おさんぽ
デザート回の翌日の話です。
本日快晴、お散歩日和。
リリィとヴァンピィはいつもの様に朱音を見送った後、こんな話をしていました。
「ねね、お姉ちゃん」
「ん、どうした?」
ヴァンピィがリリィのスカートをチョイチョイと引っ張る。
「お外行きたい」
「お外?」
「うん! おさんぽしたい」
ーーーなぜじゃ? この子、ちょくちょくこっそり抜け出しておるのに、今日は我と一緒におさんぽとは……
そう不可解に思うリリィだったが、純粋無垢な笑顔を向けられてしまったら……
「うむ! 一緒に行くかの!」
ダメ。
なんて言えるわけがなかった。
「して、どこ行く?」
早速リリィは、ヴァンピィが行きたい場所を聞く。
「ひみつ! ヴァンピィに着いてくるの!」
「そうかそうか、楽しみじゃの」
ヴァンピィがそう無邪気に答える姿を見て、あまりの可愛らしさにニヤケが止まらないリリィ。
そして、ヴァンピィはリリィと仲良く手を繋ぎ、歩き出した。
▽
「〜♪」
「……」
鼻歌交じりに歩みを進めるヴァンピィを横目に、リリィは念のための作業をしていた。
いつ何者かに襲われても無事でいられるように、完璧な防護魔術をヴァンピィに発動したり、怪しい者がいないか索敵したりと気が抜けない状態だ。
「……お姉ちゃんどうしたの? もしかして、ヴァンピィと一緒じゃ楽しくないの?」
無意識に顔をこわばらせていたせいか、ヴァンピィが勘違いして涙目になり、そう聞いてきた。
「ち、違うのじゃっ、決して……むっ! なんじゃ!?」
ヴァンピィへの弁解をしている最中、何者かがこちらへ向かってくる気配がした。
「どこからじゃ?」
しかし、辺りを見渡してもそれらしい影は見当たらない。
ということは……
「上か!」
見上げると、空には立派な翼を広げ堂々とした風格でこちらへ迫る、一羽の鷲がいた。
「っ! ヴァンピィ! 下がっておれ!!」
よく見るとその鷲は、ヴァンピィの方へゆっくりと向かっている。
それが分かったリリィは直ぐにヴァンピィへそう促すが、
「おーい!」
まるで友達であるかのように、その鷲へ両手を大きく広げて手を振っている。
「ヴァンピィ? ……ああ、なるほどな」
ヴァンピィの様子で何かを察したのか、リリィは警戒を解いた。
「パタさーん!」
パタさん、そう呼ばれたヴァンピィのお友達は、速度を上げ地面に降り立った。
『久しいな、我が友よ』
「久しぶりだね! 会いたかったよ〜」
すると、ヴァンピィはパタさんの肌触りの良さそうな羽毛で覆われた体にぎゅうっと抱きついた。
そんな光景に、リリィは様々な疑問を持った。
「パタさんと言ったかの? お主は一体何者じゃ」
通常ではありえない状態の鷲に、そう問うた。
『私はお前らが言う神獣と呼ばれる存在だ』
ヴァンピィに抱きつかれたまま、気にしないでそう答えた。
「ふむ」
驚きはしない。
寧ろ、そうでなくては説明がつかない。
しかし、それを知ってしまっては新たな疑問がまた生まれる。
「では、神獣であるお主が何故宝物を守護していない? 神獣は宝物の守護を全うする為に存在すると聞かせれておるが」
すると、パタさんはとんでもないことを言い出した。
『なに、今もこの段階で守護しているさ。ヴァンピィが宝物の所有者なのだから』
「なっ……なにぃいいい!?」
当の本人はというと、
「ふにゃあぁ……」
パタさんに抱きついたまま眠っていた。
それはそれは気持ちよさそうに。
いつも読んでいただきありがとうございます!
最近短くなってすいません……