騒ぎ①
光の雨はしばらく降ったあと、まばらになって止んだ。
空の青い魔法陣が消えるとともに、リルフィリアが纏っていた青い光のヴェールも消失する。
「リルフィリア」
彼女の元に歩み寄るハート。
降霊術が解けた彼女は、もとの姿に戻っていた。
「──ありがとうございます」
リルフィリアは目を閉じてひとり小さく呟いた。
彼女に力を貸してくれた水の精霊に感謝を捧げる。
「やったな」そんな彼女に声をかけるハート。
「──うん」目を開けたリルフィリアが頷き、二人が魔法教師たちのほうに目を遣る。
教師たちは全員地面に倒れてこそいるが、皆無傷でシャルロッテの『ヒューマンテイム』を解かれていた。
「二人とも!」
すると、二人のもとにウィンクルムが駆けてきた。
「ウィンクルムさん!」
彼女もまた無事だったことに二人がぱっと表情を明るくする。
「──あっ、あいつは?」
シャルロッテの行方を気にしてハートが辺りを見回す。
「すまない……取り逃がしてしまった」
申し訳ないなさそうに、ウィンクルムが頭を下げた。
「いえ、そんな……」慌てて首を振るハート。
するとその時、ハートが持っていた杖と本、そしてローブが淡い光になって消えていった。
「あ──」
三人が、空に消えていく光を見上げる。
そして、ハートがもとの姿に戻った。
「──しかし、すごいな君たちは」ウィンクルムがハートとリルフィリアを交互に見て言った。
「さっきの術は一体なんなんだ……?昼間、私を助けてくれたのも君たちなのだろう?」
「あ、えっと……」
ウィンクルムが質問してきたが、ハートは答えに詰まった。
ハート自身、突然起きた出来事に当惑していた。
すると──
「うん──?」
遠くからガチャガチャと物音とともに、多くの兵士たちが魔法学校の訓練場に入ってきた。
「これは何事だ!──お前たち、何をしている!!」
明かりを掲げた兵士たちの先頭に立つ騎士の男が、ハートたち三人を見つけ、物々しい剣幕で近づいてきた。
兵士たちに取り囲まれる三人。
ウィンクルムがハートとリルフィリアを庇うようにその二人を後ろに下げて自身が前に出る。
「──?ウィンクルム殿か!」
明かりに照らされたウィンクルムの顔を見て、騎士の男が誰何する。
「ゲーンズ隊長!」
ウィンクルムが答える。騎士の男のことを知っているようだ。
「一体、何の騒ぎだこれは?」
ゲーンズと呼ばれた騎士の男が辺りに目を遣る。強く警戒しているのか、その表情は険しい。
「説明させてほしい」ウィンクルムが彼を刺激しないように落ち着いた口調で言った。
「──わかった。後ろの子どもたちは?」
ゲーンズがハートとリルフィリアに猜疑的な目を向ける。
大人たちのやりとりにハートとリルフィリアは戸惑って何も言えずに立っていた。
「──この二人も含めて、私たちを保護してほしい」ウィンクルムがゲーンズに頼んだ。




