第90話 それぞれの宝
時は少し遡る。
モチェットと二手に別れたジェリーとマヤ。
突き進んだ扉の奥。
上や横に階段が並ぶ歪な廊下に続いていた。
「ちょ、なにこれ。上と横に階段あるし。」
「アートは好きだけど、これはちょっとキモいよねマヤ。」
「ほんとね。」
芸術は美しい。
しかし、それは作り手にもよる話。
こんな外道が描いた作品など、目も当てられない。
はっきり言って価値なしである。
少し汗を流しながら走る2人の目の前に、またまた現れた扉。
見た目だけで言うとかなりメルヘンチック。
おとぎ話に出てきそうな可愛いものである。
ヴィルホーンが関わっていなければ、良かったのだが。
「開かないし。」
「どいてマヤ。」
ジュボッ
ジェリーが毒遁でドアノブと鍵を腐食させた。
本人曰く、毒遁ではなく腐遁と言っているが、お察しのように銀河政府には認められていない。
読み方は【ふとん】。
お布団じゃないよ。
ジェリーは扉を蹴り飛ばし、中に足を踏み入れた。
2人とも事前に印は結んである。
準備は万端だ。
「えっ。」
口をあんぐり開くジェリー。
愛らしいBGMが流れ、周りにはぬいぐるみたち。
床はカラフルなタイル、壁はチェック柄でとても綺麗である。
もっと血まみれだったりの凄惨な光景を想像していた2人は、まるで鳩が豆鉄砲をくらったようであった。
「なにさこれ…。テーブルにコーヒーカップ…、それにトランプ兵士の置物…。」
「天井にもいっぱいぬいぐるみ吊られてるし…。なんかまるでーーーーー」
「不思議の国ぃ?」
「ッッッッ!!!」
唐突に聞こえた柔らかい声。
雑貨だらけで気が付かなかったのか、急に出てきたのか。
足を組んでこちらを見下ろすのは、赤い頭巾を被った女の子。
ピンクと白のシマシマ模様のルーズソックス。
少し短めのフリフリスカート。
どこか余裕そうな表情で、紅茶を優雅に飲んでいた。
「ごきげんよう。そしていらっしゃい。ここは私が作った楽園ーーーーー」
バシュンッッッッ!!!!!
ドッバァァァァァァァァァ!!!!!!!
「ヴェノムヒドゥンショット。」
ジェリーが冷たい表情で毒玉を発射したのだ。
別に試合じゃないしね。
勝ちゃこっちのもんよ。
「やった?」
「マヤそれフラグじゃない…?まぁ私もアレで倒せたとは思ってないけどさ。」
ドロドロに溶けたオブジェクト。
異臭を放ち、少し熱を帯びていた。
そしてそれが落ち着き、状況に合わないBGMがその場に流れている。
「酷くない?私まだ喋ってんじゃんよ。」
真後ろ。
マヤとジェリーはすかさず後ろ蹴りを放つも、両手で軽々しく受け止められた。
その女の子………いや、ヴィルホーンの幹部てわかってるから女の子とか言いたくないんやけども…その女の子の腕はキラキラと宝石のように輝いていた。
はやく名乗ってくれ。
「綺麗でしょ?私の腕。宝石みたいにキラキラ…。ねぇ?」
早く名乗れ。
マヤはその腕を見て察した。
聞いたことがある。
土属性の中に、一際珍しいタイプ…通称【晶遁】。
体をクリスタルやエメラルドのように変化させることができる魔法使いがいると。
まだ確定ではないが、可能性として考えられる。
「いや、いつまで触ってんのよ…んのアバズレッッッッ!!!」
マヤは掴まれている状況を逆に利用し、体を浮かせ右足のハイキックを女の子にお見舞いした。
まともに食らった衝撃で、つい手を離し後退り。
ジェリーはタイミングを合わせ、しゃがみ込んだので2人のコンビネーションが光っている。
ズザザザッッッッ!!!
「痛ったぁ〜。下品だし、下品だし下品。このメルヘンワールドには似合わないなぁ〜。もぅやだぁ〜。」
可愛らしく口を尖らすも、どこか気持ちの悪いオーラがにじみ出ている。
それ以前にダメージが入っていないように見える。
(気持ち悪…確実に側頭部叩き込んだのに…。)
「宝石ってさぁ〜、綺麗と思うのよね〜。見ていて心潤うの。もちろん、ぬいぐるみとかも大好き。」
急に語りだす女の子。
2人相手に余裕も余裕である。
「ぬいぐるみさんはフワフワしてるし、宝石はキラキラしてる!ほら見て!お部屋いっぱいにあるでしょう?これぜーんぶ私のお友達!」
手を広げ、部屋を示す。
なんのアピールなのだろうか。
ここだけ切り取れば、残虐性がそこまで感じ取れない。
部屋もメルヘン調で綺麗に整っている上、埃も見当たらない。
そんな【お友達】をドロドロに溶かされて、怒らないのも気味が悪い。
「でもねぇ、形あるものっていつかは壊れるっていうじゃん?それもまた、綺麗と思うのよね〜。」
パキキキッッ……
「……………?」
ジェリーとマヤは掴まれたほうの足に違和感を覚えた。
なぜかキラキラと輝いている。
それはまるで宝石そのもの。
「宝石って、砕けても綺麗なのよ〜。こんな感じでッッッッ!!!」
バリイイイィィィィィンッッッッッッッッ!!!
2人のそれぞれの掴まれた足。
その足首から下にかけ、砕け散った。
「イ゛ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」
「ガ…………………ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」
ドサッと倒れるマヤとジェリー。
激痛に襲われ、欠損したせいでバランスを崩してしまったのだろう。
「私はアボリカル。貴方たちも宝石にしてあげる♪」
「…………………。」
「…………………。」
廊下を走っていたゴルズと銀之助。
突入時にマーキングしていたポイントを目指していたが、ほぼ2人同時に足を止めた。
クルッと体をひねり、振り返るゴルズ。
銀之助も同じく、辿ってきた道をなにやら凝視している。
「嫌な予感がする…。」
「ゴルズさんもっすか………。」
「マスター、あんたぁ…悪いけど戻ってくれねぇか。」
ポイント地点までもう少し。
それなのに、ゴルズは来た道を戻ってくれなどと不思議なことを言う。
なにかを察知したのか。
「ほな、ゴルズさんは…。」
「俺はこのまま進む。悪いなマスター………死ぬんじゃねぇぞ。」
「………お互いにっすよ………!!!」
胸にざわつく、気持ちの悪いモヤモヤを抱きつつ、2人は背中を預け合った。
長い会話は必要ない。
強い言葉は必要ない。
元ヤクザの頭と元軍人。
過去や生い立ちは違えど、今は同じ街で暮らす住人。
それだけで、事足りるだろう。
(空間は異次元人の兄ちゃんがロックしてくれてる…。ヴィルホーンの連中は追い詰められたもの同然…。なのになんだこの気持ち悪さは………。)
地下施設に乗り込んだメンバーを頭に浮かべ、無事を祈ることしかできない自分に腹立たしさを覚える。
それと同時に、アイツらがそう簡単に死ぬタマではないこともわかっている。
信用ではなく信頼。
なにも子どもではないのだ。
今まで死線を掻い潜ってきた仲間なのだ。
大丈夫…。
ゴルズは力強く、次の扉をこじ開けた。
「体がピカピカのジュエリーになるってぇ、素敵だと思わない?確かケモメス、名前ジェリーだったよねぇ?似てるじゃん?」
嫌らしいクソ女である。
ジェリーは激痛に耐えながら印を結び、指先から黒い玉をアボリカルめがけ発射。
「ペットちゃん。」
狂ったような笑顔を保ちつつ、冷静に名前を呼ぶアボリカル。
すると、ツギハギだらけのデカいぬいぐるみが黒い玉から庇うように前に立った。
玉はペットに命中。
ボンッッッッ!!!
「あ!??!!」
ゲホッゲホッ!!!
あたりに広がるモヤ。
毒玉と思っていたが、ただの煙幕玉だった。
「なによこれ〜!ただの煙幕じゃん…………て…。」
煙幕を斬り裂くように、薄く黒い物体が迫る。
スカーフを彷彿とさせるしなやかさだが、鋭利にも見える。
「ペットちゃん、頼んだ。」
「グモモモモ…………。」
ペットが太い腕を横に伸ばし、壁役になるも黒い物体はガクンッ!!!と折れ曲った。
ならば掴んで宝石にすればいい。
右から襲いかかる黒い物体に手を伸ばした。
スッ………………
「ッッッッッッッッ!!!!!」
なんとかまともに命中することは避けれたが、頬を深く切ってしまった。
やがて煙幕は晴れ、ジェリーとマヤの姿がくっきりと現れる。
「あらぁ…………足治ってるじゃん…。それに、今の……………。」
2人がそれぞれ片手に持つは魔力ドリンク。
煙幕で気をそらさせて飲んだのだろう。
そして、先ほどの黒い物体。
それはマヤの足元から伸びていた。
「影遁・黒リボン…………!!!どうやらお前、なんでもかんでも掴めるわけじゃないみたいね。」
「……………卑怯だよねぇ。こっちは体力回復の道具なんかないのに。それに影って…ちょっとカッコいいじゃん?」
嫌味が含まれてそうな言い回し。
ペットが心配そうに顔をアボリカルに向ける。
「大丈夫よペットちゃん。気にしないで?」
「グモモモモ。」
気を取り直したのか、ペットはこちらに顔を向き直した。
目はボタンで口は縫い合わされているので、表情がない分何を考えているのかわからない。
油断ならない怪物である。
「ねぇマヤ…、あのデカブツもしかして…。」
「うん、合ってると思う。多分【召喚獣】かなにかの類いかなって。」
召喚獣。
特殊魔法のひとつである召喚魔法により呼び出される生き物のこと。
召喚士となる契約者が、動物などと心を交わし魔法をかけることにより成立する。
とは言え、なにも動物だけでなく人間相手にも物相手にも契約はできる。
物に対しては、ある種のマーキングに似ている。
ゴルズが何もない場所から、三節棍を取り出しているのもこれにあたる。
人間相手にも契約できるのはできるが、プライバシーなどそれぞれ事情があるので中々成立しない。
次元を経由しているとはいえ、空間魔法のほうが使い勝手はいいだろう。
「暴れちゃっていいよペットちゃん♪わたしは心配いらないから。なんでって?そりゃあ………」
シュウウウゥゥ
「すぐに治るし♪♪♪」
驚愕するマヤとジェリー。
血で見えていないが、頬骨までが露出するほどのダメージ。
それが一瞬にして治癒。
魔法を使ったとも思えない。
不気味そのもの。
「素敵なパーティ始めましょう?」
「グモモモモオオオオオォォォォォッッッッッッッッ!!!!!」
デカい足音を踏み鳴らし、巨体を揺らしながら突っ込むペット。
時速にしておよそ120kmはあるだろう。
「マヤッッッッ!!!あのデカブツは私が相手するッッッッ!!!」
「あいよッッッッ!!!」
ジェリーはヴェノムヒドゥンショットを指先から発射。
一発ではなく、まるでマシンガンのように乱射したのだ。
ドババババババババッッッッ!!!!!
ドジュッッッッ!!!
「グモモモォォォ!!!!!」
直撃した足や腕。
そのまま毒が周り、腐り落ちた。
態勢を崩しペットは派手に転倒…するかと思いきや生きているもう片方の腕で壁や床を殴りつけた。
ドゴオオオォォッッッッ!!!!!
メメゴキギ………ガガガ………ッッッッ!!!!!
「な………!!!」
みるみるうちに腐り落ちた足と腕は再生。
壁や床の材質がパーツとして吸収されたのだろう。
「ペットちゃん、不死身だから気をつけてね〜。」
「グモモモォォォ!!!!!!」
ペットの突進が再びジェリーを襲う。
「クッソッッッッ!!!先に言えよ!!!毒壁ッッッッ!!!!!」
ドガッッッッッッッッ!!!!!!!
黒と紫が入り混じった毒の壁。
立派なものではあるが、嘲笑うかのようにペットは壁ごとジェリーを反対側の壁まで吹っ飛ばした。
「ジェリーッッッッッッッッ!!!!!」
「相方心配してる場合〜???随分余裕じゃん。」
アボリカルの腕が伸びる。
マヤはアクロバティックに回避し、足刀を顔面に叩き込んだ。
可愛らしいスニーカーだが、しっかりと安全靴仕様。
硬い鉄の先端がアボリカルの顔面を捉え、深く抉った。
「さっきの蹴りでわかった。お前が宝石にできるのは…どうやら手で触れたものだけってね!!!」
マヤの足もとから出刃包丁を彷彿とさせる影が浮き上がり、アボリカルの両腕に斬り掛かった。
ガンッッッッッッッッッッッッ!!!!!
「やっぱそう上手くいかんか…!!!」
硬度が高いのか、影はアボリカルの腕の表面で止まった。
「硬いからね私ッッッ!!!」
「じゃあ、これならどうよッッッ!!!」
ギュンッッッッ…………
キイイイイイイィィィィィンッッッッッッッッ!!!!!!
表面に触れている影の形が変わり、チェンソーのように回転。
そして両腕を斬り落とした。
ザンッッッッッッッッッッッッ!!!!!!
(よし……!!!これでもう宝石には………)
マヤに怖気が走る。
笑っているのだ。
鼻が潰れ、大きく裂けた顔でアボリカルは笑みを浮かべていた。
痛覚も恐怖心もないのか。
その一瞬のせいで、マヤの判断は遅れ、後ろにペットがいることに気が付かなかった。
そのまま太い腕でマヤは殴り飛ばされた。
「ゲホッ………ゲホッ……………!!!油断………した…………クッソ…………!!!」
オブジェクトやぬいぐるみ、瓦礫に埋もれるマヤ。
それらを支えに体を起こそうとした時、なにか柔らかいグニュッとした感触に違和感を覚えた。
「あ……?なによ…………。」
衝撃に巻き込まれ、ボロボロのぬいぐるみ。
なにか赤く染まっている。
それになにかはみ出ている。
「〜〜〜〜〜〜ッッッッッッッッッッッッ!!!」
臓腑だった。
ぬいぐるみに詰め物として入れられていたのだ。
中には変色し、赤黒くなった綿。
まさかこの部屋のぬいぐるみ全てがそれなのか。
「あ〜、そのぬいぐるみさん気に入ってたのになぁ〜。」
カツンカツンと靴音が響く。
さも当然のように、顔面と両腕の傷は再生。
「悪趣味すぎんだろ………ッッッッ!!!私もぬいぐるみ大好きだけど、お前マジでこれはないわ!!!ありえないッッッッ!!!」
「酷いこと言うなぁ。こういう形で利用者のみんなといつまでも一緒にいれるんだよ?」
「利用者って…………お前…まさか………。」
「うん。私のお友達。ここにあるぬいぐるみさんと置物さんみ〜〜〜〜〜〜〜んなお友達!!!」
天を仰ぎ、両手を広げるアボリカル。
本人は満面の笑みでとても楽しそうだが、吐き気を覚えるとしかいいようがない。
「気持ち悪ぃ………!!!なんなんだよお前らはッッッッ!!!いい施設もいい作業所もあるのに、なんでお前らはそんな残酷なんだよッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」
ゆっくりと目線をこちらに向けるアボリカル。
無表情で何を考えているのか全くわからない。
「残酷ねぇ。なにが残酷なのかわかんないや。そんなこと言ったら…お友達の小鳥さんを守るために人間惨殺したあなたと、薬に溺れた挙句自業自得なのに彼氏に責任転嫁して惨殺したジェリー………残酷じゃないの?」
「…………………ッッ……!!!」
マヤとジェリーの過去のことを言っているのだろう。
「動揺しちゃったね♪」
アボリカルが超至近距離まで接近。
右手がマヤの顔面を覆い始めた。
「宝石になったら苦しくないよ………。もう…大丈夫…。」
ドガッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!
アボリカルは床に体を何度も打ち付け、吹っ飛んだ。
「大丈夫!??!マヤッッッッ!!!触られてない!?!!?!」
「じぇ………ジェリー………。」
「アイツのこと言うことなんか気にしなくていいから!!!過去は過去!!!どうしようもないけど………前向いて生きるしか、人間不器用なんだからそれしかできないんだって!!!!!」
「…………………あんがと……。」
ジェリーの手を取り、マヤはしっかりと立ち上がった。
それとほぼ同時にアボリカルも起き上がる。
両足を床につけ、そのまま腕を使わずに背筋だけでぬるっと起き上がるその姿。
まるで操り人形である。
「あなたたちのさ……………その言葉…………」
「………あぁ!???!」
前髪がダランと下がり、顔が見えないアボリカル。
なにやら独り言のように喋り始めた。
「過去は過去……、前を向いて歩くしかないって……。」
「………………。」
「じゃあさ…前を向いて歩けない人間は………【死ね】ってこと?」
「な…………なに言って…………そんなこと言ってなーーーー」
「そう言ってるよ。心の弱い人間は、前に進めない。今生きてるからそう見られてるだけで…それは勝手に世界が流れるから進まされてるだけ。強制スクロールみたいにね…。」
「強制…………スクロール……。」
「過去を乗り越えられない人間は………死ぬか壊れるしかないから。」
「……………………。」
惑星バルモラ。
マヤは両親と暮らす一人っ子だった。
友達がいないわけではない。
ただ、一人の時間を大事にする女の子だった。
それに、人間はどんなにいい人でも付き合っていたら気疲れというものがある。
しかし、それがない友達。
それがぬいぐるみと動物。
とくにマヤは鳥が好きだった。
毎週近くの森に遊びにいくほどだった。
そして高校生の時、友達の鳥たちがしょーもないJKのグループに襲われていた。
止めに入ったが、数の暴力。
やめてと懇願しても小動物虐待をやめない女どもにぶちぎれ、影遁で惨殺。
その後少年院で過ごし、小鳥たちに襲われている餌塗れでうずくまるゴルズと出会い極道の道に入った。
「………………過去…………。」
ジェリーの両親は薬物中毒だった。
惑星ファート・スカンク星人。
小さい時から、母親は彼氏と薬物を摂取しては体を重ねていた。
そして気に入らないことがあれば、彼氏は母親に暴力を振るっていた。
その矛先はジェリーにも向けられ、幾度となく傷を負ってきた。
惑星ファートはあまり外交的ではなく、警察もほとんど機能していない。
児童買春や虐待など、日常茶飯時だった。
手を差し伸べるものなどどこにもいなかった。
「両親みたいには絶対にならない」
そう誓ったジェリーは、夜の街で体を売り金を貯めた。
学校に行きたかったのだ。
こんな惑星さっさと出て、自分のために自分の人生を生きよう。
そう思い、行動したはいいがこんな杜撰な惑星での夜職。
ジェリーは躁うつ病と強迫性障害を発症。
それでも、薬を飲みながらどうにか体を張って生きていた。
その矢先、ある男に出会った。
ハンサムで、生い立ちが酷いジェリーをつつみ込んでくれた。
惚れないわけがなかった。
2人はすぐに付き合った。
そして、一緒になって半年目の時彼氏に呼び出された。
少し早いが記念日だろうと思い、心躍りながら過ごしたデート。
最後はホテル。
そこには、数人の男たち。
要は、ジェリーを売りたかっただけなのだ。
最初から騙されていた。
今思えばそうだった。
何度も金をせびられた。
抱きたい時にだけ呼び出されていた。
体を弄る薄汚れた何本もの腕。
絶望したジェリーはその場で彼氏含めて全員惨殺。
その後は女性刑務所で過ごし、薬におぼれた。
しかし、皮肉にもその積み重ねにより毒遁に目覚めた。
これ以上生きていても仕方ない。
幸せになりたかった。
意を決し、ジェリーは橋から飛び降りた。
そして、川で釣りをしていたゴルズとモチェットに直撃。
極道の道に入った。
「いいよねぇ…強い人って…羨ましい。」
少しうつむき、寂しそうな表情のアボリカル。
そして、ここにきて初めて印を結んだ。




