第88話 コワレタココロ
惑星ウッズ。
フラットウッズモンスターの名前でよく知られているUMAの一種。
しかし、宇宙貿易が始まった途端、異星人として片付けられた。
今の時代ではよくあるケースだ。
チュパカブラでさえ、地球とは違う惑星の宇宙生物なのだから。
「母さん…ありがとう。」
モチェットは、銀河鉄道に乗り込む寸前だった。
そして、母が見送りに来てくれていた。
「モチェット…アンタ育てるのホントに大変だったよ。」
「……………。」
フラットウッズモンスターは、平均身長3mほど。
しかし、モチェットの身長はたった229cm。
はっきり言ってチビである。
奇形と言われたこともあるらしい。
それに、この種族は毒遁を得意としていたが、モチェットは生まれつき毒遁とは相性が悪かった。
医者からは、これはただのタイプ違いだと、他の魔法を使えるようにしたほうがいいと勧められたが、まだまだ世間の目が厳しいもので、両親は素直に認められなかった。
かなりのスパルタで育て上げられたモチェット。
そのお陰か、強靭なメンタルを手に入れた。
父親は厳格で古臭い性格だった。
勉強で赤点を取れば殴る蹴るは当然だった。
時たまおもちゃやゲームなどを買ってくれたらしいが、モチェット曰く怖かったとのこと。
母親はパートで家を空けることが多かったが、モチェットの話はよく聞いていた。
学校でこんなことがあった、給食がどうだった、などのくだらない話でも真剣に聞いてくれていた。
しかし、赤点を取れば殴る蹴るは当然だった。
あり?両方からしばかれとるやんけ。
とは言え、両親はモチェットを愛していた。
世間の風潮に負けないように、そして同種族を見返すために敢えて甘やかさずにスパルタで育て上げたのだから。
「母さんと父さんのお陰で、腐らずにここまで来れました。ありがとう。連絡は定期的にするよ。」
「できれば、毒遁で周りを腐らせて欲しかったんだけどね。アンタじゃなく。でも…気をつけて。」
少し微笑み、モチェットは鉄道に乗り込んだ。
お互いに、窓越しに手を振り合う。
そして次第に母の顔が遠く、小さくなっていく。
「ワーマンコ警察学校か…。」
惑星ワーマンコ。
B14-65666に属する星であり、屈指の人気を誇る銀河最大の警察学校がある。
惑星の名前がつけられているほどなのだ。
モチェットは、受験戦争を勝ち進み、合格という切符を手に入れた。
フラットウッズモンスターの魔力は350〜600万パワー。
モチェットの魔力は620万パワー。
ずば抜けて高い魔力が、試験官の目にとまったのもあるだろう。
ペラッ………
一枚の写真を見つめる。
そこには、モチェットと異星人の若い男。
仲良く肩を組み、ピースサインをしていた。
元カレである。
モチェットはバイセクシャルであり、この若い男とは直近まで付き合っていた。
過去形なのは、もう別れたからである。
途中ウマが合わなくなったのだろう。
よくある話だ。
「我ながら…未練がましいな。」
写真をゆっくりと鞄にしまった。
捨てられれば楽だろう。
それが出来ないから困りもの。
もう済んだこと。
もう終わったこと。
モチェットは窓枠に肘を置き、頬杖をつきながら宇宙を眺めていた。
「遅いッッッッッッ!!!!!寝てるのかお前はッッッッッッ!!!!!こんのウンチッチがッッッッッッ!!!!!」
「はいッッッッッッッッッ!!!!!」
「返事だけかこのウンチッチがッッッッッッ!!!!!」
教官にしごかれる初任科生。
地球の警察学校を大雑把に説明すると、高卒や短大卒は10カ月。大卒で半年程度、警察学校に通うことになる。
ここワーマンコ警察学校は、なんと2年制。
月換算で24カ月通うこととなる。
様々な銀河から、地元を離れここを目指すものたちが後を絶たない。
初任科生の人数は1500人。
毎年受験に挑戦するものは180万人にのぼる。
ここ見たらSFしてるね。
(想像はしていたが…やはり厳しいな…!!!)
モチェットは、毎日血のにじむような努力と鍛錬をこなしていた。
彼の性格上、すぐに周りと打ち解け仲良くなれた。
訓練時間はともに鍛え上げ、休憩時間は夢や将来を語り合った。
カッカッカッカッ……
カキン…
カンカン…
食器やスプーンが接触する音が幾重にも響く。
最大900人が入れる、ワーマンコ警察学校の巨大食堂。
ここを仕切る料理長は、かの有名な8ツ星レストランのシェフ・プルンプルンマンである。
誰だよ。
「ありがてぇよな。給料貰えるうえ、色んな異星人に対する技術教えてくれるんだからよ。」
「ふん…。ワーマンコだぞ。当然だろう。それを全て吸収し、自分のものにする。鍛錬は絶対だ。」
「でもお前昨日、教官に殴られて泣いてたじゃねぇかwww」
ダーヒャッハッハッハッ!!!!!
「モチェット、お前はどこ行きたいんだよ?やっぱり狙うは銀河警察か?地元のフラットウッズども見返してやれ!」
シュッシュッとシャドーボクシングのジェスチャーをとる仲間たち。
モチェットはそんなつもりではないが、確かに馬鹿にされていた分を取り返したいとも思っていた。
「俺は……………ん?」
モチェットはふと、窓側の席が気になった。
そこでゆっくりと静かに一人で食事をしている女性。
なぜか、目に止まってしまったのだ。
同期もすぐにその様子に気づいた。
「あー、あの子か?白い髪のケモノ。」
「あぁ。一人でご飯を食べてるな。周りに誰もいない。」
同期はモチェットに近づき、少し小声で話し始めた。
「知らねぇのかよモチェット…。あの子ソギハだよ…。ほら、親父が精神狂って人殺しまくったあの…。」
それを聞き、目を大きくした。
確かに耳にしたことがある。
善良な販売員だった男が、急に精神が狂ったかのように殺人を犯した。
最初こそ、魔力暴走症か統合失調症かと思われた。
しかし、精神鑑定の結果、男はどれにも当てはまらなかった。
「身内が殺人を犯していても、入れるものなのか…?」
「モチェット…よく聞け…。ここはそんじょそこらの警察学校じゃねぇ…。とにかく、優秀で試験官の目に止まれば候補に選ばれる。……あの子もその口だろ…。」
「どーだか。裏口か汚い手を使ったんじゃないか?」
「声デケェよエレジー!バカ!」
同期の一人が放った言葉で気づいたのか、ソギハはこちらを睨んでいる。
そして、食べかけの食事を一気に流し込むかのように頬張り、その場を離れた。
モチェットは彼女の後ろ姿を見つめることしかできなかった。
「グループ分けかぁ。めんどくせぇなぁおい。」
「まぁそう言うな。警察なんだから、協調性が問われるものだ。それに、相変わらず俺たちで組めばいいだろう。」
「そーだけどよモチェット、あと一人足りねぇんだよなぁ。どうする?あの顔に鋼鉄キンタマぶら下げてるアイツ誘うか?」
早いもので、学校生活半年目を迎えていた。
今回の訓練は、グループに分かれて行われる。
ワーマンコ警察学校の総敷地面積はなんと3500億平方メートル。
この広大な敷地を利用した、立てこもり対策実施訓練が行われるのだ。
「………………あの子はどうだ?」
「あの子って……まさか、ソギハのことじゃねぇだろうな!?」
「そのまさかだ。いいと思うんだ。彼女の動きを見ていたが、まるで無駄がない。問題は…協調性だが。」
「一番肝心な部分じゃねぇかよ…。それに女だぞ…?」
「女とてなめないほうがいい。彼女は強い。」
みんなで行くと警戒されるかもしれない。
モチェットは一人で、ソギハの元へ向かった。
周りの同期たちは呆れたが、あのモチェットが言うのだ。
試しに一回誘う程度ならばいいかもしれない。
それでダメだったら、諦めればいい。
「………戻ってきたな。ソギハもいるし…。」
モチェットはソギハを引き連れ、戻ってきた。
「は………はじめまして…だよな?よろしく………。」
「…………………。」
イメージ通りというか、無口である。
同期が話しかけても反応がまるでない。
この時点で、協調性の面で心配である。
モチェットが同期に声をかけようとしたが、それは阻まれた。
「ぅめ……………。」
「え………?なんて………?」
声が小さい。
同期たちが、耳を澄ましソギハに近づく。
「まずは謝れってんだよバッキャロウメエエエェェェェェェッッッッッッーーーー!!!!!私のこと馬鹿にしておいて忘れたとは言うめぇよッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」
江戸っ子だった。
ズコー!!!
必死に謝り倒す同期たち。
あの厨二病みたいなやつも泣いて謝っていた。
「フンッッッッッッ!!!」
「どうだろうかソギハ。許してやってくれるか?」
「ハァ………、しゃあねぇ…。いつまでもみみっちいこと考えててもつまんねぇし…。顔上げな。その代わり、二度と言うなよボンクラども。」
はいッッッッッッ!!!
ビシッと姿勢を正す同期たち。
「紹介する。右から、エレジー、ウィンプ、クライス、そして俺モチェットだ。野郎どもばかりでやりにくいだろうが、よろしく頼む。」
スッ…
「…………握手か。古臭くていいねぇ。」
ソギハはモチェットの手を握り返した。
そして行われた訓練。
これが、このチームを輝かせる1ページとなった。
ピーン…………
(電遁…!!!マズイってソギハ!!!相手にジャックされるぞ!!!)
(テメェ、頭悪いのかウィンプ!!!オメェらにしか伝わってねぇっての!!!それに、ジャックしようもんなら、モチェットが張った磁遁が作動すんだろ!!!)
(な…なるほど!!!どうすればいい!!?)
(そのままポイントFに迎え!!!先にあの厨二病…エレジーが土遁で潜ってるはずだぜ!!!)
ウィンプたちはもちろん、モチェットも驚いた。
指示が完璧であり、かつ最短ルートで作戦を進められている。
ソギハは単独で動いているにも関わらず、電遁を使いテレパシーでチームと繋がり、ひとつの生命体のように動いていた。
それに凄いのはなにもソギハだけではない。
指示を出され、ソギハが想定している以上の動きをモチェットたちは行なっていた。
大満足である。
そして、この流れ。
ガシッ!!!
「な………なにッッッッッッッッッ!??!!お前どこからッッッ!!!!!」
「動くんじゃないよ…。そのままゆっくりと人質から離れな…。」
部屋が霧に包まれ、ソギハは立てこもり犯役の教官の後ろに立った。
その横にはモチェットが結び終えた印を構えている。
人質はクライスの伸縮自在の腕で救出。
教官は降参し、チームの合格を認めた。
全初任科生の中で、ぶっちぎりの速さで立てこもり対策訓練を終えたのだった。
「ん。」
ソギハが拳を前に出している。
モチェットはものの数秒考え、右の拳を出し、それに合わせた。
トン…
「ニッシシシ!!!」
「フフフ。」
「おーい!俺たちも忘れんなよ〜!!!」
このチームはワーマンコ警察学校で名を轟かせた。
そして時が経ち、初任科生たちは長い2年という訓練期間を終えそれぞれ社会に散らばっていった。
「モチェットだけ離れちまったか。」
残念ながら、モチェットだけは、おたまじゃくし銀河のオマタ警察署に所属することになった。
残りの4人はうまい具合に全員、タガメ銀河のドブガワ警察署に配属された。
どちらも、はっきり言って目立つような花形ではない。
寧ろ、田舎寄りの目立たない場所である。
なぜそんなところに勤めることになったのか。
有名な都会派惑星にでも行けばいいものの、敢えて田舎を選んだのだ。
都会ならば、様々な警察署や犯罪対策組織が存在する。
田舎はそれがほとんどない。
喧騒の少ない田舎で、普通を装い麻薬などの取引が増えているのだ。
犯罪の横行を許すわけにはいかない。
5人は、給料も低い目立たない警察で今日も働いている。
本人たちが満足しているのだから問題はないだろう。
「〜♪♪♪」
モチェットは三輪車を漕ぎながらパトロールをしていた。
出た!!!三輪車!!!
前にビンカンソも乗ってたけどなんで三輪車なのよ。
「楽しみだな。」
鼻歌なんて女の子みたい。
楽しそうな理由。
今日の夜、久々に5人で食事会をすることになったのだ。
ここに来るまで色々あった。
「もう無理だ…限界なんだよ…。俺は向いてなかったんだ…!お前らみたいに才能あるわけじゃねぇんだよ!!!」
「何言ってんでぃウィンプッッッ!!!ここまで力合わせて来ただろうが!!!弱音吐いてんじゃないよ!!!」
「そうだ!!!俺らがいる!!!どこまでも一緒だろう!!!」
そうだぜ!!!
そうだそうだ!!!
「ソギハ…モチェット…お前ら…!!!」
「フン…心折れし鏡…これぞ明鏡止水か…。」
「どうしたんだアレ?」
「あぁ、エレジー好きな女の子に振られたんだ。」
「女なんて星の数ほどいるだろうが。気にすんな。な?最強の黒魔道士なんだろ?」
「…………フッ…女に慰められるとはな…。確かにその通りだ…!!!俺は最強の黒魔道士だ!!!」
「バッカでぇ〜。」
「今度妹が結婚するんだよ。もしよかったら、結婚式来てくれないかみんな?」
「おー!クライスの妹さんか!美人だしな!おめでとう!!!」
オメデトー!!!
「エヘヘ、サンキュ!!!」
「あん………さ、モチェット…。」
「どうしたソギハ?」
「あの………良かったら……いや、良くなかったらいいんだけど……。」
「???」
ガサガサ
茂みに隠れる3人。
ソギハを見守っていた。
(がんばれー!)
(怪物も恋をする…か。)
(失礼だなお前…。)
「す…………すい………水族………。」
「水族?」
「すい………すいぞく…………水遁ッッッ!!!爆流撃ッッッッッッッッッ!!!!!!」
「グアアアッッッッッッッッッ!!!!!」
「「「モチェットーーーーーッッッ!!!」」」
本当に色んな事があった。
そんな仲間たちと久々に会える。
しかし、モチェット曰くソギハはまたなにか別らしい。
どういうことなのだろうか。
それになにより今日は…………
「学校時代の…初チーム編成日…。」
グググと手と足に力を入れ、周りに人がいないかを確かめ、三輪車のスピードを法定速度最大で漕ぎ回した。
そしてこの日の夜。
5人は最悪の形で再会することになる。
「ハァ……ハァ………………………!!!どこだ………どこにいる……!!!」
モチェットはマルマドという惑星に降り立ち、必死に走っていた。
顔にも全身にも大量の汗が流れる。
19時21分。
ドブガワ警察署やオマタ警察署含む、半径2億光年で警戒態勢がとられた。
ウィンプがパトロール中、ナンバープレートの有効期限がきれているUFOを発見。
窓をノックし、そのことを伝えた。
最初こそ、すぐに警察署に行って手続きを済ますように促していたのだが、運転手の男の挙動を怪しく思ったウィンプはほんの少しだけ中を覗いた。
その時、運転手の男はウィンプに対し、魔銃で発砲。
幸い肩を掠っただけなので軽傷で済んだが、その隙に男は逃走。
ウィンプはすぐに応援を呼んだ。
車の中にあったもの。
間違いなく【死体】だったと。
黒い布を被してあったが、ウィンプの種族は嗅覚が強い。
すぐにわかったのだ。
田舎寄りの銀河での犯罪。
警戒態勢の規模が大袈裟に思われるかもしれないが、犯罪対策組織が少ない地域ではこれでちょうどいいぐらいなのだ。
「エレジー…!!!クライス…!!!ウィンプ…!!!…………ソギハッッッッッッ!!!!!!」
ウィンプの通報を受けたエレジーたちは、パトロールを中断しすぐに現場に向かった。
しかし、それ以降どうやら連絡が取れないという。
無線が壊されたのならば、魔法具による通信手段がある。
それすらも破壊されたか。
モチェットは最後に通信が途絶えた場所付近に到着。
そして今必死に仲間を探している最中というわけである。
「ハァ…ハァ…………ん…………?」
ふと、目の前の地面に落ちているものを拾い上げた。
それは、ワーマンコ警察学校を卒業した際に、記念に買ったブローチ。
チーム5人が全員身につけているものだった。
お揃いである。
ゆっくりと顔を上げる。
寂れた倉庫。
今にも崩れそうな見てくれだが、なにかとてつもなく嫌なものを感じる。
モチェットは呼吸をできるだけ整え、事前に印を結びゆっくりと歩みを進めた。
カツン…カツン…
暗い。
長年放置されていたのだろう。
天井にある照明は壊れていたり、セットはされてあるもののとっくに死んでいたりで、あてにならない。
「……………。」
ボウッ
モチェットは掌に小さな灯火を照らす。
灯遁だ。
「……………?」
気配を感じる。
モチェットは警戒しつつ、灯りを気配のするほうに向けた。
「モチェット…………か………。」
「ウィンプ…!!!」
ウィンプが血まみれで倒れていた。
早急に手当てしたいが、敵が潜んでいるかもしれない。
胸につけた通信機に触れ、大至急応援を頼もうとしたその時。
傷がどこまで深いのか調べようと、灯りを強めた。
「…………え……。」
ウィンプの四肢は切り落とされていた。
周りにはクライスやエレジーと思しき影。
クライスは全身を深く切り刻まれ、壁にもたれかかっており、エレジーに関しては首から先が見当たらなかった。
「悪…………い…………。ヘマ………し……た……。」
「ウワアアアアアアァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
必死に何度も何度も、治癒魔法をかけるモチェット。
通信機からはなにか声が響くも、とても耳に入ったものではない。
「治れッッッ!!!治れッッッ!!!!!治れってッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」
ジワジワと塞がっていく傷。
それが続いたのはたった数秒。
モチェットを嘲笑うように途中で再生が止まった。
細胞が諦めたのだ。
よく誤解されるが、治癒魔法の多くは無差別に怪我や病気を治すものではない。
その人の細胞を活性化させ、回復を促しているに過ぎない。
つまり、もうウィンプたちは助からない。
「ごめ…………ん……な………。」
「喋るな!!!傷口に響く!!!大丈夫だ!!!今治すからな!!!………腕と足…………どこだ……どこにあるんだ…………!!!!!!」
「もう…………いい………。」
「どこにある……ッッッ!!!エレジーの頭部……!!!どこだエレジー!!!」
半狂乱で、周りを蹴散らし部位を探すモチェット。
判断能力が狂ってしまっている。
ガガンッッッッッッ!!!
瓦礫を蹴り飛ばし、唖然とする。
本人もわかっているのだろう。
「…………………。」
「モチェット……………。」
「な………なんだ………。」
「犯人………追いか………けた………、ソ………ギハ…………。追いか…けて………や…………………。」
「おい……ウィンプ………おい!!!ウィンプッッッ!!!おいッッッッッッ!?!!!!!??」
返事がない。
屍。
モチェットは震える手でなんとかウィンプの瞼を閉じた。
「ソギハ………………ソギハが…………ッッッ
!!!!!」
酷い立ちくらみ。
眼の前がグルグルと回っている。
しかしそんなことは言っていられない。
十字を切ったあと、モチェットは揺れる両眼で走り出した。




