第92話 交差する因縁
ドガァァァァッッッッッッッッ!!!!!!
泉北地域一帯で、激しい戦闘が繰り広げられていた。
デスパが送り込んだ末端構成員によるテロ行為。
ビルは崩れ、花屋は荒らされ、あちこちに炎が燃え盛っている。
周りにはサイレンの音が鳴り響き、怒号や悲鳴、爆発音の地獄のオンパレード。
消防隊も現地にかけつけ、消火活動を行うも構成員に邪魔され上手く事が運べない。
キャーーーーーー!!!!
逃げろーーーーー!!!!!!
警察はなにしとんねんッッッッ!!!!!
燃えてる!!!燃えてるって!!!!!
婆ちゃん!!!こっちやって!!こっちッッッッッッッッ!!!!
逃げ惑う市民たち。
家族が必死に警察の指示に従い、走っていた。
「ギャッ!!!」
ぬいぐるみを抱いていた女の子が転倒。
膝を擦りむき、大声で泣いてしまった。
「あぁ!!!ソウちゃん!!!」
わが娘の元にかけつける母親。
ソウちゃんを強く抱きしめると、なぜか影に覆われた。
顔を上げると構成員がこちらを見下ろしていた。
恐怖する母親。
「あ……あぁ……!!!」
「いけないなぁこれは。とてもいけない。死にたいのかなぁ?」
振り上げられた腕。
父親が助けようと走るが間に合わない。
「死ねやクソ親子。」
腕が振り下ろされた。
母親は娘を強く抱きしめ目をつむった。
「じゃかぁぁぁしいんじゃ我えええええぇぇぇぇッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」
渾身の飛び蹴りが、構成員の顎にクリーンヒット。
その勢いのまま向こう側のビルまで弾き飛ばされた。
「大丈夫かいなッッッッ!!!ほら!!!」
手を差し伸べるは、たい焼きヤンキーことゼクス。
その後ろではモット・ホイールズのメンバーが市民を助けつつ応戦。
「助かるッッッッ!!!ありがとうッッッッ!!!」
家族の元にかけつけた警察が激励。
ゼクスはサムズアップで応えた。
最初こそ、警察に避難指示を出されたが、そんな言うことを聞く連中ではない。
地元が荒らされているのだ。
黙っているわけにはいかない。
それに、モット・ホイールズたちはただのヤンキー集団ではない。
戦え、動け、救助できる。
特例中の特例。
ビンカンソが責任は自分が持つ、と言いゼクスたちにも協力してもらっているのだ。
「警部………無事に着けていたらいいんだが………。」
「なんやえぷしーたうんも臭いらしいの。今SNS盛り上がっとるで〜。内情一気に暴露されとるわ。」
肩を慣らすゼクス。
現在、えぷしーたうん内でブチギレながら走っているサーシャ。
鬼の形相でパシャパシャ写真を撮りまくり、各SNSに投稿しているのだ。
それだけではない。
クロネコとチックルベリィにも個人的に送っていたのだ。
そこで、加工や編集が上手いクロネコとツイ廃のチックルベリィが協力して大量拡散。
中には、野次馬根性のやつらもいるだろうが情報を広めてくれるだけでもありがたい。
これで、えぷしーたうんの肩を持つものが現れたらそれは、何も事情を知らないか【えぷしーたうんサイドの人間】だ。
そしてビンカンソ。
最初こそ、闇バイトが装着していたマジック・チョーカーの出どころがえぷしーたうんなのではという疑惑で赴くはずだった。
今や、街中がとんでもないことになっている。
ビンカンソは自ら戦闘をしつつ、とある場所に連絡をしていた。
プルルルルル………プツッ……
「もしもし!!!ビンカンソじゃッッッ!!!スペース・スクワッドのSWRの要請を頼みたいッッッ!!!」
[SWRの要請か…ビンカンソ警部ですね?地球の警察では間に合わないと?]
「そうわよッッッッ!!!闇バイトを追ってたんやが、元締めはヴィルホーンやったッッッ!!!そいつらのアジトのひとつが地球の大阪の泉北にあるんやッッッ!!!ルナティックもおるかもしれんッッッ!!!」
[なるほど…ね…。最後に…証拠は?]
「元ポーズトッポの連中らが戦っとるんやッッッ!!!ナトリ!アミーノ!マヤ!ジェリー!ゴルズ!それに………モチェットもッッッ!!!座標は送るッッッ!!!早くッッッ!!!」
[………わかった。10分以内に向かう。それまでどうにか耐え凌いでくれ。通信終了。]
プツンッ
通信が終わり、ビンカンソは部下と機動隊にSWRの要請を頼んだことを伝えその場を後にした。
「なに〜?どしたのソギハちゃん?要請?」
「ちゃん付けで呼ぶなショウヨウ。依頼だ。今すぐに支度しろ。2分以内にな。」
「うんうん、もうとっくにできてるっての。わかるよ〜久々に旦那さんに会えるんだもんねぇ〜。でも、俺が旦那さんだったらそんな思いさせないのにぁ〜。それじゃ、挿れるね。」
「どこに何を挿れるんだ。」
ガチャ…ガチャ…
「ミキサーに頭挿れて死ねばいいのに。」
下半身がサイボーグの男の子が舌尖鋭くショウヨウを突き刺した。
「お前相変わらず酷いよなぁ〜タイトォ。なに?久々に兄ちゃんに会えるから盛り上がってんの?テンション上がっちゃった?子どもでちゅね〜!!!」
「隊長コイツ殺していい?」
ソギハは頭を抱え、早くしろと促した。
どうやらタイトとショウヨウはデコボココンビでもあるようだ。
タイトは腕の調子を確かめつつ、口を開く。
「そういうお前も、地球に兄妹いるんだろ?確か……ボマーさん?スージーさん?だっけ?間違ってたらゴメン。」
「ボーナとスンシーね。いや、どうでもいいよ。とくにボーナは。久々にスンシーには…会ってもいいかなぁとは思うけど。」
「お前ら口動かさずに手動かせ。相手はヴィルホーンだ。戦闘は避けられんと思え。」
「キシシ…アチキも行くよ隊長!!!」
目の前には機械をガチャガチャと弄る、白衣を着たワニの女の子。
ソギハは首を縦に振る。
そして全員支度が終わり、UFOに乗り込んだ。
(……バカモチェット……。)
「おいもうちょっと詰めろよタイト!!!」
「バロリーヌが太いんだって!!!」
「あぁー!!!女の子にそんなこと言っちゃ駄目なのよねー!!!」
ギャーギャー!!!
ワーワー!!!
「ハァ………うるさい…。」
ソギハは項垂れつつ、手のひらを認証板に通す。
ワープゲートまで行ければ、地球にはすぐに着く。
UFOは超スピードで発進した。
「おいッッッゼクスッッッ!!!」
セイコーイの叫び声。
ゼクスは構成員に殴り飛ばされた。
完全に油断していた。
空中で体を一回転させ、両足と右腕を地面につけブレーキをかける。
「なめとんとちゃーーーーー」
ドゴッッッッッッッ!!!!!
またもや横から殴り飛ばされた。
モット・ホイールズのメンバーもゼクスをサポートしたいが、敵の数が多すぎてとてもできたものではない。
遂にゼクスは羽交い締めにされ、複数人に殴り蹴られ始めた。
「調子乗ってんじゃねぇぞクソガキがよッッッッ!!!」
「ヴィルホーンに立ち向かうとかお前バカなんじゃねぇの?!??!」
「バカ!!!お前それ言うなっての!!!」
「あ?もうバレてるしいいだろ。」
ゼクスはうずくまるも、どうにか頭部は両腕で守れている。
ひとりひとりならば、簡単にしばける。
しかし、数が多いうえに市民の安全のこともある。
ドガッッッッ!!!
バキッッッッッッッッ!!!
(クソがよぉ……………ひとりじゃ何もできねぇクズが寄って集って………!!!)
ゼクスの心に沸々と怒りや殺意のボルテージが高まっていく。
「コイツ、たい焼き屋やってるみたいだぞ〜。目の前で潰してやろうぜwww」
「おっ、ナイスアイディーアー!!!引きずっていこうぜー!!!」
充血した目で構成員を睨むゼクス。
それ以上踏み込んだらマジでぶち殺すぞというオーラを放つも、悲しきかな構成員のような低レベルには伝わらないのだろう。
「…………………。」
自分の左側を掴む構成員。
ロックが甘い。
今なら抜け出せる。
ゼクスは一気に構成員から左腕を引き抜き、周りを蹴散らした。
「ぶち殺すぞテメェらよおおおぉぉぉぉぉぉッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」
形勢逆転。
いいように自分を蹴り遊んでいた外道を次々にボコしていく。
「お前らッッッ!!!魔法使え魔法ッッッ!!!」
「遅いんじゃボケッッッ!!!土遁・串剣山ッッッッッッッ!!!!!」
シュゴッッッッッッッッッッッ!!!!!
ガアアアアアァァァァァァァッッッッッッッッ!!!!!!
構成員が魔法で攻撃しようとするも、ゼクスは10mほど跳び上がり得意の土遁でアスファルトを変形させた。
剣山のように鋭利なアスファルトが次々に突き刺さる。
「待て。」
「も……モッコスッッッッッッッッ!!!!!」
振り向くと、メンバーであるモッコスが傷だらけで捕まっていた。
メンバーの中で一番体が小さく、心優しいモッコス。
もちろん喧嘩の腕っぷしも強いのだが、逃げ遅れた老夫婦を庇い捕まったのだ。
「わ………悪い……ゼクス…………。俺はいいから………いいから……とにかく……」
構成員の膝がモッコスの顔面に炸裂。
たじろぐゼクスやメンバーたち。
「痛ってぇなおい………横腹怪我しちゃったよ今のでさぁッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!」
丸太のような尻尾で、後頭部を殴打されるゼクス。
土壇場で放った串剣山。
狙いが甘かったのもあるが、殺さないように加減したのがマズかった。
もっと深く動けなくなる程度に突き刺すべきだったか。
「デスパ様から連絡まだ来ねえのか?」
「来てねえ。まだ暴れられるぜ。」
「いやいや、別の機動隊かなんか来たら流石にマズイだろ。タイミング見て逃げねえと。」
地面に這いつくばるゼクスたちを他所に、構成員たちは悠長に会話を進める。
本来、えぷしーたうんことヴィルホーンの内情が世間にバラまかれても有耶無耶にするために命じられたテロ行為。
しかし、クロネコとチックルベリィ含む素敵なツイ廃たちのお陰で誤魔化しが効かないほど情報が流れ出てしまっている。
つまり、この場の構成員はただのしょーもない暴徒と化してしまったのだ。
「でもまあ……………」
「こいつら殺せるぐらいには遊べるか。」
魔法でデカくなった刀をゼクスに振るった。
縦一文字斬りにするつもりだろう。
(や…………やべ………。)
「火遁・エンメイカグラ。」
ゴオオオオオオオォォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!
燃え盛る炎の鞭。
まるで蛇のようにクネクネと曲がり、警察やモット・ホイールズたちを避け構成員たちに直撃。
ギャーーーーーー!!!!
アツイイイィィィィッッッッッッッッッッッッ!!!
「おい、大丈夫かよたい焼き屋。」
「お前………………アミーノッッッッッッッッ!!!!!」
ポーズトッポの下っ端ADを引き連れ、アミーノ参戦。
武器を持った構成員が一気に襲いかかるも、アミーノが指を鳴らしただけで地面から炎の柱が吹き上がった。
「オラ。」
手を差し伸べるアミーノ。
「別に助けに来たとかそんなんじゃねぇぞ。ヴィルホーンが調子乗ってるから処刑しにきただけだ。」
「…………………。」
「あんだよ、さっさと掴めや。」
「ツンデレポイント高いなぁ………。」
「んだテメェッッッッ!!!やっぱし一人で立てボケッッッッッッッッッッッ!!!!!」
掴んだ手を振りほどき、ゼクスは派手にすっ転んだ。
「痛ッッッたいのぉお前よぉッッッ!!!掴んだんやから解くなやッッッ!!!」
「テメェがわけわかんねぇこと抜かすからだろうがよッッッ!!!」
ギャーギャー!!!
ワーワー!!!
「………………仲いいよなぁアミーノの兄貴とゼクスさん。」
「熟年カップルみたいだよな。」
「喧嘩するほど仲がいいってな。」
2人のやり取りを見て、下っ端ADとモット・ホイールズたちはうんうんと頷いた。
「「誰が熟年カップルだ(じゃ)ッッッッッッッ!!!!!!」」
やっぱし熟年カップルである。
「サーシャからSNS通じて来たわ。これえぷしーたうん…ヴィルホーンの仕業らしいの。」
「そこまで情報回ってんのか。それで合ってる。コイツらも末端の構成員だろうしな。」
「お前らが来てくれて百人力じゃ。助かるぜ…。でもどないするんや?お前火遁使いやろ?周り巻き込んでまうやろし…さっきの蛇さんか?」
「それもできるがぁ…火遁のコントロールぐらいできらぁ。エキスパートだぞ俺っちはよ。お前邪魔だから引っ込んでろ。一人一人はカスみたいな連中だが、数が多い。」
それを聞いたゼクスは少し笑った。
「何笑ってんだお前。さっき殴られて頭おかしくなったのか?」
「いや……アレやってみるかと思ってな……。まだ不安定やし、どこまで持つかわからんからやってなかったんやけどよ………。」
「あぁ?」
「お前…銀之助とかと関わってるやろ?知ってるか?銀之助…パルム…サーシャ…アイツら、あの宇宙トーナメントでめちゃくちゃ活躍したんや。」
「らしいな…。親父が言ってた。」
「俺は会場に行かれへんかった…。仕事あったしな…。せやから、テレビで見てたんや。………男ってのは単純なもんでな……。」
「…………?」
「あんなもん見せられたら…影響受けてまうんや………!!!!!」
シュババババババッッッ!!!!
素早く印を結ぶゼクス。
「たい焼き…鯛ってのは…えべっさんや…。商売繁盛笹持ってこいってなぁ……ッッッッッッッ!!!」
ガガガ……
ガキ……
ガチチチ……………!!!!!
「お前…………なにを………。」
「これぞ俺の【土遁】よッッッッッッッッ!!!土遁・恵比寿露兜駆土羅権ッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」
ゼクスの全身がゴツゴツした岩に覆われた。
長い尻尾に鋭利な爪。
彷彿とさせるは岩の龍。
真骨頂である。
「……………ハッ…ダッセェ名前……。」
「内心カッコエエト思ッテル癖シヤガッテコノツンデレガヨォ…。コノ形態ハチョットヤソットノ火ハ効カヘンゾ。人ノ安全確認デキタラ…俺ヲ気ニセズ暴レロヤエキスパート!!!!!」
「へぇ〜、最ッッッ高じゃねぇかよ……。んじゃ、暴れるぞお前らああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!」
ウオオオオオオォォォォォオオオオオオオオォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーーーーー!!!!!!
「ボス……ボス………親愛なるボスの元に………!!!」
ヘロシティーは廊下を走っていた。
ガンテにボスの元に向かって欲しいと言われたのだ。
「ガンテはどうするのだ?」
「俺は残りのポーズトッポを片付ける。」
「承知。そいつは殺さないのか?」
目線は、ガンテに引きずられる重傷のモチェット。
瀕死ではあるが、まだ息がある。
今ここですぐに処理すれば、安心だろう。
「いや…コイツはまだ利用価値があるからな。」
「脅しの道具か…。なるほど…。わかった…ならばボスの元に向かわせてもらう。」
そう言うとヘロシティーは、モチェットの鞄から魔力ドリンクをほじくり出し飲み干した。
これで全開。
モチェットに負わされた傷が無駄になってしまった瞬間である。
タッタッタッタッタッ……
「ボスはこの先を曲がったところに…………」
50m先の曲り角。
あそこを通りワープゲートを使えば最短でボスの元に行ける。
ヘロシティーはすぐにでも心酔するボスに会いたかった。
そして曲り角手前20mあたりで、人影が見えた。
向こうから曲がってきたのだろう。
「ムムムッ!??!貴様は確か………三木サーシャかッッッッ!!!なるほど…確かに欲情をそそる体をしている…。遊んでやってもいいが、今はボスの元に……いや、手土産として持っていくか……?よし………決まったぁぁぁッッッッ!!!」
「邪魔。」
ゴオオオオオオオォォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!
「ウガアアアアアァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッな、なんだこの炎は!!!!!む、紫炎ッッッッ!???!消えない!!!消えないいいいいいいッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」
大噴火寸前のサーシャによる、紫炎を浴びたヘロシティー。
何をしても消えない炎に、もがき苦しむばかり。
そんなエセカブキモノを無視し、サーシャは先を進んだ。
「……………あ???」
また誰かいる。
さっきの変なカブキモノとはまた違う邪気を感じる。
今回はなにかが決定的に違う。
しかしそんなもの関係ない。
サーシャは先ほど同様、右手に紫炎を宿し殴りかかった。
ザンッッッッッッッッッッッ!!!!!
ボトッッッ………
手首から先を斬り落とされた。
相手の気味の悪い杖にサーシャの血が付着している。
「はじめまして…だよね?フフフ…僕はディラス。」
杖をねっとりと眺め、付着したサーシャの血をベロベロと舐め取った。
「こんなところにーーーーーーーー」
パアアアアアァァァァァァンッッッッッッッッ!!!!!!!
直後、ディラスの顔面にサーシャの右腕が炸裂。
骨が鼻に突き刺さり、大きく顔を歪ませた。
そしてダメ押しのボディブローがみぞおちに深く入り込む。
「ブベッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」
ディラスは数十m吹き飛び、何回も体を床に叩きつけた。
「う…………ッッッッ!!!ゴバッッッッ!!!ハァ……ハァ………め……めちゃくちゃだ………!!!」
顔を上げると、既にサーシャが急接近しており再び拳が飛んできた。
ガンッッッッッッッッッッッッッッッ!!!
ディラスはなんとか杖で防御。
サーシャの左拳の隙間に杖がめり込み、少し肉が裂けている。
「なんじゃお前………えらい丈夫やな。」
「じ………丈夫って…………、い……今僕の内臓全部ブレイクダンスしちゃってるよ………。」
白目で汗だくのディラス。
片手で腹を押さえていることから、ダメージは相当だろう。
(ルナティック………ちょっと…そっち向かうの無理……だねこれ………。そっちはそっちで……どうにか…頑張って………。)
「………………遅えなアイツら……。まさか逃げやがったのか………?もしくは…殺されたか。」
ボフッ
ソファに腰掛けるルナティック。
予定通りに進まない。
右腕のヘロシティーが来ない。
忠誠心の塊のような存在なのだ。
来ないわけがない。
ディラスが来ない。
アイツの事だ。
マイペースでめんどくさいやつだが、こっちの資料を欲しがっている以上裏切りはまずないだろう。
それにS級指名手配犯なのだ。
ポーズトッポの連中と戦って負けるとも思えない。
なにをしているのか。
「…………他のクズどもも連絡が来ねえ………………。」
イライラが募る。
殺意が湧く。
こんな時はものを壊すか女を犯すかで、心を落ち着かせている。
ゆっくりと立ち上がり、机を蹴り壊そうとしたその時。
コンコンッ
ドアにノックが響く。
やっと来たか…ルナティックは血管をピクピクしながらドアノブに手をかけた。
「……………あ?」
ドガァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!
蹴り壊されたドア。
ルナティックはそれに巻き込まれ壁に叩きつけられた。
そこに立つは、酒瓶を片手に持つゴルズ。
「邪魔するぜ。」
「ガンテ…………なんでお前…ここに……。」
銀之助が息をきらし、たどり着いた一室。
だだっ広い空間にポツンと立つガンテ。
左手には血まみれのモチェット。
呼吸の仕方から、相当危険な状態とすぐわかる。
「ガンテが助けてくれたんか…!!!サンキュー!!!魔力ドリンクは………壊されとる…!!!でも俺のがある!!!モチェット渡してくれ!!!」
「…………………。」
「………なにボーッと突っ立っとんねん…はよ渡してくれ!!!モチェット危ないて!!!」
「いいよなぁ銀之助…羨ましいよ。」
「………は?」
「綺麗事べらべら並べて…実行したんだもんなぁ。俺のことなんざほっといてよ…。」
銀之助は察した。
察したが、認めたくはなかった。
この雰囲気、ガンテの目、そして会話のトーン。
これだけでわかってしまった。
目の前にいるのは、善良な職員のガンテではない。
「…………ええからモチェット渡せ。」
「低価格でメニューを提供?金がない?でも仲間はいっぱいいます?ふざけてるよなぁお前。」
「モチェットを渡せ。」
「いいから聞けよ銀之助。世の中ってのは綺麗事だけじゃまわらないんだよ。いくら綺麗事装っても、裏覗けば薄汚いもんだ。そらそうだよな?人間がいる限りこれは必然。避けては通れない道だ。」
「さっさとモチェット渡せや………!!!」
「それで、元ヤクザが足洗ってヒーロー気取りか。笑っちまうよなぁ!?過去はどうあがいても塗り替えられない。ただの現実逃避でしかないんだよ。だからーーーーー」
……………………………
「モチェット渡せ言うてるやろがぶち殺すぞテメェエエエエエエェェェェェェェェッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーーーーーー!!!!!!!」
「俺に命令してんじゃねぇぞゴミクズ野郎がよおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーーーー!!!!!」
ゴルズvsルナティック
銀之助vsガンテ




