このままどんどんいきましょー!
はいそれでは、本日の予選はいよいよ三学年です。
注目選手は勿論生徒会メンバーだ。
レオの情報からすると、本日出場するのは生徒会副会長である、カラス・タージン。噂によると、暗殺一族の末裔なのだとか。
「なんでそんな噂が?」
レオの説明を聞きながら、ボソッと呟いてみる。
「見たんだとよ」
「見た?」
「カラス・タージンが一瞬で人を殺すところを」
「ひぃ!」
思わず体が震える。
もっとも、何度か人を殺めた俺が何をしているのだと一人思った。
「一人の生徒がそれを見たらしく、その噂はじわじわと広がったんだと」
足を組み、興味なさげにレオが補足した。
「そ、それで? 本人はなんと?」
「知るかよ」
ーーーですよねぇ……
俺はカラス・タージンという生徒が益々気になった。
そしてそのまま、予選五日目が始まった。
▽
「うん、他と圧倒的にちげぇわ」
三学年の試合は、どの組み合わせも、技術、力、迫力が一、二学年とは比べ物にならない。
ーーーたった二年で何があったってんだよ!
そう考えると、これからの学院生活で地獄を味わうイメージしか想像出来ない。
「やめやめ……考えちゃだめだ」
「なにブツブツ言ってんだ? きめぇよ」
「ひどい!?」
色々と必死な俺に、レオの不意打ち毒攻撃。
「どーでもいいけど、始まるぞ」
「いよいよですか……」
既に終盤に差し掛かった今、ようやくメインの登場だ。
『さぁ、本日ラストの試合、カラス・タージン選手対、トンファ・スーマン選手の試合です!』
まずフィールドに上がってきたのは、バッキバキに鍛え上げられた肉体が自慢っぽい、デカめの男子生徒……こっちがトンファだ。
次に現れた生徒は、黒いスカーフで口元を隠し、本来この予選会で使用する戦闘着ではなく、パイロットスーツのようなパツパツの戦闘服を着ている。その人物こそ、生徒会副会長である。
「かっけぇ……」
「痛い人だな」
俺の感想と反対に、レオは冷めた目でカラスを見ている。
「なんでですか? かっこいいじゃん」
それが不思議で、俺はレオにそう聞いた。
「はぁ、お前も“あっちの方”か……可哀想に」
何故か哀れみの篭った目でこちらを見てレオはそう答えた。
▽
『それでは両者構えて』
いよいよ始まる。
二人とも独自の構えだ。
『始めぇ!』
その瞬間、トンファが拳を振り上げ、目にも止まらぬスピードでカラスに迫った。
ーーーはやっ!
そしてトンファが拳を振り落とす。
しかし、そこはさすが生徒会。
難なく横に最小限の移動……スっと横に半歩程の移動で躱した。
そのまま振り落とされたトンファの拳は地面を殴り、小さなクレーターが出来た。
「なんじゃありァ!?」
一見魔術とは関係なく、ただ殴っただけであの威力。
その光景に驚いていると、
「身体強化だ」
レオの解説が入る。
「身体強化?」
ーーー俺がちょこっと使ってるやつか
そんな俺の心中を知るはずもなく、レオは続ける。
「ああ、発動すると一定時間自分の身体能力が上昇する。これも勿論魔力量に比例して、魔力が高ければ高い分だけ身体能力もその分上がる」
「ほうほう」
魔力量に比例するのは初めて知った。
さらにレオは補足する。
「だが、本来魔術は中〜遠距離に特化している。故に近接戦闘用の身体強化は扱いが難しい。そのため一般的にはおまけ程度に付与して、通常の魔術を扱う上での体にかかる負担を軽減するために使われている……っていのが分かりやすい説明か?」
「お〜」
パチパチパチ。
ーーー俺も今度から魔術の補助として使お
そんなやり取りの間にも、試合は動いている。
だが、既に勝ちは見えているようだ。
身体強化を使用し、他にはない独特な戦い方で攻めてきたトンファ。
しかし、それに対して圧倒的身軽さを誇るカラス。
ーーー相性が悪かったなぁ
そして遂に、カラスが動いた。
「終わりにしよう」
先程まで、トンファの攻撃をスレスレで躱し続けていたカラスが、そう言って動きを止めた。
すると誰もが予想した通り、トンファは大きな隙を見せたカラス目掛けて最大威力で殴りかかる。
しかし、カラスは躱そうとする動きも見せずにただその場から動かない。
ーーー当たる!
トンファの拳がカラスの顔面を直撃する……寸前
ドパァン!
と発砲音のような音が響いた。
ーーーなんだ!?
そして、直ぐに試合の状況を確認した俺は目を剥いた。
「ど、何処にいる……?」
誰かがそう言った。
ーーーんなの、俺が聞きてぇよ
先程、トンファがカラスに渾身の一撃を食らわせた……かに見えた。
しかし、そのカラスがどこにも見当たらない。
トンファもそれに困惑し、必死でカラスを探している。
「ぐはぁ!?」
突然、カラスを探していたトンファが白目を剥き、気絶した。
その様子に会場がざわめく。
「何が起こってんだよ……」
チラリとレオの様子を伺うと、レオは相変わらずの無表情で大して驚いてはいないようだ。
そして改めてフィールドを見ると、いつの間にかそこには、なんとカラスがいた。
『勝者、カラス・タージン選手!!』
ーーーどういうことだ?
「おそらく透明化だな」
俺の表情を察してか、レオがそう言った。
ーーー透明化?
「透明化……透明……つまりそういうことか」
ーーーこのド変態忍者め!!
ーーー《特大ブーメランですね》
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