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20. あれから……【リアム視点】


 爽やかな風が窓から入り、カーテンを揺らす。柔らかな陽の光を受け、窓辺で本を読んでいた私はゆっくりと顔を上げた。


 もうこんな時間か……


 ウェスト侯爵家の領地に来てから1年が経とうとしていた。


 森の中に囲まれた静かな邸宅に、私は信頼のおける数名の使用人と住んでいる。


 社交界から姿を消した私は、もしかしたら何処かで死んだ事になっているのかもしれない。でも、そんな社交界の噂すら届かないここでの生活は、目醒めない彼女と暮らすには丁度良かった。


 あの日……

 キースに叱責されたあの日、リンベル伯爵家へ行った私は、アイシャへの想いの丈をぶちまけた。


 彼女の事を心の底から愛していると。


 私がアイシャの側にいる事で、彼女が目醒めるのなら、どんな事でもすると。


 眠り続けるアイシャをウェスト侯爵家の領地へ連れて行きたいと話す私を鬼の形相で罵倒したリンベル伯爵だったが、少しでも彼女が目醒める可能性があるのならと言う夫人の言葉に絆され、最後は彼女を預けてくれる事を了承してくれた。


 あれから1年。

 あらゆる伝手を使い、可能性のある手段を試みて来たが、アイシャが目醒める気配はない。


 目醒めぬ彼女と過ごす穏やかな日々。


 一日の大半をアイシャが眠る部屋で過ごし、彼女に語りかける。


 愛していると……




 ゆっくりと立ち上がり、アイシャの眠るベッドの縁に腰掛け、彼女の頬を撫でる。


 温かい……


 こうして、日に何度も彼女に触れ、生きていると確かめねば、安心出来ない。


 ゆっくりと唇にキスを落とす。


 アイシャ…戻って来てくれ………………


「……うっ…んぅ………………」


「…………っ⁉︎」


「……リアム…なのぉ…………?」


 衝撃が走る。


 ガバッと起き上がり、彼女を見つめると閉じられていた(まぶた)がゆっくり開き、煌めくアクアマリンを思わせる瞳が私を見つめ、微笑む。


「…………ただいまリアム」


 勝手に涙が溢れ出す。


「泣かないで、私の愛しい人。

…………リアム愛しているわ」


 言葉にならなかった。


 ただただ、歓喜に震える心のままに、彼女の唇を深く奪っていた。


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