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いよいよ、サバン・オブジェさんが出場するようです

予選会に戻ります

 「はぁ……」

 「ん? どうしたのじゃ」


 本日、二学年予選二日目。

  俺は昨日の出来事に何かが起こる予感がして、あまり眠れなかった。


 「ううん、なんでもないよ」

 「そうか……んじゃ、行ってこい!」


 なにか言いたげな様子のリリィだったが、直ぐに切り替えて笑顔で見送ってくれた。


ーーーいい子やなぁ、あの子は


 と思いながら歩いていると、


 「おにいちゃあああん!」


 まだそこまで離れていない魔王城から、聞き慣れた可愛らしい声がこちらを呼んだ。


 「わざわざ起きてくれたのか」


 呟いた俺は足を止め、声が聞こえた方に振り向く。


 「いってらっしゃいなの〜!」


 ぶんぶんと、小さな手を目一杯大きく振りながらヴァンピィが少し遅れた見送りをしてくれる。


 「いってきまーす!」


 こちらも負けないくらい大きな声で返す。


 その様子に、ヴァンピィの隣で呆れた笑みを浮かべるリリィが見える。

 

 「モルドさん、今日もよろしくお願いします」 

 「勿論、我が命に代えてでもここをお守りします」


 そんな頼もしい台詞もいつもの様に聞きつつ、満足した俺は改めて学院へ向かった。



 ▽


 「相変わらずおせぇな」

 「ちょい早めですよ」


 いつも通り、俺はレオと待ち合わせて会場へ向かう。


 「あれ? 思ったんですけど、いつものお連れの方達は?」


 俺があまりレオと親しくなかった時期、金魚のフンの様にレオにくっついていた生徒がいたが、最近はめっきり現れなくなった。


  「あいつらは元々、親の上司が俺の親父だったから引っ付いてただけだ」


 特になんでもなさそうに答えた。


 「てことは、レオのお父さんはどうなったのです?」

 「昇格した」


ーーーすげぇ


 「おら、もう行くぞ」

 

 俺が感心していると、レオがそう言ってスタスタと歩き出した。


 「あっ、待ってくださいよ〜!」


 慌てて後ろから着いていく。


ーーーこれじゃ、俺まで取り巻きみたいな感じじゃねぇか


ーーー《あら? 実際そうでしょう》


ーーーち、ちがうしぃ


 



 「またここの席ですか」


 到着し、いつもの席に着席する。


 「ここなら全体を見渡せるんだよ」

 「……ほんとだ」


 確かに言われてみれば、ここ以外にいい席はないのかもしれない。


 「さ、始まるぞ」


 レオが言ったのと同時に、フィールドに上がった審判をスポットライトが照らした。



 ▽


 ワァアアアアア!!


 「相変わらずうっせぇな……少しは静かに観れねぇのかよ」


 選手が動きを見せる時にいちいち上がる歓声に、レオがそう愚痴をこぼす。


 「まぁまぁ、盛り上がることはいいんじゃないですかね」


 そう宥める俺に、


 「だとしても限度があるだろ」

 「た、確かにそうですね」


 正直、結構うるさいとは自分も思っていた。


 「そして、気分が最高に悪い時に……」


 『さぁ、続いては! 生徒会の一人でもある、サバン・オブジェ選手対、学年で成績上位をマークしている、ソロ・マーロ選手の対戦です!』


 「サバン・オブジェ(あいつ)の試合かよ」


 本日期待の試合、注目選手同士の対決だ。

 だというのに不機嫌丸出しのレオ。


ーーー無理もねぇか、昨日あんだけ絡まれたもんな


 その事を思い出しつつ、俺は試合に集中することにした。


 『それでは構えて』


 開始前の瞬間。その時だけ会場はしんと静まり返る。


 『……始め!!』


 試合開始。



 「風刀(フェザーソード)


 先に動いたのは、サバン・オブジェ。


 右手からバスケットボール大の風弾(フェザーボール)を出し、それを発射せずに棒状の形へと変形させ、最後には刀へと変わった。


 「す、すげぇ……」


 初めて見る魔術の使い方に、俺は驚きと興奮で、もはや表情一つ変えない。


 「サバンが得意とするのは風魔術を使った接近戦。他の魔術師とはひと味違う」


 不機嫌ながらも、解説はしっかりこなしていく有能っぷり。


 「流石です! レオさん」

 「ああ?」


 


 次に動いたソロ・マーロは、レオによると、距離を一定に保ちつつチクチクと中距型の魔術を使用し、サバンの体力を消耗させる作戦のようだ。


 「まさにインテリ系の戦い方だな」

 「流石です! レオさん」

 「うっせぇよ」


 怒られた。




 ソロの作戦は上手く動いていた。

 ソロが魔術を発動して、サバンの体力を消耗させつつ、ついでに動きも封じることが出来る。


 まさに完璧な作戦……かに見えた。



 暫くして、魔術を撃ち続けていたソロが、肩で息をするようになった。


 「おやおや、こちらはまだいけますよ」


 それを見たサバンが、ソロにそう挑発をかける。


 「ぐっ! 水弾(ウォーターボール)!」

 

 ソロの攻撃頻度が上がった。


 そしてサバンがニヤリ。



 

 「はぁ、はぁ……」

  


 とうとうソロの体力が底を尽き、膝から崩れ落ちる。


 「さあ、終わりです」


 と言ったサバンは、右手に風刀で攻撃せず、左手をソロに向けた。



ーーーん? なんでそれで攻撃しないの?


 不思議に思う俺。

 すると、一瞬だけサバンと目が合った気がした。



 

 そして……



 「風弾(フェザーボール)……っと、手が滑った」


 サバンの手から放たれた魔術はなんと、会場席にいる、こちら……レオと俺に向かってきた。




 「「火弾(ファイアーボール)」」


 

 咄嗟に俺達も魔術で相殺した。


ーーーな、なんだ!?



 俺が驚き、レオが殺意に湧いた目でサバンを見ている。


 「いや〜ごめんごめん、発射型の魔術は苦手でね〜」


 へらへらと反省の色は見せずにそうサバンが言う。


 そして対戦相手を腹パンして気絶させた。



 『しょ、勝者、サバン・オブジェ!!』



 ワァアアアア!!



 やかましい歓声の中、俺は慌ててレオの様子を確認する。


 「れ、レオ! 大丈夫ですか?」  

 「ああ、大丈夫だ」


ーーーあれ? 案外普通


 だが、次の一言で俺は凍りついた。


 「なぁアカネ、あいつ今すぐ殺しに行っていいかな?」


 初めて見た。あんな無表情でここまで人を恐怖にさせる人を。


 「お、落ちつけぇええ!!」



 この後、何とかその場は収まったが……


ーーー次に対面したらマジどうなるんだろ


 勘弁してくれと心からそう思う俺であった。

いつも読んでいただきありがとうございます!

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