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スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
悪虐搾取組織殲滅編

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第78話 スメルめるめくスメルめる

ビンカンソは署内のデスクで資料に目を通していた。

毎日のように事件は起こるもの。

小さなことから大きなことまで対応しなければならない。

中でもとくに厄介なものが闇バイトに関連する事件。

しかし、それもポーズトッポ自警団のお陰で毎度最悪の事態は避けられている。

ナトリも少しずつ力のコントロールを覚え始めたのか、闇バイトを峰打ちで捕縛に成功している。

隣のアミーノやモチェットたちのサポートがあるのも大きいだろう。

ココアに口につけ、資料を置き背伸び。

仕事とはいえ、こんなものばかり見ていたらおかしくなってしまう。


「ビンカンソ警部、よろしいでしょうか?」


「おー、お疲れ。どした?」


「3日前に捕まえた連中についてなのですが…。」


「アレか?輪っかみたいなやつやろ?」


「チョーカーですね。ベルトみたいな輪っかです。まさにそれの事です。鑑識から話は聞いてますか?」


「聞いとる聞いとる。今さっき目通したばっかりや。」


闇バイトのしたっぱが足首につけていたチョーカー。

それはまさにマジックチョーカーであった。

鑑識が調べたところ、どうやら既に機能としては事切れていたようだが、仕組みとしては魔道具で間違いないとのこと。

ビンカンソたちはバカでも無知でもない。

例の作業所がこのマジックチョーカーを使っている。

地元民のこともあり、奥様方の井戸端会議で話は耳に入っている。


「盗まれたんでしょうか。」


「盗難やったらとっくに被害届がきてるはずや。その辺どないなっとる?」


「とくに聞いていません。情報が回ってないだけかもしれませんけど…。」


「けったいなもんや…。」


ビンカンソは顎に指をあて、考え込む。

盗まれた事自体に気が付いていないのか。

あの規模の作業所である。

いつなんどきでも、新たに利用者を迎え入れたり今通所している利用者のマジックチョーカーに異常があった時でも対応出来るようにストックはあるはずだ。

一つや二つ盗まれたところで、確かに気が付かないかもしれない。

しかし、それならば管理が杜撰ということにもなる。

ビンカンソは腰を上げ、部下とともに聞き込み調査に赴いた。






「いやぁ〜!ここにこれて本当に良かった!改めて、ありがとうございますみなさん!!!」


2人席で深々と頭を下げる高身長優男、Mr.C.B。その正面には可愛い道化師アプリコット。(第200369回宇宙トーナメント編参照)

キャラメルサーカス団として、今までチャリティーでやってきたがいよいよ限界が来てしまった。

そこでチャリティー集団から作業所に切り替えた結果、前よりも良く、楽になったらしい。

現在二人はここバカ3人が経営するトリスコーヒーで冷コー(アイスコーヒー)をしばいている。


「ホンッッッッットにありがとうねサっちゃん!パルムくん!銀之助さん!みんながお金分けてくれたから、ここまで来れたんだよ!それに、やっとコーヒー飲めた!」


「いつかこのご恩はお返し致します。」


「いや!!!ええんよええんよ!貸したんやなくてあげたんやから!まぁ…俺は優勝してへんけど…。」


少し気まずい銀之助。

そんなもん気にするなとサーシャとパルムがニッコリ笑顔で銀之助の背中を軽く叩いた。

ワハハと笑いが広がる。


「で………、貴方がゴルズさん…で、合ってますか?」


「おう、合ってますわ。よろしく。」


ガシッと握手する2人。

C.Bはその掴んだ手から伝わってきたものを逃さなかった。


(……………強いな。)


なにも力強く握っているわけ……まぁ、握ってるのは握ってるんやろうけど、そうではない。

ゴルズの身体の芯から伝わってくるものだろう。

2人は互いに見つめ合い、微笑んだ。

その後、アプリコットとも握手。


「聞きましたよ。銀之助さんたちから。ヤクザ屋から足を洗って、自警団をやっているとか。尊敬しますよ。」


「やめてくれや。んな立派なもんじゃねぇよ。ホントに立派なヤツってのは、最初から立派なもんよ。例えば…お前さんみたいな…な。」


Mr.C.B。

種族は異次元人。

異次元人は昔から今に至るまで凶悪で粗暴。

主に人殺し稼業で飯を食う種族。

しかし、C.Bは最初からずっと真面目に生きている。

言わば異端だ。

ゴルズはヤクザから自警団に。

C.Bは凶悪種族の中から、サーカス団団長に。

方向性は同じに見えるが、成り立ちが真逆だ。

しかし、2人は相性が良いのか、はたまたカフェの空間エネルギーのおかげかとても落ち着いて会話を楽しんでいる。


「アンタに会えて光栄だ。」


「こちらこそですよ。ゴルズさん。」


「フフッ、ええもんやな。ところでC.B、えぷしーたうんの見学行くんやってな?」


C.Bはパンッと手を叩いた。


「そうなんです!作業所を立ち上げたのはいいものの、やはり素人なので本場に色々とご教授願おうと思っておりまして!」


えぷしーたうんは他の銀河にも展開してるほどの規模だとか。

まさか、トリスコーヒーの近くに出来るとは。

その上たまたま遊びに来たタイミングで見学会もやっているとは。

この機会を逃す手はない。

とてもありがたいとC.Bは感謝していた。


「俺らも今日邪魔する予定でな。それにアンタにもうちのスタッフとアイドルを紹介したい。アプリコットちゃんもどうだ?やるか?」


「ウチもおるやでー。」


サーシャがピースサインではしゃぐ。

アプリコットは楽しそうと喜んだが、またの機会にとゴルズの提案を断った。

ゴルズは腕を組み、冗談だと笑った。






「さて…と!今日も見学のお客さんが来ることだし、しっかりしないとな。な、スンシー。」


「はーい!!!」


ぴょんぴょん跳ねるスンシー。

乳が揺れる揺れる。

利用者も楽しそうに跳ねる跳ねる。


「はぁ…大丈夫かぁ…?……それより、例の話聞いたか?」


「例の話?なんです?」


「コウドさん。ほら、ピャース君いただろ?最近はあんまり顔出してなかったけど。」


ピャース君。

B型作業所に通っていた異星人の男の子。

大人しく、ヘッドホンで音楽を常に聴いていたが真面目に作業を行なっていた。

以前は身体が弱くも頑張って通所していたが、2ヶ月前から休みが目立っていた。

時折、保護者にも心配の連絡を入れていた。

そして、遂にこの間ピャース君はえぷしーたうんを辞めてしまった。

どうやら、家族ともども引っ越してしまったようだ。

世話になったとのことで、菓子折りが施設に届いたがヤビーはなにも聞いていない。


「せめて挨拶欲しかったんだよなぁ…。」


「利用者のご家族も色々と事情があるものですよヤビーさん。」


ニッコリ笑顔でやってきた男。

スラッとした姿で、高身長。


「あ、お疲れ様ですエルクールさん。」


「お疲れ様でーすエルクール先輩!」


「アッハハ!今日も元気ですねスンシーさん。アナタのお陰で我々職員も、利用者のみなさんも元気になれます。これからもお願いしますよ。」


エルクールはヤビーとスンシーの先輩にあたる。

随分と長くえぷしーたうんに勤めているらしい。

噂によると、創立から働いてるとか10年選手だとかなんとか。バラバラである。


「エルクールさんは、なにかコウドさんから聞いてるんですか?」


「いいえ…なにも。どうやら会長と直接お話されたみたいですよ。」


「会長が?うーん…教えてくれてもいいのに。」


「会長は勝手に話を進めますからね〜。ほんっと困りますよ。でも…あまり詮索はしないこと。家庭の事情で引っ越しされたのかもしれませんよ?人には色々あるでしょう?」


確かにエルクールの言う通りでもある。

どれだけ仲良くしていたとしても、事情が事情ならば相談が出来ない場合もあるだろう。

それに会長には話を通している。

エルクール曰く、会長は残念そうだったらしいが仕方ない。


「でも…ピャース君だけじゃないんです。ここ最近何人か辞めてるので…。心配でして…。」


「お優しいですねヤビーさん。僕も当然心配ですし、さみしいですよ。でもこればかりは仕方ありません。」


利用者やその家族の幸せを祈り、今日の見学会を盛り上げていきましょうとエルクールはどこかに行ってしまった。

準備に取り掛かるのだろう。

さみしいが、ヤビーたちも椅子から腰を上げ動き始めた。


「エルクール先輩、いつ見ても若いですよね〜!」


「そうだなぁ。種族的なものなのかな。」






ワイワイ…

ガヤガヤ…

プスー…ブリリリリブリャリャッッッ


「おー!今日は賑わってるなー!」


銀之助とパルムは身体を広げ興奮。

この間見学に来た時は数人しかいなかったが、今回は他の作業所の職員たちもいる。

中には、これから通所するか、させようかと気になっている人もいるだろう。


「すげぇな。今日は当たりの日か。つーか明日祭りだからか。」


ゴルズが顔を横に向けると、アミーノが利用者に引っ張り倒されていた。


イケメン〜

カッコイイ〜

コッチコッチー


「やめろ離せバカども!」


「そんなこと言っちゃダメだよアミ子。」


「アミ子言うなクソナトリ!!!」


サーシャも楽しんでいる。

今日は祝日なので、学校は休み。

ちなみにトリスコーヒーはパルムとモス子の2人で切り盛り。

モス子はせっせとモコモコ働いている。

銀之助は早めに戻る予定だ。


「あ、ゴルズさんゴルズさん。こんにちは。はじめまして。」


「はじめまして。ポーズトッポ自警団のゴルズと申します。よろしくお願いします。」


各作業所の職員たちに頭を下げ、丁寧に挨拶するゴルズ。名刺交換は社会人の礼儀の一つ。知らんけど。


「作業所ねー。色々あるけど、見れば見るほどデッカイねこの施設。」


「せやねー、ジェリーちゃんとマヤちゃんも来るの初めて?」


頷く2人。

マヤはダンスレッスンの疲れからか、7割寝ながら歩いている。


「おーい!お前らー!」


クエスチョナーとグレートが手を振りながらこっちにやってきた。

変な連中が勢揃いである。


「お!お前らも来たんか。そろい踏みやな!………ボーナも来てくれたら良かったんやけどなぁ…。」


残念そうな銀之助。

クエスチョナーは頭をポリポリしつつ、ボーナの事を教えてくれた。


「ベッドの上で苦しんでたぜ。痛い痛い〜つって。直接は言ってなかったけど、多分俺らもいるし来たかったんじゃねぇかな。」


「そうかぁ、エリートでも痛がるんやなぁ。」


そらそうだろ。

そして離れた建物の影、そこで大勢の見学客を見つめる三人組。


「なんだいなんだいこの盛り上がりよう。祝日だからかい。」


「そうでしょうねファニィ様。それに明日のための顔合わせゲロ〜。」


「こうやって地元が盛り上がることは良いことゲロ。」


ファニィ、ゴードン、ケロンバのバカトリオ。

この三人組はえぷしーたうん施設の清掃バイトで雇われていた。


「あそこにいるの、C.Bじゃない?遊びに来たんだねぇ。」


「キャラメルサーカス団も作業所になったんだゲロ。きっと勉強しに来たんだゲロね。」


「流石だ。前に進むことしか考えていない。我々も、世界征服のため負けじと頑張ろう。」


オー!!!


ファニィたちは、それぞれモップを持って建物に入っていった。

負けじと世界征服を頑張るってなんだよ。

聞いたことねぇよ。

頑張るなそんなもん。


「こんにちは皆さん方!!!私、えぷしーたうんの職員のヤビーと申します!!!この度は休日にもかかわらずお集まーーーー」


「私スンシーでーーーーす!!!よろしくお願いしまーーーーーす!!!」


「はぁ…、遮るんじゃないスンシー…。では改めて、お集まりくださいましてありがとうございます!!!では、行きましょうか!!!」


こんなに大勢来たら利用者ビックリすんじゃないの?

それについては心配無用。

今回は施設見学だけでなく、軽い食事会があるのだ。

ダンスフェスがいよいよ明日開催ということもあり、言わば明日の大成功を祈願した前日の催し。

なので利用者たちの大半が仕事を切り上げている。

えぷしーたうんの職員が食事を用意し、見学客や利用者たちもワイワイと盛り上がる。

予定の流れとしては、最初に全員で顔合わせの挨拶。

そして軽い食事会。

その後にグループ分けをして施設見学。

ヤビーは運営側としてしっかりと声かけをしながら見回り。

そこでふと何かに気づき、えぷしーたうんA型作業所の一つであるパン工房の責任者に声をかけた。


「トーチーさんいませんね。今日は来てないんですか?」


「ん?来てるで?トイレ行く言うてたで?確かエルクールさんがついてくれてるはずよ。」


今日顔を出していない利用者もチラホラいるが、どうやらトーチーは来ているらしい。

トーチーとは利用者の女の子。

物静かな子ではあるが、こういう祭り事は嫌いではなく寧ろ好きなタイプだ。

ヤビーはスンシーに一旦施設に戻ることを伝え、トーチーを迎えに行った。


「普通にトイレなのかな。お腹痛かったら可哀想だなぁ。」


自動ドアの入り口を通り、中を進む。

現在えぷしーたうんはもぬけの殻に等しい。

事務員ですら、仕事の手を止めてグラウンドにいるのだ。

節約のため、音楽すら鳴っていない施設内はとても静かである。

これはこれでなかなかわびさびがあるというか、ノスタルジックな気分になる。

ヤビーはトイレの目の前に到着。


「アレ?」


電気がついていない。

人がいれば自動で電気がつく仕組みなので、消えているのはおかしい。

では違うトイレだろうか。

しかし、わざわざ一階の入り口付近のトイレがあるのに他の場所を使うだろうか。

一応声かけをしたが反応がない。

いないのだろう。

ヤビーは違うトイレを探すことにした。


「……?」


廊下にキーホルダーが落ちている。

トーチーちゃんが大事にしてる【推し】のキャラクター。

銀髪で、頭にゴーグルをかけた白衣姿のドクター(設定ではマッドサイエンティストらしい)。

こんなところに落ちているのはおかしい。

ヤビーはそれを拾い、廊下の先を見つめた。

どこからどう見てもそこは行き止まり。


「…………………。」


恐る恐る近づき、何を思ったのか手を壁に近づける。


ニュルッ…


「うぉっ!!!」


手をつい引っ込めるヤビー。

なんと壁を貫通したのだ。

そしてまたゆっくりと手を伸ばす。


「なにもない…のか?」


手が入るのならば、身体も通れるのでは。

そう思ったヤビーは決心して壁の向こうに進んだ。


「なんだここ…。」


目の前には、およそ50mはないであろう廊下。

両サイドの壁際に扉が10個ほど。

20個の扉には、なにも書かれていない。

ゆっくりと壁を伝うように歩く。

その中の一つ、ドアノブが暖かい。

そして指紋がついている。

誰かが握った跡だろう。

建付けが良いのか、無音で開く扉。

そこは階段になっており、かなり下まで続いてることがわかる。

カツン…カツン…と靴音だけが響く。


「どこまでつづいてるんだ…。………ん?」


これまた誰かが握った跡がついているドアノブ。

それを開くと先ほどとは違い、短い通路。

そして扉を開いた直後に、鼻を襲う強烈な異臭。

吐き気がする。

マスクをしているが、容易に貫通してくるのだ。

ハンカチを当てなんとか呼吸を整える。

そして一番手前の扉。

少し開いており、透明なガラスが上部に備え付けられている。

恐る恐るヤビーはそこに顔を近づけた。

そこには、両腕が切断され椅子に縛り付けられているトーチーとエルクール含む見たことのない男女たちがいた。

こちらに顔を向けるトーチー。


「た………………す……………………。」


「うわぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」










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