色々すっ飛ばしたけど、始めるよ!
俺が“勇敢なる変態”という異名をつけられ早一ヶ月、そろそろ皆がその異名を忘れ始めた頃ーー
「はーい、みんな席に着いてくださーい」
いつもの教室だが、クラスの雰囲気が緊張している。
それは、魔術大会が近づいていくにつれ、だんだん増してきている。
「皆さん、とうとうこの日が来ましたね」
そして今日、ただでさえピリピリしている教室が、いつにも増して格段にそれが激しいと感じる。
その原因、それは……
「魔術大会の校内予選が!」
少し興奮したように、先生が言う。
ーーーなんか、もう来たかーって感じだな
「予選はこの後、アリーナで学院長の挨拶が終わった後、演習場で行われます……全力で臨んでくださいね」
その言葉に、益々緊張が高まる。
「はい、今日のホームルームはこれで終わりです! それでは皆さん、張り切っていきましょー!!」
流石に先生も、張り詰めすぎだと感じたのか、テンションを上げてそう激励するが……
「あ、あはは……」
反応無し。
ーーードンマイ、先生
とぼとぼと立ち去る寂しげな背中に、心のなかでそう励ましてやった。
ーーーつか、レシファさんめちゃくちゃ真剣そうな顔してっから、まじ話しかけにくいよ
ーーー《コミュ障発揮!》
ーーーやかましい!
▽
「ーーそれでは、全力で己の力をぶつけ合いましょう」
長ったらしい学院長の話が終わり、次はいよいよ予選だ。
「お、おぉ!」
演習場に着いたら、観客席にはたくさんの生徒達の熱気に包まれていた。
ーーー見てる人達もみんな参加するのかな?
ーーー《殆どそうでしょうね》
そして大凡の生徒達が会場に集まった時、歓声が上がった。
『準備が整いましたので、只今より、サタニウス王国全魔術学院魔術大会センス学院予選会を開催致します!!』
そう宣言した時、会場からは割れんばかりの歓声が上がった。
『ここで、この予選会のルールを説明致します』
ーーールールあったんだ
ーーー《無かったら最悪、ただの殺し合いになりかねませんよ……》
『ルールは基本シンプル、相手が降参または戦闘不能になったら試合終了。しかし、それにも関わらず攻撃し続けた場合、審判が止めに入り、それでも止めなかった場合は反則負けとみなします』
ルールについては“よくあるやつ”だった。但し、“よくあるやつの”中の“肉体的ダメージは精神ダメージに変換する”みたいな仕様は無いらしい。
ーーー痛いのやだよ……
ーーー《当たらなければなんの問題もありませんよ》
ーーーか、かっこいい
『それでは早速、一学年の部の予選を開始します!』
そしてまた歓声。
『初めの組は、ハンズ・カトフ選手対ロット・コートン選手の対決です』
そう紹介されでてきたのは、身長百八十センチ程でガタイのいいハンズと呼ばれた男子生徒とロットと呼ばれたひょろっとした優男みたいな男子生徒だ。
『両者構えて』
二人とも独自の構えだ。
『開始!』
その合図により、同時に二人は動いた。
ーーー予選会第一組目、そこから様々なドラマが生まれる……のかなぁ?
まず初めに攻撃を仕掛けたのは、ガタイのいいハンズだ。
ハンズは魔術を使わないでロット目掛けて拳を振り下ろす。
「おっと」
それに慌てることなく、ロットは難なく躱す。
その隙を見逃さないハンズは、地面に手を当て、ぶつぶつと何やら唱えている。
「大地の洗礼!」
そしてその瞬間、地面から大きな数本の棘が豪快に、地面をコーティングしているコンクリートの様なものを貫いてロットに迫る。
「やばっ」
そこでロットは、彼もまた一瞬で何かを唱えたかと思うと、後ろに何かから吹っ飛ばされたかのように勢いよく横に飛んだ。
結構大胆な回避に、会場からはざわめきが起こる。
「いてて……」
「むっ!」
ハンズの魔術発動に三秒、そしてロットの魔術発動に約一秒未満。
ーーーは、ハイレベルぅ〜
ーーー《マスターの先が思いやられます……違う意味で》
ーーーどういうことだよ
ーーー《ハンズが使用した魔術は土魔術、ロットが使用した魔術は風魔術。しかも基礎でまだ未熟。詠唱が速いのも簡単な故に出来ること……つまり、あのようなことは誰でも出来るということです》
ーーーな、なるほど
ーーー《それにマスターは詠唱を必要としないのですよ》
言われて気づいた。
ーーー《まさか、忘れてーー》
ーーーないよ、全然!
そうこうしているうちに、試合は終盤を迎えているようだ。
「はぁ、はぁ……」
「〜♪」
魔術を使いまくって大分体力を消費したハンズ、それに対して最小限の回避と魔術で未だ余裕があるロット。
そしてーー
「降参だ……」
ハンズが降参を宣言し、ロットの勝利が確定した。
『勝者、ロット・コートン選手!!』
拍手喝采。第一組目は無事終了。ロットはハンズと握手を交わし、お互いを讃えあっている。
ーーーいいねぇ〜、友情とやつは
ーーー《唯一の友人と言っていい者に見放された男》
ーーーみ、見放されてねぇし!
「あらツダ君」
ーーーそ、その声は……!
振り返ると、“今は”金髪ロングの美少女の超絶美人……レシファがそこに居た。
「って誰?」
「もうっ! からかわないでくんなまし!」
どうやら彼女、かなり緊張していたらしく、暫く一人で心を落ち着かせていたらしい。
「大丈夫ですか?」
「ええ、もう大丈夫です!」
「それはよかったです、レシファさんあと少しで出番でしたので」
「え?」
突然固まってしまったレシファ。
「もしもーし」
「きゅうぅぅ……」
なんと、また緊張してきたのか、今度は気絶してしまった。
「おい、確認しとけよ……大丈夫ですかー?」
起きない。
「ねぇ、起きてくださいよ! あとすこしなんですよ!?」
「う、うぅ……ツダ君?」
「あっ、起きた! 準備しなくていいんですか?」
「じゅん……び?」
どうやら記憶が少し飛んだらしい。
「ええ、レシファさんもう少しで出番ですから」
「きゅうぅぅ……」
「だから起きろやぁあ!!」
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