18. 嫉妬【グレイス視点】
……あの女はいったい何なのだ‼︎
跪き足に奉仕をしていた男を怒りのまま蹴り上げる。
「目障りだわ!下がりなさい‼︎」
可愛い下僕達との楽しい時間もあの女を思い出すだけで腹が立ち、興が乗らない。側に侍っていた麗しい男達を下げ、一人になり考える。
アイシャとか言う女が町のカフェへ一人で出かけている事を知った私は、以前から考えていた町のゴロツキにあの女を襲わせる計画を実行する事にした。
お気に入りの下僕をリアムに見立て町に繰り出すと、あの女が一人カフェの窓際の席でお茶をしているのを発見した。
わざわざあの女から見える位置のベンチに座り、下僕とイチャつき誘き出す事に成功したまでは良かったのだ。ゴロツキに指示していた裏路地に上手く誘い出し、あの女がめちゃくちゃに犯されるのを高みの見物と決め込んでいたのに。
何故、あの場面で本物のリアムが現れるのよ‼︎
あっという間にゴロツキは倒され、あろう事かリアムとアイシャが抱き合うなんて信じられない。
何なのよ! あの親密な雰囲気わ‼︎
泣きじゃくるアイシャを大切そうに抱き締め、あやす様に背を撫で続けていた。あんな態度、一度たりともリアムにされた事などない。
彼が私と婚約したのは白き魔女としての利用価値だけだと分かっている。婚約者としてご機嫌取りに高価なプレゼントや手紙、たまに会いに来る事は有るが、夜会でのエスコートやお茶を共にしていれば分かる。あの男は決して私には落ちないと。
大抵の男は私が微笑み、少し気がある振りをしたり、軽度なスキンシップを謀れば簡単に落ちた。その後は、思いのまま操れば良いだけなのに、リアムは違う。過度に体を密着させようと、上目遣いで誘惑しようと簡単にかわされる。
笑顔でやんわり距離を取り、それ以上進む事を避ける様に人の目がある所に連れ出される。
私に落ちない男なんて……
ヒロインである筈の私の魅力に落ちない攻略対象者がいる訳がない。リアムの態度は、私のプライドをズタズタにした。
その理由があの女だったなんて……
あの様子だとリアムとアイシャは愛し合っていた。
あの女が私からリアムを奪う……
しかも、リアムが去った後にキースに抱き上げられ、連れ去られるってどう言うことなのだ。あのポジションはヒロインである私のものだ。
『町で悪役令嬢に雇われたゴロツキに襲われたグレイスが攻略対象者のキースに助けられ、初めて出会う大切なシーン』
怪我を負ったグレイスを抱き上げ、見つめ合う二人の美麗なスチル。一番のお気に入りのシーンが、何故ヒロインである私ではなくあの女に代わっているのだ‼︎
ヒロインは私なのに……
あの女が私のヒロインのポジションを奪っていく。
あの女がこの世に居るから私のヒロインの座が奪われるのよ。
乙女ゲームの世界に存在しないあの女は消えなくてはならない。
この世界から抹殺すれば全て上手く行く……
最推しのキースだって、私に落ちないリアムだって、悪役令嬢と血迷って婚約したノア王太子だって私を愛する様になる。
あの女を殺せばいい………
元々、この乙女ゲームの世界にあの女は居なかったじゃないか。あの女を排除すれば、私の大好きな乙女ゲームの世界に戻るはず。
だって…………
私はこの世界のヒロインなのだから……




