#97 プリマ王女救出
次郎吉は激しい戦闘音でキャリコが暴れていることを知ると早速行動を開始する。次郎吉が扉を開けて部屋に入ると次郎吉を通路から見張っていた軍人たちはなかなか出てこない次郎吉に不審に思い、部屋に入ると変装した次郎吉の姿が消えていた。
「何!?」
「どこに行った!?」
「監視班! 聞こえるか! カリスレッド伯爵の息子が消えた! 要塞内にいるはずだ! 探してくれ!」
『りょ、了解!』
次郎吉が部屋を物色していた理由がこれだ。ずっと扉を開けて部屋の出入りを繰り返したことで監視たちは油断してしまった。次郎吉が扉を開けたのは透明のソーサリーファクトを使用した際に扉を開けると監視している人からするとバレバレになってしまう。だから気付かれないようにするためにわざと扉を開けたのだ。
監視からすると扉を開けてくれていたら、中の様子が見えやすいので本来は非常にありがたい行為だった。それと合わせて変装しているカリスレッド伯爵の息子の評判が合わさって相手が雑魚と決めつけたことが敗因だ。
司令部で監視をしていた監視班は全体連絡でこの報告を上げた。当然この情報をのくれ!」
『りょ、了解!』
次郎吉が部屋を物色していた理由がこれだ。ずっと扉を開けて部屋の出入りを繰り返したことで監視たちは油断してしまった。次郎吉が扉を開けたのは透明のソーサリーファクトを使用した際に扉を開けると監視している人からするとバレバレになってしまう。だから気付かれないようにするためにわざと扉を開けたのだ。
監視からすると扉を開けてくれていたら、中の様子が見えやすいので本来は非常にありがたい行為だった。それと合わせて変装しているカリスレッド伯爵の息子の評判が合わさって相手が雑魚と決めつけたことが敗因だ。
司令部で監視をしていた監視班は全体連絡でこの報告を上げた。当然この情報をロイゼン司令官も聞くことになった。
「ふん。やはり鼠が入り込んでいましたか…どうやって侵入したのか気にはなりますが問題ありません。まさかプリマ王女がわたしの部屋にいるなど想像も出来ないでしょうからね? ふふふ」
「んん~!」
「非常事態なので辛抱してもらいますよ。プリマ王女様」
ロイゼン司令官はプリマ王女が盗まれることを警戒しており、本来次郎吉たちが予想していた部屋からプリマ王女を連れ出した上に助けが来たと知ったプリマ王女が暴れたり声を出したりしないために口と手足を拘束した。
王族にこんなことをすれば死罪確定だがロイゼン司令官からするとプリマ王女が盗まれても死罪となる。それならいずれ揉み消けせる王女の拘束のほうがはるかにいいと考えたのだ。
そして次郎吉が部屋を読み間違えば、軍人たちが次郎吉を追いこみ、キャリコも上手く時間を持たせてはいるがここに居続ければいずれ力尽きるのは必然。プリマ王女の居場所を特定されなければ勝ちが確定していることをロイゼン司令官は理解していた。
ここでプリマ王女の目に涙が浮かぶ。それを見たロイゼン司令官は距離を詰めたがプリマ王女はベッドの奥に逃げる。それを見てロイゼン司令官は言う。
「おやおや。ベッドの奥に逃げてわたしが怖いですか? 確かにあなたを拘束しましたがそれはわたしの身の安全のためです。なので安心してください。わたしは軍人。女に興味はありません。ただ大切なあなたをわたしの目の前に置いておかないと安心できないのですよ」
「誰でも大切な宝は自分の近くにないと不安になるよな? だからお前は負けるんだよ」
「っ!?」
プリマ王女がいるベッドの下の床からウォーターカッターが出ると円を描き、ベッドごと下の通路に落ちる。ウォーターカッターを見た瞬間にロイゼン司令官も手を伸ばしたが女に興味がないというか王女という絶対的に触れることが許されない存在故に距離を大きく取っていたことで残念ながら届かなかった。
最もプリマ王女に近くにいたら、ウォーターカッターの直撃で人体が切れていたけどね。そこら辺は人の気配が読める次郎吉なので配慮が完璧だった。
「ん!?」
一つ下の廊下に落ちたプリマ王女は驚くがベッドのお陰で無傷での着地だ。そして次の瞬間に手錠と足枷が外れて自由になる。相変わらずピッキングの速度は圧倒的な次郎吉である。
ここでロイゼン司令官は上から初めて次郎吉の姿を視認する。
「貴様! 何者だ!」
「天下の大泥棒さ。お前たちのお宝、確かに頂いたぜ? あばよ!」
次郎吉がプリマ王女をお姫様抱っこして走り出す。
「待て!」
慌てて下に飛び降りたが下の廊下の惨状を見てロイゼン司令官は戦慄する。
「な……これはどういうことだ!?」
廊下には無数の軍人が寝ていた。慌ててロイゼン司令官は次郎吉の後を追いながら司令室の監視班に連絡を入れる。
「監視班! どういうことだ! 六階の廊下の軍人が全員倒れているぞ! なぜ報告を上げなかった!」
『は? と言われましても異常は何もありませんが?』
「っ!? まさかわたしの要塞のソーサリーファクトに接続して偽物の映像を見せていたというのですか!?」
透明になった次郎吉はプリマ王女を探して最初に目当ての部屋の下に向かったのだが、人の気配がしなかったため、すぐプリマ王女が別の場所にいると予想することが出来た。その結果、次に一番の候補地だった司令官の部屋に向かったのだ。
次郎吉を罠に嵌めたかったのならプリマ王女がいた部屋に一人囮を入れておくべきだった。これは完全にロイゼン司令官の判断ミスと言える。最も敵の泥棒が人の気配を目で見ずに察知する力を持っているなど知る術はないけどね。
しかも次郎吉は司令室からロイゼン司令官が出ていく姿を監視のソーサリーファクトで補足していた。少数とはいえ、敵襲があったのに司令官が司令室から離れることなど通常はあり得ない。
このタイミングで司令官が離れる理由は司令官自らが実力者で敵と相対するパターンと敵の狙いに対して守りに入るパターンが考えられる。
今回のケースだとロイゼン司令官は戦闘タイプではなく戦略家タイプであることはリガンド公爵の情報から分かっていた。その彼が司令室から離れたということは敵の狙いに対して守りに入ったと次郎吉は判断したわけだ。
そして次郎吉は司令官の部屋に二人の存在の気配を感じ取ったことで当たりを付けた。そして監視のソーサリーファクトをハッキングし、前日の映像データを監視室のモニターに流したのだ。透明なら誰にも気付かれずにハッキングすることなどお茶の子さいさいである。
ただ敵が侵入したのに平和な廊下の映像は流石に怪しまれる。しかし前日ということはキャリコ襲撃予告日の前日。当然要塞が厳戒態勢を取っていた。キャリコが約束を守る保障がない上に泥棒の下準備に動かれる危険性が一番高い日だ。
最も厳戒態勢と敵襲時とではやっぱり映像の差はどうしても出る。監視班がそれに気付けなかったのはまずキャリコが暴れている場所が要塞の三階から四階部分だったこと。わざと司令室付近から外していたことで比較的司令室周りは平和だったのだ。
更に監視班は次郎吉を探しており、ちょうどこのタイミングで次郎吉の侵入経路の報告も上がっていたことで映像の違和感に気付く余裕が無かったのだ。しかしこれは明らかに監視班のミスと言える。
とにかくこれで次郎吉は監視の目は潰すことに成功した。なので次は廊下にいる軍人たちの排除だ。透明になった次郎吉は服の中から筒を取り出すと背後から吹き矢を放つ。軍人たちは吹き矢が命中しても気付くことが無く、少しだけ歩いたところで次々軍人が眠りに落ちた。まずこの吹き矢の筒は音を消すソーサリーファクトが搭載されている吹き矢だ。これで次郎吉が吹く音を消している。
そして放たれる針に仕込まれているのは少量の麻酔薬と睡眠薬だ。これを作ったのはもちろんプラムである。麻酔薬で針が刺さった感覚を消して、睡眠薬で眠りに落とす絶妙なバランスで作られている。
実戦投入は今回が初で不殺を貫く次郎吉にとっては非常に助かる武器となった。次郎吉からすると気分は忍者となったのは言うまでもない。
ただ相手もこのまま次郎吉たちを簡単に逃がすつもりはないらしい。
「司令室! バルバリス砲の準備をしなさい! 奴らは必ず要塞の外に出ます! そこを狙い撃つのです!」
『は! し、しかしそれだと王女も』
「王女? そんな存在はこの要塞にいましたか?」
『っ!? い、いませんでした! すぐに準備します!』
ロイゼン司令官の圧倒的な冷たさを感じた部下は戦慄し、命令に従う。
そんなことになっているとは知らない次郎吉は廊下を走ると脱出ルートの方角に曲がり、壁に向けて爆発のソーサリーファクトを投げつけると次郎吉は起爆されて、要塞に穴を開ける。そして雷速のソーサリーファクトを使って空に飛び出して、ここでプリマ王女の口を解放する。
「あなたは?」
「あんたの友達にあんたを盗んで欲しいと依頼された天下の大泥棒だよ。こういえば大体察しが付くだろ?」
「……そうですか。わたくしの手紙はちゃんと友達に届いていたんですね」
次郎吉の言葉を聞いたプリマ王女は安心する。どうやら自分の手紙がちゃんと届いているかわからない程にウィンバース宰相に追い込まれていたらしい。恐らく手紙を送った使者が帰って来ることが無かったのだろう。
そして次郎吉の爆発のソーサリーファクトで発生したあり得ない赤色の煙を見たキャリコもここで反応する。この赤色の煙が作戦成功の合図にしていた。
「成功したみたいね。じゃあ、あたしの仕事もこれでおしまい。あなたたちの大切なお宝をちゃんとあたしたちが頂いたわ!」
「何!? く!?」
キャリコは閃光のソーサリーファクトを炸裂されて、次郎吉と同じ空の方向に雷速で逃げ出すのだった。これでプリマ王女の盗みとルカ要塞からの脱出は成功することとなった。




