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初めての授業

  心臓のバクバクが収まった時には学院に着いていた。

 

  教室に入ると、クラス全員の視線が俺に集まった。


  「ちっ、来たよ」

  「平民ごときが」

  「どっかいっちまえ」


  と、普段の俺なら泣きそうになるところだが、


ーーーはぁ……リリィってやっぱり可愛いなぁ


  そんなことを考えていたので、他の奴がなんて言っているかなんて耳に入らない。


  「はーい、みんな席について〜」


  先生が教室に入ってきた。


  「はいっ、今日は入学後初めての授業の日です。皆さん張り切って頑張りましょう!」


ーーー授業かぁ、どんなだろ?


  ホームルームが終わり、授業が始まった。


  「ではまず初めの授業は、魔術の仕組みについてやります」


ーーーお〜、それっぽいな


ーーー《いや、それっぽいでは無く、それ、ですよ》


  「では、魔術が確認された時代が何時かわかる方はいる?」

  「はい」


  レシファが手を挙げる。


  「レシファさん」

  「はい。魔術が初めて確認されたのは、今から約一万年前です」

  「素晴らしい。正解です」


  正解したレシファにクラスが


  「キャー! 流石レシファ様」

  「頭もいいなんて、完璧かよ」


  などとべた褒めだ。


  「皆さん静かにしてくれませんか? 初歩的なことで褒められても恥ずかしいだけです。馬鹿にしているのですか?」


  と、レシファが注意した


  「う、すいません……」


  一気に教室が静まり返る。


  「はい! それではどうして魔術が確認されたか説明しますね!」


 と、先生がこの空気を破り、話に入る。


 「それはある一人の男から始まったのです。男の名はジモンと言います。ジモンはある日ふとこう思ったのです。『火って起こすのめんどくさくね?』と」


 ジモンという男の真似をしているのか、妙に演技がかっている。


 ーーーこの先生のキャラ、いまいち掴めんな。


 「そう思ったジモンは何となく手から火が出るのを想像し、『集え、火の子達よ。この薪に火を灯したまえ』と言ってみました」


ーーー傍から見るとただの痛い奴じゃねーか


  「すると、なんとその手から小さな火の粉が現れたのです! これが魔術の始まりと言われています」


 と、いきなり話がぶっ飛んだ。


ーーー意外とあっさりしてんのな。いや、そんなもんじゃねーだろ! なんなんだこの起源は!!


  「魔術は色々な事に使えますが、皆さんはこの学院に来たということなら、主に戦闘系がメインでしょう」


ーーーえ? この学院ってただの学院じゃないの?


ーーー《何を言っているんです馬鹿マスター》


ーーーお前、だんだん俺への扱いがひどくなってるよな……


ーーー《いいですか? ここへ来ている生徒は殆どが貴族です。貴族は一般の者より高い魔力を秘めています。その多くが魔王の兵として戦うことを夢見ているのです》


ーーー魔王ってリリィのこと?


ーーー《当たり前です。この国の学院なのですから》


ーーーリリィってやっぱ凄かったんだな……


  「魔王様の兵になる為にもしっかりとここでの勉強を大切にして下さい」


  それから三十分、なんか難しいことをやって終わった。



  ▽


  放課後、学級委員の仕事で俺とレシファが教室に残った。


  「フンフーン」

  「少し静かにしてもらえないかしら」

  「ああ、すいません」


  俺は今日の夕飯事を考えていて上機嫌に鼻歌を歌っていた。


  「フンフーン」

  「やけに機嫌が良いのですね」


  呆れてレシファが言う。


  「ええ、リリィの作る料理が楽しみで」

  「その、気になっていたのですが、リリィという方はどんな方なのです?」


  と、そんなことを言ってきた。


  「とっても可愛いやつですよ」

  「それだけじゃ分かりませんわ」


 まるで馬鹿を見るような目で言ってきた。


  「ん〜、料理がめちゃくちゃ上手ですね」

  「どのくらい?」

  「はっきりいって世界一だと思います。もっとも、卵料理だけですけどね」

  「不思議な方なのですね」

  「いや、すげぇ単純なヤツですよ」

  「フフッ、そうですか」


  レシファがクスリと笑う。


ーーーあ、初めて笑った


  めちゃめちゃ可愛かった。


ーーーこれがギャプ萌か……


  「そうですよ。あ〜、早く食べたいな」


  にやけるのを必死に我慢した。


  「そこまで美味しいのですか?」

  「ええ、食べたらわかりますよ」

  「では、明日そのリリィさんの作った料理を食べに行ってもよろしいでしょうか?」


  突然そんなことを言われた。


  「え?」

  「貴方がそこまで言ったので食べてみたくなりました」

  「え、でも……」

  「でも、何ですか?」


  と、レシファが笑顔で圧力をかけてくる。


  ーーーく、食いしん坊なのか?


  「なんか失礼なこと思ってません?」

  「わ、分かりました。聞いてきます」


  ーーー怖いよ……


  「頼んだわよ」


 ーーーはぁ〜、貴族ってよくわかんねぇや



  ▽

 

  魔王城に戻り、俺はリリィにさっきあったことを話した


  「別に良いぞ」


  あっさりと承諾してくれた。


  「い、いいのかよ、お前って魔王なんだぞ」

  「それがどうした、魔王が良いと言ったなら良いのじゃ。というより、そうでなければ困ると言ったじゃろうが」

 

ーーーそうでしたね


  意外にも魔王という称号を上手く使っているリリィであった。


  「アルバートさんはいいんですか?」

  「それが魔王様の決定ならば」

 

ーーー相変わらずリリィに忠実だなー


  「じゃあ明日、ここに連れてくるから」

  「分かったのじゃ! 下ごしらえしてくるからのー」


  と張り切って王室から出ていった。


ーーーはぁ、こんな魔王を見てレシファさんはどう思うんだろ……


  それと同時にどんな表情をするのか楽しみでもあった。

 

いつも読んでいただきありがとうございます!


すいません、6月8日の更新はお休みします

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[気になる点] 「そうですよ。あ〜、早く食べたいな」 にやけるのを必死に我慢した。 若気る(にやける) 1. 男色の相手。 2. 尻。特に、肛門。 3. 男がなまめかしい様子をすること。また、その男。…
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