どうやら目をつけられたようです……
「おはようございます、レシファさん」
「おはようございます。お久しぶりですね」
昨日の予選での興奮が未だ冷めきらない今日、学院は普通に登校することになっている。
「昨日まで何方と観戦していたのです? 私はクラスの方に誘われてツダ君といれませんでしたが……まさかお一人でした?」
ーーー失礼なっ
久々の再開で、おはようの次の会話がぼっちでしたか? とは、俺へのクラスのイメージの悪化具合が更に下がり続けていると暗示しているに等しい。
「まさか、レオと一緒にいましたよ。最終日まで」
俺がそう答えるとレシファが目を見開いた。
「あのレオ君と打ち解けるとは……」
「あの?」
どうやらレオは、普段生徒とめったに会話しないらしい。
ーーー少し前まではチンピラみたいに俺に絡んできたんだが……あれは何だったんだ?
レシファさんがどうたらといちゃもんつけて、俺をレシファから引き離そうとしていた時期だ。
ーーーまいっか、過ぎたことだし
深く考えても意味は無いと、頭を横に振る。
「あ、それとツダ君」
と言ったレシファが、突如真面目な顔になる。
「は、はい」
思わず俺も緊張してしまう。
「最終予選に勝って、絶対に魔術大会出場してくださいね」
そう言ったあと、レシファが力強い笑みを浮かべる。
「はい、勿論ですとも」
ふっ、と力が抜けて表情が緩む。
「さ、今日も一日頑張りましょうね」
「はい……って、待ってくださいよぉ〜」
走っていったレシファの背中を、急いで追いかける。
つか、意外と……いや、めちゃくちゃ速い。
▽
教室に入ると、クラスの視線が俺に突き刺さる。
「おい来たぜ、まぐれで勝ち残った落ちこぼれ」
「まぁいんじゃね? 恥晒すだけになるだろうし」
「うわっ、それマジきついじゃんw」
俺はあの試合で無様な姿を晒し、なんとか勝てたという風に演技した。
そしてそれは、クラスメイトの反応から見るに成功した。だが、成功したはしたで良いのだが……
ーーー精神的に来んなこれ
しかし、それを表情に出さない。せめて、平静を装って何かありますよ的な雰囲気を醸したかった。
「おはようございます、レオ」
「相変わらず嫌われてんな」
レオは挨拶を返す代わりに、面白そうに笑いながらそう言う。
「笑えないですからぁ」
「お前が変なマネしてっからだろうが、自業自得だバーカ」
ーーーぐぬぬ……言い返せないのが悔しい
俺がそう悔しがっていると、担任が教室へ入ってきた。
「はーい皆席について〜」
皆が静まり、自分の席に着席する。
そしてホームルームが始まる。
「おはようございます、昨日までお疲れ様でした」
始めに労いの言葉を頂いた。
「本日は普通に授業がありますが……」
忘れていたのか、あっと思い出したかのように呟き補足する。
「昨日までの試合で予選突破した生徒……うちのクラスではレオ君とツダ君ですね。二人は放課後、生徒会室へ集まってください」
それを言って締めくくり、ホームルームは終わった。
▽
放課後、俺とレオは生徒会室へ向かった。
「何が話されるんでしょうね」
歩きながら、暇つぶしにそう聞く。
「大方、決勝の日時と場所、そしてルール。とかじゃねぇの」
「ほぉん」
「なんだそのムカつく反応」
言ってる間に生徒会室の扉の前に着いた。
「行くか」
レオがそう言って扉に手をかける。
「えっ、あの心の準備が……」
「失礼します」
俺の言葉をガッツリ無視して、レオは中へ入る。
「し、失礼します」
続けて俺も中へ入っていく
「おいおい、おせぇぞ一年」
「ったく、何様のつもりだよ」
どうやら、俺達が最後だったらしく見るからにDQNな人達が睨んできた。
ーーー怖ぇ……此処エリート校だったんじゃねぇの?
エリートだからといって不良で無いとは限らない。
「どこ座ります?」
「そこ」
レオが指した席はなんと、不良達が一人で二つの椅子を占領していた席だった。
「ちょ、他探しましょうよ」
「それ以外にねぇだろ」
「……はぁ、ほんとだ」
席は人数分だけしかなかった。
「すいません」
「ああ?」
レオが不良達に声をかけた。
ーーーすげぇなあの人
ーーー《マスターとは大違いですね》
ーーー認めざるを得ないな
ーーー《いや、初めから認められない場面ありました?》
ーーーないけど……
少しふざけて言っただけなのにレシファがまじで返してきやがった。
「俺達に椅子貸してくれませんか」
「はぁ?」
「なんだよ、俺らが使ってんだけど」
「テメェらは端で立ってろや」
俺が少し落ち込んでいる時、レオは不良上級生達になんか言われていた。
「席は人数分用意されています。貸さないというのが可笑しいのでは? 一人で二つも使用しているのに」
「うるせぇ、第一テメェらが遅せぇのが悪ぃんだろうが」
「俺達は一応最後に来たとしても、時間以内にここへ来たではありませんか」
「ああ? るっせぇ! そもそも後輩が俺ら上級生に指示してんじゃねぇよ!」
だんだん不良達がヒートアップしてきた。
ーーーつか生徒会、お前らとめろや
生徒会はただ傍観しているだけだ。
他の生徒達も同様。面白そうにしている者、びくびくしている者、興味が無い者、寝ている者。
因みに俺も人のこと言えた立場ではない。
「であれば、一体どうすれば席を譲ってもらえるのでしょうか」
呆れたように溜息をつき、レオが聞く。
すると、不良達がニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
「そうだな、這いつくばってさっきまでの偉そうな態度を詫びろや」
そうしたら譲ってやらなくもない。そう言った。
それに対して、レオは勿論、
「断ります」
拒否した。
そしてそれに更に怒りだす不良達。
「ああ? なんでか答えろや!!」
「俺のプライドが許しません」
当たり前のようにそう答えた。
常に表情を変えず、冷静に答えるレオ。それに対して怒りで冷静な判断が保てなくなりつつある不良達。
傍から見れば、もうどちらが後輩なのか分からなくなってきた。
「ふざけんじゃねぇ!!」
ーーーあーあ
遂に不良の一人がレオに拳を振り上げた。
「はぁ……」
ため息を吐きながら、余裕でその拳を躱す。そしてその拳は生徒会室の机をへし折る。
「おいお前ら、やっちまうぞ!」
不良達の人数は三人。そして三人同時にレオに襲いかかる。流石に生徒会室で魔術の使用は不味いと思っているようだ。
「……おいアカネ、何とかしろ」
三人の攻撃をいとも簡単に躱しながら俺に言う。
「いや、レオが何とかしてくださいよ」
「てめぇ、なんもしてねぇから今何とかしろや。こちとら反撃したら面倒だから別の方法で無力化しろ」
めんどくせぇな。そう内心で悪態をつきながら、俺は魔術を発動した。
「睡眠」
「「「あへぇ〜」」」
不良達はバタバタと眠りについた。
「これでいいですか?」
「ああ、ったく、おせぇぞ」
「うわ、助けてあげたのに」
「あ? なんか言った?」
「なにも……」
俺は思った。
ーーーいや、さっきの不良よりこの人の方が圧倒的に不良っぽいわ
▽
二学年の不良達を、レオと朱音が制圧した時、生徒会の四人……カラ、サバン、カラス、そしてアレシスは目を見張った。
決勝進出者三人の同時攻撃を容易く躱すレオ、その三人を無詠唱、そして一瞬で同時に眠らせた朱音。一見簡単なように見えて、それはかなり洗礼されていて、無駄のない完璧な動きや魔力コントロールだった。
カラは思った。
ーーーあの子、物凄い睡眠使いだわ
サバンは思った。
ーーーん〜、やっぱり只者じゃなかったねあの二人
カラスは思った。
ーーーあのレオとやら、天才だな。他の者より桁が違う
アレシスは思った。
ーーーふふっ、面白い一年生が入ってきましたね
四人はそれぞれ思い方は違うものの、ある思いは同じだった。
ーーー是非一度でいいから……
ーーーいや〜、やっぱり我慢できないな……
ーーー面白い……
ーーーやっぱり抑えられないわね……
あの二人と真剣勝負がしたい。
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