寒っ!
「凍結」
「鬱陶しいわね」
シベリアがアレシスを氷で拘束する。しかしアレシスはそれを苦にもせず破壊していく。
「これではどうにもなりませんよ」
これ以上やっても無駄だと、アレシスはシベリアが魔術を発動し、氷が生み出される直前に破壊した。
「そう……なら」
シベリアが目を閉じる。
「氷場」
瞬間、競技フィールドが凍りついた。
観戦席にその冷気が伝わり、空気の温度が一気に下がる。
「なるほど、中々面倒ですね」
氷のステージとなった今、シベリアにとって負けはもう見えていなかった。
「氷龍召喚」
唱えたと同時に凍りついたフィールドが砕け、全長十メートル程の氷の体をした龍が現れた。
召喚魔術。扱いが非常に困難かつ非効率なため、多くの魔術師は使用しない。というより発動すらできない者が多い。
そして今、シベリアが召喚した氷龍……いや、氷龍を模した氷の器に実体のないなにかが入った龍は、召喚魔術というより、憑依魔術に近いものだった。
「行け」
シベリアの一言で、氷龍が荒れ狂いアレシスへ襲いかかる。
「破壊」
氷龍はアレシスに触れることすら叶わず砕け散った。
「だから無駄ですよ」
余裕そうに言うアレシスに、
「誰がたった一匹だと言いました?」
シベリアがそう言った。
その瞬間、アレシスの背後から先程の氷龍と同じ形をした氷龍が五体現れた。
「さぁ、もっと暴れなさい」
氷龍の怒涛の連撃。
流石のアレシスもこれには処理しきれない。
「くっ」
回避し、大きく距離をとった。
「待っていましたよ」
珍しくシベリアがクスリと笑みを浮かべてそう言った。
そして
「永久凍結」
すると、アレシスの足元から早い速度で薄氷が張っていく。
「だから何度も無駄だと……」
と呆れたようにアレシスが言い、その氷を破壊しようとするが、
「なっ!?」
破壊するどころか、その薄氷の凍結速度がみるみる上がっていくではないか。
「あら残念ね、この氷は大きな魔力の動きに反応するの。つまり貴方が魔術を発動させようとするとどんどん侵食が速まるのよ」
そう説明するシベリアに、思わず苦い表情になるアレシス。
「安心して、永久凍結と言っても私なら溶かすことが出来るから」
遂に、アレシスが薄氷に包まれ、完全に凍った。
「審判の方、終わりましたよ」
呆気に取られている審判に決着を促す。
『……し、勝者、シベリアーー』
言いかけた時、
ピシリ……
「まさか、とんだ化け物ですね」
そう言ったシベリアが先程完全に凍結させたアレシスへ向く。
「流石に今のは危なかったわ。久々に少し本気を出せたわね」
平然とシベリアへと歩みを進めながら言うアレシス。
「なら、次こそは本当に殺すつもりで行かないとだめですね」
シベリアもアレシスへ向かう。
「さあ、改めて始めましょうか」
「ええ、そうしましょう」
フィールドに亀裂が入る。
雹混じりの強い風が吹く。
観戦者の多くは、これから起こるであろう壮絶な戦いに、期待と不安が入り混じっている。
そして……
「そこまで!!」
女性の声が会場に響いた。
「あなた達、此処を破壊させるつもりですか」
観戦席からその女性……セラ・アルバートはフィールドへ降りていく。
ーーー最近セラさん出番なしだったな
セラの朝は早い。
セラは実は忙しい。
なんたって隊長だから。
「シベリア・フリージア 対 アレシス・モルドの試合、会場の全壊が懸念されるため引き分けとする!」
そう、セラ・アルバートが宣言したことにより、この試合……予選の予選は幕を閉じた。
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