恐怖の原因は、敵ではない
★ 描画距離と空間認識の再確認
通常ゲームの最大描画限界で1536ブロック。
俺は今回、初期設定を何もいじらなかったので、標準の3チャンク。半径最大96ブロックだ。
都会の信号3つ分ぐらいの距離だな。
小学校のグラウンドが、100メートル走を大体かける。つまりは、グラウンド四面分より少し狭い感じ。
その真ん中に俺が立って、周囲がそれぐらい見えているということ。それより向こうは空だ。
表示限界のギリギリに行かないと、グレーの壁は見えない。あんなものが常に見えていると美観がゼロだからな。
★ 過去設定との乖離
『俺の王国』では座標ゼロゼロにバベルの塔を建ててた。夜でも目立つように、松明をいっぱい設置したんだ。王国の端からも、ギリ見えた。
俺の場合は、96チャンク(3,072ブロック)まで見えるように初期設定をいじってたから、今回も昨日の夜はそれぐらいだと思ってたんだけど……
★ 塀必要量の再計算
半径二千としたら、周囲は16,000ブロック。二万の塀があれば足りる。
ドローンの作業時間が遅くなればなるほど、一括破壊範囲の範囲が広い。その分、塀の数が必要になる。少なくともドローンが端まで移動した距離×ブロック数だ。それの八倍が穴の周囲の距離。
想定の二倍ぐらい塀を用意しないとキツイかもしれない。最低でも、1.1倍は必要だ。
その「想定」がどれぐらいなのか? って話なんだよな。
なんとなく……わかっては、いるんだけど……
「どんどん塀を作らないとな……」
★ ソロ/マルチ挙動差の危険性
それともう一つの恐怖。
さっきも考えていた、ソロマルチ問題。
ソロゲームだと、枕やベッドマットを使って寝ると、「夜をスキップ」するので、「夜の10分」が「なくなる」。だから、「3日で麦ができる」が、その3日とは72分のことなので、夜をスキップしていると、その分、麦が成長するのに「日数」がかかることになる。プレイヤーが夜をスキップしたとき、NPCもスキップしたことになる。
だが、マルチは違う。
『マイピ』のマルチはチーム戦ができる。「チームが全員寝た」ら夜をスキップできるが、「他のチームは夜を過ごしている」んだ。
『マイピ』の設定で「マルチの場合チームの何%が寝たら夜をスキップするか?」という項目がある。これをマルチの奴らは100にしていることが多い。全員寝ないとスキップしないということだ。つまりは誰かが起きて、「スキップさせない」ということだ。交代で寝て、デスストーカーを避けている。
★ デスストーカーと確率死
デスストーカーはシングルプレイだとプレイヤー一人しかつつかない。
マルチだと、「チームに対して」湧く。『寝ていない人数』に対して湧くのだが、つつくメンバーはランダム。10人のチームが全員徹夜した場合、五日目にデスストーカーが10羽湧く。それがチームの数人をランダムに攻撃する。その10羽が「一人を狙った」場合、体力10なら即死だ。つまり、デスストーカー対策は「即死案件」なのだ。
全部が一人を狙う確率は低いが、ゼロではない。
ゼロではない確率を考えて動かないと死ぬのだ。
★ 現実換算と意思決定
現実で言うと、踏切の遮断機が降りているのをくぐって通過するヤツ。電車で死ぬ確率がゼロだと思っているからできること。足を線路に挟んで動けなくなれば即死。家族は莫大な損害賠償を払わなければならなくなる。
そういうのが「確率ゼロではないことを無視して動く」ということ。
そんなことを言うと、歩道を歩いていてもトラックに突っ込まれる確率はゼロではない。青信号で死ぬ確率もゼロではない。
普段の生活ではゼロではないけどやってしまう。
だが、マイピというゲームではゼロではないならやらないほうが良いのだ。
もちろん、逆に、「ゲームなんだから死ぬ確率が高くてもやる」という考え方はある。結局は、死んでログアウトさせられて、再度ログインするのに3分かかる。その手間より軽いかどうかだ。
ここはゲームだから。
だが、今の俺にはおそらくゲームではないだろう。
【このゲームで死んだら地球のあなたも死にます。せいぜい長生きしてください】
あのメッセージは、無視してはいけないはずだ。
だから、俺は、やらない。
★ リスク排除方針の確定
水ダイブもやらない。
おそらく水ダイブは安全だと思うけれど、違った時の被害が大きすぎる。想定と違った時の被害が大きいことは、暫定で、絶対にやらない。
だから、デスストーカーは出さないようにしないといけない。
案外、死神が上にいるのに、天井から出てしまうものなんだよ。一羽だけなら「痛い!」で済む。体力と空腹が2減る。だから5羽から突かれれば即死。
そして、『KIWAMI』の「怪我」で「破傷風が絶対にない」と言えるか? 未知の医療アドオンが入っているのに。
★ 医療リスクと不可逆性
これは地球でも同じなんだけど。
「強いて怪我をしてはいけない」
昔の友人でやたら擦り傷切り傷を作るガキ大将がいたけど、結局、破傷風で死んだんだよな。夕暮れ時に橋の下でザリガニを取ってて、足を怪我したけど放置してたら動けなくなって、親が見つけたときには間に合わなかった。
マイピで排泄をできるようにした医療アドオンが、破傷風を搭載していない確率は?
うん。消毒薬もある。破傷風はあるんじゃないかなぁ。
つまり、怪我も極力しないほうが良いということ。
消毒薬はレシピが重たい。そりゃ、近代以前は小便かけるとかいう治療法がまかり通っていたものだから。古代で消毒薬なんて作れないもの。
それがないなら怪我をするわけにもいかない。
考えすぎか?
怖がり過ぎか?
命がかかっているのに?
人間の体には耐久力があるが、ここはゲーム世界だ。数字で死ぬんだよ。どんなマッチョで体力ゲージが地球一周するようなやつでも、病気なら死ぬんだ。もちろん現代以前は薬なんておまじない程度だから、病気でも簡単に死ぬ。
鳥からうつる病気もあるしな。
★ 夜行脅威と戦略思考
デスストーカーは普通に「死神」と呼ばれている。
マルチでは、大怪我しようとも「生きていてくれる」ほうが有利なので、「死神外し」である「四日以内の睡眠」は絶対なのだった。そして「寝てる人数が多い時」が、敵の夜襲日和になる。
いつ寝るか? いつ夜襲するか? それも戦略の一つだった。
マルチでは「夜を寝る」をしても「夜はスキップされない」んだ。他のプレイヤーも、NPC国家も動いている。
今は、どちらだ?
「もし、これが『マルチ』だったら──
『俺が寝た夜』に、『誰かが俺を見ていた』ことになる。」




