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【完結】傷ものメイドはBLゲー攻め達に囲まれる〜悪役令息の執着が止まりません〜  作者: 日月ゆの
第三章

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どちらが悪役令息?


「助けて、ノア様!」


 声を張り上げた、その時。

 

 直後、爆音と共に、扉が吹き飛んだ。


「は?」


 音に驚いて呆然としていると、目の前が黒い影に遮られた。

 

 「ぐぁっ!?」


 鈍い音と共に、先程まで覆い被さっていたアルヴィンの体が、ボロ雑巾のように真横に吹き飛んでいった。


 壁に激突し、ずり落ちる。


 視界が開けて、飛び込んできた光景に、ミラは零す。


「……ノア様」


 扉を蹴破って中に入ってきたのは、ノアだった。珍しく剣を握っている。

 髪を振り乱し、肩で息をして、今アルヴィンを蹴飛ばしたのは彼なのだろう。


 次の瞬間、ノアはミラとアルヴィンの間に立ち、静かに剣を構えた。


「おい、ノア?! 王族に剣を向けるのか?! 反逆罪だ!」


「王族だろうがなんだろうが関係ない。王位継承なんかでミラに触れ、傷つけた。⸺俺の大切なミラを!」


 ノアはアルヴィンの首筋に剣をひたりと当てた。

 喉元に向かう刀身は現実とは言えないほど、とても不気味に光っていた。


 ノアの剣幕に動けないミラだが、アルヴィンは違った。


「……取り返しただけだ!」

「は? ミラは元から俺のです」

「王位継承なんかだと?! 笑わせるな! 貴様はずっと狙っていただろう? いつも俺様から奪いさってきたじゃないか!」


 冷ややかに言い返したノアにくわっと目を剥いたアルヴィンが吠える。

 そして、アルヴィンは振りかぶってミラを指差した。



「父上の信頼も、元老院の連中の支持も、……この『尊き色』の小娘も!」


 アルヴィンの荒い呼吸音だけが部屋にこだまする。

 ノアは目を見張り、数呼吸分おくと、柄を握り直す。



「……望んだ覚えも、あなたから奪った覚えもない」



 さして大きくもないのに響いたノアの声は掠れていた。

 だが、ノアは場違いなまでに穏やかな表情をしていた。

 それまでの怒りを消したように、美しく笑う。


「ただ俺が欲しいのは、ミラだけ。……それだけです」


 ノアの怒りは消えてなんかいなかった。

 アメジストの瞳の奥に、昏く、苛烈な色が渦巻いている。

 どこまでも静かな怒り。


 ノアの怒りをさとったように、ゴクリ、と喉を鳴らすアルヴィン。


「アルヴィン兄さん。もうお終いにしましょう」



 残酷に昏く笑うノアは本当に彼なのだろうか。

 従兄弟のアルヴィンへの憧れも、悼みすら捨て去っているよう。


 このままでは、ノアがアルヴィンを傷つけてしまう。

 自分を助けるために、ノアの手が汚れてしまう。


 ⸺そんなこと、絶対にさせてはいけない。



「ノア様!!」


 振り向いたノアの瞳と一瞬、視線が絡む。


 その瞳が、哀しく陰る。


 鈍く光る刃が翻ってしまえば、手遅れだ。



「ミラ⸺」


 動け!


 咄嗟にミラはノアの腕に飛びつく。決して離さないと、力いっぱい両腕を絡ませる。

 けれど、足は未だに恐怖でがくがくと震えている。



「だめです! ノア様が傷つきます!」


 ミラはぐっと顔を上げた。

 驚いたようにミラを見つめるノアは、ゆっくりとその尖先を床へ下ろす。


 カラン、と乾いた音がして、剣が手から滑り落ちた。


 ほっと小さく息を吐いたミラの肩をノアがそっと抱く。

 顔面蒼白のアルヴィンはぽかんと口を開けたまま、2人を見つめている。 


「……うん。ありがとう」


 ノアの声も腕も震えている。それでも、いつもの優しいご主人様だ。

 抱きしめる腕の力強さに、ノアの温もりと匂いに、目の奥が熱くなる。


「助けにきてくれてっ……ありがとうっ……ございます」

「……頑張ったね。もう大丈夫だから……」


 なだめるようにそっと背中を撫でられ、ミラは堪らずにノアの腕に顔を押し付ける。


 絶対に来てくれると信じていた。

 でも、怖かった。

 かつて理不尽な暴力に晒された恐怖が、未だに自分の中にこびりついていた。

 それでもいつだってミラを奮い立たせるのはノアだけだ。


(ノア様)


 わななく唇を必死で閉じる。

 閉じた目蓋から溢れる涙をノアの服が吸い込んでくれた。


 ミラがノアの服を濡らしていると、大勢の駆けてくる音が聞こえた。


「ミラちゃーん!! ノアくんは自重してー!!」


 物々しい音に顔を向けると、扉からリオンやエルンストを先頭に公爵家の護衛たちがなだれ込んできた。


 血相を変えたリオンの表情をみるに、自分の判断は正しかったらしい。

 本当にノアを止めて良かった。

 妙に安堵したミラをよそに、護衛たちがアルヴィンを後ろ手に拘束する。

 アルヴィンがわあわあ喚き散らすも、ラスフィ公爵家の訓練された護衛は手を緩めることはない。


「え?」


 さすがに王族相手にそれはいかがなものか。


 ノアにそっと目をむけると、絶対零度の眼差しを向けているだけだ。

 主人の怒気にたじろぎ、思わず涙もすっかり引っ込んだ。

 とりなすようにぎゅう、と袖を握れば、ノアが重々しく口を開いた。


「この俺、ノア・ラスフィ公爵の婚約者であるミラ・オーキッドを害した罪により、アルヴィン・グライスラーを捕縛する! 連れていけ!」


 ノアの底冷えするような声が告げた真実に、ついにアルヴィンは崩れおちた。



 ついでにミラも崩れ落ちそうだった。







 

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同じ異世界恋愛短編ですお時間あればぜひ 追放された幼女聖女ですが、今はエルフ王子に溺愛されています
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