35 聖女の華麗なる休日。
「はあああっ。」
太陽の穏やかな日差しがベットの上に降り注ぐ。
今日は休日だから、まだ、寝ていたいという気持ちもあるけれど…。
「いつまでも寝ていたら、お寝坊さんよね。」
「うーん。いい朝ね。」
窓を開け、朝の心地よい風に身をゆだねる。
湯が沸いたら、茶葉をティーポットに入れ、沸かした熱湯を注ぐ、私の優雅な休日。
だけど今日はゆっくりはしてられない。
朝のティータイムを嗜むとすぐに青を基調としたいつもの聖女の衣装に着替える。
「そろそろ髪を切った方がいいかしら?」
太陽の光を浴びてまるで水面のように輝くその髪が鏡の中で揺れる。
エルフ族の特徴である長い耳を隠すように青いウインプルをかぶると。
屋敷のバルコニーへと出る。
下には青い馬車。
馬のいななく声が聞こえて来る。
☆☆☆
私、エリス。エリス・エレクトラ。
普段は勇者パーティの聖女をしてるんだけど…。
一応、この国をさらに北に登ったところにあるどこの国も統治していない北の荒れ地にある唯一の国家、エリス伯爵領の出身で、そこの伯爵家の人間でもある。
この館は勇者パーティへの所属が決まった時から、使ってるわけなんだけど…。
どう見ても私一人で住むには広すぎる構造。
噴水はあるし、車止めだってある。
それにたくさんのメイドさん執事さんも。
今でこそ、私の家みたいな感じになっているけど…。
本当はここはエリス伯爵領の治外法権の認められた大使館なんだよね。
門兵さんたちもいるし、勇者パーティの勇者や戦士たちでさえ、ここには入れない。
というか入れるつもりもないのだけど?
「エレクトラ元気にしてたかしら?」
「マイアこそ。」
馬車から降りてきたのは…。
金色の髪に、ドレスの上に青いケープを着た私より小さなエルフ。
従妹のマイアは爵位継承権第一位のご令嬢。
背は小さいけど…私より年上なんだよね。
いつのまにか私が背を抜かしちゃったのを今でも気にしてる。
「心配してたんですのよ?勇者パーティの聖女に選ばれたからって…。出て行ってしまうんですもの。それで勇者とは…うまくいってるんですの?」
この流れは…恋の話だよね。
「いや、勇者ってあれで許嫁とかいるタイプなのよ。」
「え?そうでしたの?ってきりもう、恋仲なのかと…。」
「あっそうだ。セルバンテス。アレを。」
「はいお嬢様。」
恭しく、燕尾服の執事が礼をし、それを受け取るマイア。
「これお土産ですわ。白樺のタルトとバウムクーヘンですわ。」
「え?いいの?」
「ええ。伯爵領所有とはいえ、しばらくここに泊まらせてもらうことですし。アストリア王国のお茶会が終わるまで。」
「それで、どこの部屋をつかえばいいのかしら?」
「私の隣の部屋がそこそこ広い部屋だったから、そこ掃除しといたけど…。」
「じゃ、そこにしましょ。まだ、茶会まで時間もあるし…。セルバンテス荷物を運びこんでおいて。」
「はいお嬢様。」
馬車から降ろされるトランクや荷物。
「あ、そうだ、ここに来る途中ですごいものを見たのだけど…。あのね。あの針が凍って動かなくなった時計塔の針が動き出したのよ。理由はわからないけれど…。空から流星が降ってきてね?」
「流星?」
「ええ。それがあの凍り付いた地面を溶かして。土が見えたのよ。」
「その流星…。私も見たかも…。魔王軍と戦ってる時に…。ワイバーンたちを次々と倒していったのよ。ただ、あれ槍や剣だったのよね?」
「私が見たのは赤い石みたいなやつだったわね…。」
「でもね、なんだか、神様の魔法みたいだったわ。だって、奇跡的だったもの。」
「信じられないかもしれないけど…。そのワイバーンとても強くて。アレは災厄級を超えるそうね、神話級ともいえる存在だったの。しかもしゃべるのよ?その一群を突如、空から降ってきた武器たちが私たちに加勢したのよ。まるで、流れ星のように。アレは間違いなく神様の所業よ。」
「私たちの礼拝が届いたのかしら。」
「そうね。そうに違いないわ。」
聖女たちの歓談はまだまだ、続くのだった。
☆☆☆
「あっ、そうそうで、その勇者なんだけど…。」
「たまに拾い食いするのよ。」
「!?」
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