#119 サヤの村、二度目の襲撃結果
生き残ったバルバリス王国軍は仲間の救助に向かったがここでサヤの村から獣人たちが現れて、救助しようした魔法使いたちを襲撃する。
魔法使いたちは空に逃げて応戦するが獣人たちの跳躍力を甘く見た魔法使いたちは獣人たちの爪に捕まって、倒される。なんとか逃げ延びた魔法使いたちは獣人を攻撃するが獣人は木に隠れて攻撃を躱す。
「くそ!」
「どうする? このままだと救い出せないぞ」
「雪を巻き上げるしかない。だが獣人たちが邪魔だ」
「分かった。そこは妨害する。いいか? 木に無暗に近づくなよ? 襲われるぞ!」
風の魔法使いたちは絶対安全な空で大魔法を発動させようとする。これにたいして獣人たちは様子見で大魔法の竜巻を見てから距離を取る。
雪が竜巻で巻き上げられて、その中から何人か生き埋めにされた者たちが現れたがもう手遅れな者も多く、生きていても低体温症に加えて雪崩で流されている間に地面や岩や木に激突したことで骨折などの負傷したものが多くいる状況だ。
「隊長……どうしますか?」
「……生存者を回収したのに撤退する。この戦いは我々の完敗だ」
「……わかりました」
「安心しろ。全ての責任は隊長である俺の責任だ。お前は生きて次に活かせ。いいな?」
「……はい。はいっ!」
こうしてバルバリス王国軍は撤退する。これを見た獣人たちは深追いはしなかった。何せまだビャク王国が残っているのだ。瀕死のバルバリス王国軍を追撃しても旨味がそこまでないのが獣人たちの立場だった。
そしてそのビャク王国は巨大地震を受けて、なんとサヤの村を攻撃することなく撤退を選択した。ビャク王国軍は山を登ろうとしていた状態で巨大地震を受けたことで雪崩や崖崩れからは逃れることが出来た。この段階ではまだ巨大地震は自然災害の認識しており、攻撃続行を決めてもおかしくはなかった。
しかしこの巨大地震を受けてオジム山脈に住んでいた魔物たちが一斉に逃げ出す結果となり、逃げだした方向の一つがビャク王国軍がいる方向でビャク王国軍は魔物の大軍に襲われる結果となった。
更にオジム山脈の中にあったマナ結晶が巨大地震によって一度に大量に割れたことでオジム山脈の中は大量のマナに包まれている状況となった。これを見たビャク王国軍を指揮していたヨモギ宰相は撤退を決断した。
「お待ちください! ヨモギ宰相! それでは我々のメンツが」
「ならお主が軍を指揮してみるかのぅ? 言っておくが今のオジム山脈は天然の火薬庫じゃ。下手に魔法を使った瞬間に山が魔法で吹き飛ぶぞぃ? こちらが注意しても相手が心中してくる可能性がある。そうなればこの部隊で生き残れる者が果たして存在するかのぅ?」
「う……そ、それは……」
「分かったなら引け。儂も生きとるうちに獣人と白黒付けたかったんじゃがな……天は獣人に味方したからにはどうしようもない。全軍撤退じゃ!」
今率いているビャク王国軍はビャク王国軍の中でも本隊と言える規模だった。それを失い、国のトップが情けない王では国を維持することは不可能となる。国の中核となる宰相としてこの場での突撃は指示出来なかった。
そんなことがあったとは知らない今回の戦いで村を焼かれた獣人たちは当然怒り心頭だ。
「あいつらー!」
「俺たちの村だけ襲っておいて逃げ出すだと? ふざけるな!」
「怒りは分かるが落ち着いてくれ」
「なんだと!」
ヤイバが落ち着くように声を掛けると当然怒り心頭な獣人たちはヤイバの首を掴もうとしたがその手をヤイバを握って詰める。
「お前たちは村を焼かれていないから落ち着いていられるのだ!」
「俺たちも一度村を焼かれていて、俺も両親をその戦いで失っている」
「っ!?」
ヤイバの告白にヤイバに突っかかった獣人は目を見開き、手の力が弱まる。
「それでも俺たちは人間の力を借りた。そして人間の力はもうその目で見たはずだ。奴らの魔法を打ち消し、村に光と水をもたらしている。人間は技術もそうだが戦いでは冷静だ。俺たちが村から出て追撃に出たらあいつらは喜んで魔法や弓矢の雨を降らせて来るぞ。それでも追うのか? お前たちは襲われた村から何を学んだんだ?」
ヤイバの言葉に獣人たちは魔法と弓矢の遠距離攻撃に為すすべなく蹂躙された仲間たちの姿を思い出した。そしてヤイバが手を離すと獣人も握り拳を掴んだまま腕を下した。そんな彼らにヤイバは言う。
「今の俺たちじゃあいつらには勝てない。だが俺たちも人間のお陰でビャク王国を倒せる道がある。今からその話を聞かせるから聞いてくれ」
ヤイバはプリマ王女の話をし、プリマ王女の獣人たちの前でもし女王としてバルバリス王国に戻れた時は獣人たちの支援を約束する。それは獣人たちにバルバリス王国のソーサリーファクトが回る可能性を示した。
ここでようやく今回の戦いで被害を受けた獣人たちも落ち着きを取り戻した。しかし流石に集まった獣人の数が多すぎて、サヤの村だけでは獣人たちを保護することが出来ず、結果的に大きな村の出身者たちがまた別の場所で村を構えることになった。そして数日後、別れの時が来る。
「何度やられても我々は今日聞いた話を信じて生きていきましょう。その時が来た時はよろしくお願いしますよ?」
「任せておけ。俺たちも俺たちだけで戦って勝てるなんて思ってねよーよ」
こうして今回の戦いで共に戦った獣人たちはサヤの村から離れていった。そして大きな戦いを超えた彼らに次郎吉の公開処刑日が伝えられた。
次郎吉を助けたい気持ちはある。しかしここで獣人がシルファリッド王国で暴れると今度はシルファリッド王国から狙われるリスクがあった。ゲオリオが言う。
「ジロキチを助けるかどうか決定権はお前らにある。ただ俺たちの組織はもうジロキチを切り捨ていることが決まっている。俺の任務もプリマ王女の安全確保だ。お前ら獣人の情報を流す仕事は受けてない。これが俺の立場だ」
「まるで俺たちにジロキチを助け出せと言っているような気がするが?」
「そんなことは言ってないさ。俺たちと同じようにお前たちもジロキチを捨てても誰も文句は言いやしないさ。何せ今のあいつはお前たちを助けていたあいつじゃない。あいつを助けても今のあいつは恐らく能無しだ。助ける利点なんてありはしない。プラムの嬢ちゃんも分かっているよな?」
「はい。これは個人で決めることです」
そういうプラムの目は覚悟を決めていた。そしてプラムは次郎吉のソーサリーファクトを封印したのちサヤの村をここで離れることにした。獣人たちも協議し、各々が次郎吉の公開処刑でどういう道を選ぶのか決めるのだった。




