっぱり僕はスーパースターなんだッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」


「えぇ…適合したの…?それになんか君さっきからうるさいなぁ…まぁいいけど…。」


「それより!!!僕の魔力は上がったんだよな!!??!そうなんだよな!???!」


嬉々として近づくトレイスト。

ディラスは鬱陶しそうに、うんうんと頷いた。


「じゃあ見てあげるよ…。えぇと…………こりゃ凄い。60万パワーから5500万パワーに上がっちゃってる。」


それを聞いたトレイストは跳んではしゃぎ始めた。

キモ。


「……………寄越せ。」


キョトンとするディラス。

ガンテの瞳が真っ黒である。 


「へぇ……………いいじゃん………どうぞ…フフフ…。」


舌なめずりをしながら、実を渡す。

そしてガンテはそれを一気に頬張った。


「ッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」


熱い。

体の内側がまるでバーナーで直接焼かれているかのような感覚。

苦しい。

息ができない。

目も見えなくなった。

悶え苦しむガンテ。

遂には動かなくなった。

失敗だろうか。


「おっ?だいじょーぶか〜ガンテちゃん?」


「君も苦しんだろ。」


「アレはカタルシスさ♪」


「何言ってんだか………………ん?」


ガンテがゆっくりと起き上がった。

全ては復讐のためだ。

銀之助を…銀之助をこの手で壊す。

その前にアイツが大事にしているものを全て壊す。その一心で、ガンテは顔を上げた。

ディラスはニヤリと笑い、特殊な瞳でガンテをまじまじと見つめる。

魔力を測っているのだろう。


「へぇ…………10万パワーから………6300万パワーか……。やっぱり才能あるよ…ガンテくん…。」


「はぁ!????!!!コイツ僕よりも高いの!??!!??!信じられねぇ!!!!!」


「ハァ………………。」


「まだ意識が混濁してるね。でもだいじょーぶ。次第に慣れるよ。トレイストよりも凄いよ。」


「はぁぁぁぁ?僕よりもコイツなんかが???センスないんじゃないの〜ディラスお前。」


「ガンテ…この際だ。君は生まれ変わった。名前を変えたらどうだろう?」


トレイストを無視し、話を続けるディラス。

ガンテはゆっくりと目線を合わす。

それもそうだろう。

もう俺はガンテじゃない。

あの時、銀之助と手を取り合った…エレンと過ごしたガンテではないのだ。

言うなれば俺は…………


「アトロシアス………………俺はアトロシアスだ。」


「な〜にがアトロシアスだ。かっこつけちゃって。僕はトレイストのままでいくよ。スーパースターが名前を変えちゃったらファンが困るからね。」


「別に聞いてないけど。さて…僕たち2人………あ……3人…?としてこれから動いていこうと思うんだ。君も来るんだろ…トレイスト…?」


「なんで嫌そうな顔してんだ。バカかお前は。まぁ〜〜〜〜〜?チームに華は必要だからね〜〜〜〜〜?仕方なくかなぁ〜〜?」


2人に白い目で見られる寄生虫。

しかし、当の本人は気にもしていない。

トレイストはそのまま歩き出した。


「ちょっとちょっと!どこ行くのさ!!!」


「取り敢えず〜♪ボーナを半殺しにして、目の前であのクソ女犯しに行こうかなって♪」


「悪いけど今はやめてくれる?」


ディラスの表情が変わった。

雰囲気も、さきほどの邪悪なひょうきんさとはまるで違う。


「……………なんで?」


「今の上がった魔力…知られたかもしれないから。急いでここを離れたいんだ。」


「知られた?誰に?てか、誰か知らないけど誰だとしても全員ぶっ飛ばしてやるよ。男なら切り刻んで、女だったら犯す♪」


「君ごときには無理だよ。【帝国軍】の相手にはならない。」


より深く、真剣な眼差しである。

勝手な真似をしたら今ここで殺すぞ。

そんな凄味を感じさせる。

それに、帝国軍とは一体なんのことなのだろうか。


「…………………………わかったよ。」


トレイストはしぶしぶ了承した。

そしてディラスは両手を広げ、高らかに笑った。


「僕たちはこれから【時雨】と名乗るッッッ!!!さぁて………ここからが楽しみだッッッッッッッッッッッ!!!!!」


なぜディラスが組織を作ったのか。

ガンテはどうなるのか。

トレイストはどうでもいいや。

帝国軍とはなんなのか。

これからが楽しみとはどういう意味なのか。 

謎が謎を呼ぶ。

果たして、この先になにが待ち受けるのかーーー


悪虐搾取組織殲滅編 〜完〜

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