#106 ハゲッツとの通信
泥棒を成功された次郎吉たちはファリース侯爵の執事が用意してくれていた秘密の隠れ家で合流すると次郎吉は金庫を開けて金と宝石をたくさん手に入れる。
「おひょー! この金庫が開いて金銀財宝があった瞬間が一番たまんねーんだよな!」
「噂以上のお金ですね。この分だと報告書に書いていないお金もたくさんあったようです」
「つくづく侯爵に値しない人間ね。私にもビビっていたし、よくあんなのを選んだわよね? ギルター宰相も」
「弱い人間だからこそ選んだんだろ? 侯爵の地位の利用価値は権力にあるからな。下手に強い人間を推薦して反逆されると面倒臭い。それなら弱くて扱いやすい人間を推薦するのは当然のことだと思うぜ?」
次郎吉の言葉に二人は納得する。そして宝剣から宝石を取り外しているキャリコが聞いてくる。
「私たちはこれからこのガラクタを捨てて来るけど、あなたはどうするの?」
「金も手に入れたし、もうすぐ冬がやって来る。王都シルファードの動きも気になるし、急いで本拠地に帰らせてもらうとするさ」
「了解よ。楽しい泥棒だったわ」
「あぁ。あほみたいな危険極まりない泥棒より今回のような泥棒をしていきたいな。お互いに」
次郎吉とキャリコがハイタッチするとバラバラに行動することとなった。
そして二日経過したところで次郎吉は路上で自分に取り付けられたバッチ型の通信のソーサリーファクトを起動させる。
「今、大丈夫か? ハゲッツのおっさん」
次郎吉がそういうとしばらくしてからバッチからハゲッツの声が聞こえてくる。
『やっぱ通信をしてくるタイミングをよくわかってんな。鼠小僧』
ハゲッツは現在、事件後の処理に追われている。部下を投げて民家を破壊し、コーンローズ侯爵の屋敷も破壊したのだ。大目玉くらうのは当然と言える。
しかしこれは逆に言うと本部にはいないことになる。ただずっと滞在しているわけにもいかない。そういう意味で事件から二日経過したタイミングは事件後のごたごたが収まって息が付けるいいタイミングだったと言えた。
そしてこの通信のソーサリーファクトをハゲッツが取り付けたのは次郎吉と視線を交わしたあの時だ。次郎吉は気が付いたがハゲッツの意をくみ何も言わずに戦闘を続けた。
「そりゃどーも。それでわざわざこんなことをした理由はなんだ?」
『お前さんの腕を見込んで俺じゃない人物が依頼をしたいって話をしたかったんだよ』
「ハゲッツのおっさんじゃなくてもソリスの依頼だろ? なら差し詰め新しいコミッショナー関係の仕事か?」
『なんだ。バレバレかよ』
犯罪者のネットワークでも今のコミッショナーとソリスたちとの仲の悪さは有名だった。そろそろ内部崩壊が起きるとされているほどだったのだ。
「一応言っておくがソリスの本部に侵入して不正の証拠を盗めとか言わないよな?」
『流石に場所は違うな。仕事の内容は正解だ』
つまりソリスは本格的に現在のコミッショナーを引きずり下ろす方面に舵を切ったことが判明した。
「おいおい。俺っちは普通の泥棒だぜ?」
『隠しても無駄だぜ? 王女さんと仲良しこよしなんだろ? それを知ったから俺たちはお前さんに依頼することにしたんだよ』
ハゲッツたちは新しいコミッショナーがオレガ第二王子たちと繋がっていることは既に把握していた。王都で堂々と会食していたら、そりゃあバレる。
これに合わせて次郎吉がオレガ第二王子と敵対していることまではハゲッツたちも把握していた。しかしそれだけではまだ仕事を依頼することは出来なかった。それが決定的になったのがつい最近のことだ。
「はぁ……バルバリス王国の一件が原因か?」
『あぁ。言っとくが王女さんと繋がっていようがお前は犯罪者だ。手を抜くことはしねーからな?』
「当たり前だろ? 俺っちも王女さんを盾に使う気は毛頭ねーよ。犯罪者とソリスらしく限界ギリギリまで楽しくやろうぜ?」
『もちろんそうさせてもらうさ』
お互いに自分たちの立場を確立されたところで本題が入る。
「それで? 仕事をする場所が違うって話だったか?」
『あぁ。お前さんに泥棒に入って欲しい場所はギルター宰相の屋敷だ』
次郎吉は絶句する。
「おいおい……冗談だよな?」
『冗談なもんかよ。ソリスの本部よりは難易度低いだろ? 最も命の危険で言えば圧倒的にギルター宰相の屋敷のほうが上だけどよ』
そりゃあ、見つかり捕まれば命はないだろう。ソリスの方なら捕まえるのが優先されるから命の危険はない。最終的には公開処刑までされるからあまり変わりないけどね。
「流石に断る。そんな仕事命がいくらあっても足りはしねーよ」
『そうだな。だがお前さんはこの仕事を受けるしかなくなると思うぜ? 気が向いたらまた連絡をくれや』
「……おい。それはどういう意味だ?」
『お前さんも知っているだろ? ギルター宰相たちはもう動いてるぜ?』
これを聞いた次郎吉は通信を切り、急いでサヤの村に向かうのだった。




