#109 覚悟を決める時
コーネのことを知った次郎吉はしばらく待つことになった。コーネを誘拐した犯人たちから現状アクションが何もない以上、まずは『アルバ』で調査待ちとなる。そんな中、プラムが聞いてくる。
「旦那様の意見はわかりましたが本当に旦那様のことを狙っているんでしょうか?」
「間違いなく狙っている。コーネは組織の中でも中間より下ぐらいの地位だ。コーネを狙ったぐらいで『アルバ』やゲオリオたちが動くとは考えないはずがない。裏組織にとって切り捨ては基本だからな。だからわざわざ誘拐したなら助けに来る奴を狙っていると考えるべきだ」
「な、なるほど……その……本当に誘拐なのでしょうか? そもそも国が本当に関与していると思いますか?」
プラムも次郎吉が死地に行こうとしているのを感じており、そして行って欲しくないと思っているからこそ可能性の話をする。これに対して次郎吉が答える。
「プラムの言う通り現状だと色々なケースが考えられる状況だ。偶然コーネを襲った犯人と『アルバ』への襲撃が被った可能性もあるし、誘拐した後、別のところで殺人している場合もある。ただ現状だと国が関わっているのはほぼ間違いないって感じだな。コーネの暗殺狙いならわざわざ隠すような奴を国が選ぶとは思えない」
「そうなのですか? わたしくは暗殺は隠す物だと思ってました」
「あぁ……そこか。そこに関しては暗殺者それぞれの事情が影響している。例えばゲオリオは自分の正体を知られるわけにはいかないだろ? だから見つからないように行動している。仕事の依頼で見つからないように殺人しろって依頼なら当然隠すことになるよな?でも自分の犯行と正体がバレている暗殺者は自分の新たな犯行を隠す意味があると思うか? せいぜい自分が逃げたりする時間稼ぎぐらいにしかならない。だがこの時間稼ぎもソーサリーファクトや魔法があれば殺人してさっさと逃げたほうがずっと遠くにしかも速くに逃げ出すことが可能なんだよ。そして国がコーネの命を狙うならさっさと仕事をする暗殺者を選ぶはずだ。下手に自分たちの手の物を使うと自分たちに足が付く。そんなリスクを取らず切り捨てられる奴を選ぶのが国からすると楽なんだよ」
もし暗殺者が捕まって国の関与を訴えたとしてもそれをもみ消すことが出来るのが権力であり、次郎吉たちが相手にしている敵はそれを可能にするほどの権力を持っている。ここでプラムは勇気を出して聞く。
「旦那様はどうするおつもりですか?」
「コーネが捕まったなら俺っちは助けに行かないといけない。それが俺っちの人生で最大の恩人に対する恩返しだからな。本当にとんでもない遺言を残してくれたぜ」
そういう次郎吉の顔は笑顔だった。まるでアーベルトのことを恨んではいない。そんな次郎吉の様子にプラムは怒る。
「どうして笑顔でいるんですか! 相手は国です! しかも今回は今までと違って不意打ちは狙えません! コーネさんが捕まっている場所には旦那様を捕まえるためになんらかの策を用意しているはず! なのにどうして笑顔でいるんですか!」
「プラム様……」
プラムの必死のようにプリマ王女は次郎吉とプラムとの愛を感じ取る。そしてそんなプラムの頭を次郎吉は撫でて口を開く。
「ありがとな。プラム。でもコーネを狙われた時点で俺っちの詰みが確定した。それに気づけなかった俺っちが間抜けで相手が賢かった。ただそれだけの話だ。だからコーネとコーネを守れなかったビオラたちを恨むなよ? 今回の一件の責任は全部俺っちにある。俺っちが全ての責任をおった上でコーネを救い出す。だからコーネにあったら伝えてくれ。お前はもう犯罪者から手を洗って女としての幸せをつかみ取れってな。こんな状況ぐらいにならないとコーネの奴は言うこと聞かないだろうからな」
プラムは次郎吉の言葉で次郎吉が死ぬつもりであることを悟る。
「いけません! 旦那様! そんな言葉は直接お伝えください! 旦那様が死んでしまうなんてわたしくは認めません!」
「おっと。おいおい俺っちは死ぬなんて一言も言ってないぜ? まぁ、捕まる可能性はだいぶあるのは事実だけどな」
次郎吉が歩き出すと家の地下にある扉の前に立った。そこは次郎吉がアーベルトから託されたソーサリーファクトを封印した場所だった。
「相手が本気であり、コーネに手を出したなら俺っちにはこれを使う権利がある。アーベルトの爺さん、コーネを救い出すためにもう一度力を貸してもらうぜ?」
こうして次郎吉はアーベルトのソーサリーファクトの封印を解いた。そして次郎吉はソーサリーファクトの選別を初めて、頭の中で戦略を練ねるとソーサリーファクトの整備と改良を始める。遂に次郎吉とオレガ第二王子とギルター宰相との対決が始まろうとしていた。




