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再会

「でも、リルフィリアの王都行きの話は、どうなるんだろう?」

 お互いの話を一通りしたあと、ハートは気になっていたことを口にした。

 こんなことになってしまって、王都の大魔法院への転入の話は依然として生きているのだろうか……?それに、『シモンの山』を探すという、手がかりはないがハートとリルフィリアの新たな目標もある。

「魔法学校の先生たちに訊ねるしかないのではないか?」とウィンクルム。

「大魔法院に行くというのが、強制の色を帯びたものであるのかは、私もわからないが──『シモンの山』、か?」

「!」

 唐突にウィンクルムの口からその言葉が出て、ハートたちが固まる。

「すまない──二人の話を聞いてしまってな」

 ウィンクルムが詫びる。どうやら真夜中のハートたち二人の会話がウィンクルムにも聞こえていたようだ。

「ウィンクルムさんは知っていますか?」リルフィリアがウィンクルムに訊ねる。

「いや」彼女が首を振る。

「──それこそ君たちの先生の領分だろう。訊ねてみたらどうだ?」

「そうですね……」ハートが頷く。

 大魔法院に通うことがなくなれば、リルフィリアと二人で『シモンの山』を探すことに専念できるのだが──そう考えて、ハートはあることに思い至った。

「もしも、なんですけど……今回の話がなくなったら、ウィンクルムさんはどうするんですか?」

 ハートはウィンクルムに訊ねた。

 ウィンクルムが少し考えるように黙った後、ハートの質問に答える。

「リルフィリアを連れるにしろそうでないにしろ、私は王都に戻る……そして、しかるべき処遇を受けなければなるまい」

「えっ!」揃って驚くハートとリルフィリア。

「部下を全員死なせたのだ……その責めは負う」

 ウィンクルムは何かを見据えたような表情で言った。

「えっ、でもあれはウィンクルムさんのせいじゃないじゃないですか!」とリルフィリアが、ウィンクルムに厳罰が下るのではと恐れて反論する。

「部下を死なせ、自分一人が生き残ったのだ……何もないことはない──彼らには両親や恋人……皆、大切な者がいた」

 ウィンクルムが静かに答える。

「でも……」ハートが食い下がる。

 騎士団や王都の決まりがどうかは分からないが、それでもこれまで自分たちと一緒にいてくれたこの女性が何かの罰に処せられることがあるとしたら、それは理不尽ではないか?

「いいんだ」ウィンクルムが微笑んでハートとリルフィリアを交互に見る。

「二人が気にすることではない」

「……」

 そんなウィンクルムに、ハートたち二人はこれ以上何も言えなかった。

 

 



 


 コンコン……

 時間がさらに過ぎて昼過ぎになったころ、ようやくゲーンズの使いがハートたちのもとへ訪れた。

 使いが言うには、目を覚ました教師たちの事情聴取が終わり、ハートたちもその身の拘束が解かれるとのことだった。

「──先生たちは、何も覚えていなかったんですか」とハートが使いの兵士に訊ねる。

「はい、しかし皆そろって青い髪をした少女を見たと言っていました。その者が犯人であることに間違いはないかと」

 事情聴取を受けた魔法学校の教師たちは、ハートたちと戦っていたとき──つまりシャルロッテに操られた時の記憶はなく、その直前にシャルロッテの姿を見た記憶がかすかに残っていただけらしい。

 しかしそれによって、今回の騒動がシャルロッテによるものであること──ハートたちの証言が裏付けられた。


「お二人に、保護者の方たちをお連れしました」

 そして、使いの兵がそう言ってハートたちのいる大部屋に、リルフィリアの両親とハートの居候先の主人クラフトを招き入れた。

「リルフィリア!」

「お父さん、お母さん!」

 リルフィリアとその両親はお互いの姿を見た瞬間、駆け寄って抱き合った。

「……」

 抱擁し合う親子を見て、ハートは少し羨ましいような切ない気持ちになった。

「ハート」

「あっ、クラフトさん……」

 そんなハートの前に、居酒屋の主人クラフトが立った。

「クラフトさん、ごめんなさい。俺、何も言わないで勝手に……」

 ハートがクラフトに、昨日無断でリルフィリアの見送りに行き、その結果、夜に帰らなかったことを謝った。

「ったく、心配させやがって……」クラフトがやれやれと腰に手を当てる。

「──でも聞いたぞ、嬢ちゃんを守ったんだってな。よくやったな、ハート」

「クラフトさん……」

 ゲーンズによって事情は説明されていたらしい──不意の労いの言葉に、ハートは目の奥がぐっと熱くなった。

「ハートくん、ありがとう」

 するとリルフィリアの両親がハートのところにやって来て、揃って感謝を述べた。

「いえ、そんな……」

 これまでたくさんお世話になっているリルフィリアの両親に頭を下げられ、ハートが当惑する。

「ありがとう、ハート」

 リルフィリアからも改めて礼を言われ、照れたハートは気恥ずかしそうに視線を外す。

 こんなにも多くの人に、それに大の大人に感謝されたことはハートの人生で初めてのことだった。



「魔法学校の教師たちも、皆さんに会いたいと言っています」

 そして、ハートたちが互いの再会を喜んだ後、使いの兵士がそう切り出した。


感想のひとつぐらいくださいよおおぉ!!

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