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剣を教えてください!

 旅の護衛をギルドで探すことが決まったハートたちであったが、その日はもう時間が過ぎていたことから、ギルドへ訪問するのは翌日にすることにした。

 ハートたちは、昨晩泊まった宿にもう一度戻り、そこで夜を明かすこととなった。



「うーん」

 大部屋で、腕を組み考え事をするハート。

 同室には入浴を終えたリルフィリアとウィンクルムがちょうど浴室から戻ってきたところだ。

 ハートが考え事をしていた理由──それは先ほどまで続いていた、王都への旅についての話し合いにあった。

 その話し合いのなかで、魔法学校の校長からハートとリルフィリアに、いくつかの取り決めが結ばされた。

 その取り決めとは、一つ目が『王都への出発は事を急がず、入念な準備をしてから』というもの。

 二つ目が、『準備期間のうちに、ハートとリルフィリアは保護者の了解をしっかり得ること』というものだ。

 そして三つ目が、『ハートとリルフィリアはそれぞれ、自分で自分の身を守るための最低限の技能を身につけること』であった。



(身を守るための力──)

 ハートが考えていたのは、三つ目の取り決め──旅の道中で危険に遭遇した際の、自己防衛のための戦闘技能の習得であった。

 この三つ目の取り決めがなされたのは、どんなに強力な旅の護衛をつけたとしても、ハートやリルフィリアが、自分で自分の身を守れるようになるのに越したことはないからであった。



(でも俺、魔法はほとんど下手だからなぁ……)

と、ハートが悩む。

 魔法学校の学生としては、火や水といった基本的な属性の魔法術のなかから、実戦で使えそうなものを身につけてしまうのが一番安易な方法である。

 しかし、召喚術以外は全然ダメなハートにとって、今からそれらの魔法術を習得するのは、とてもうまくいくとは思えなかった。

「うーん……よし!」

 それなら──とハートが決意する。

「ウィンクルムさん!」

「うん、どうしたハート?」

 ハートはウィンクルムに声をかけた。

「俺に、剣を教えてくれませんか?」

「えっ?」

 唐突なハートの発言に、ウィンクルムだけでなく近くにいたリルフィリアも驚く。

「どうしたんだ、急に」

とウィンクルムが返す。

「さっきの、校長との約束です──俺、自分やリルフィリアを守るために、剣術を身につけたいんです!」

「剣……?」リルフィリアがぽかんとした顔で呟く。

「俺……召喚術も結構だったけど、他の魔法術はもっと苦手で。それよりも剣とかの武器を扱えるようになったほうが、旅に役立つと思うんです」

 ハートが彼女たちに説明する。

 ハートが、剣による物理的な戦闘技能に着目したのは、自身が他の魔法術を不得手にしていたことに加えて、昨日の特殊な召喚術──『神器の召喚術』にもその理由があった。

 神々の武器を召喚する『神器の召喚術』は一度召喚が成功すれば強力な力を一時的に手にすることができる。

 しかしその一方で、昨日のように、ハートが自分の意志で発動させたいときに確実に成功できるかは全くの未知数であった。

 何か他の力も身に付けなければならない──もちろんハートとしては『神器の召喚術』を少しでも自分のものにできるように訓練するつもりである。

 しかしそれでも、いざという場面で召喚術が不発に終わったときのために、他の技能を身に付けなければならないとも考えたのだ。



「もちろん、すぐに身に付けられるとは思ってません……でも、今からでも少しずつ学べたらなって思って」 

「なるほど……」ウィンクルムは顎に手を当てて少し考えたあとハートに顔を向けた。

「うん、それはいいと思うぞ」

「ほんとうですか!」ハートが表情を明るくする。

「剣は、その基本を学べば極端な話一人でも──それも、いつでもどこでも鍛練することができる。そして身につけたことは必ず自分を守る力となるだろう」

 自分の分野ということもあり、ウィンクルムはやや饒舌に語る。

「出発までの準備期間はまだまだある──それこそ、明日からでも始められるぞ。ギルドの用事が済んだらはじめから教えてやろう」

「ありがとうございます!」

 新しい道を見つけたハートは、やる気溢れる様子でウィンクルムに礼を言った。


もうすぐ第二章です!

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