俺はこれを最後になんて...
シェリアに眠らされた後から、一緒に庭に行くときまでの、マルクsideです
自分の本当の気持ちを自覚した俺は、人に対して高慢な態度を取るのをやめた
聖女様にボロ負けして反省したんだ、とか言っているヤツもいたが
別にそう思われていてもいい。
俺はただ兄に認められたかった
けどこんな方法では認めてもらえるはずがなかったことに、今さらだけど気づけた
(聖女様には申し訳ないことをしたな)
ただの八つ当たりでしかなかったのだから、聖女様とはもう関わることもないだろう
それに向こうも関わりたくないはずだ
でも
(謝罪ぐらいは、してもいいよな)
もし会うことがあったら、誠心誠意謝ろう
そう決意して数日経ったある日
騎士の訓練場に向かっていると、前から歩いてくる人影が不自然に歩みを止めた
(ん?)
侍女か何かが俺の変わりようを見て驚いているのだろうか
ここ最近はそんなことがしょっちゅうだったのでもう慣れてしまったが、それでもここまであからさまに驚かれるのもあまりない
誰だろうと思い顔を上げると、そこにいたのは侍女ではなく、変わるきっかけをくれたあの聖女様だった
(あっ、謝らなければ!!)
その姿を目に留めた瞬間、俺が思ったのはこの前決意した謝罪のことだった
しかし、いくら決意をしていても不意打ちでは心の準備ができていない。
どうしようかと慌てているうちに、聖女様は俺の横を通り過ぎようとしていた
「まっ、待って!!」
『今を逃せば二度とチャンスはこない』なぜかそう思った俺は、思わず腕を掴んでしまった
(ま、まずいっ)
この前も無理矢理腕を引っ張ってしまったのだ
難癖つけられると思われてしまえば、謝罪するどころではなくなるかもしれない
不安と罪悪感に苛まれながらも聖女様を見ると、そこには想定していたような拒絶感はなかった
むしろ微笑ましいものを見るような、そんな印象さえ受ける
(俺の願望が印象を捻じ曲げてしまったのか...?)
想定外のことに戸惑っていると、不意に聖女様が口を開いた
「...何か?」
完全に冷え切った声に、俺は我に返った
(そうだ、謝罪をしなければ)
現実逃避で印象を捻じ曲げている場合ではない
悔いの残らぬよう、聖女と交わす最後の言葉になるであろう謝罪を、誠心誠意伝えなければならないのだ
聖女様に向かって、全力で頭を下げる
「すみませんでした!!」
何に対しての謝罪なのか、全てを語るためには兄のことまで話さなければならない
しかし聖女様はそんな話に興味はないだろう
なら、この一言に全てを込めるしかなかった
伝わったか不安になりつつ、顔を上げると
面食らったような顔をした聖女様が、無理矢理作ったような笑みで答える
「そ、そう。反省したのね。それならよかったわ。ならこれで...」
「あの!!」
なぜか、俺は聖女様を引き止めていた
さっきの言葉が最後。そう決めていたはずなのに
最後にしたくない、そんな感情が溢れてしまった
しかし、話すことを決めていたわけでもない
言いたいことがあるわけでもない
言葉にならない想いがただ溢れてしまっただけだ。
故に続く言葉が一向に出てこなかった
「用がないなら行くわよ。ただでさえ散歩の時間が少なくなってるんだから」
散歩...
あの時、そういえば聖女様はクリスタルローズを見ていた気がする
少しでも側にいたい、ただそう思った俺は思わず一緒に行っていいかと口に出していた
別にクリスタルローズが好きなわけではない
でもあの時俺は、クリスタルローズを見る聖女様が綺麗だと、そう思っていた
『そんな顔をもするのか』そう思ったときの感情を、今なら素直に受け入れることができる
俺が聖女様に執着する理由は、まだわからないけれど。
その後、聖女様に連れられクリスタルローズについて延々と語られたのだが
そのときの嬉しそうな顔を、俺は一生忘れることはないだろう
聖女様と別れ予定通り訓練場に向かいつつ、先ほど聖女様から聞いたクリスタルローズの話を思い出していた
(もっと調べてみようかな)
クリスタルローズが好きだと言ってしまった手前、ある程度の知識は欲しい
俺が本当に好きになれば聖女様はもっと喜んでくれるだろう
そういえば、俺の幼馴染が科学者だった気がする
クリスタルローズは普通の植物ではないみたいだし、何か知っているかもしれないな
あの頭のおかしいアイツに頼るのは少し気が引けるが、悪いヤツではないのだ
聖女の力の研究のために王宮に来ていると聞いたし、明日にでも訪ねてみることにしよう
そして、聖女様に変なことをしないように牽制しておかなければ。
明日なんて悠長なことを言わず、すぐにでも行けば良かったと後悔することになるのだが
このときのマルクが知るはずもなかった
毎章、全キャラ入れるのはちょっと無理になってきたかもしれないですね
登場させることはできても目線変えるのは無理かもです。頑張りますが。
三章のマルクsideはこれで終わりで、次回フィリップsideです




