#108 狙われたコーネ
事件から数日後、コーネは次郎吉がサヤたちの出会うきっかけとなったスカリフォーの町にいた。ゼルガード伯爵が失墜したことでかなり町は正常化されたが港町であり、ゼルガード伯爵は元々オレガ第二王子派に所属していた人間だ。
当然その町には彼らとまだ繋がりがある闇の武器商人や男爵たちがいた。コーネが探っていたのはその闇の武器商人と繋がっている男爵の一人だ。夜になり、コーネは早速男爵の家に侵入する。流石に次郎吉のソーサリーファクトがあるコーネなら大した防犯対策をしていない男爵の家くらいなら楽々侵入出来る。
ここら辺の手際の良さからコーネもちゃんと密偵として成長しているのを感じる。
(さてと。今日はどんな悪い話が聞けるかな?)
家の中に侵入し、ターゲットの情報を聞いたり、情報を集めるのが密偵の仕事。今回のコーネの仕事には闇の武器商人も関わっていると予想されたことで証拠となりえる取引の書類を盗み出すまでの仕事は予定していない。
この辺りはまだコーネの評価が低いということだが、闇の武器商人なら用心棒を雇うのは普通だ。流石に一流の殺し屋に狙われたらコーネは一溜まりもない。一応ゲオリオなどから訓練は受けているが訓練と実践ではまるで話が違う。
次郎吉のように逃げに徹するなら生き延びることが出来るが一流の殺し屋なら簡単に逃がしてくれるほど甘い相手じゃない。だからコーネはあくまで耳と目を使った情報収集に徹する。
すると魔道車に乗って男爵が帰って来ると自室でメイドに指示を出す。
「ふぅ。ボクちんの魔道車をいつもの場所に運べ。いいか? 慎重に運べよ? 前みたいに爆弾を落とすとかしたらお前もあいつと同じ目に合わせるからな?」
「お任せくださいませ。旦那様。私はあの女のようなミスをするメイドではございません」
「ならいい。さっさといけ」
彼らが『アルバ』に目を付けられた原因は路上から転がっていった爆弾が車道から外れた草むらに放置されて、それを何も知らない子供が触ったことで大爆発。多くの子供が犠牲になったニュースがあったのだ。
この爆弾が調査の結果、バルバリス王国のものと分かり、違法にシルファリッド王国に入ってきているのではないかという疑惑が浮上して『アルバ』がスカリフォーの町の貴族を探ることになったという流れとなっている。
(ラッキー。事件の犯人はこいつで決まりみたい。これでまたビオラさんたちから褒めて貰えるわ)
コーネは男爵が寝たのを確認してから誰にも気付かれることなく屋敷から脱出した。後はこの情報をビオラに報告して今回の仕事は終わりとなる。
透明のソーサリーファクトで安全にコーネはビオラが用意した拠点に変えるはずだった。しかしコーネはウキウキで帰っている時だ。突如透明化しているコーネは背後から首を絞められる。
「何!?」
「ふん!」
熱探知の眼鏡型のソーサリーファクトを装備した筋肉質の大男が力を加えた瞬間、コーネの意識が暗転する。
「標的確保。これより指示された場所に標的を運ぶ」
こうしてコーネはギルター宰相たちに捕まることになってしまうのだった。
ビオラがこれを知ったのは更に数日後だった。一緒にスカリフォーの町を探っていた『アルバ』の密偵からコーネが行方不明になったことが伝えられ、それを知ったビオラはコーネがこの任務の前までにいた拠点の被害が最小限だったことを知り、ギルター宰相たちにしてやられたことを理解し、急いで次郎吉に報告を入れた。
『鼠小僧! 大変よ! コーネがギルター宰相の配下の組織に捕まったわ!』
「はぁ!? どういうことだよ! 全員無事って話だったよな!?」
『店にいた人たちもあなたが声をかけてくれた元騎士たちのお陰で全員無事なのは本当よ。ただあいつらは一か所だけ魔法攻撃が弱い場所があったの。そう。お店を完全に壊さないようにね』
「おいおい……まさか」
次郎吉もここでギルター宰相の本当の狙いの全てを理解する。ビオラが説明を続ける。
『そうよ……その場所にはコーネの仕事のために向かった情報や補給物資の情報があった。あいつらの狙いは最初からコーネだったのよ』
この話を聞いていたプラムが絶句している次郎吉の代わりに質問する。
「でも、どうしてコーネさんを狙ったのでしょうか? 正直彼女を狙う利点があまりない気がします」
確かにコーネを狙っても組織の情報はそこまで持っていない。実績はそこそこ伸ばしてきてはいるが流石にゲオリオとかと比べるとまだまだひよっこだ。そんなコーネを狙う理由は次郎吉からすると明らかだった。
「俺っちのせいだよ! くそったれ! 相手は国だ。俺っちたちの情報はある程度知ることが出来る。あいつらから見たら俺っちとコーネはアーベルトの爺さんで繋がって見えるはずだろう。何せ二人そろってアーベルトの爺さんの養子なんだからな。だから俺っちを誘い出すためにコーネを狙いやがったんだ!」
次郎吉が台パンして怒りを見せる。これは自分の不甲斐なさへの怒りだ。
確かに国からすると二人はアーベルトの養子になっている。また二人が一緒に行動しているのも聞き取りをすれば確認することが出来るだろう。自分たちは簡単には動けない。それなら次郎吉のほうからやって来る状況を作り出して次郎吉を消せばいい。
こうして次郎吉は危機的状況に追い込まれることになるのだった。




