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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
動乱編
116/122

#116 次郎吉の遺言

シルファリッド王国全体が大揺れしている頃、グソウは『アルバ』の拠点の一つに逃げ込んだコーネを回収した。


コーネは次郎吉の口パクで逃げろと指示され、一度は助けに戻ろうとしたが魔力爆発を見た瞬間、次郎吉が代わりに捕まったことを悟り、謝りながら逃走することを選んだ。


「ごめんなさい……ごめんなさい…」


「逃げ帰ってからずっとこの様子です」


「無理もないわな……コーネ。ジロキチから託されたソーサリーファクトがある。まずはこれを聞いてくれ」


コーネは自責の念に囚われ続けており、それを見たグソウはジロキチが残したソーサリーファクトを起動されると次郎吉の遺言が流れる。


『これを聞いているということは俺っちがしくじったってことだな。恐らく今の俺っちは生きてはいるが今までの俺っちの記憶は消して別人格になっているはずだ。そしてこの俺っちはもう二度と戻ってくることはない。つまり俺っちの身体は生きていないが俺っちという犯罪者はもう死んでいるって認識で大丈夫だ。悪いな。プラム、コーネ、キャリコ、姫さん。一応お前さんたちには世話になった。だから俺っちは遺言を残すことにした。コーネは今頃謝ってばかりしている頃か?謝る段階でお前には犯罪者の素質がまるでない。だからお前はもう犯罪から手を引いて一般人の幸せを手に入れろ。今ならまだ引き返せるはずだ。俺っちもアーベルトの爺さんもそれを望んでいる』


「ジロキチ……うわあああああー! ごめんなさーい!!!」


残酷な遺言だが、コーネを犯罪者から引退されるためには今のこの状況を使うのが次郎吉は一番効果があると判断した。暫く落ち込んだコーネだがビオラに正式に組織を抜けて犯罪から手を洗うことを宣言したことでコーネは一般人になるのだった。


そしてコーネに遺言を聞かせたグソウはサヤの村に次郎吉のことをプラムたちに報告する。


「旦那様……」


「プラムさん……あの! なんとか……なんとかジロキチ様を助け出すことは出来ないのでしょうか?」


「現時点では無理だな。ジロキチが捕まっているのは城の地下牢屋らしい。お前たちはシルファリッド王国の全戦力を敵に回してジロキチを助けられると思っているのか? 言っとくがそんなことをすればそこにいるゲオリオも敵に回すことになるぜ?」


「ま、そうなるな。因みにビャク王国の魔法使いたちより俺たちのほうが圧倒的に実力も量も上だ。ビャク王国の魔法使いや戦士たちを相手にお手上げ状態なら話にならないぜ?」


前回サヤの村はビャク王国の部隊に勝っているので、ヤイバは文句を言いそうになったがガルザが止めた。


「俺たちがあの時勝ったのは罠とジロキチの旦那のソーサリーファクトがあったからだ。もちろん俺たちの実力も勝利に大きく貢献したのも疑ってはいない。だが罠とジロキチの旦那のソーサリーファクト無しであいつらに勝てたとはお前たちに思っていないだろう?」


「それは……まぁ……そうだけどよ」


「なんとか出来ないのか? おとー。ジロキチは私たちの大切な友達なんだ」


「それは俺もよーく分かっている。だがジロキチから教えられた襲撃の話も気になる以上、俺たちがここで下手に動くと村と俺たちも全滅する。悪いが分かってくれ。エメリ」


エメリは納得いっていないが頷くことしかできない。そしてここでグソウはプラムに次郎吉に託されたソーサリーファクトで遺言を聞く。


『プラムとキャリコ、姫さんは俺っちのことは忘れて自由に生きてくれ。色々考えたが三人とも俺っちの言うことを聞くわけないからな。せめて自分の心の判断の中に俺っちを入れるのだけはやめてくれ。それとプラムと姫さんには嘘ついて悪かったな』


「捕まるつもりがない嘘は気づいていましたがソーサリーファクトまで嘘つくとは聞いてませんよ……旦那様」


「何よ? 二人とも。まさかジロキチのこの記憶を消すってところ知らなかったの?」


「全く教えてくれませんでした。盗聴のソーサリーファクトとご自身のソーサリーファクトを破壊するソーサリーファクトと救出用のソーサリーファクトの話は聞いてましたが」


「はぁ……本当に罪な男ね。あたしたちのことをよく理解しているのも腹立つわ」


キャリコは次郎吉が何を言っても怪盗を続けるつもりでいた。そこを理解しているからこそ次郎吉は自由に生きろと言ったのだ。


一方プラムとしては記憶を失った次郎吉をそれでも助けに行くのかどうかという話になっている。プラムとしては難しい判断だが次郎吉は自分がやりたいことを優先して欲しかった。犯罪者がそうであるようにやりたいことをやった結果、反省はするかもしれないが後悔はしないと次郎吉は思っている。


それはプリマ王女も同様だ。このまま隠れて平穏な人生を送るのもいいし、王族としての責務を全うするのも自由。改めて自分の心に自分が進みたい道を次郎吉は聞いて欲しかった。


これを聞いた二人もまた自分たちが進みたい道を改めて決めることになるのだった。

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