勇者さんと、ダンジョン2
「まさか、ダンジョンの中がこんなに複雑になってるとは思わなかったわ」
光を放つ水晶を片手に
「固形食持っててよかったわ」
少女は硬いクッキーを口の中で噛み砕く。
「あら?」
倒れている、黒髪に白メッシュ混じりの少年を見つけた。
「こいつ、何か金目のモノ持ってないかしら」
光る水晶を床に置いて、少年の着ているコートのポケットを探る。
「何もないわね……」
おまけに、ダンジョン内だというのに武器も持ってない。
(死にに来たようなものね。助ける義理もないし)
カタ、カタ、と不気味な音が近づいてくる。
「マズイわ」
ダンジョンに住まう魔物ーー生きる屍アンデット。
いつの間にか囲まれている。
暗闇に、アンデット達が持つ武器が光る。
振り下ろされた一撃は、ナイフで凌ぐことができたが
(しまった、後ろ)
その時、少女の頬を優しい風が通り過ぎた。
荒々しい風が吹き荒れ、アンデットたちを切り刻む。
「やはり、聖なる光の力でなければダメですね」
鈴を鳴らしたように、可憐な少女の声だった。
「え、あなた女の子? いえ、そんなはずは……」
確か、胸は平坦だった。
少年は少女の腕を掴むと
「今なら、復活する前に走り抜けられます。急いで」
ワタシは長くは居ることが出来ませんので、と少女に告げた。
「はぁ、はぁ……ねぇ、ちょっと聞きたいことが」
少年の顔は蒼白
「うわああああああっ」
大声を上げて、壁際に隠れてしまった。
(ああ、そっか)
盗賊の修正で、金目のモノを探したあげく、見捨てて去ろうとした。
おまけに、助けられた。自分が情けなくてしょうがない。
「助けてくれてありがとう。わたし、アリアよ。君は?」
少年は顔を少しだけのぞかせ
「……ゼファー」
名前を言った。




