はーい、起きて起きてー
お盆休みだ! 毎年祖母の家で、お泊まり&BBQがあるんですよ♪
「この学院全体を眠らせた!?」
クレアはかなり衝撃を受けていた。
聞いた時は正直、半信半疑であった。
しかし、襲撃にあった生徒達の悲鳴や、爆発音などが今となっては一切聞こえない。
しんと静まり返った学院。
これが、この学院に起こった襲撃事件の終結を意味した。
「まさか、本当に……」
わかってはいるが、あまりのことに未だ、整理しきれていないらしい。
「それをやってのけるのがこの私、眠の支配者のヒュプノスだ!」
学院長の反応に満足した俺は、この人に自分の二つ名を広めてもらおうと、決め台詞を言った。
「で、どうやって皆を眠らせたのか知りたいところだけど、先ずはいつ皆が眠りから覚めるのか聞きたいわ」
どうやらこのお方は、かなりのスルースキルの持ち主らしい。
ーーーがっつり無視されたんだが
ーーー《もう二つ名などという、痛いことは卒業なされたらいかがです》
ーーーえー、でもかっこいいし……
ーーー《では、仮にこの二つ名が広まり、マスターの黒歴史が永遠に語り継がれることになったとしても、私は知りませんよ》
ーーーうん、わかった。よしやめよう
想像してしまった。もしそうなればぞっとしない。
ただただ羞恥心で悶え死ぬだけだ。
だから二つ名は諦め、先生の質問に答えた。
「んん、眠らせた人達が目を覚ます時間とかは、俺が操作できますよ」
「う、うそ……」
「ここで嘘ついてどうするんですか」
睡眠の仕組みは、睡眠ガスをイメージして変化させた魔力を、対象に閉じ込めるというものだ。
閉じ込める時に、対象を別の魔力で閉じ込めた魔力を逃がさないようにするのが手間だが……まあ、サラダにドレッシングをかけるみたいな事だからそれほどでもない。
「じゃあ、もしもツダ君に起こす意志がなかったらーー」
「半永久的に眠ったままだと思いますよ」
「っ!」
そこで先生は警戒した。
その反応に、俺はいいタイミングだと思い続ける。
「なら先ず、この学院全てを見直さなければいけないと思いますよ」
「ここはこの国でも最高の設備よ。これ以上どうしろと」
学院長の言っていることは本当であろう。確かに大規模で人気が高い。
だが、
「なら、どうして襲撃にあったんです?」
「そ、それは敵の戦力がーー」
「それを言い訳にできますか?」
さらに俺は言う。
「なんならいっそ、このまま眠らせて、どこかに保管しときます? その方が安全じゃないっすか?」
俺は一体何が面白かったのか、少し笑いながら言った。
「そんなこと、良いはずないでしょう!!」
学院長が叫んだ。なんか怒ってる。
「どうしてです? この襲撃で、ほぼ確実に死者が出ていましたよ。それを俺が未然に防げたのも、それにほぼ全員が怪我もなく助かったのは、皆を眠らせたからでしょう? 命も尽きることは無いんですよ。なんならもう、この世界全部を眠らせてしまえば平和になると思うんですが、どうでしょう?」
言ったことは自分でも馬鹿げたことだと思ったが、どうやらまだ俺は、ヒュプノスになりたいようだ。
ーーー《馬鹿ですか?》
ーーーこ、これが否定されたらもう諦めるよ……本当に
さて、クレアはどう答えるのか。
「だめに決まっているでしょ!」
ーーーですよね
これで本当に二つ名の夢は諦めました。
「わかってますよ」
「……」
未だに俺を警戒している様子だ。
「で、取り敢えず後始末はお願いしますね」
居心地の悪い沈黙が流れたので、話題を変えた。
「……ええ、そのつもりよ……私は何一つ出来なかったもの」
学院長も状況が状況なので、警戒を解いた。
「んじゃあ取り敢えず、襲撃者達は、外に縛り上げといていいですか?」
「そうしてちょうだい、今保安の兵が来ると思うから」
「はーい」
そう言って俺は学院長室を出た。
▽
「……ったく、結構多かったんだけど」
あれから十分、約五十人の襲撃者を縛り上げ、外にほおり投げた。
「早かったわね」
もうそんなことではあんまり驚いてはくれないようだ。
「あ、来ました?」
「ええ、来たわね」
窓から外を見ると、縛り上げられた襲撃者を見て驚いている保安の兵達がいた。
『こいつら、襲撃者です。悪いことしてました』
ついでに書いておいた紙を見て、保安の兵がこちらに気づき、礼をした。
「これで終わりですね」
襲撃者を馬車にのせて走り出す様子を見て、俺が言った。
「……それで、皆はーー」
「ああ、戻しますよ」
「え?」
再び緊張した学院長だったが、俺のあっさりした返答に間抜けな声をだした。
「さっきの、冗談ですよ」
「なっ!」
ーーーうん、保管とか出来るはずねぇから
「んふふ、先生……ちょっと心配してた?」
「っ〜〜〜///」
学院長は騙された怒りと、こんな馬鹿に騙されたのかという羞恥心で顔を真っ赤にした。
そして、
ビタァアアン!!
「ぶひゃれ!」
ーーーしってた
「この、クズ!」
ビンタをくらい、三メートルくらいぶっ飛んだ。
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