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異世界転生した鼠小僧は義賊になる  作者: とんし
動乱編
101/122

#101 二人の王女の決意

次郎吉は夜にプラムからプリマ王女が付きっきりで次郎吉のお世話をしていた話を聞く。


「まぁ、俺っちが庇って大怪我したからな。その罪滅ぼしか何かだろう」


「そうだとわたしくも安心なんですけどね」


プラムはプリマ王女が恋する乙女の気配を放っていることに気が付いている。自分も次郎吉に救われて次郎吉に惚れたから彼女に何が起きたのかわからないが彼女の気持ちはよく理解できるのだ。


そしてプラムは次郎吉に寄り添う。


「これからどうなるんでしょうか?」


「それを決めるのは俺っちたちじゃなくて王女たちや権力者になるな。俺っちたちはあいつらの決定に対してどうするか決める立場にある。どんなことになっても大変であることは変わりはしないだろうが、選べるだけまだマシだと思うしかない」


「そうですね」


そして次郎吉たちは自分たちが今後どう動くのか決めるために早急に二人の王女の考えを聞く必要があった。各国がどう動くか分からずとも二人の王女の考えを聞くことで自分たちの立場や動きが見えて来ると考えたからだ。


そんなわけで翌日、プリマ王女とゲオリオを呼んでプリマ王女に次郎吉は質問することにした。


「わざわざ呼んで悪いな。俺っちはお前さんというかお前さんたちと言った方がいいか? 今後何を考えてどう動くつもりなのか具体的な話を何も聞いていないんだ。お前さんは今後どうするつもりだ? 自分が王女というかこの場合は女王か。女王になるためにウィンバース宰相と戦うつもりでいるのか?」


「はい。ただそれはわたしくが成人した時です。それまでわたしくはバルバリス王国全ての国民のために生きなければなりません」


これはゲオリオから聞いた話だが、次郎吉からするとプリマ王女本人から聞きたかったことだ。そして改めてゲオリオが補足説明してくれる。


「その支援にラピーシア王女が名乗りを上げて俺とクインが派遣された感じだな。まぁ、クインの奴が勝手についてきただけなんだが」


クインはゲオリオの見張り役をしている。完全に信用されていないゲオリオだがそれだけクインの愛情は本気である証拠と言える。


「なるほど……因みにゲオリオのそれは騎士団としての仕事か?」


「あぁ。極秘任務ではあるがラピーシア王女だけでなく王様たちも承認されている任務だ。だからジロキチには現状プリマ王女を守る義務はない。この村に彼女がいられるのは負傷したジロキチの看病をするという大義名分があったからだ。獣人からすると自分たちでは決断しきれない感じだろ。何せジロキチはこの村にとっては生命線の一つだ。お前さんの知り合いを無下には出来なかった感じだと俺は思っている」


このゲオリオの推理は的を得ていた。本来なら命を狙われている姫様など村にいることは断るはずなのだ。何せそれが原因でこの村にバルバリス王国の軍隊が押し寄せて来る可能性がある。そんな存在を招き入れるわけにはいかないというのが本音だ。


「なるほどな。それについては俺っちが話をする必要があるわけだ」


「どうするつもりだ?」


「俺っちに決定権はない。あるのはこの村の代表のサヤとプリマ王女だ」


「それはそうだが、俺たちとしてはこの村にいて欲しいんだが? なんとか出来ないか?」


ゲオリオからすると次郎吉のソーサリーファクトに守られているこの場所はひとまずの安全確保場所としては十分な場所となる。敵が来ることを事前に知れば先に逃げればいいだけの話とだしね。そういう意味でも山であるここは逃げやすい地形となっている。


風の魔法使いでもあるゲオリオなら崖でも簡単に降りられるから王女一人バレずに逃がすことは比較的簡単だろう。もちろん相手も攻める以上は逃がさないように対策を講じるだろうけどね。そこを何とかするのがゲオリオの仕事だ。そんなゲオリオに次郎吉は言う。


「酒」


「はいはい……俺も無料でとは思ってねーよ。元気になってから奢るでいいか?」


「おう。なら話すが現状プリマ王女から獣人たちに交渉として出せるものは基本的にはない。そうだな?」


「はい……一応お金など用意しようと思えばできますが」


それは王国騎士団やリガンド公爵を頼るという意味だろう。しかし獣人たちからするとお金の価値より自分たちの命の危険が圧倒的に重い。なのでこれは交渉材料にはならないことを次郎吉が告げるとプリマ王女は次郎吉に聞く。


「では、わたしくはどうすればいいのでしょうか?」


「例えばの話だが王女として獣人たちと和平を結ぶ約束をするとかなら俺っちは交渉の余地があると思っている」


これには全員が驚いた。そしてゲオリオが次郎吉に聞く。


「それは……獣人たちは受け入れるのか?」


「分からない。だがもしプリマ王女が王権奪還し、バルバリス王国がサヤたちと和平を結び、最終的には同盟関係まで行くとしたらビャク王国はもうこの場所を攻めることは出来ないだろう。違うか?」


「ここの攻撃を引き金にバルバリス王国が攻めてきたら取り返しがつかないか」


「そういうことだ。もちろんこれは簡単な事じゃない。両者にどうしても差別意識があるからな。だからこれには相当な王女の覚悟がいると俺っちは思っている。どうするよ? この話、国民から支持を得るのは相当難しい話だぜ?」


次郎吉がプリマ王女を見て言うとプリマ王女は真っ直ぐ次郎吉に答えた。


「それでお父様たちが報われるならわたしくはどんなこともする覚悟です。例え多くの誹謗中傷を受け、この手が血で染まったとしても」


「おぉ~。覚悟が決まっているいい目だ。シルファリッド王国の姫様に見せてやりたいもんだな」


「俺たちの姫様も一歩踏み出したことをお前さんも知っているだろ? 負けてなんていないさ」


「流石姫の騎士様が言うと違うな」


ゲオリオが言っているのは今回の次郎吉への報酬の話だ。次郎吉が彼女に要求した報酬はこれだ。


『俺っちが死んだ後、王族として俺っちが愛した女性の命と生活を保障しろ。そしてこの手紙に書いた内容を誰にも伝えることを禁止する』


これはもう次郎吉が自分の天命が残り少ないと思っているからこそ出る要求だ。生前も捕まる前に愛した妻たちとは縁を切り、彼女たちが犯罪者にならないようにしたのが鼠小僧という泥棒である。


ただこの世界では縁を切っているから無関係という理屈は通用しない。次郎吉が捕まればその関係者も同じ犯罪者として追われ続ける。なら次郎吉が彼女たちを守るためにはどうするべきか簡単である。


権力の最高位である王族に彼女たちを守ってもらう。これ以上の手段は次郎吉にはない。そして他言無用にしたのは彼女たちや『アルバ』のメンバーたちへの負担軽減のためだ。次郎吉との約束で守ってもらっていると彼女たちが知ると彼女たちが逆に背負い込んでしまう可能性を次郎吉は考えてバレない手を打った。


そしてこの要求はラピーシア王女にとってもかなりの負担をかける要求だ。何せ王女が犯罪者の関係者を庇っていることがバレたりしたら当然大事となる。しかもプラムたちを追い詰めるのは間違いなくオレガ第二王子とギルター宰相となる。最悪の場合、国王が敵になる可能性もある。


なので次郎吉はこの要求で自分の正義を貫く覚悟と二人と戦う覚悟があるのかラピーシア王女に突きつけたのだ。この二つの覚悟がラピーシア王女になければ『アルバ』は存在意義を失うことになる。だからこれを試した次郎吉にビオラとゲオリオは心の中で感謝したのだ。


つまり今回のバルバリス王国の騒動は良いのか悪いのかシルファリッド王国とバルバリス王国の姫を王族として一つ成長させる出来事となったのだった。

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