#115 オレガ第二王子の失墜と国の大掃除
翌日、オレガ第二王子はベッドで寝たきりとなった国王に呼ばれる。
「オレガ、来たぜ。父上」
「入りなさい」
オレガ第二王子が国王の寝室に入り、国王と向かい合う。
「儂がなぜお前を呼んだのか理解しておるか?」
「分かっているさ。俺を次期国王に推薦するためだろ? 覚悟はもう決まっているぜ。いつでも言ってくれよ。父上」
確かに死去が近い王が王子を一人だけ呼ぶ流れは遺言を残す流れに見える。しかし残念ながらそれは違った。シルファリッド王国国王は手に持っていた書類をオレガ王子にぶつけて、怒りを爆発される。
「これはなんだ? お前とギルターは一体どれだけ我が国の国民と騎士を苦しめてきたのだ! 説明してみよ! オレガ!」
オレガが投げられた書類に目を通すとそこはギルター宰相が管理していた数々の不正の証拠の一つであることを理解した。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。父上。この書類はなんだよ? 俺はこんな書類知らないぜ? 誰かが俺を貶めるために用意した代物だろ。こんなものを信じるのかよ」
見苦しい言い訳をする自分の息子の姿を国王は悲しい目で見つめるが国王ももう覚悟を決めていた。そして国王の寝室からもう一つの声がする。
「その証拠を集めたのはわたしくです。お兄様」
「ラピーシア!?」
「わたしくの専属騎士のルルがギルター宰相の屋敷からこれらの書類を見つけ出しました。王子らしく自分の罪を認めて国民に対して謝罪してください」
「謝罪? 俺様が? 雑魚に謝れっていうのか? ふざけるなよ? ラピーシア。この国を守って来たのはお前でもノエールでも父上でもない! この俺様だ! 雑魚は大人しく俺様のすることを黙ってみてればいいんだよ!」
オレガ第二王子がそういうと腰の剣を抜き、まさかのラピーシア王女に襲い掛かった。そんな狂気の顔を浮かべる兄の顔にラピーシアは悲しい顔を向けた。そしてオレガ第二王子の剣がもしもの時のために待機していたルルによって止まった。
「自身の妹に手を出すとは! どこまで腐ったのですか! あなたという人は!」
「うるせぇ女だな! 女は男の言うことを黙って聞いていればいいだよ!」
「そういう考えが国をダメにすることになぜ気付かない!」
オレガ第二王子は再び剣を振り下ろし、ルルは剣を突きの構えに変えた。女騎士の剣は女騎士でも使えるように男騎士より軽く作られている。そしてこの一瞬では軽い剣のほうが速いことが幸いした。オレガ第二王子の剣が届くよりも早くにルルの剣がオレガ第二王子の胸を貫き、そのまま飛び出した勢いのまま壁にオレガ第二王子を叩き付ける。
「がは!? て、てめぇ……」
「急所は外しました。あなたは罪を償わなければならない。それが犯罪を犯した者の責務です」
それを見た国王が鈴を鳴らすと騎士たちが集まって来た。
「我が騎士たちよ。オレガ第二王子を国家反逆罪で拘束。治療の後、地下牢に投獄せよ」
「「「「は?」」」」
「国王の命令が聞こえなかったのか? 国王への負担をこれ以上増やすんじゃない!」
「「「「は……は! わかりました!」」」」
騎士たちがオレガ第二王子を拘束して、国王の寝室から連れ出す。そして国王はラピーシア王女の頭を撫でる。
「辛い役目をさせてしもうたな。不甲斐ない父を許してくれ」
「いいえ。わたしくも王族。国をよりよくするために汚れる覚悟は出来ております」
「そうか……ラピーシアが作った組織はラピーシアを成長されたようじゃ。儂も静観していた甲斐があったわい。ビオラには礼をせねばな」
国王はラピーシア王女が『アルバ』を作ることで王族として成長することが分かっていた。何せギルター宰相の数々の不正も行っていることに国王は気付いていたのだ。なのでラピーシア王女とギルター宰相の対決は予想出来ていた。そこで王族として成長すればいいと思っていたのだが、まさか自分の息子の一人と娘が対峙することは読めなかった。これは国王の自分の子供に対する甘さが招いてしまった結果と言えた。
「そうですね。ご本人もご喜びになると思いますがわたしくの背中を押してくれたのはビオラさんではありません。残念ながらお父様に伝えることが出来ないお人です」
「そうか……ならその者に褒美を出すことは出来んな。せめて儂からの感謝の言葉を伝えておくれ」
「わかりました。きっと喜ぶと思います」
ラピーシア王女は次郎吉に何が起きたのか全部ビオラからの報告で知っている。そして自分は次郎吉に国王の言葉を伝えることが許されず、次郎吉が国王の言葉で喜ぶ玉ではないことも知っているが国王の病状を考えて安心させることを優先するのだった。
するとここで国王がオレガ第二王子が出ていったドアを見て本音を話す。
「出来れば子供三人協力して国を運営して欲しかったが人生とは思い通りにはいかないものじゃな」
「お父様」
そういう国王は悲しい顔をしているおり、ラピーシア王女は国王が子供三人全員を愛していたことを改めて知るのだった。
一方ほぼ同時刻、王都シルファードにあるソリス本部の中でも事件が発生する。
「ゼファルコミッショナー!? それにエッティスチーフにハゲッツチーフ!? どうしたんですか?」
「なーに。俺の代わりに入ったコミッショナーに色々追及せんといかんことが出来たんだよ。お前ら、道を開けろ」
「え? いや。それは出来ません! お二人はもうソリスでは無いんですよ!? 立ち入り禁止の場所に行かせるわけには……あ」
ゼファルコミッショナーは拳を合わせて、ボキボキ音を鳴らせながら凶悪な笑みを浮かべる。
「いい根性しているじゃねーか。ソリスはやっぱりこうじゃないと行けねーよな? おら!」
ゼファルコミッショナーがソリスの一人を殴り飛ばした。これを見たソリスたちは武器を構えるとエッティスチーフにハゲッツチーフも戦闘態勢になる。
「いい機会だ。お前ら全員ここで俺たちが戦闘訓練をしてやるよ。死にたい奴からかかって来い!」
「「「「戦闘訓練なのに死ぬの!? ぎゃああああああーーー!?」」」」
ソリスの本部で戦闘が発生すると次々ソリスたちが壁を破壊して外に吹っ飛ばされていき、ソリスの本部がボロボロになっていく。流石にこの戦闘音と振動は司令室まで届いており、新しいコミッショナーが叫ぶ。
「な、何事だ!? ひ!?」
司令室のドアが吹っ飛んできソリスたちによって破壊されると三人が現れた。
「ゼファルにエッティス!? お前たち、どうしてここにいる!? これは重大な規則違反だぞ!」
「ギルター宰相とオレガ第二王子にお願いして俺を罠に嵌めたくせいによくそんなことが言えたもんだな?」
「は?」
エッティスチーフが証拠の書類を新しいコミッショナーに叩き尽ける。
「これがあなたが行った不正の証拠です。悪いですがあなたはコミッショナーの器ではない。その席はゼファルさんに返してもらいますよ」
「因みにギルター宰相は暗殺され、オレガ第二王子は今頃捕まっている頃だろう。こいつらと手を組んでいた奴らももうおしまいだ。つまりお前を助けてくれる奴はもういないぜ?」
「ハゲッツ! 貴様の仕業か!」
「勘違いするなよ。俺は鼠からの恩返しを受け取っただけだ。ま、俺が認めるほどの犯罪者に下手に手を出したのがお前らが悪いんだよ。大人しく俺に任せておけば良かったんだ」
ハゲッツも次郎吉が事前に『アルバ』に情報提供し、ギルター宰相の不正証拠を得ることが出来た。次郎吉からするとハゲッツから先に情報を貰ったので、それを返しておかないと犯罪者としての沽券に関わると判断した形だ。
これを聞いた新しいコミッショナーはハゲッツに殴りかかろうとしたがゼファルコミッショナーが代わりに灼熱の炎のパンチが炸裂し、新しいコミッショナーの顔は火傷と拳で顔が変形した。
「組織の上に立つ者が部下に暴力を振るうな! そういうのは戦闘訓練の時だけにしろ!」
((戦闘訓練でも出来れば暴力は振るって欲しくないぞ(ですよ)))
エッティスとハゲッツがゼファルが言ったことにツッコミを入れるがこれがゼファルコミッショナーのやり方である。
「さーて。邪魔者はお眠中だ。ここからは俺が指示を出す。国の大掃除だ、お前ら、気合い入れろ! 外にぶっ飛んでいった奴を叩き起こせ! ソリス全員、出動するぞ!」
「「「「おぉー!」」」」
ゼファルコミッショナーが号令を出すとソリス全員に消えけていた炎が胸に宿り、ソリスたちは動き出すのだった。ギルター宰相とオレガ第二王子の不正が全て白日の下に晒されたということはそういうことだ。当然ソリスの狙いは二人の不正に関わっていた政治家と貴族たちである。
当然その中にはコーンローズ侯爵も含まれていた。
「冗談じゃない! 折角侯爵の地位まで登り詰めたというのに!」
「どうするのよ! あなた!」
「金を全部持って、他国に逃げ込むしかない!」
「あら? コーンローズ侯爵夫妻ともあろう人たちがなんともみっともないことを言うのね?」
突然コーンローズ侯爵の屋敷に第三者の声が聞こえて、ご夫妻が声が聞こえた窓を見ると怪盗キャリコが堂々と立っていた。
「怪盗キャリコ!?」
「ファリース元侯爵の暗殺に関わったギルター宰相とオレガ第二王子は別の人に取られちゃってね。こうなるとあたしの怒りの矛先は二人にファリース侯爵の暗殺をお願いしたあなたたちになっちゃうのよ!」
今回のギルター宰相の屋敷から見つかった証拠の中にコーンローズ侯爵夫妻が裏金を渡してファリース侯爵の暗殺を二人に依頼していたことが判明し、それを『アルバ』から聞いた怪盗キャリコは鬼の形相でここに急行した形だ。
そんなわけで怒りが爆発した怪盗キャリコは一瞬で距離を詰めて電撃の鞭でご夫妻を感電させて倒す。これを見た使用人たちが武器を構えるが怪盗キャリコは鞭を床に叩きつけて言う。
「ここであたしと戦うということはあなたたちも犯罪者として捕まるということになるわよ。何せもうソリスが動いているんですからね。ここで逃げ出すならあたしは追わないであげるわよ? あたしの目的はこいつらだからね」
それを聞いた使用人たちは次々屋敷から逃げ出していった。
「最後にこいつらの人望の無さがよくわかって良かったわ」
『お嬢様、ソリスがもうすぐそこに辿り着きます』
「そう。ならこいつらの処罰はソリスと国に任せるとするわ。ありがと。鼠小僧。いえ、ジロキチ。あなたのお陰であたしたちは救われたわ」
そういうと怪盗キャリコは姿を消し、ソリスたちがコーンローズ侯爵の屋敷に突入してくれると倒れている二人を発見する。それを見たエッティスは言う。
「どうやら先を越されましたか」
「あいつも鼠小僧と関わっていたんだ。当然だろ?」
「そうですね。これで彼女の復讐も終わったことでしょう。ここからはまた昔通りの勝負です」
「お前はいいよな。俺は張り合いがない毎日に逆戻りだよ」
そういうと二人はコーンローズ侯爵夫妻の逮捕の指示を部下に出し、次の逮捕者の元に向かうのだった。




