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スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
悪虐搾取組織殲滅編

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91/101

第91話 宝石のように輝いて

惑星オントギ。

地球からおよそ1600万光年離れたブリム銀河内のひとつの星。

オントギのドーワ村は、子宝に恵まれず毎年雨が降らないので飢饉に直面していた。

科学力も魔法も発達しているのに、なぜ雨一つで苦しんでいるのだろうか。

子宝に関しても、環境や男女の精子と卵子を調べればいいだろう。

これには理由があった。


オギャー!!!オギャー!!!


ここに一つの生命が誕生した。

母親のギム、父親のハットソンはこの日を待ちわびていた。

遂に、この村に子どもが生まれるのだ。

希望そのものだろう。

とは言え、子ども一人が生まれたからどうなるというのか。

厳しいが、現実的に考えればその問題に直面してしまう。


「ハァ…………ハァ………どう…?私たちの赤ちゃん………。」


「あぁ………!!!予言の通りだ…!!!」


オントギの住人は、髪の毛がオレンジ色であり瞳はライトブルー。

こどもに【ルフェア】と名付けたハットソン夫妻。

産婆に抱きかかえられるルフェアの姿。

それは…真っ白な髪の女の子だった。


ザワザワ…

マエザワ…

ウシロザワ…


外に設けられた集会場に集まる村人たち。

目の前には、ほらあの小学校とかでマイク持った先生が立つアレ。土台。

そこに村長とフードを目深に被ったローブ姿の男が立っていた。


バッッッ!!!


ローブ男が、両手を広げ村人を静かにさせた。


「よくぞ集まってくれた…遂に…遂に予言の子が生まれた!!!これで村は救われるのだ!!!」


ウオオオオオオォォォォォーーーーー!!!!!


ヤッターーーーーー!!!!!


メシアーーーーーー!!!!!!


歓声に包まれる集会場。

笑顔で跳びはねるものもいれば、泣いて感動するもの、様々であった。

そして、ハットソン夫妻がルフェアをローブ男に丁重に手渡した。

男は頷き、祭壇を登る。

そして優しく置かれたルフェア。

またしても大歓声。


「これで全てが救われるのだッッッッッッッッ!!!!!」


「うー?」


不思議そうな顔で指を咥えるルフェア。

なにが行われると言うのだろう。

簡単に説明すると、ルフェアを齢5歳まで大事に大事に育てあげる。

そして、丁度5年後の今日。

村人たちで一斉に殴り殺すのだ。

それが、救い。

唯一、繁栄する手段だと民衆は信じて疑わなかった。


ワーワー!!!

キャーキャー!!!


「………………こんなにも簡単に騙せるとは…。流石はルナティック様……。」


ローブ姿の男がフードを上げる。


「よくやったデスパ。もっとかかると思ってたんだがなぁ。まさかたったの20年足らずでこれか。アホだな。」


「オントギ星人は短命種ですから。」


全てヴィルホーンの陰謀であった。

ルナティック。

ヴィルホーンの親玉である。

見た目は一見、可愛らしい少年に見えるが目を見れば【人のそれ】ではないとわかる。

少しイラつきつつ、自分の頬を撫でる。


「疼きますか…。」


「………………。」


かつて、ゴルズにつけられた顔面の古傷。

時折痛むのだ。

とくに、自分が有利に立っていたり思うように事が運ばれている時に疼く。

気に入らない。

まるで、ゴルズ率いるポーズトッポたちがいつでもお前らを見ているぞと、監視されているような気分になるのだ。


「後のことは下のやつらに任せて次行くぞ。」


「はい、かしこまりました。お次は………障害者施設の設立ですねぇ。胸が躍りますよぉ。」


「気持ち悪ぃなテメェ。それにしても…なぁんで銀河政府のやつらはこんな回りくどいやり方押し付けてくんのか。」


「遠回りこそ近道!ですよルナティック様!民衆に飲ませ続けた井戸水の毒素!DNAレベルで刻み込まれているはず!なのでこれからあいつらはぁ……………!!!」


人さし指を立てるデスパ。

さっきからニッコニコである。


「カタワしか作れねぇってことか。それで施設に入れて成分抽出…………回りくでぇ〜〜〜、汚れ仕事だな。」


ルナティックはポケットに手を突っ込み、トボトボと歩き出した。

それを、待ってくださいよ〜と追いかけるデスパ。

事の詳細。

とある薬を、SNSなどを通じサプリメントとして頒布。

これを飲むと、精子と卵子が減少。

最後は0になってしまう。

正体はただの男女兼用宇宙ピル。

これを、美容だの筋肉がつくだの健康になれるだのの謳い文句で広めたのだ。

最初こそ、こんな薬を飲むのは危険だ!みんなは騙されている!と声を上げたものもいたが、日常に溶け込んだ薬に違和感を覚えない民衆はその声を陰謀論者扱い。

そして遂にこどもができなくなってしまった。

そこで、デスパたちが魔道士と名乗り出た。


「この村は呪われている………!!!」


神の怒り。

科学力と魔法が発達した村人たちにそんな話が通用すると思うだろうか?

それがしてしまったのだ。

科学と魔法に甘んじ、神の存在を忘れてしまっていたと、都合よく解釈。

どの時代、どの惑星、どの人間も勝手である。

薬の反対派に対しては陰謀論者扱い。

デスパたちは、救いの手を差し伸べてくれた魔道士。

考えればわかるものを、進みすぎた科学と魔法により脳が萎縮したか。

デスパは薬は危険だと豪語。

タイミングを見計らったのだろう。

薬自体は長年飲み続けていたとしても、やめれば

少しずつ精子と卵子の数は増えていく。

村人は手のひらを返すように薬を捨てた。

そこで、毒を仕込んでいた井戸水の出番である。

精子と卵子を奇形にしていったのだ。

少しずつ、浸透していった、体を蝕む毒水と薬。

ちなみに、雨が降らない理由。

一部の銀河政府とヴィルホーンが協力して気象コントロールしているだけである。


「それにしても、なぜあの夫婦を選んだのですか?あの夫婦には、井戸水を飲ませないために選ばれし男女扱いでヨイショするの…大変だったんですよ?」


「テキトー。なんか目の前にいたから。」


「あら、ひっどーい!♪流石我らがボス!ルナティック様!♪」


「上手いこと薬の副作用で白髪頭に生まれてくれて助かったな。ほかの住人どもと同じオレンジで生まれてたら一気にこっち見られる。」


「大丈夫ですよ。その時は予言が変わっただのと言えば騙せますから。信じてやまないんですよ。こういうアホどもは。ウフフ♪」


「だろうな。にしても可哀想なやつらだよなーオントギ星人。一つの政党に反対しただけで目つけられたんだからよ。」


「ホントに可哀想って思ってます?」


「思ってねぇwwwwww」


2人のゲロ以下の笑いが響いた。






「………………。」


顔面蒼白のマヤとジェリー。

本当かどうか真偽はわからないが、ヴィルホーンのやる事である。

そこに銀河政府が関わっているのが信じられない。


「確かに…耳にしたことはある。一時期…短命の種族に子どもが生まれなくなる時があったって…まさか、それ全部…。」


「全部が全部じゃないけど、大体ヴィルホーンが関わってるよメスケモさん。人ってね…すぐに騙せるんだよ。政府が圧力かけて、不安を煽るような工作すれば…簡単に嘘を信じ込む。」


とくに現在では、SNSが当然のように普及されている。

何も考えずに、画面に現れた情報を鵜呑みにしてしまうものが増えたのか。

しかし、上の世代が下の世代にものを伝えていくのが、どの種族においても自然な流れ。

マヤはすぐに違和感を覚えた。

薬に反対した一部のものがいるならば、そんな村全体で起きるわけがないだろうと。

それに、目の前の女はアボリカル。

ルフェアなどという名前ではない。


「嘘八百ばっか並べやがって。」


それを聞いたアボリカルはケタケタと笑いだした。


「なに笑ってんだよ気持ち悪ぃ…。」


「アッハッハッハ……!!!……あのねぇ!!!科学と魔法が発達しまくったらどうなるかわからないの!??!人と人の繋がりが薄くなるんだよ!!!技術の進化に人の心がついていけるなんて幻想!!!それこそ御伽噺ッッッッ!!!!!」


狂ったような笑みを浮かべ、右足で思いっきり床を踏み鳴らす。

その衝撃で足元の床は抉れ飛んだ。 


ボゴッ!!!


「まだ信じられないって顔してるね!!!何を言ってるんだと!!!そんなことあるわけないだろうと!!!あるんだよ!!!実際故郷がそれだったんだから!!!地球も例外じゃない!!!宇宙貿易で科学と魔法がいっぺんに進化してる!!!どうなるかわかんないよ!!!???!」


「……………お前誰なんだよ。お前アボリカルだろ。ルフェアなんだったら、なんで生きてるのよ。」


「そうだよ〜マヤちゃん♪わたしはアボリカル。ベイルっていうヴィルホーンの学者に改造された、言わば人造人間。キメラ合成人ってやつかな。」


アボリカルは指を頭にあてる。

5歳になったルフェアは、確かに村人の暴力に襲われて死んだ。

しかし、厳密に言えば死んだのは脳幹であり脳は生きていた。

そこで、ベイルが他者の脳幹をルフェアの脳に接続。外科手術を施した。

体もズタズタになっていたとはいえ、すぐに治療を行えばすぐに回復する。

惑星オントギのドーワ村の儀式が終わった後、ヴィルホーンによって回収された結末である。


「それでつけられた名前が【アボリカル】。ディアボリカルっていうのが由来らしいよ。酷いよねぇ。」


「じゃ、じゃあ…!アンタもヴィルホーンにいいように使われてる身ってことじゃんか!話せばわかるんじゃない!?ほら、私たちもう戦うこと自体無意味ってことじゃん!」


ジェリーが少し希望を見いだしたのか、安堵の笑みで前に出た。

アボリカルに向け、手を差し伸べた。


「利用者をこんな目に合わせてる連中よ!!!そんなやつらに手を貸す理由なんてどこにもないじゃない!ほら!」


「……………話せばわかる………か…。」


「うんうん!!!だからーーーーー」


「貴方たち2人は、話してもわからなかったからこんなとこにいるんじゃないの?」


「………………ッッッ……。」


「両親にやめてって言って暴力は止まった?薬物やめた?小鳥をいじめるのをやめてって言ってやめてもらえた?」


「…………それとこれは………。」


「なにが違うのさ。同じだよ。所詮私はヴィルホーンの操り人形。今さら立ち向かえって?無理だよそんなの。過去に縛られてるんだから。」


実の両親に指をへし折られ、仲良くしてもらっていた近所の人に目を潰される。

アボリカルはもう壊れていた。

なにも信用できないのだ。

自分の意思を持たず、今こうしているのがなにより楽なのだ。


「でも友達は欲しかった…。だから。殺された利用者の体の一部をぬいぐるみさんに入れた。生きてたらまた裏切られるかもしれないけど、ぬいぐるみさんは裏切らないもん。」


何も言えないマヤとジェリー。

そして忘れてしまっていた。

話を聞きすぎたのだ。

アボリカルは静かに手のひらを合わせ、印を結び終えた。


パリイイイィィンッッッッッッッ!!!!!


「な………しまったッッッッ!!!」


ジェリーが音の鳴った方を見ると、切断されたキラキラと輝くアボリカルの両腕が砕けたのだ。

そして、同時に床から鍾乳石を逆さまにしたような形の水晶が次々と現れた。


「警戒してマヤッッッッ!!!なにするかわかんないよッッッッ!!!」


「わかってるッッッッ!!!」


グニュッグニュ

グニュニュ………


こちらを見つめる複数の瞳。

なんと、砕け散った破片がアボリカルの姿に変貌したのだ。

その数25人。

オリジナル体とペットを合わせると、この戦闘は2vs27となる。

先ほどよりも青ざめる2人。

絶望的状況。

四面楚歌。


「ゴブッッッッッッッッ!!!」 


ボタ………ボタタ……


ゲホゲホと咳き込むアボリカル。

口元から真っ赤な鮮血が滴り落ちる。


「キッツイか………やっぱり…………。大丈夫…心配しないでペットちゃん……大丈夫だから…。」


「ジェリー…まだなんとか勝機はありそう……!!!」


「なんとか耐えきるよッッッッ!!!マヤッッッッッッッッ!!!!!」


2人は素早く印を結んだ。

アボリカルは指を立て、クイッと2人に向ける。

その瞬間一斉に分身体が襲いかかった。


「影遁ッッッッ!!!黒利影《くろとかげ》ッッッッ!!!」


マヤの足元から大量の影が、分身体に突き刺さる。


「心臓に一突きよッッッッ!!!それに影遁だからそっちからは掴めーーーー」


「「「「「「バァ♪」」」」」」


ほぼ同じタイミングで、分身体の肉が大きく裂け、黒利影から脱出。

一気にマヤに接近し、四方八方から殴打の嵐。


ドガッッッッ!!!バキッッッッ!!!


「マヤッッッッ!!!クッソ……!!!鵺毒骸《やどくがい》ッッッッ!!!」


ジェリーは全身に毒の鎧を纏い、殴りかかってきた分身体の拳をブロック。


「………………。」


ドロドロに溶けた腕を見つめる分身体。

ジェリーが心でヨシ!と安堵したが、その希望は泡沫の夢。

分身体は、迷いなく腕を引きちぎり即時再生。

後ろから違う分身体に羽交い締めされ、正面から何度も拳を叩き込まれた。


「ガハッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!」


あまりの猛攻に目を瞑り吐血するも、ジェリーはある事に気がついた。

分身体に触れられているにも関わらず、宝石化していない。

恐らく、オリジナルだけの能力なのだろう。

ジェリーはマヤを巻き込まないように気をつけながら、鎧をバラし超猛毒の刀に変化させ、分身体を斬り刻んだ。


ビュンッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!


「ッッッッ!!???!!」


直後、弾き飛ばされるジェリー。

ペットの拳がクリーンヒットしたのだ。

壁にめり込むジェリー。


「クッ………デカブツのこと………忘れてた………。」


そして顔を上げると、目と鼻の先に大量の分身体。


「あ……………あぁ…………………あ……。」


ドゴオオオォォッッッッッッッッ!!!

ガッッッッッッッッッ!!!

バキィッッッッ!!!!!


「じ…………ジェリー……………。」


マヤは血溜まりに沈んでいた。

その周りにはアボリカルたち。


「は…………ハハハ………めっちゃヤバいしこれ…………。」


「「「諦めたら?大丈夫だよ。ぬいぐるみさんにしてあげるから。」」」


「ぬいぐるみ………さんね………ハハハ…。お前……忘れて……るっしょ………。」


「「「???」」」


「私は………鳥さんとも………友達……だってこと………。この出血量………今なら………十分……いける……………。」


カリッ


ふらつきつつ、無理やり体を起こすマヤ。

右親指の腹を犬歯で噛み切っていた。


「お前……だけじゃ………ない………っての…………!!!!!【口寄せの術】ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


ボンッッッッッッッッッッッッ!!!!!!


「キエエエエエエエエエェェェェェェッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」


満を持しての口寄せの術。

バカでかい九官鳥がマヤを背負い、翼でとてつもない風を起こし分身体とペットを吹き飛ばした。


「ルロイッッッッ!!!ごめんねこんな時に呼んで!!!手を貸してッッッッ!!!」


「クエッッッッ!!!」


修道士かな?

ルロイはすぐにジェリーを救出。

全身の骨がへし折れ、顔も腫れ上がり息も絶えだえ。


「ちょっとしか残ってないけど…………!!!」


壊れた魔力ドリンク。

それを口に含み、マヤはジェリーに口移しで飲ませた。

目が開くジェリー。

とても全開とは言えないが、なんとか立てる程度には回復。


「バアアアァァァァァァッッッッ!!!痒いいいいぃぃぃッッッッ!!!」


口元を押さえ慌てふためくマヤ。

ケモノアレルギーだった。


ズコー!!!


「あんがとマヤ…!!!それにルロイも………!!!」


「うん!!!ジェリー!!!アレやるよ!!!」


口元にプツプツができたマヤ。

アレ、とはなんなのだろうか。

どうやらジェリーは理解した様子である。


シュバババババッッッッ!!!


高速で印を結び、最後にマヤの左手、ジェリーの右手を合わせた。


「「合体ッッッッ!!!毒塗影《どくとかげ》ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」」


ヌウウウウッッッ!!!


毒々しい、紫が入り混じった黒いトカゲが出現。

次々に分身体の全身を致死性の超猛毒で侵していった。

ルロイはスペース・ビースターの一種であるドクドクドリ。

毒が通用しないのだ。


「「いけええええええぇぇぇぇぇッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」」


ドッボオオオォォォォ!!!!!!


「かか………け………か………………。」


分身体とペットが、ドロドロと溶けていく。

ハイタッチする2人。

そして、フルフルと震えるルロイ。

時間制限だろう。

マヤとジェリーにアイコンタクトを送り、ボンッ!と姿を消した。


ドサッ


「痛たたた………あんがと……ルロイ………。」


「ありがとうマヤ…それに…ルロイもね…。できればオリジナルのアイツも巻き込みたかったけど………。」


「大丈夫………っしょ……。立てる…ジェリー…?ほら。」


手を差し伸べるマヤ。

ジェリーは強く握り、膝をつきながらも立ち上がる。


「アイツもそろそろ限界だろうし…ここが正念場よ。」


アボリカルの方を見た2人。

そこには、毒を吸収した数百体の分身体が並んでいた。



「え………………ぁ…………。」


「あ………………ぁ………………。」


一斉に走りだす分身体。

終わりだ。

2人は印も結ばず、その場で立ち尽くしていた。

接近する拳。


ブチャッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ






分身体が同時に崩れ落ちた。

アボリカルが大量に吐血して倒れたのだ。


「やっぱり…………………無理………か………。」


「………………。」


傷だらけで見つめる2人。

これも作戦かもしれない。

しかし、魔力のエネルギーは底をつきとても練れたものではない。

なんにせよ、反撃の余地がないのだ。


「私さ……………未完成………なんだよね…………。」


「…………未完成?」


「厳密に言えば………ベイルに作られた…初期型のキメラ…………。ホン………トのこと言うと………もう………寿命………なかったんだよね………。」


「……………………。」


「ごめ……………んね…………。酷いこと…………して………さ…………。」


アボリカルは話を続けた。

所詮自分は使い捨てのモルモット。

本当は母星で死ぬ運命だったのをヴィルホーンの気まぐれで回収された身。

改造され、自由に動かせる体を再び手に入れたがエネルギーが不安定でいつ死んでもおかしくなかった。

今さらなにも信用できない。

ならば、ヴィルホーンの言うとおりに動くほうが楽である。

コスモトニンを抽出され、干からびて処理される利用者。

アボリカルはその遺体から臓物を抜き取り、ぬいぐるみに詰めて友達と呼んでいた。

アボリカルは誰ひとりとして殺していなかったのだ。


「私って…………なんのために……生まれたんだろうね…………。」


家族と遊びたかった。

愛に触れたかった。

ご飯を食べたかった。

友達と出かけたかった。

学校に行きたかった。

お弁当を食べたかった。

恋をしてみたかった。

なにより…………

【普通の女の子に生まれたかった】


「次…………生まれるんなら…………普通の女の子に……………なりたいな…………。」


「………………。」


「………………。」


何も言えない2人。

もうアボリカルに戦う力は残されていないだろう。


「……………気を……つけてね…………。」


「………え?」


「えぷしー………たう………ん。職員に…………ヴィルホーンの……………幹部…………………。」


「……えっ……???幹部のなに……?!!?」


…………………………


返事が返ってこない。

アボリカルは事切れていた。

その死に顔は皮肉にも、今までの人生の中で一番安らかであった。

享年9歳。


アボリカルvsマヤ&ジェリー


マヤ&ジェリー 勝利

アボリカル 死亡






カツン…カツン…


「あ………あんた……確か……。」


後ろから聞こえる足音。

振り返ると、そこにはガンテが立っていた。

どこか寂しそうな顔である。


「ルフェア…………逝ったか…。」


「え……なんでアンタ、ルフェアって……」


スッ………


ドッッッッッッバァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!


突き出した手のひら。

ガンテは問答無用で2人を爆風で吹き飛ばした。


「…………………………。」


パラパラと降り注ぐ瓦礫や粉塵。

ガンテはポケットに手を突っ込み、その場を後にした。

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