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スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
対決!!!マスター盗賊団編

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101/104

第101話 SNSて善し悪しあるけど善し悪しあるよね

怒っていた。

ベリィは怒っていた。

朝から怒りのまま犬のようにテーブルに置かれた目の前のコーンフレークをがっついていた。

理由は簡単だ。

スマホの画面に映るツイッターが原因である。

Xではない。

ツイッターである。

眉間に皺を寄せ、バリボリと咀嚼しつつ画面をスワイプ。

画面は次々と変わっていく。


(もう流れよった……………。)


心で舌打ちをかます。

なにが流れたのだろう。


(渾身の私のイラストが秒で流れていったッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!)


なるほど、今回はそういうお話ですか。

現代における、光にも闇にもなれるツール・SNS。

ベリィがイラストをツイートしたにも関わらず、まるでベルトコンベアのように儚く消えたのだろう。


「やかましい。儚くとか言うなボケ。」


ごめんなさい。


(いいね17………リツイート…………6ッッッッッッッッッッッッ!!!!!残りの11人どこいったんな!!!いいねした瞬間に死んだんかッッッッッッッッッッッッ!!!!!!)


SNSあるある。

いいねはとてもありがたいものである。

そしてリツイート。

宣伝も兼ね、人の作品をわざわざ自分のアカウントを介して表示するのだ。

いいねとはまた違うありがたみがある。

でもベリィは不服そう。


「………反応せん相互はなんやねん……リプもないし…。いやまぁ…サっちゃんからあるけど……。」


どうやらサーシャからリプが来ているようだ。

というか、ベリィのツイートにかなりの頻度で反応してくれるという。

今回のベリィのオリキャラのイラスト。

サーシャは

「可愛い!!!足の裏もええ匂いしそう!!!コーヒーでもどうやろか?」

などとよくわからないリプを寄越してくれている。

ベリィはどんなリプでも感謝するタイプ。

そしてキチンとリプ返信もする。

サーシャからの言葉で毎度毎度救われていた。

内容意味わかんねぇけど。


「…………………。」


指の先で旋律を奏でるかのように、画面をいじる。

曜日も大丈夫。

時間も大丈夫。

このタイミングが、SNS閲覧のピーク時間。

なにも間違っていない。

タグつけも完璧だ。

誤字脱字もない。

イラストの出来栄えは最高値。


「……………なぁんで………?」


納得がいかない。

数字が17で固定されたまま、全く伸びない。

そればかりか、先ほど述べたように流れてしまった。

こういう時は自らセルフリツイートでもう一度画面に表示させるのがベリィ含む一部創作家の裏技だ。

セルフリツイートは恥ずかしいだの、情けないだのと野次もたまに見かけるが本人からすれば外野は黙ってろクソボケというスタンス。

ならば問題なかろう。

でも違うのだ。


(セルフリツイートしてこれやっちゅうねんッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!)


既にセルフリツイート済みであった。


ズコー!!!


「…………………………。」


イライラしながら、自分のアカウントを開く。

ずらっとイラストが並ぶメディア欄。

スクロールし、数字を確かめる。


「伸びてへん………前の小話なんざいいね8…………リプは勿論なし………!!!サっちゃんいっつもありがとう…………ッッッ!!!!!」


リプ数字の中に入れてもらえないサーシャ。

それはさておき…

ベリィは腕を組む。

そしてコーンフレークを食べる。

また腕を組む、の繰り返し。


「……………リプなしってなによ。一言でいいっての。なんで言われへんのよ。………いやまぁ私もか…。」


怒りと冷静さが入り混じる現役JK。

とはいえ、サーシャたちと出会ったことによりベリィはほんの少しずつではあるが自らSNS上で話しかけることが出来ていた。

こうやって積み重ねていくのだ。

相手からもいつかリプが来るだろう。

そう思っていた。

違ったのだ。

来ない。

全く来ない。

厳密に言えば、来ることは来る。

しかし比率は9:1。

そのうちほとんどはサーシャが占めている。

ベリィはリツイートも積極的にやっていた。


「…………私の創作は興味ないってか…。」


ついに白目で憤怒。

ベリィの脳内は現在ワチャワチャパレード中。

色んな過去のイラストやその時の反応、そして様々な感情が渦巻き爆発寸前である。


「はぁ〜い!!!お立ち会い!!!」


「うっ……………。」


声を漏らすベリィ。

アイツだ。

アイツが顔を出しやがった。

自分が反応したことにより、アイツは手をふりながら接近。

後ろには取り巻きの子分たち。


「来るなや……………。」


「そんなこと言わないでさ〜♪」


その正体。

厚塗りで世界観が全面に出されている逸品。

中央で笑顔の女の子が光る。

いいね2


大★爆★死


「ゴボッッッッッッッッッッッ!!!!!」


ベリィは思わず吐血(脳内)。

それを心配そうに取り巻きの子分たちが声をかけてきた。


「大丈夫〜?」


「こ、こっちくんなボケェッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」


その子分の顔には文字が書かれていた。


[あーもう消したわボケボケ!!!2いいねやもんな!!!そうやもんな!!!はいはい消しましたよ!!!]


「ゴハァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


派手にすっ転び、全身が血に染まった(脳内)。

ピクピクと痙攣し、ヨダレを垂らし「もう………やめ…………て……。」と懇願するも、パレードは始まったばかり。

奥のカーテンが大きく開く。

次の演者の登場だ。


「私のオリキャラ、パクリって叩かれるのかなぁ!!!」(有名絵描きの絵柄に似てるて言われたマン)


「話もキャラもパクられたんだよねぇ。」(反応なしに持っていかれたマン)


「FA描いたのに、感想が一言でつら〜い!」(自分が描いたFAの感想だけなぜかテンション低いマン)


「やめろオオオオオオオオォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」


ガシャンッッッッ!!!


ベリィはコーンフレークが盛られた器に顔を突っ込んだ。

戦闘不能。

ベリィの体力ゲージは0である。


「ベリィ……だ、大丈夫…………か?」


兄のチックルチョッキーが恐る恐る声をかけた。

チョッキーは今日休みである。

大学もなければ、バイトもない。

部屋で友達や彼女と連絡を取り合っていたところ、リビングで器がぶつかったような音を聞き、かけつけてくれたのだ。


「………………………。」


顔中牛乳塗れでこちらを睨むベリィ。

兄は恐れ慄いた。

これが血の繋がった妹の顔なのか。

あの可愛らしくも、奥手で創作に富んだ妹がする表情なのかと。


「あ………ご、ごめん……兄ちゃん…あ、あっち行くわな…………。」


察したチョッキーはそのまま部屋に戻った。

これ以上は危険だと本能が叫んだのだろう。






「…………………。」


過去のツイートを遡る。


[もう無理かも。絵描くのやめようかな。SNSも全消しする。今色々と終わってる。]


悲しい声明文。

現在でも創作を続けていることから、一時的な感情を投稿しただけであるが、当時は切羽詰まっていたことが伺える。

それに生理も重なっていたので、その苦痛は男にはわからないだろう。

作者も男だからわからない。

想像の範疇である。


いいね4


病みツイートの評価である。


は??????????????


なにがいいの?

なにがよかったの?

なにをもっていいね押したの?

なに?あれ?オリキャラを苦しませてそこからしか得られないエネルギーうんぬんてやつ???

それを私に当てはめてるの??????

自分がこんなにも苦しんでるのがいいっての???

その上リプなし????????

なめてんの????????

中には心配してくれている相互もいるのだろうが、【いいね】という概念のせいでとても心配されているようには感じられないのだ。

追い詰められている時などとくに…。

このツイートをした時、サーシャたちとは繋がっていなかった。

だから勿論、サーシャからのリプは存在しない。


「…………………ポ…。」


ついに【ポ】が口から漏れた。

ポタポタと滴り落ちる牛乳をよそに、コーンフレークを口に運ぶ。


「おひさ!!!」


またまたうるさいやつがきた。

今度もなかなか厄介な敵である。

かつて、ベリィが相互の誕生日にその相互のオリキャラをFAとして送ったことがあった。

しかし、反応なし。


「あれ…調子悪いのかな…。」


しかし、ほかの人とはリプでやりとりしている。

ハイテンションで絵文字をつらつらと並べたアゲアゲリプ(死語)。

不思議に思っていたところ、FAではなく違うリプの反応がかえってきた。

その相互のオリキャラを褒めたときのリプ。

それに対するリプだった。


【ありがとー】


たったこれだけ。

ベリィは怖気が全身を駆け巡った。

なにがかはわからない。

ただ、ひとつだけ言えること。


「じ…………地雷踏んだ………………!!!!!」


すぐさまDMで謝罪をした。

相手はどうやら最近色々重く考えることがあったらしく、その流れでそうなったらしい。

ベリィは申し訳ないと思いつつ、ホッとした。

ならば、あとあと元に戻るだろう…。

しかし、待っていたのは残酷にも【ブロック】。

目の前が真っ白になった。


「」


ひとつの関係が終わった瞬間であった。


「ちょっと待ったッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


パレードを遮るように誰かがやってきた。

そう、ベリィの味方はなにもイラストだけではない。

音楽と小説もいることを忘れてはならない!!!


「ベリィをいじめるんじゃない!!!」


「だからこんなパレードは今すぐに中止しろ!!!」


頼もしい。

ベリィは静かに微笑んだ。

が、それは一瞬の安堵。

2人の後ろに、更なる邪悪がこちらを見てニタニタと笑っていた。






タヌキJKであるエメリィ。

彼女はベースを弾き鳴らすナイスガールだ。

覚えているであろうか。

ボーカルのベリィ、ギターのサーシャ、ベースのエメリィ、そしてドラムのクロネコ。

鳴海高校(偏差値41)で結成されたガールズバンドである。

4人は仲良しで、ベリィはどもりつつもだんだんと打ち解けていった。


「やんね〜!それでさ〜………」


カラオケで盛り上がる4人。

ベリィはモジモジしている。

しかし、この4人ならば創作の話ができる。

音楽を語り合い、ジャムり、心を通わせたのだ。

創作の繋がりは強い。

ベリィは勇気を振り絞り、音楽だけではなくイラストや小説の話を持ち出した。

今進行している小説の続きやプロットの話である。

嬉々として、どもりつつ、しかし確かにベリィは語った。

そしてそれを聞いたエメリィやクロネコ。


「ふぅ〜ん……………。」


スマホを弄りながら、上の空。


………………話聞いてなくね???????


隣ではサーシャがうんうんと頷き、続きをせがんでいる。

それだけでも本来はありがたいはずなのだ。

しかし、それがまるで視界に映らない。

ベリィは違和感を抱きつつ、もしかして…と思い話を音楽に変えた。

するとどうだ。

2人はスマホをテーブルに置き、メモアプリを起動。

前のめりで話を聞き始めた。

そこでベリィは思った。


あ、全部興味あるわけじゃないのね






「……………………………。」


手を合わせるベリィ。

目の前の器は空になっていた。

後片付けをして、洗面台に向かい顔を洗う。

しんどい。

いやなものである。

サーシャはともかく、エメリィもクロネコも大事な大事な友達である。

しかし、会っていないときに思うのだ。


本当はそこまで深く自分のことを考えてくれているわけではない、のでは…と。


考える。

馬鹿にされてる。

下に見られている。

頭の中でそれが反芻する。

そして実際に会ってみる。

心から楽しみ、笑顔になる。

家に帰る。

考える。

これの繰り返しである。


「……………みんな私以外に友達おるもんな…。」


鏡に映った自分の顔。

みっともない情けないブサイクな顔に見える。

整形どうこうではない。

心を整形したいのだ。

宇宙貿易が始まり、医学や魔法が飛躍的に進化した。

にも関わらず、現在心の整形は存在しない。

できないのだそんなもの。

思いっきり鏡にパチキをかまし、ぶん殴りたい。

しかしできない。

痛いもん。

シンプルな理由。


「…………体は治っても…心は治らない…。」


タオルで顔を拭き、ベリィはトボトボと部屋に戻った。

ガサゴソとカバンを漁っている。

中から取り出したのは向精神薬。

調子が悪いのでとんぷくも考えたが、アレは副作用が辛い。

毎日飲んでいるこれで十分だ。

そう言い聞かし、ググッと飲み込んだ。


「………ゲプッ…。」 


可愛らしいゲップ。

こんな薬、ただの気休めだ。

飲んだところですぐにまた不安症や強迫性障害に襲われる。

そんなことはわかっている。


「………………あー…腹立つ…。」


ベッドで寝転び、ヘッドホンを耳に当て音楽を流す。

しかし、一曲の途中で止めた。

気分的に聴けたものではない。


「…………人のせいにしたくないんだけどなー………なんでこんな性格になったのか……………。」


死んだ魚のような目でスマホをいじくるベリィ。

目的などない。

無感情無思考。

機械的に指を動かしているだけである。


「なんかおもしろいことないかなー……………。」


ついこの間、ヴィルホーンが壊滅したばかり。

現地に乗り込み、体を張りまくったサーシャから送られた大量の画像たち。

とんでもない内容だったが、そんなこと言っていられない。

自分を頼ってくれている。

動かない理由がない。

今思えば、よく自分からクロネコに連絡を取れたものだ。

画像をお互いに編集し、SNS上でバラまいた。

大勢の人が傷つき、犠牲になった事件。

その暴露に協力できた。

それだけで十分ではないか。

しかし、そのお陰でフォロワーが増えた。

そのせいでまた変な思考が浮かぶ。

別に自分は暴露系ではない。

今回の件でフォローされただけ。

言い方は悪いが、野次馬である。

もちろん、自分の創作は誰もみない。


「…………なぁんでフォローしたかな…………。」


本当に自分が嫌になる。

友達ができなかったあの時のほうがまだ楽だったのではないだろうか。

念願の友達ができた。

3人もできた。

そこで終わればよかった。

欲深い自分の心は、更に深い部分まで求めようとする。

今はその念願の友達を訝しみ、挙句の果てには恨みの対象になりかけている。

なんなんだろう。

この世に自分ほどくだらないちっぽけな人間がいるだろうか。


「…………考えても仕方ないか………もう寝よう…。」


まぶたを閉じようとしたその時であった。

広告が表示された。

どうせよくあるテンプレPRだろう。

電源を落とそうと、ボタンに手をかけたが広告に触れてしまった。


「あ〜もう………めんどくさいて…………ん?」


淡々と流れる広告。

新しいSNSのPRのようだ。

どれほど優れようと、ツイッターやチンポトック、インスタに負け、埋もれるようなちっぽけな存在。

まるで自分ではないか。

フフフ…と乾いた笑いが自然にこぼれた。


「………………………。」


なぜか、スマホを凝視するベリィ。

はやく電源を落とし、寝ればいいものをなにをそんなに集中しているのか。


「…………誰も見たことのないリアルSNS………………。」


常套句の煽り文句。

どこにでもありそうな単調な文字の羅列。

ベリィは、なにが刺さったのか自分でもわからずに広告を最後まで見てしまった。


「………合同会社アザトゥース………新感覚SNS………カタック………。」


ベリィはまるで誘われるかのように、カタックをインストールした。

まさかこれがきっかけで、あんなことが起きるとは思いもせずに………………






対決!!!マスター盗賊団編

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