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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
動乱編
105/122

#105 キャリコと共闘、コーンローズ侯爵邸

次郎吉は予定通りに準備を進めて全てが順調に話が進み、犯行予告日を迎える。ここでファリース侯爵の執事から相手の奇妙な動きについて話を聞かされる。


「ソリス以外は動いていないだって?」


「はい。ギルター宰相もオレガ第二王子も動きを見せていません」


「コーンローズ侯爵のこと見捨てたのかしら?」


「侯爵にまで引き上げた人物を今更見限るとは思えないが……周辺で待ち伏せ狙いか?」


泥棒や怪盗を捕まえるのにわざわざ犯行現場である必要はない。逃げた先で盗んだ物を持っていれば現行犯逮捕となる。だから現場をソリスに任せてギルター宰相たちの手がかかった奴らが周辺の町や村で網を張っている可能性があると次郎吉は考えた。しかしそれもファリース侯爵の執事に否定される。


「私もそれを警戒しましたが私たちの情報筋の話はパステリスの町の周辺で怪しい動きはありませんでした。ただ王都シルファードの方では数日前に謎の騎士団が夜に王都から離れたという情報はありました。私たちの動きを見て何かを狙っている可能性は高いのではないでしょうか?」


「つまりコーンローズ侯爵は餌に使われたって感じか?」


「私たちはそう考えています。それで鼠小僧様はどうするつもりですか?」


「今回の俺っちはお前さんがやる仕事に手を貸すだけの仕事だ。決定権はお前たちにある。違うか?」


次郎吉の答えにキャリコは笑顔で答える。


「流石鼠小僧ね。よくわかっているじゃない。それなら予定通り実行するわよ。怪盗が予告状まで出して何もしませんでしたじゃ格好が付かないもの」


「なら決まりだな。さっさと仕事を終わらせるとしようぜ」


夜になり、次郎吉たちがポジションに付くと次郎吉はほっかむりを装備して、お決まりの言葉を言う。


「さぁ、新しい侯爵様。鼠小僧がやって来るぞ」


次郎吉は透明のソーサリーファクトで屋敷に接近していると空からコーンローズ侯爵の屋敷の三階目掛けてキャリコが突撃した。


「予告通り怪盗キャリコ、参上よ! さぁ、コーンローズ侯爵家に伝わる宝剣! この私が盗んであげるわ」


「馬鹿め! 真っ向から突っ込んでくるとはな! 頼むぞ! ソリス!」


キャリコが派手にソリスとバトルしている頃、次郎吉は完全にキャリコに目と意識が向いている隙に音も無くしかし堂々と窓を開けてご丁寧に閉める作業までしてコーンローズ侯爵の屋敷に侵入した。


(楽勝~。と思ったが流石に怪盗が来ると分かっているなら防犯のソーサリーファクトはたくさん配置するよな)


次郎吉がセンサーを体の柔軟性を活かして潜り抜けていたその時だった。轟音が響いたと同時に次郎吉は命の危険を感じてセンサーに触れてまで回避行動を取る。すると次郎吉がいたところに部屋から現れたハゲッツの拳が届いていた。


「相変わらずいい反応するな!」


「ハゲッツのおっさんかよ!」


ハゲッツが問答無用で次郎吉に追撃を行う中、次郎吉もハゲッツの攻撃とセンサーに触れたことで発動した防犯のソーサリーファクトのレーザーカッターを必死に躱す。ハゲッツはレーザーカッターが直撃しているがびくともせず、お構いなしに次郎吉に襲い掛かる。


「バラス!」


ハゲッツの拳が鋼に変わると次郎吉に殴りかかる。次郎吉は躱したがコーンローズ侯爵の屋敷の壁はこの一撃でかなりの広さが吹っ飛んだ。そしてこの瞬間、次郎吉は何かを察知し、ハゲッツと視線を合わせると次郎吉は距離を取り、ハゲッツの拳は空振りに終わる。


「前よりずっと硬くなってねーか!? その体!? しかもあんな攻撃、人に打つんじゃねーよ! 普通に死ぬぞ!」


「ははは! 謙遜するな! この程度で死ぬお前じゃないだろ? それにお前ばかりが強くなるわけねーだろ!」


次郎吉はバルバリス王国の兵器から生存した男だ。だからハゲッツの言い分は正しい。しかし普通の泥棒をしたい次郎吉からすると溜まった物ではない。


しかもこれで次郎吉は外にいたソリスたちから丸見えだ。当然攻撃を仕掛けて来る。


「鼠小僧だ! 鼠小僧がいるぞ!」


「やはり怪盗キャリコと手を組んでいたのか! ハゲッツチーフに続け!」


「馬鹿! 手を出すんじゃーよ!」


ハゲッツチーフは叫んだがもう遅い。ハゲッツチーフと襲い掛かって来たソリスたちに電磁誘導が発生し、襲い掛かってきたソリスたちはハゲッツチーフに引き寄せられる結果となった。


「じゃあな。ハゲッツのおっさん。仲良く男同士くっつきあってな! 目当ての金は盗ませて貰うぜ!」


「そんなこと俺がさせるわけねーだろうが! くっ! おい! お前ら! 邪魔だ! どけ!」


「無茶言わないでくださいよ! ハゲッツチーフ!」


「俺たちも好きでむさ苦しいおっさんとくっついているわけじゃないですって!」


ソリスたちの悲痛な叫びが聞こえる中、次郎吉は腕に装備されたブレスレット型のソーサリーファクトを起動される。


ブレスレット型のソーサリーファクトからロープが発射されるとそのロープは壁をすり抜けて、金庫にロープが巻き付きと次郎吉が引き寄せる。すると金庫とロープが壁をすり抜けて見事に次郎吉は金庫をゲットした。


「なんじゃそりゃ!?」


驚くも無理はないがこの技術はホーキングが下着泥棒のソーサリーファクトと同じ理論で作られた泥棒専用のソーサリーファクトだ。これを見て改めてとんでもない技術を下着を盗むためだけに開発したホーキングはやっぱり異常だと言える。


「いただき」


「おいおい! そんなことが出来るならそもそも屋敷に侵入する必要ねーだろうが!」


「必要があるのかないのか決めるのは泥棒である俺っちのほうさ。じゃあな。ハゲッツのおっさん!」


次郎吉がいつものように靴のソーサリーファクトを起動された時だった。ハゲッツチーフはくっついている部下の頭を掴んだ。


「ハ、ハゲッツチーフ?」


「電磁誘導でくっついていようが力が上回っていたら投げれるだろうが! タイミングはお前らでなんとかしろ! いくぞ! おら! おら! おらおらおら!」


ハゲッツチーフはまさかの力任せに部下を次郎吉目掛けて投げたのだ。そして投げられた部下たちも次郎吉目掛けてソーサリーファクトを発動された。


次郎吉の周囲に高圧電流ネットが展開される。


「これがソリスの逮捕専用のソーサリーファクトか。雷速で逃げ出していたら、死ぬのは俺っちの方だったな」


「決まった!」


「やりましたよ! ハゲッツチーフ!」


喜んでいる彼らだがハゲッツチーフに投げ飛ばされている状況なので、彼らはそのまま飛んでいき、民家を破壊してしまった。


それに対して次郎吉はポケットから指輪を取り出してソーサリーファクトの起動ボタンを押すと高圧電流ネットの外に投げる。次の瞬間、次郎吉と指輪の位置が入れ替わり、次郎吉は脱出に成功する。


「位置を入れ替えるソーサリーファクトだと!?」


「馬鹿な!? そんな魔法が実在するなんて聞いたことがないぞ!?」


この瞬間、ハゲッツチーフも他のソリスたちも全員次郎吉の術中にはまった。ソリスたちは脱出されて再度捕まえるために高圧電流ネットのソーサリーファクトを切ってしまう。


そして高圧電流ネットのソーサリーファクトを再度脱出した次郎吉に投げようとした瞬間だった。彼らの背後で稲妻が発生する音が聞こえた。


「しまっ!?」


「あばよ。楽しい時間だったぜ」


透明になっていた次郎吉が雷速でソリスたちがいない方角に向けて離脱する。次郎吉が使ったのは位置を入れ替えるソーサリーファクトではない。残念ながらそんな便利なソーサリーファクトは現時点ではソリスが言った通り存在しない。


しかし幻を使ってそんなことが起きたように見せることは出来る。次郎吉がやったのはまさにこれだ。あの一瞬でソリスを騙すことを思いつく次郎吉はかなり大胆不敵と言える。


「弱いわね。エッティスがいないとこんなもんなのかしら? 昔の方がもっとずっと歯ごたえがあったわ」


「そ、そんな!? 馬鹿な!? ソリスが全滅!?」


「あなたの事は殺してあげたいほど恨んでいるけど、今日は宝剣に免じて見逃してあげるわ。良かったわね? コーンローズ侯爵? これからあなたはずっと私に怯えて生きていきなさい」


キャリコがコーンローズ侯爵を脅すとコーンローズ侯爵の顔は絶望に染まる。これが出来ただけでキャリコには今回の怪盗をする価値があったと言える。


キャリコもここで離脱したことで今回の泥棒は成功に終わった。

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