魔女と生徒会長
いよいよ校内予選の“予選”最終日。
毎度の事ながら試合のレベルに目を見張る。そして俺の興奮は未だ収まることの無いまま本日最後にして最大の注目試合が始まる。
最終日だけあって、約一週間かかる校内予選の決勝をかけた戦いの予選に飽きてきた生徒達も、ようやく退屈が終わると会場の空気が初日並の熱気に包まれている。
熱気の理由はそれだけではない。
『さあさあさあ! いよいよ本日……いや、本予選最大の目玉となる試合がやって参りました!!』
審判がそう会場をさらに盛り上げる。
毎回思うのだがこの女性審判、一人で司会も判定もこなしている。
ーーー優秀すぎやしませんかね?
『さあ入場して参ります! シード権を獲得した幸運を持ち、その冷たい視線を向けられてハァハァしない男はいないと言われる氷の魔女……シベリア・フリージア!』
他の生徒よりかなり長い紹介をされ上がってきた人物は、まさに“氷の魔術師”という言葉がピッタリの美しい女性だった。
白縹の透き通るような美しい長髪を下ろし、華奢な体つきをしてやや長身。冷気を感じさせる程に白い肌が繊細な身体をより強調している。そして、見惚れるほどに深い碧をしたジト目な眼。
因みにシード権だが、三学年にとって最後となる魔術大会出場のチャンス。そのため、不運にも体調不良などの理由で全力を出し切れなかった……そんな生徒に与えられたのがシード権獲得チャンス。
これは、三学年全員がくじを引き、当たりがでた三名が校内予選の予選会で勝っても負けても本予選に出場できるという、人によっては恥を晒す優遇措置なのか分からないものである。
ーーー高嶺の花的な存在だわこの人
ーーー《マスターも彼女にゴミを見るような目で見つめられたいのです?》
ーーーそんなことない……って否定できない自分がいる
ーーー《でしたら、彼女にマスターお得意のセクハラ発言連発したり、土下座して頼み込んだりしてみては如何でしょうか》
ーーーいや出来ねぇから! そもそもお得意のセクハラ発言ってなんだよ!? そんなの得意でもねぇししたことすらねぇわ!!
ーーー《またまた……》
ーーーなに! なんなの!? 最近レオに役割取られたからって俺に八つ当たりしてるんですか!?
ーーー《あ? なんつった?》
そのつっこみに、クレルの口調が変わった。どうやら地雷を踏んだらしい。
そして俺はガクブル。
ーーーな、なんで……もありません
ーーー《以後発言にはお気をつけください》
ーーーしゅみましぇん
完全にしょぼくれた。
『いよいよ大注目選手の登場です! 女子生徒唯一のフリージア選手に対抗できる、生徒会長にして最強の存在。破壊神……アレシス・モルド選手!』
現れた女性は、一言で言うと、”山”だった。
山と言っても、身体つきががっしりだとか、身長が馬鹿でかいなどということはない。
彼女は寧ろセクシーなスタイルで、彼女が通り過ぎれば、男女問わず思わず二度見するくらいには魅力的な体つきをしている。
では、一体何が山なのか。
それは、はっきり言えば胸だ。
ーーーおっぱいでけぇ……
ABCDEF……Gはありそうだ。
そして勿論美人決まっている。
薄紫のこれまたストレートロング。
竜胆色の少々ツリ目気味の大きな眼で、対戦相手から目を離さない。
ーーーあれ? モルドって……
もしかしてと思ったが、あのゴリゴリマッチョの最強門番からあのような御方が産まれるはずがないと失礼ながら思い、可能性を消去した。
そしてついに始まる。
『両者構えて!』
氷の魔女 対 破壊神
ーーー凄いオーラだな
焦らすように審判がいつもより少し間を開け……
『始め!』
両者同時に前へ出る。
「凍結」
はじめに魔術を発動するのはシベリア。
アレシスの動きを推測し、アレシスの右足が地面に着いた瞬間、
「ちっ」
アレシスの右足が、凍った。地面と氷は繋がっているため彼女の動きは封じられる。
「氷槍」
一定距離を保ち、すかさずシベリアは右手をアレシスへ向る。そして掌から大きな氷で精製された槍をアレシスへ放つ。
武器にすると思いきやまさかの遠距離攻撃。
「はあっ!」
氷槍がアレシスの体を貫通する直前、氷槍が砕けた。
「まだ準備運動にもなりませんね」
シベリアが無表情でそう挑発する。
「そうですね」
言いながらアレシスは、右足を拘束している氷を破壊する。彼女からは魔術を使用した様子は感じられなかった。
「流石は破壊神とよばれるだけありますね。私の氷がいとも簡単に破壊されるなんて……次は加減しないわよ?」
目を瞑り、わかっていたと言わんばかりにシベリアが小さくため息をついた。そして警告する。
「貴方こそ氷の魔女と称されるだけありますよ、なかなか……いえ、一つ一つとても強力な魔術を使用なさるなんて……貴方も破壊してしまいそうだわ」
アレシスも小さなため息をつく。そして威嚇。
彼女たちのやり取りは、表情こそ可愛らしいが話の内容は恐ろしい。
短い挨拶が終わり、いよいよ本番だと言わんばかりに、二人は魔術を発動する。
ーーーお、女の子怖ぇ……でもそんな所もグッと来るかも
「なんかさっきから顔きもいぞお前」
しばらく黙って観戦していたレオが唐突に、そして理不尽な俺への暴言。しかしそれでも足りないと、クレルを求めてしまう俺がいた。
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