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 グシャッ!


 自動車に踏みつぶされたカエルのように、関谷の身体は地面にめり込んだ。


 まだHPは残っているようで、身体がヒクッヒクッと痙攣している。


「ああ、このオッサン、ここがリスポーン地点だったのか」


「リスポーン地点って何なの?」


「この異世界で死んだら、それぞれ決まった場所で蘇るんですよ。オッサン、蘇ったばっかりで満腹状態だから、時間が経てばHPが100に戻っちまうな」


「おい、カエル男!こんなヤツ、トドメ刺しちゃえ!」


「そうスね!グサッ!」


 俺は何のためらいもなく地面にうつぶせに横たわった関谷の背中に炎の剣を突き刺した。


 オッサンの身体は一瞬にして燃え上がり、煙のように霧散していった。


「どうせまた、リスポーンして落ちてくるから、ここに剣を置いときますね」


 俺は関谷の落下地点に刃先を上にして、炎の剣を立てておいた。


「これで何度オッサンが蘇っても、炎の剣に突き刺さって即死するでしょう」



「そんなことより、お前、いつまでアタシを裸のままにしとくつもりだ?」


「えっ?もう牛革持ってないので、服、作れねぇスよ」


「普通、男だったら自分の着ている服を脱いで渡すだろうが!そのマント、ちょうだいよ!」


「マントはダメですよう!錬金術師の身だしなみですから」


「何が身だしなみだ!だったら、せめてジャケットを貸してよね」


 マヤは切られた水着の肩ヒモを自分で結び、その上から俺の牛革のジャケットを羽織った。




「 SNEAK(スニーク)!」


 俺がこの術式を唱えると、自分の両手と靴の裏に無数の繊毛が練成された。


 これで垂直の壁面にでもカエルのように登っていけるのだ。


「しっかり捕まっていてくださいね」


 俺は背中にマヤを背負ったまま、自分が開けた巨大な穴の壁をよじ登っていった。


 背中に押し付けられたマヤの暖かく豊かなバストの感触を楽しみながら。


 途中、少量だが鉄鉱石や金鉱石が露出していたので、ちゃっかり採掘してインベントリーに入れておいた。




 俺はマヤに連れられて密林の奥に分け入った。


「アタシが蘇った場所はここだ」


 そう言ってマヤが指さした場所には、四本の松明に囲まれた#宝箱__パカ__#があった。


「これがマヤ先輩の宝箱ですね。中身、見ました?」


「ああ。パンとしょうもない石ころが入ってた。パンはもう食っちまったぞ」


「石ころ?」


 宝箱を開けるとオレンジ色をした石が1個、入っていた。


 俺のインベントリーに入れて説明を見ると「魔石」と表示された。


「ふーん。これが魔石か。ひとつ、引いてみるか」


 俺は宝箱の蓋の窪みに魔石を一個セットすると、箱の横にあるレバーのような棒を引いてみた。


 宝箱から「ピロロロロロン」という奇妙な音がした。


 宝箱の蓋を開けてみると、中からモモの実が一個出てきた。


「ちくしょう!ハズレだったか!なるほど。こりゃあ、中毒性があるな」


 俺は宝箱からモモを取り出すと、マヤに手渡した。


「ここがマヤ先輩のリスポーン地点ですから、万が一死んだ時は、ここに蘇ってきます」


「そういうものなの?」


「蘇った時にモンスターに襲われないように、この場所に小屋を建ててあげますね」


「はあーん?小屋を建てるだと?どーやって?」


「こーやって!」



CALL(コール) 豆腐小屋!」


 俺が術式を唱えると、二人の目の前に黄金色に輝く光の直方体が現れた。


 光が消えると、そこには白樺の材木で出来た小さな小屋が建っていた。


 さすがにマヤも目を見開いて驚いている。


「すっげぇな、お前!魔法が使えるんだな!魔法使いになったんだ!」


「正確には錬金術師ですけど」


「似たようなもんだろ?」


「錬金術は魔法の一学問です。近代化学の礎となった立派な学問です」


 と、俺はエメラルド・タブレットから手に入れた付け焼刃の知識をひけらかした。



 二人して豆腐小屋に入り、物入から食料と食器を取り出しながら説明をした。


「この小屋が魔法でできたものなら、無から食料が沸いてきたのでしょうが、残念ながら俺はしがない錬金術師です。俺が元々持っていた食料がきっちり消費されています。もし、小屋を作るのに必要な材料をもっていなかったら、いくら俺が術式を唱えても何もできません」


「何をするにも、まず、元手がないと何もできないってことか」


「さすが、マヤ様!理解がお早いですわ!」


「――――もしかしたら、今のは何かのマンガかアニメのセリフなのか。だったら、アタシはどっちも見ないから知らねぇし」


「――はい………。ちょっとふざけました。俺もよく知らないけど、ネットで一時流行ってたので使ってみました」


「今、そんな冗談を言っているような状況か、おめー?」


「――はい。ホント、すみませんでした!」


 俺は思わず床の上に正座したのだった。

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