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我が名はヒュプノス!


  「一体どうして襲撃が……」


 激しい音と、衝撃に振動する学院のなか、そう呟く一人の人物がいた。

 学院長室でそうクレア・マギノは、不安を口にした。


ーーー校舎は恐らく小破で済むけど……

 

 「問題は生徒達ね」


 教師がついているにしても、絶対に被害は無い。とは、ほぼ有り得ない。


ーーー考えたくないけど……よくて怪我人数十人ほど、最悪は死者が出る可能性だって、十分にあり得る


 「けど、私にはやるべき事が……」



 彼女のやるべき事、それは、“結界魔術”の発動だ。

 これ以上の侵入者を防ぐためだ。


 結界魔術……それは、文字通り結界を張る魔術のことだ。彼女はそれを最も得意とする。

 この世界の結界魔術には、主に二つの種類があり、どれも防御に使われる魔術だ。


 ちなみに、これより防御力の高い魔術を“防御魔術”と呼び、結界魔術とそれぞれのメリット、デメリットがあるがここでは割愛する。


 話はそれたが、結界魔術の二つの種類の特徴は、


 物理的結界と霊的結界がある。


 物理的結界は読んで字のごとく、結界を張り、物理的な攻撃を防ぐ力がある。


 そして二つ目が、霊的結界だ。


 効果としては、精霊や霊などの、物体を持たないものを防ぐ力がある。

 しかし、精霊は滅多に……およそ百年に一度発見できるかどうかの確率で、ほとんど人前には姿を現さないし、ましてや霊にしては、それが存在するのかさえ怪しい。それに、その二つが危険だとも限らない。

 こういった理由で、この結界はもう殆ど使われていない。



 少々長くなってしまったが、説明から想像がつくように、彼女が使用する結界は、物理的結界になる。

 

 彼女は自分の書斎の引き出しから、分厚く古びた本を取り出した。


 「これを使うのも久々ね」


 この本は、彼女が結界魔術を使用する時に使う魔道具……守護せし魔性(プロテクトウィッチ)だ。これを使い、魔力を安定させて結界を張ることが出来る。


 「魔女の丘(カバープロテクト)


 そう彼女が唱えると、パラパラとひとりでにページが捲りだした。エフェクトだ。


 彼女が発動したのは、結界魔術の中でも上位に位置する魔術だ。


 ドーム型の結界で、対象を覆い防御する。


 普通なら、半径十メートル程の大きさのドームをつくれる。

 が、彼女の実力ならば、保有魔力の大半を使ってしまうが、学院全体を覆うことが出来る。そして、今まさにそれを行おうとしていた。


 だが、


 「う、うそでしょ……」


 彼女の結界は、発動することすら出来なかった。



 実はその時、先程退室した朱音が、クレアを抜いた学院全てを眠らせるため、外の被害を避けるべく、彼もまた学院全てを魔力で覆っていたのである。

 しかも、位置がぴったりであったために、結界魔術は発動できなかったのである。



 その事を知るはずもないクレアは、崩れ落ちるように座り込んだ。


 「どうしてよ……どうして発動しないの!?」


彼女はそう叫び、拳を地面に叩きつけた。


 「ごめんなさい皆さん……」


 諦めたように呟く彼女。

 すると、



 バンッ!



 と、勢いよく扉が開かれた。


 「だれ!?」


 驚いて振り向くと、そこには見覚えのある……いや、先程までやり取りをしていた少年がいた。


 

 「我が名はヒュプノス! この学院は全て、眠りについた……」



 テンションが高めな調子で、津田朱音は、堂々と痛い台詞を吐いた。

 


  ▽


ーーーあっれぇ〜? バッチリ決まった筈なのになぁ


 学院全てを眠らせた俺は、学院長の元へ行き、先程の決め台詞を言った。


 しかし反応はいまいちで、微妙な沈黙が流れた。


 「あ、あのー、先生?」


 沈黙に耐えきれずに、俺は学院長の反応を確認した。


 「へ? つ、ツダ君?」


 どうやら、まだ何が起こったのか分かっていないらしい。


ーーーでも、なんかおかしいぞ


 よく見ると、学院長はヘタリ込んでいて、古びた本が落ちている。


ーーー《どうやら、魔術を使い、魔力切れになったようですね》


 「先生、何かの魔術使いました?」


 俺がそう聞いてみると、


 「ええ、でも、情けないことに発動しなかった。おまけに魔力切れまで……」


 クレルの言った通りだった。

 しかしもう心配は要らない。


 「でももう、終わりましたよ」

 「え?」


 信じられないといった表情だ。


 「もう、うるさくないですよね」

 「そ、そう言えば……一体どうやって」

 「眠らせました」


 そう答えた。

 だって本当にそれだけなんだもん。


 「ね、眠らせた?」

 「はい、学院全部を」

 「は、はは……」


 学院長は、引き攣った笑みを浮かべ、


 「うそでしょおおおお!?」


 静かな学院に、それはそれは大きな声で叫んだもんだから、めちゃくちゃ響いた。

いつも読んでいただきありがとうございます!


て、展開がぁ……

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