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スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
悪虐搾取組織殲滅編

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81/102

第81話 勝ちに込み!!!

銀之助たちはどうにか怪しまれずに、施設入り口前までたどり着いた。

ポーズトッポもいる。

クエスチョナー、グレート、サーシャたちも横に並ぶ。

サーシャはジェリーとマヤから、施設がヤバいとしか聞いていないので状況がよくわかっていない。


「銀之助さん。ここに来る途中、誰とアイコンタクトを?」


「そうか…C.B知らんし会ってへんもんな。エレンっちゅう男やな。えぷしーたうんの看板娘ならぬ看板男。」


見学客の間を通り、建物を目指す銀之助はふと横に顔を向けた。

本人としては、何かを感じたわけではない。

ただ、たまたま横を向いたのだ。

ほかの利用者や支援員の中に混じり、エレンが真剣な顔でこちらを見ていた。

そして目が合った。

銀之助はこれだけでわかったのだ。

そして頷き、そそくさと足を前に進めた。


「ちょっち、どゆこと!?なんかえぷしーたうんがヤバいだのうんこだの色々言うとるけど!!!」


「えぷしーたうんが黒だったってわけよ。中でエグいことしてるって。ケロちゃんたちが先に入ってるから、それで連絡来たのよ。」


マヤがサーシャに説明するも、時間がないのでかなり簡略化されている。


「取りあえず中入ろうや。多分俺らのこともバレてんじゃねぇのか。」


「社長、先ほど警察には一応通報はしました。どうやら、元よりえぷしーたうんに要があったみたいで。」


先陣を切るゴルズとモチェット。

お前モチェット、警察じゃなくてビンカンソに直接連絡入れてるくね?

これが身内パワーか。


「そいつぁ都合がいい。ナトリ、例のもん持ってきてるか?」


自信満々に頷くナトリ。

背中のリュックには大量の魔力ドリンク。

チムチンピローの特製品だ。

大阪市内に並ぶ巨大企業の一角。

その内のバイオベンチャーであるチムチンピローは、実はかつてポーズトッポがヤクザだったころ、それなりの金を払い見回りや警備などを頼んでいた。

表の警備会社との合わせ技だったのだろう。

つまり、チムチンピローはポーズトッポのお得意様だった。

流れから察するに、アミーノと下っ端たちが責任を持ってそのエリアを受け持っていたのだ。

この特製魔力ドリンクも、ヤクザから足を洗って自警団となり闇バイトを対処・捕縛するなどの荒事を支援するためにくれたものだ。

ゴルズはナトリに、特製魔力ドリンクをこの場にいるそれぞれに配るように指示。

おそらく、ケロンバの報告が正しければ中に囚われている利用者の数もそれなりにいるだろう。

全員がしっかりそれを受け取り、遂に玄関を通り建物に足を踏み入れた。






「でも足りるんすかね…まさかカチコミに行くなんて僕ちゃん思っていなかったから…。」


「だからあくまでも俺らの仕事は、事実確認と牽制。そら捕縛までもっていけたら完璧だ。つまり…」


警察が来るまでの時間稼ぎ。

不安がるナトリに、後ろを振り向かず淡々とゴルズは返した。

玄関を通り、各作業部屋を横目に前に進む。

当然だが、目の前には行き止まり。

そこで銀之助は気づいた。

この場所。

この間パルムと見学に来た時にぼーっと見つめていた。

その時は、かつての清掃員時代に働いていた病院に雰囲気が似てると思っていただけだった。

C.Bが前に出て、壁を確かめる。


「確かに、カモフラージュされてますね。でも誰がやったのか、空間が綺麗に引き裂かれてます…。とは言え、精巧なつくり。裂け目が修復されつつある…。」


C.Bは空間に触れた。

何を感じたのか、一気に顔が強張り印を素早く結び再度目の前に腕を伸ばした。


「かなり複雑なつくりになってますよ…!まるで迷路だ…。それに…恐らく利用者さんの数は20名ほど…。」


ナトリがそんなこともわかるのかと興奮したが、C.Bに静かにと注意された。

ちょっぴりションボリしつつ謝るナトリ。

あの温厚なC.Bがこんな返しをするとは。


「………ゆっくり動いてる反応がある。………ごめんなさい利用者のみなさん…少し、もう少し我慢してください…!!!」


ガウウウゥゥゥン………


C.Bは空間の先でこぶしを握った。


「な、なにしたんやC.B!?」


「この先…いや、建物全体をロックしました。まさか出口がここだけとも思えませんし、なにより向こうにも多分空間魔法を使えるものはいるでしょう…!」


異次元人なめんなよ。

そう言わんばかりのC.B。


「ちょっと失礼。」


「へ?なにを…?」


ジェリーがC.Bの背中に、マヤがジェリーの背中に手を当てた。

時間にしておよそ40秒。

そしてマヤはタブレットを取り出し、ペンでなにかを描き始めた。

何をしているのだろうか。


「マヤちゃん、なにやってんだ?」


「あの2人の得意技だ。ジェリーは毒遁使いだが、電遁も使える。マヤも同じく。つまり、あの異次元の思考回路を読み取ってる。すげぇだろハテナマン?」


不思議がるクエスチョナーに、胸を張りまるで自分のことのように仲間の強さを語るアミーノ。

なんやかんやで仲間や家族のことが大好きなのだ。


「でけた。みんなの携帯に送ったから。ナトリはこれね。アナログ。」


全員が地図を受け取った。

マヤ曰く、地下は6階までで部屋数は300以上。

よいしょよいしょで、重要なポイントを赤くマーキング。

その地図をたった3分でつくりあげた。


「すんごーマヤちゃん!かっこええわぁ〜!」


「あんがとねサーシャ。みんな…死なないでよね。」


準備は整った。

殴り込みだ。

そう言いたいが、遠くの方から爆発音が聞こえた。

離れているせいか音が小さいが、かなりのものと思われる。


「なんじゃあこりゃぁ!!!」


サーシャが携帯を見て叫んだ。

SNSを確認したのだろう。

どうやら、ここえぷしーたうんから離れた場所。

そこで大量の異星人たちによるテロ行為が起きているという。

無論、悲しい話地球人もその中に混じっているのだ。


「なんでこんなタイミングでー!!!ふざけんなよ誰やねんコイツら!!!」


「ヴィルホーンの連中だろうな。俺らに包囲されてることを読んだ上で、下っ端どもを暴れさせてんだろう。俺らを分断するために…。」


ゴルズの憶測通り、今暴れ倒しているテロ組織はヴィルホーンの下っ端たち。

使い捨てだろう。

しかし、規模的に地域の警察だけでは手に負えないクラス。

ここにいるメンバーを少しでも分断するべく、派手に動かしているのだ。

ポーズトッポは自警団。

現場に赴かなければ、なぜ来なかっただの間に合わなかった、役立たずだのと評判も下がる。

それに今は評判もクソもない状況。


「アミーノ…ディレクターどもと向かってくれ。」


ゴルズはアミーノを指名。

ほかのメンバーはここに残り、地下への侵入。

その事を伝えると、アミーノはプルプルと震え出した。


「…………かよ。」


「……あっ?」


「またかよ……またかよ!!!」


何故か怒るアミーノ。

モチェットがどうしたと宥めるも効果は薄い。


「あの時もそうだった!!!ボーナの野郎を近くにおいて、俺っちは市内に飛ばされた!!!なんで毎回俺を追いやるんだよ!!!」


「ちょ、ちょっとアミーノ!!!何言ってんのアンタ!!!そんなくだらないこと言ってる場合じゃ…」


「うるせぇよジェリー!!!俺っちにとっちゃくだらなくねぇよ!!!」


いつの間にか右腕のポジションもモチェットに代わった。

左腕はジェリー。

やっと、ゴルズたちとともにえぷしーたうん殴り込みができる。やっと一緒に動けると思っていた矢先これである。

確かにこんなこと言っている場合ではない。

ただ、アミーノにとっては大事なことなのかもしれない。


「アミーノッッッッッッッッッ!!!!!」


ゴルズの喝にビクッとするアミーノ。


「悪いな…俺の説明が毎度下手くそだから心配させちまってよ。俺がお前を異動させたのも、今も現場に行ってもらおうとしてるのも、お前が強いからだ。信頼してるからだ。」


「…………ボス。」


「それに、嫁も子もいねぇ俺からしたら、ポーズトッポは全員が俺のこどもみたいなもんだ。もちろん、お前もだ。アミーノ。」


「ホントかよ…。」


「あぁ、確かに右腕はモチェット。左腕はジェリー…でもな、アミーノ。お前は俺の大事な部分だ。息子なんだぞ。」


「息子………。」


ガシッッッ


ゴルズはアミーノの両肩を強く掴んだ。

そしてしっかりと目を見て、真剣に愛をもって告げた。


「お前は………俺のチンポだ……!!!チンポがなけりゃあ、小便もできねぇ…!!!」


ズコー!!!


息子ってそういう意味かよ。


「チンポ…………わかった……。俺っちは……チンポだったんだ………。」


なにがわかったのだろうか。

なにもわからないのだが。

本人が良いなら良いか。

良いのか?

アミーノは満更でもない表情で、鼻を指でこすった。


「行ってくる…お前ら…後は頼んだぜッッッッッッッッッ!!!!!」


俺はゴルズのチンポだぁぁぁぁぁ!!!!!

そうアミーノは叫び、走り出した。

見学客に混じっていた下っ端ディレクターたちも後に続く。


「アミーノ…あんた立派なチンポだよ…。」


「目を潤ませて言うことなんですかねジェリーさん…。」


C.Bの言う通りである。

ほかのメンバーも涙を流す。

しかし、これで本当に準備は整った。

決戦だ。






地下深く、どす黒い感情が渦巻くような一室。

高価な一人用のソファに座り込む影。

足を組み、葉巻を片手に持つその影の周りには多数の男女。


「ヴァイスのクソ野郎がしくじりやがったか。ゴルズのゴミどもが攻めてくるのも時間の問題か。」


「その上、完全に包囲されていますね。空間が閉じてる。これは…かなりの高等技術からなるもの。異次元人あたりですかね。」


壁に触れる男。

この場にいるのは、ヴィルホーンのボスと幹部たちであろう。

ボスは先ほどから、苛立ちを隠せない。

葉巻を持つ手に浮かんだ血管。

プルプルと震えているのがなによりの証拠。


「ベイルのやつは何してる…。エルクールからなんの連絡も来ねぇぞおい……。」


「ベイルは現在交戦中。一応侵入者の報告を寄越したのでよしとしましょう。どうされます?このまま利用者を人質に取って脅しましょうか?」


それを聞いたボスは、怒りのまま葉巻をへし折った。


「利用者のクズどもを人質に取ったところで時間がかかんだろうが…。どうせポリ公も嗅ぎつけてここに来んだろうが。考えろやデスパテメェよぉ…。」


「これは失敬。逃げ道も塞がれていますしね。それと、少しでもゴルズたちを分断できるように、構成員に街中で暴れるよう指示は致しました。」


ケロンバが通信遮断電波シールドを破り、銀之助たちと連絡が取れるようになった。

しかし、逆を言えば敵も遠方に連絡が取れる状態になってしまった。

ボスはデスク周りの私物を腕で薙ぎ払い、また葉巻を咥える。


「ベイルの相手はどうやらポーズトッポではないらしく、おそらくですが…この空間魔法の術者も違うでしょうね。」


「ホントかデスパ?誰なんだそいつらは?なぜこの日に限ってこんなにもわけのわからん連中が集まっているんだ。ボス、このわたくしヘロシティーにお任せを。全員処刑致します。」


ヘロシティーと名乗る男は、ワープパネルの上に乗りどこかに消えた。

この地下空間だけで使える移動手段だろう。


「デスパお前空間解析できねえのか。」


「お言葉ですが…はっきり言って無理ですね。ヴァイスならなんとかできたかもしれませんが…倒されたか殺されてるでしょう。」

 

デスクに拳を叩きつけたボス。

パラパラと音を立て、デスクは粉々に。


「出口は玄関の入り口だけか。」


「おっしゃる通り。なので…我々が先に出向き、侵入者を皆殺しにして見せましょう。ボスはその後を続いてください。」 


ボスはソファから立ち上がり、葉巻を握り潰した。


「よし………行けお前ら…しくじるなよ。戦争だ。」


幹部たちは一斉にその場から消えた。

侵入者を抹殺するために。






ウウウウゥゥゥゥゥゥ!!!!!


建物内に響く謎のサイレン。

侵入者発見の合図だろう。

ケロンバは、館内サイレンが鳴るのは時間の問題とはわかっていたが少し目を細め天井を仰いだ。


「今のは……………侵入者発見…………そして……抹殺の合図だ………よ………。フフ……でも……なんで……鳴らしたんだろう…………ボスは逃げたのかな…………。」


ケロンバはC.Bが空間を包囲してくれたとすぐに察した。

ならば、自分はさっさと目の前の外道を片付けて利用者を探さなければならない。


「まぁ………いいや…………君さ……正義の味方の………つもり……?まさか…僕を倒して………利用者を助けて………ヒーロー気取り……?」


アッハハハと気色悪い笑いが部屋に木霊する。

ケロンバはただ、黙ってそれを見ていた。


「科学者だよ……?君も…………実験で……色んな生き物を犠牲にしてるんだろ………?僕は人間を実験台にしてる…………君の理論で言うならば………同じ穴の狢だよぉ………?」


「その通りゲロ。」


「…………………え?」


ケロンバは腰に手を当て、ケロッとしている。

カエルだけに。

ゲロゲロ。


「誰も俺はヒーローだなんて言ってないゲロ。寧ろ、立場としてはお前と同じゲロ。犠牲なくして科学は発展しない…。」


今度はベイルがポカンと口を開け、ケロンバを見つめる。


「かつて、かの有名な生物学者…ケツアナ・マッケンジリィは言ったゲロ。」


誰だよそいつ。


「科学者とは…科を学ぶ者であると同時に【十字架を背負い嶽を登る者】…故に架嶽者であると。………科学者はどこかで自覚してるゲロ。自分は死んだ後、必ず地獄行きだろうと。」


真顔で淡々と語るケロンバ。

ベイルはどうやら理解も納得も出来ていないようだ。

ケロンバ含む、科学者としての重い死生観。

悲しいからその考えはやめようなどの説得は…意味をなさないだろう。


「じゃあ…………君は……地獄に行くってことかい………?覚悟もしてると…………?」


「もちろんゲロ。」


ベイルは眉間に皺を寄せ、貧乏ゆすり。


「気持ち悪いな君……………なぁんか………自分に酔ってるみたい……………。もう時間もないし……………死になよ………地獄……行くんだろぉぉぉぉぉッッッッッッッッッッッッッッッ!????!」


ベイルが起動した部屋中の装置。

一斉に襲いかかる拷問器具。

ケロンバはため息を吐いた。


「今はその時じゃねぇゲロよ。」

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