第六話「仲良し六人組」前編
高架下の廃倉庫。
松岡、白鳥、國武の三人が見守る中、大木和也が、雅也の前に立っていた。
「一番隊は、事実上解散だ。庄野についていく奴は、もういねぇ」
大木は、少し間を置いて続けた。
「俺も、二番隊の隊長を降りる」
「……いいのかよ」
「お前に負けた時から、決めてた」
大木は、ふっと笑った。
「次にやる時は、俺が勝つけどな」
「何回やっても同じだよ」
「言ってろ」
二人は、拳を軽く合わせた。
数日後。渋谷のファストフード店。
雅也、大樹、法子、千鶴、亜希子のテーブルに、一人の少年がトレーを持ってやってきた。
大樹の親友、柿沼博。五人にとっては、もうすっかり顔馴染みだった。
「雅也。あの朝のこと、大樹から聞いたよ」
柿沼は、虫かごの事件のことを言っていた。
「あの朝、お前が来てくれなかったら、大樹も女子たちもどうなってたか分かんねぇ。……ありがとな」
雅也は、照れくさそうにポテトをつまんだ。
そこへ、もう一人。
「よう、雅也」
雨宮裕也が、ふらりと店に入ってきた。
「裕也!」
「こいつが、前に話してた裕也だ」
大樹が紹介すると、柿沼が手を差し出した。
「雅也の、神奈川の相棒だってな」
「おう。よろしくな」
ポテトとジュースを囲んで、話は尽きなかった。
やがて柿沼が、思いついたように言った。
「なあ。俺たち六人でさ、ずっとつるもうぜ。仲良し六人組だ」
「六人?」
亜希子が首をかしげる。裕也が笑った。
「俺はいいよ。わざわざ神奈川から駆けつける相棒を頭数に入れんのも、違うだろ」
「裕也……」
「俺は、輪の外から支える。それが相棒ってもんだ」
裕也はジュースのカップを掲げた。
「じゃ、仲良し六人組の結成に、乾杯!」
秋。修学旅行の行き先は、奈良と京都だった。
班は、雅也、大樹、法子、千鶴、亜希子の五人。柿沼はクラスが違うため、別の班になった。
奈良の東大寺参道では、鹿せんべいを持った大樹が鹿の群れに囲まれ、服を甘噛みされて悲鳴を上げた。
法子に促されて、雅也は鹿と並んで写真に収まった。
その夜、京都の旅館。
布団を並べた男子部屋で、大樹が天井を見上げながら言った。
「卒業したらさ、俺たち、それぞれ別の高校に行くんだよな」
「……別の高校行ったって、友達は友達だろ」
雅也の言葉に、大樹は少しだけ鼻をすすった。
京都二日目。三年坂、二年坂。
人混みの中で大樹たちとはぐれ、雅也と法子は二人だけで八坂の塔へ向かっていた。
石畳の坂道を並んで歩きながら、法子がぽつりと言った。
「少し前まで、一人で渋谷を歩いてた雅也くんが、今は私の隣を歩いてくれてる」
法子は、前を向いたまま微笑んだ。
「それが、すごく嬉しいんです」
雅也は、何も言えなかった。
ただ、歩く速さを少しだけ、法子に合わせた。
八坂の塔の前で、ようやく大樹たちと合流した。
「お前ら、どこ行ってたんだよ!」
「大樹がはぐれたんでしょ」
千鶴が言い、五人で笑った。
通りがかった観光客に頼んで、八坂の塔を背に五人で写真を撮った。
シャッターが切られる瞬間、法子が、ほんの少しだけ雅也のほうへ肩を寄せた。
(後編へつづく)




