第102話 パッフェ&クレープブラザーズ 前編
ワイワイ…
ガヤガヤ…
チンゲチンゲ…
本日は晴天なり。
温かな日差しが綿菓子のような雲の間から顔を覗かせる。
あったかい。
というか暑い。
熱い!!!
アチチチチチチチチ!!!!!!!
それはさておき、鳴海高校は今ワチャワチャと騒がれていた。
理由は簡単。
カタック!という最新SNSだ。
昨今、ツイッターやチンポトック、マスカキトドンなど様々なSNSが存在するが、カタック!もそれのひとつ。
しかし、何と言っても規模が違う。
宇宙から発信されたこのカタック!
ユーザー数、なんと驚異の6000億人。
その中で動画やイラストを投稿しているアーティストは286億人なんだとか。
もうわけがわからん。
勿論、ミーハーであるJKたちがアプリをインストールしないわけがない。
いや、人によるか。
それでもこの盛り上がりよう。
男子も混じってワイワイとはしゃいでいる。
「えー、すっごいじゃん。見てよこれクロちゃん。」
「ん?なにエメちー……てこれべリッちじゃん。わー、歌バズってんねぇ〜。」
エメリィとクロネコ。
このタヌキと猫の2人が持つスマホの画面。
ベリィが弾き語りをしていた。
再生回数995万回。
いいね366万。
2人はうんうんと頷き、微笑ましく、そして同時に自慢げに笑い合った。
「さすがだね〜ベリィちゃん。」
「ホンマやねぇ〜。こりゃ自慢やわ自慢。小説とイラストも頑張ってるらしいし、ごっつええ感じ!てか今日おらんの?」
クロネコは可愛らしく首をかしげた。
ベリィの机には本人はおろか、教科書やカバンがない。
どうやら休んでいるようだ。
「もしかして…味をしめて学校サボっとるとか…?」
「アッハッハッ!!!ないない〜!!!………て言いたいけど…どうなんだろね…。」
「そういやサっちんは???おらんやん。サっちんもカタック!やってんの?」
「サっちゃん別に動画上げてないでしょ。今日はダンスフェスの腰のダメージが今になって来たらしいよ。それで休み。」
「ほぉ〜腰か…そら可哀想に。いや、なんか石の動画上げてたやん。拾った石シリーズwww」
「アレねwwwなんなんだろねアレwww」
どこまでもわけのわからない女である。
ベリィは大丈夫なのだろうか…。
謎の空間…と、言う名の大阪なんばマルイの後ろの端っこのあたりの建物の間の奥あたり。
路地裏みたいなところ。
そこで2つの影が不気味に笑っていた。
「やっと着いたね兄さん…ここが地球の大阪だよ。」
「あぁ…クレープ…ここが地球……ここで俺たちは名誉挽回を果たす……そしてもう一度リーダーに認めてもらうんだ!!!このパッフェ・デザートとクレープ・デザートをッッッッ!!!!!」
「そして!!!全宇宙に轟かせるんだ!!!【マスター盗賊団】の名を!!!!!」
オー!!!
2人は拳を突き上げた。
「兄さん!ちなみに今回の目的!わかってる!?第200369回宇宙トーナメントの………!!!」
「「優勝ベルト!!!」」
お互いに顔を見合わせ、キャー!とはしゃぐ兄弟。
女子か。
「電車を乗り継いですぐに行ける距離!そこにトリスコーヒーが存在する!」
「その通りだ弟よ!!!忌み子だの魔眼持ちだのとお前をバカにしてきたやつらを見返す時だぞ!!!」
「おうとも!!!兄ちゃんは資格と経験持ちなのにそれを認めない世間をぎゃふんと言わせるチャンス!!!逃す手はないよ!!!」
2人は熱く拳を合わせ、小走りで駅に向かった。
漫画みたいに足クルクルクル!て回転しとる。
なんかパラボラン初登場時の香りがする。
「むむ!!!」
なにかを発見したクレープ。
兄を引き留め、指を差した。
駅近くのスーパー。
そこに置いてあった期間限定板チョコ。
「欲しいのか!弟よ!食べたいか!」
「うん!ちょうど2枚ある!!!食べよう兄ちゃん!!!」
パッフェが満面の笑みを浮かべ、板チョコに手を伸ばした。
が…………
「うはwww板チョコ売ってるwww限定やんwww」
目の前で、ほかの客が手に取ってレジに行ってしまった。
「…………………。」
「…………………間違いなく当てつけだな…。」
「………だね。これは許せない…。」
アリガトーゴザイマシター!
スーパーを出て板チョコを頬張る男。
とても満足そうである。
気分良く、路地裏に入ったところ目の前に触覚のような耳を垂らした男2人に絡まれた。
ザ……………
「ん???」
「お前…俺たちが買おうとした板チョコ…わざと目の前で先にレジ通したな…。」
「馬鹿にしやがってぇぇぇ………!!!」
「え???え???なに???」
「板チョコの恨みいいいぃぃぃッッッッッッッッ!!!!!」
「え!???!うわ!!!!!!うびいいいぃあぁぁぁぁぁッッッッッッッッ!!!!!」
ボコスカボコスカ!!!
「ケッ、ざまぁみろってんだ。」
「よし、この調子でベルトもいただいちゃおう兄ちゃん。」
2人は足取り勇ましく、再び駅に向かった。
後ろのボコボコになった男を放置して。
「な……………なん………で………うっ…。」
可哀想。
「よしよ〜し、痒いところないか〜。」
「モキュア〜〜〜♪♪♪」
パルムはお風呂でモス子を洗ってあげていた。
パルムは銀之助とともに、トリスコーヒーの隣の小さな家に住んでいる。
週に1回はモス子をお風呂に入れてあげているのだ。
ピョコッ
「ん?」
モス子の頭。
なんか出てきた。
角のようなものが急に生えてきた。
若干臭い。
「ん?ん?なにこれ?なんか若干足の裏みたいな臭いするし。モス子なにこれ?」
「モキュ。」
「そっかぁ。」
パルムは続けて角も洗い始めた。
かなりゴツゴツしている。
もしかしたら、成虫になろうとしているのかもしれない。
「またあとでケロンバにでも聞くか。もう出所したやろし。ボーナは………まぁ知らんやろな…アイツ自称エリートやし。」
「モキュモキュ。」
どうやらモス子もそう思うらしい。
自称エリートボーナ。
立場が危ういぞ。
護らねばならぬ。
エリートとしての誇示を。
「ベックシッッッッ!!!」
大量の本を周りに置くボーナ。
開いていた本を閉じ、鼻をティッシュですする。
「なんだ…?僕がエリートすぎるって噂でも流れてるのか…?」
うん、そうである。
はいはい。
次よ次。
「……まぁいいか…なんかナレーション大雑把な気もするけど……それにしても…どれもこれも役立たずだな…ろくな文献がない…。」
ボーナは現在、銀河立ポンチッチ図書館に来ていた。
ワープゲートを使って片道1万3000円。
クッソ高い遠出である。
ポンチッチ図書館は、天の川銀河の左端から2光年内側に存在。
規模がでかすぎてわけわからん。
わざわざ大金を出してまで、なぜこんなところにいるのだろうか。
「……………………絆魔法についての文献が全くない…。どれもこれも魔力がど〜だとかあ〜だとか同じようなことばっかりだ…。」
ヴィルホーンが解散した後に退院したが、弟のショウヨウと喧嘩し、妹のスンシーによって再入院を果たしたボーナ。
病院に見舞いに来てくれた銀之助たちから話を聞いたのだろう。
「なんだったらコスモトニンについての資料もほとんどない…。なんなんだ…。」
当然ネットには情報が転がっていない。
ならばと思い立ち、自腹でこの図書館に来たのだ。
とても古く、ネットに存在しない情報も手に取れる。
そう高をくくっていたが、お目当ての資料はどこにもなかった。
「…………銀河政府のブサイク野郎が捕まって、ヴィルホーンも壊滅。利用者からコスモトニンを抽出…銀河政府にアクセスが殺到してサーバーがダウン。………いや、アクセスしたところで出てくるわけもないか。」
う〜ん…と背伸びをして一呼吸。
えぷしーたうん。
本当に銀河政府と一部の議員たちが密かに企てていただけなのだろうか。
宇宙政府は関わっていないのか。
もしくは、もっと巨大なとんでもない組織でも隠れているのだろうか。
「………いや、ないな。」
ボーナは手に取った本を最後に探すのを諦めた。
分厚い書物だが、パラララララッッッッとたった十数秒で読み終えた。
速読術。
流れでわかるだろうが、なにも書いていなかった。
こんなことなら、旅費に金を使わずにスロットでも打てばよかった。
ボーナは少し頭をかきむしった。
「………ハァ…どれもこれもいらないな。やっぱり、僕を癒してくれるのはこれだけだね。」
開いた本。
表紙にはこう書かれていた。
【そらとぶクランベリーパイ】
児童書である。
ズコー!!!
クソ兄弟は木陰に隠れていた。
仲良く揃って双眼鏡でなにかを覗いている。
隙だらけ。
どついたろか。
「………アレがクリ・ザ・トリスコーヒー…。なんだか盛り上がってるね兄ちゃん。どのタイミングでベルト貰っちゃおうか。」
銀之助は、ほどよく忙しそうにせっせと働いていた。
笑顔でコーヒーをカップに注ぎ、トレーに乗せカウンターに置く。
そして番号を呼び、お客さんに取りに来てもらっている。
今日は平日。
サーシャは本来学校だが、腰のダメージで家でゆっくり。
パルムはモス子を洗った後に、仕事に入るのだろう。臭かったのかな。
なので今は銀之助の1人店番。
その時だけ、セルフサービスでの提供にしたのだ。
「……………いや、まて弟よ。よく見てみろ。」
「ん?」
銀之助の近くにあるカウンター席。
そこには、モチェットやナトリ、ポーズトッポの面々が寛いでいた。
「アレは地球の【ヤクザ】だ。人に暴力を振るい、金を巻き上げるとんでもないやつらだ。これは危ない…。」
「さすが兄ちゃん!博識だねぇ!でも…それじゃベルト頂けないよ?どうする?」
「あの店主の地球人ぐらいなら、俺ら2人で簡単に倒せるだろう。しかし、あのヤクザどもは厄介…。兄ちゃんに策がある。よく聞くんだクレープ。」
クレープは笑顔で頷いた。
木陰でひそひそと耳打ちするパッフェ。
ママアノヒトタチナニシテルノー?
ミチャイケマセン!!!
カクレンボシテルノカナー?
アレハドウミテモヘンタイデス!!!イキマショウ!!!エンガチョエンガチョ!!!
「ということだ…。」
「なぁるほど!!!流石兄ちゃん!!!流石介護福祉士持ちだね!!!」
「よせやい弟よ!!!さて、さっそく行くぞ!!!」
クソボケ兄弟は、笑顔でどこかに走り去った。
どこに行くつもりなのだろう。
「うーーーーー、腰痛い〜〜〜!」
サーシャはベッドの上でうつ伏せになっていた。
可愛らしい桃のようなケツが丸出しである。
決して趣味ではない。
弟に湿布を貼ってもらうところなのだ。
「ドーちゃん、いくら姉ちゃんのお尻が綺麗やからって見惚れたらアカンで〜?」
「屁かまされそうで怖いねんけど。」
ドーちゃんこと弟のドーザー。
現在中学2年生。
血の繋がりがない姉の尻。
エロゲーや一昔前の深夜帯アニメなら、ちょっとHなシーンであるが目の前のケツ丸出し女の前ではそんなもの幻想である。
いつ屁をかまされるかわからない。
ドーザーは冷や汗をかきながら、恐る恐る慎重に一歩一歩近づいていく。
恐怖。
それだけである。
そこに羞恥や興奮などの概念はない。
生か死か。
「………………ん?」
なんか目の前に出てきた。
いや、ついに屁が目に見える形で出てきたわけではない。
もしそうならば、ドーザーはこの世にはいない。
「………なにこれ?」
目の前にグルグルとゆっくり回転する黒い空間が現れたのだ。
「むー、ドーちゃんはよ貼って〜な〜。」
「あいや…なんか出とるんやけど…。」
「なんやて!??!姉ちゃん寝グソしとる!??!!」
「いや…そうやなくて…。」
この空間の穴はなんなんだろうか。
ここで、クソボケ兄弟の様子を見てみよう。
「いいかクレープ!ここが女子部門チャンプの三木サーシャが住む屋姫の家だ!!!」
「孤児院らしいね!立派なことだよ!」
ホントにね。
お前らとは大違いである。
「ここにもベルトがあるはずなんだ!恐らく、サーシャの部屋に飾っているはずだ!」
「すげぇ兄ちゃん!そんなこともわかるんだ!」
「いやわからん!」
「わからなくてもすげぇや!」
とても頭の悪い会話。
クレープは印を結び、空間に大きめの皿程度の穴を空けた。
なんとコイツも空間魔法が使えるのだ。
しかし、C.Bとは違い小規模なものである。
射程距離も短く、せいぜいなにかを取り出したり送ったりする程度。
それでも空間魔法使いは珍しい。
コソドロにもってこいである。
ハァ…。
「見えるか!?」
「ええと………あったッッッッ!!!間違いない!!!トーナメント優勝ベルトだ!!!」
サーシャのベッドの上。
そこにはベルトが飾られていた。
若干埃被ってる。
ケースとかに入れとけよ。
「よし!!!あとはそれをちょうだいするだけだ!!!」
「待って兄ちゃん!!!サーシャが寝てる!!!お尻出してるよ!!!」
「なに!!!尻を出しながら寝るタイプか!!!しかし気にするな!!!ベルトを取るのだ!!!」
クレープは元気よく手を伸ばした。
ドーザーは驚いただろう。
空間に穴が空いたと思えば、手が出てきたのだから。
「え…………手出てきたんやけど…。」
「屁?姉ちゃんこいてへんッッッッッッッッ!!!!!いつでもかつでもこくと思うなよ!!!!!!」
「いつでもかつでもこくもんがなに言うとんのよ…。え…なにこれ…。」
〜空間の外〜
「もうちょいで………取れ………あぁぁぁッッッッ!!!に……兄ちゃんッッッッ!!!」
「どうした!!!!!!」
「こ…………これはッッッッ!!!」
驚愕するクレープ。
さっきからうるさい兄弟である。
なにをそんなにびっくりしているのか。
それは、ベルトの下に飾られているソフビが原因だった。
「これは………【ぷにぷにうんちっちシリーズ】!!!それも、これ確か応募者限定サービスで製造数が少なかったはずだッッッッ!!!」
「なにぃ!???!」
なにそのシリーズ。
この謎のソフビシリーズ。
ズラァッと綺麗に並べられていた。
サーシャが集めているのだろう。
屁だけでなくウンコも履修していたとは。
「よし!!!それもいただこう!!!レートが高いはずだ!!!」
「うん!!!ちっち!!!」
やかましいわ。
クレープはベルトの前にうんこ強奪に乗り出した。
そしてまたもや激しく叫びだした。
「今度はどうした!!!!!!」
「だ………誰かいるッッッッ!!!」
やっとドーザーに気づいたクソボケ兄弟。
もろ、ガン見されている。
「わっっどっっどうしよ兄ちゃんッッッッ!???!」
「落ち着け!!!お前ならばできるッッッッ!!!いつも俺たちそうやってきただろう!!!」
「兄ちゃん…………。」
「いいか!!!俺たちの兄弟愛は本物だ!!!俺はお前を信じている!!!お前も信じろ!!!」
「………わかった……やるよ……やるよッッッッ!!!」
空間が閉じかけている。
どうやら、持続時間も短いらしい。
「頑張れ………頑張れクレープ………!!!」
「もう………ちょい………で……ッッッッ!!!」
〜お部屋〜
「ドーちゃんはよ貼って〜な〜!!!お尻冷える〜!!!」
「うん……………。」
ドーザーは勇気を出し、恐る恐る飛び出している手を掴んだ。
これが運命の始まりであった。
〜空間外〜
「ウワァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!掴まれたァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」
「慌てるんじゃぁぁぁぁぁないクレープッッッッッッッッ!!!!!」
「ウワァァァァァァァウワァァァァァァァ!!!!!!!!」
ガシッッッッッッッッッッッッッッッッ
グググッッッッッッッッッッッッ!!!!!
ブチブチブチブチイイイィィィッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!
なんと、パニクったクレープは勢いよく、サーシャの後頭部の髪の毛を鷲掴みにし引き抜いたのである。
そして空間は閉ざされた。
「イダアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァイッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ブリブリブリブリブブブブブブバババババババッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!
「クッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッサアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」
これがドーザーの最期であった。
享年14歳。
短い人生であった(死んでない)。
も。




